2015年12月31日木曜日

2016年 第92回 箱根駅伝 (その1)

2016年の箱根駅伝には私のゼミから3名の学生が出場する予定です。発表されているエントリーシートを御覧ください。


この中で私のゼミ生は、主将の高田、山を降りる三浦、そして佐藤です。更には、2年前には睡眠の問題で悩んでいた柳(産経ニュース記事)もぜひ応援したいメンバーの一人です。その他、スポーツ科学部学生の中には私のスポーツカウンセリングや精神神経系のスポーツ医学の講義を受けている学生も多く、出来る限り沿道で応援しようと思っています。

ゼミ生応援用に、2年前に旗も作ってあります。1月2日3日は沿道からの応援の様子を、レポートします。




2015年12月29日火曜日

寝過ぎは早死にの原因となるか(同名のブログと睡眠時間について思うこと)

寝過ぎは早死にの原因となるか」というブログ(題名にリンクあり)にブックマークしてあったのを最近見つけて、そうだこの問題を一度論じてみようと思っていたのだと思い出し、読みなおしてみました。このブログは、まさに私がこの問題について考え始めた頃に思った疑問について取り上げてあり非常に興味深く読み、自分でも別の角度から論じても良いと思ったからです。
The Sleeping Gypsy
アンリ・ルソーの私の好きな絵です

そこで、ここにも取り上げられているDaniel Kripke先生の原典を読みなおしました。ごく簡単に説明しますと、この論文は平均睡眠時間が7時間位の人が最も寿命が長く、それより長く眠る人も、短く眠る人も寿命が短いということを示しています。ただ、有意差があるのは長く寝る方だけです。また、眠剤を使っている人も寿命に対して悪い影響があるという結果も出ています。

Mortality Associated With Sleep Duration and Insomnia
Daniel F. Kripke, MD; Lawrence Garfinkel, MA; Deborah L. Wingard, PhD; Melville R. Klauber, PhD; Matthew R. Marler, PhD
Arch Gen Psychiatry. 2002;59(2):131-136. doi:10.1001/archpsyc.59.2.131.

抄録の結論部分です
Conclusions  Patients can be reassured that short sleep and insomnia seem associated with little risk distinct from comorbidities. Slight risks associated with 8 or more hours of sleep and sleeping pill use need further study. Causality is unproven.

拙訳
短時間睡眠と不眠は、併存疾患とは区別して考えると、余り大きなリスクとはなっていないように思える。この点において、患者さんは安心して良いように思われる。8時間以上の睡眠と眠剤の使用に伴う僅かなリスクが観測されたが、これは、さらなる研究が必要であろう。これらの因果関係が証明はされていない。

Google Translation (参考)
患者は、短い睡眠と不眠が併存疾患と区別少しリスクと関連しているように見えることを安心することができます。睡眠と睡眠薬使用の8時間以上に関連する若干のリスクは、さらなる研究が必要です。因果関係は証明されていません。

このように、原典には睡眠時間と寿命については、大きな心配はいらないと書いてあります。したがって、この著者自身も睡眠時間と寿命との因果関係については更に詳細な検討が必要であり、早急な結論は誤った認識に繋がる可能性があるという立場だと思います。

さて、上記のブログの著者は、活性酸素など生物学的な立場から睡眠時間と寿命について論じています。これは、なかなか興味深い視点ですが、こういう視点もあるということで、では、どういう理由で長く寝ている人たちの寿命が僅かに短くなるのかについての、ほんとうの意味での「何が原因か」ということを示しているわけでもありませんし、このブログでも実際そうも述べています。こういった議論の中で上記ブログの著者は、日中の活動との関連について言及しており、共感するところです。

睡眠時間については、私はいつもスポーツと関連して2つの研究を示しています。
1.一つは、我々の大学院学生が行った研究で、長距離走選手の自発的に睡眠時間が、練習強度が強くなると一日9時間近くに長くなるということです。練習強度の低いオフ期は、むしろ昼寝をしたりする時間は多くあるのですが、選手は眠りません。

2.もう一つは、米国のCheri Mahが行った実験で、選手に長く睡眠を取らせたところ、一ヶ月半くらいに及ぶ期間、一日9時間近く眠るようになりました。その中で、スポーツパフォーマンスが向上したということが示されています。

これらは、寿命との関連ではありませんが、睡眠時間は日中の活動を支えるものであって、睡眠時間だけをコントロールすれば、寿命が伸びたり縮んだりするものではないのだという、基本的で、考えてみればごく当たり前の視点を再確認することが大切だということを意味しています。

健康についての考え方は、時に不安から短絡的な思考に走りがちです。そうではなく、本当に健康な生活をするためにはどうしたらよいかを、もっと巨視的な視点で考えることが大切であり、このような考えがほんとうの意味での良い健康教育、医療につながっていくというふうに考えています。

2015年12月25日金曜日

オンデマンド講義を作ってみました(screencast-o-maticの利用)

【今回の試みのまとめ】
1. オンデマンド講義作成ソフトとして、screencast-o-matic はとても便利なので、これを採用しようと思います。
2. 公開の仕方は、YouTubeにアップロードして貼り付けるのが良さそうです。
3. 注意(ビデオは音声つきですのでクリックすると声が出ます。)

【本文】
早稲田大学では、オンデマンド(インターネットを利用して、講義の配信を行う)授業も行っています。オンデマンドには、直接学生と顔をあわせず講義をするということなどから賛否ありますが、学びたい人にとっては何度も繰り返し見られるということもあり、一般的に評価は良いようです。

このようなオンデマンド講義の作成は、大学のスタジオを使って行われますが、教員が自分の研究室や自宅でパソコンを使ってオンデマンド講義を作るソフトウェアのサービスも早稲田大学は行っています。これを使った授業を見られるサイトがあるので興味がある方は御覧ください。

早稲田大学体験Webサイト
http://www.waseda.jp/taiken-waseda/

さて、このような方法でオンデマンド講義は作成できるわけですが、もう少し簡単にオンデマンド講義を作り、早稲田大学以外にも公開する方法がないかとも考えていました。製薬会社などは、独自に立派なソフトを用いてやっており、私も何度か出演したことがありますが、もっと簡単で、自分で作れる方法がないかと思ったわけです。
そんなものを探していたところ、非常にぴったりな無料ソフトを見つけました。

screencast-o-matic.com


このサイトです。ローカルにソフトをインストールして、オンラインで録音をするのですが、15分までの簡単な講義作成には、ほぼ十分な機能が備わっています。

これを使った、非常に簡単なオンデマンド講義を掲載してみました。試しに作ったので、コンテンツはあまり期待しないでください。


今後、このようなものを、一般の患者さんなど向けにも臨床情報提供として使えると良いと思っています。


【更に追記】⇒ YouTubeの画像の悪さは、通信速度などによって規定されるもので、解像度をあげるとかなり良い画像が見られました。YouTubeにアップロードしたほうが、共有度の高さなどから良い面が多いように思われます。現在は、YouTubeの限定公開としたものを埋め込みコードでブログに貼り付けています。もう少し試していきたいと思います。


【公開後Webで見ての追記】 このブログで公開すると、YouTube経由というようなことになり、かつ解像度も低いので見にくいですね。したがって、今後このような情報提供をする場合には別のサイトで立ち上げたほうが良さそうです。YouTubeを使うのがやはり一番一般的でしょうか。試しに、おなじビデオファイルをYouTubeにアップロードして貼り付けることもやってみましょう。
YouTubeへのリンク
上記をクリックしていただくとYouTubeで見られますが、これもあまり解像度は良くないですね。

これがベスト!
直接ビデオファイルへのリンク (YouTubeが良さそうなので、リンクを削除しました)
ビデオファイルをFTPでアップロードし、そこに直接リンクしたところ、非常に良い結果でした。この方法が、見やすくて一番良さそうです。

2015年12月21日月曜日

スマホの睡眠アプリ (3) 熟睡アラームを一部監修しています

熟睡アラームを、自分の標準の睡眠アプリとして使っています。以前のエントリーにも熟睡アラームを紹介しましたが、実はその後、アプリの会社と連絡を取り、このアプリの一部監修しました。臨床で使いやすいように、睡眠図のPDFファイルをメールで送れるようにしてもらいました。また、睡眠覚醒の判定アルゴリズムについても、研究などでも用いている標準的なコール博士の方法についてアドバイスをし、これをアルゴリズムに採用してもらいました。

これについては、アプリのサイトを御覧ください(図)。私の名前も、入っています。

これによって、熟睡アラームは非常因優れたアプリになったと思います。電子カルテにつなげるための方法については、まだ検討中です。と言うのは、私が使っている電子カルテはインターネットに繋がっていないので、睡眠図を受け取る方法としては、インターネットに繋がっているパソコンで熟睡アラームの結果を受け取り、これをUSBメモリーなどで、電子カルテのネットに取り込むというような方法を取る必要があるからです。

電子カルテのセキュリティーは、絶対が要求されるので、これはやむを得ないのかもしれませんが、もう少しスマートな方法が無いかなとも思っています。


2015年12月18日金曜日

1945年からの精神医学における10の最も重要な変化 (Psychiatric Times) ~ スポーツ精神医学へ

Psychiatric Timesに表題の興味深いコラムが掲載されていました。下記がURLですので、原典に興味ある方は読まれると良いと思います。
http://www.psychiatrictimes.com/blogs/history-psychiatry/10-most-important-changes-psychiatry-1945-invitation-readers

この中で、興味深い図があったので、その拙訳を載せておこうと思います。文章の訳は著作権もあると思うので控えますが、掲載された図をみると、この文章の概要はわかると思います。

1.1950年代の精神薬理 革命
2.脱施設化
3.精神分析学の衰退
4.精神療法は、精神科医から医学教育を受けていない人たちへシフトする
5.ビッグサイエンスの台頭
  * ビッグサイエンスに関してはこちら
    http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20130703/356790/?rt=nocnt
6.1980年代からの、Mood-stabilizing, Mood-enhancing薬の開発と普及
7.製薬会社の影響力の増大
8.DSMの影響増大
9.精神科診断の急激な拡散
10.同性愛が病的と考えられなくなる

というところです。拙訳で申し訳ありませんが、一部わかりやすく意訳しました。

この中で、前半は精神分析から精神医学がより医学の一分野として、生物学的な基盤に則って治療を行う領域に変化してきたことが伺い知れます。これは、良い方向であると思いますが、その後、製薬会社の影響力が増大。更には、診断の拡大によって、必ずしも異常でない人たちが精神医学の診断を受け、治療の対象となる。そして、そこに多額の治療薬が導入され、製薬会社を潤す、という構図が描かれています。

これは、日本も他人事ではありません。

精神分析から生物学的精神医学への流れは、私は好ましい要素を持っていると思います。私は、スポーツ精神科医ですが、生物学は必ずしも薬理学を意味しないことを協調したいと思います。生活の改善…運動、食事、睡眠というごく当たり前のことが、精神的な健康度を上げるということをもっと精神科医は、知るべきです。次の重要な変化にこのことが加わると良いと思っています。



2015年12月15日火曜日

ベルソムラ(スボレキサント)の長期処方が可能になった

オレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ(スボレキサント)は、これまでにない全く新しい作用機序の睡眠薬です。昨年11月に発売されましたが、1年間は14日までの処方で、処方に苦労しました。今月、2015年12月からは、やっと長期処方が可能になりました。

この薬物は、依存性が無いことなどから向精神薬に指定されておらず、処方の日数制限がなくなりました。14日から一挙に長く処方できることになり、処方しやすくなりました。

発売当初は、単剤で初発例にということで慎重に使用するようメーカーからもアドバイスが有りましたが、その後、少しずつ併用するなかで、併用によっても睡眠を安定させる作用があることがわかってきました。

私は、双極性障害や統合失調症などの患者さんで、他の薬物を多く服用している人に併用することも多くなってきています。このようなケースでは、依存性のあるベンゾジアゼピン系の睡眠薬の投与量を減らしていけるという利点があることも経験の中でわかってきました。

現在主に用いられている睡眠薬は
・ ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾジアゼピン、ノンベンゾジアゼピン)
・ メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)
・ オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)
です。この中で、オレキシン受容体拮抗薬のみが、睡眠に直接作用する薬物ではなく、覚醒の維持のために必要と考えられているオレキシンの役割をブロックする、いわば覚醒阻害剤としての役割をもっているユニークな薬物であるわけです。

経験により安全性が確かめられてくれば、このような薬物は併用によっても、より効果的に安定した睡眠を維持できる可能性があると思います。


2015年12月12日土曜日

Google Play Musicを使ってみて

以前に、Google Play Musicに契約したことを書きましたが、その後これをかなり使っています。これまでは、CDをMp3化したりMp3をダウンロードしたものをUSBなどに入れて、カーオーディオで聞くというのが主な私自身のオーディオ生活でした。そのアルバムの数もかなり多くはなっていますが、9月にGoogle Play Musicに契約して、その後はほとんどこればかり聞くようになりました。3ヶ月あまり使ってみての感想です。

Google Play Music
1.曲数: 私はジャズばかり効きますが、まれにクラシックも効きます。ジャズに関しては、他のクラウド音楽サービスと比べて充実しているように思います。ただ、それでも、あああの名盤を聞きたいなと思った時に、かならずあるとは限らないということは何度か経験しました。それで、その周辺の曲を聞くという結果になるわけですが、なかなか「なんでもある」クラウド音楽サービスは無いものなのだと思いました。

2.思いつた時にすぐ聴ける: 一方で、思いついたものを気軽に聞けるということは、非常に便利です。例えば、先日はスティービー・ワンダーの曲を聴きたいと思って、すぐに聞けましたし、少しマニアックですが、ジェフ・ベックのWiredというアルバムを聴きたいと思った時にすぐに探せました。こういうアルバムは、私にとっては購入するほどのこともないというものなのですが、しかし、そういったものをいつでも聴けるのは便利です。

3.便利なラジオ機能: ラジオという機能があって、これはあるミュージシャンやアルバムを中心として、その周辺の類似した音楽を連続でエンドレスに流してくれる機能です。車で長い時間ドライブしたりするときには非常の重宝します。これによって、新しいミュージシャンや音楽を発見することも有ります。

4.ダウンロード機能: スマートフォンアプリには、ダウンロード機能があって、オフラインで後で聴けるようにファイルをダウンロードすることができます。これは、契約を解除したら聞けなくなってしまうものだと思いますが、それでも気に入ったアルバムを繰り返し聞くようなときには非常に便利です。

早めに入ったので、月額780円という格安で契約していますが、当分は続けてみようと思います。現在のところは、音楽をゆっくり聞くのは車の中という甚だ条件の悪いところでのオーディオライフなのですが、車のスピーカーをJBLとFassというものにしたりして、ある程度の音質は確保できているつもりです。しかし、自宅の静かな部屋で、ゆっくりとオーディオを聴けるような身分になりたいとも思いますね。


2015年12月7日月曜日

ポストランチディップと交通事故

昼過ぎ、14時か15時ころに眠気が来ることは、経験上よく知っていると思いますが、昼ごはんを食べなくてもこの時間は眠くなることが知られています。この時間帯のことを、ポストランチディップと言っていますが、この時間帯には交通事故も多いことが知られています。

私は、幾つかの著作の中で図のようなスペインのSantosら (2010) の論文からの図を引用して、この時間帯に事故が多いことを示しています。これはこれで、正しいと思っているのですが、警視庁のデータをグラフ化してみると、もう一つの図のようになり、必ずしもポストランチディップは見えてきません。朝の通勤と帰りの帰宅時のラッシュ時間帯に交通事故が多くなるのが見えるだけです。

日本人でも午後の時間帯は眠くなると思いますが、これが警視庁のデータで出てこないのは警視庁の図が2時間おきのデータだからなのか、日本では必ずしもポストランチディップと交通事故の数が相関しないのか、よくわかりません。

著作の中では、こういうことを書いたほうが面白いのかもしれませんが、読者は何を言いたいのかわからない場合も多いと思うので、裏話として紹介してみました。

2015年12月4日金曜日

夢: 睡眠中の脳活動・人間の存在の本質

先日、早稲田大学のマスコミ研究会の学生から、インタビューを受けました。「夢」についての話を聞きたいということでした。このインタビューで、いろいろと考えることもありましたのでそのことを書いてみたいと思います。

夢は、レム睡眠(REM sleep)と結び付けられて語られることが多いですが、夢はノンレム睡眠(non-REM sleep)でも見ていることは知られています。フロイトなどの夢分析なども夢に関わることです。更に、睡眠中の脳活動は、記憶と結び付けられて語られることも多くあるります。これは、必ずしもレム睡眠だけが関わっているわけではありませんが、レム睡眠中の脳活動も記憶と関連して議論されることが多くあります。

Recurring Dream という絵画
オリジナルのURLから掲示してあります
この睡眠と記憶についての研究は睡眠研究では一つの大きなトピックですが、私は、この学生とのインタビューで、「記憶」という言葉は必ずしも、これに関わる睡眠中の脳活動の本質を表現していないように思いました。睡眠中の脳活動、そして現在の研究では「記憶」という言葉で表現される事柄は、実は、単に覚えるということでなく、もっと人間の存在の本質に関わることと関連がるように感じます。

その「人間の存在の本質に関わること」とは、例えば、「反復夢(Recurring Dream)」の話をしている時に考えたことです。反復夢は、フロイトの言う抑圧された無意識が夢として現れる、しかし、それが解決されていないために、何度も何度も反復されると解釈されるように思います。そして、多くの場合このような反復される夢は、成人期以降には少なくなります。これは、成人期にはエリクソンのいうところのアイデンティティーが確立され、自分が自分であることがしっかりと出来上がってくるからだというふうにも解釈できます。

そう考えると、睡眠中に行われている脳活動は、記憶の定着も含めて、自分自身が一貫して自分であること(自己同一性=これは、統合失調症などでは損なわれることも有りますし、解離性同一性障害における症状であることも有ります)を、保守していくという役割とも考えられます。記憶はまさに、自分が一貫して小児期より自分であることの証になります。そして、その中で自我が他者から侵されない自分自身のものだということを維持すことができるわけです。そこに、自分自身の解決されていない抑圧された無意識の葛藤があれば、人間の存在を保つため繰り返し夢としてその葛藤を解決する試みがなされる。これが、反復される夢として現れるのだと解釈すると、睡眠中の脳活動の役割としての一貫した解釈もできるように思います。つまり、人間の主観的な存在の一貫性を保つための脳の活動。日中の様々な意識による情報取得に一貫性を見出し人間の一貫した存在を維持する。このような、人間の存在の本質に関わる働きと考えられないでしょうか。

こういった学生との対話は、臨床活動と同様にときにアイディアを刺激されることがありますね。

2015年12月1日火曜日

私とジャズと早稲田大学 (Waseda Weekly 過去の掲載記事)

Waseda Weekly 過去の掲載記事
ネットを見ていて、自分が書いた過去の掲載記事があったので紹介したいと思います。消えてしまう前に、私のブログに移動しておきましょう。早稲田のジャズを楽しんでいきたいということが書かれていますが、その後8年間、あまりジャズをやっている学生との交流はありませんでしたね。


私とジャズと早稲田大学


スポーツ科学学術院教授 内田 直
 2003年4月に現職に着任した。当初は趣味をする余裕もなかったが、ここ4年で随分と慣れた。今回はそんなところで、趣味のお話をしたい。
 私は元来ジャズ好きで、滋賀医大時代は京都のライブハウスにピアノで出演したこともある。卒業後医者になり、多忙の中で演奏からは離れていた。米国から帰国して研究所に就職した36歳ころ、女房が結婚式の余興でサックスをやった人が素敵だったという話をした。これだと思った。研究所には実験用の防音室がある。まずは安価なソプラノサックスを買った。37歳の時である。昼休みは素早くランチを取り、毎日小一時間の練習を続けた。1年後、友人の結婚式で『Walz for Debby』を演奏。今考えると恥ずかしい話だが、ピアニストが良かったこともあり、それなりにうけた。それが励みになり精進を続けた。技術が上がると、良い楽器が欲しくなる。40歳の記念に少し高級なテナーを買った。ソプラノよりも表現の幅が広いテナーに魅了され練習。40代半ばごろには、中学時代の友人がピアノを弾いているジャズクラブに出演した。
 しかし、一人で練習するのは持続が大変だ。普段の生活は研究が本務で、そちらをおろそかにすると家族が路頭に迷う。年を取ってからは月日の経つのは早い。気を抜いて、練習しないと、あっと言う間に2、3年は経ってしまい、また一から出直しだ。
 46歳で本学に就職が決まった時、早稲田はジャズということが頭に浮かんだ。数々の優秀なジャズ演奏家を輩出している。モダンジャズ研究会のページを見ても、 北陽一郎(tp)、鈴木良雄(b)、藤本敦夫(comp)、増尾好秋(g)、丸山繁雄(vo)と5名のOBがリストされている。ほかに私の知っている限りでも佐藤達哉(ts)や太田剣(as)などの比較的若手のミュージシャンも「ダンモ」出身のはずだ。タモリの名前も挙げておこう。早稲田の誇るビッグバンド、ハイソサエティオーケストラからも香取良彦(vib)、守屋純子(comp, p)などすごい名前がそろっている。そんな風に私にとって早稲田大学とジャズは一つのイメージを作っていたし、紛れもなく早稲田はジャズの名門校だ。
 勤めて3年が経ち、ブランクを乗り越えて昨年春ごろからぼちぼちと楽器演奏のリハビリをした。昨年後半からは、ジャムセッションにも月に一度くらい参加しだした。そんな中で、早稲田のジャズをこれからは楽しんでみたい。
(2007年5月17日掲載)
Copyright (C) 2007 Student Affairs Division, WASEDA University. All rights reserved.
First drafted 2007 May 17.

2015年11月27日金曜日

レッズの最終節: VIP席で観戦しました

浦和レッズの最終節は、VIP席で観戦しました。エアウィーヴがレッズのスポンサーになっているために、とっていただいたのですが、最終節はやはり良いものです。レッズサポーターもいつもながらですが、応援に力が入ります。
フォワードとしても懸命の
ディフェンスをする
渡邉千真選手。頑張れよ!
対戦相手は、ヴィッセル神戸でしたが、一つ私の中にはジレンマがありました。ヴィッセル神戸のフォワード渡邉千真くんは私のゼミの卒業生です。彼は、早稲田大学時代他の選手とは違って頭一つ出たフォワードでした。いつも、いいところに居る、と言うのは彼の動きの感覚がそうさせるのでしょうが、彼を見ているだけでもサッカーが面白く感じられます。

渡邉くんは卒業後、FC東京に入りました。FC東京には、国見高校の先輩でもある徳永くんが居たということもあったかもしれません。徳永くんについて言えば、彼は早稲田大学の宝でしたが、その頃早稲田大学は都リーグ(3部)で、徳永くんはあれほどレベルの高い選手であったにもかかわらず、結局1部リーグでプレーすることは無かったのではないかと思います。あの頃は、横浜Fマリノスに行った兵藤くんとか、早稲田にはいろいろ居ましたね。皆、スポーツカウンセリングなど私の講義をとってくれて、楽しかったです。

さて、そういうことで、渡邉くんは写真のように持ち前の運動量で相当動きまわったのですが、渡邉くんにとっては残念ながら、好調のレッズに押されて、5-2でレッズが最終節を勝利で飾ることになったわけです。

試合後は、鈴木啓太選手の引退セレモニーなどもありましたが、私は家の都合で早めにスタジアムを後にしました。

今季は、2ステージ制になり、今後Jリーグの覇者を決めるチャンピオンシップが明日から始まります。レッズは、明日はガンバですが、好調の波に乗ってぜひ年間チャンピョンになってほしいと思っています!

PRIDE OF URAWA

2015年11月23日月曜日

松岡修造氏とエアウィーヴAirweaveの勉強会で一緒に睡眠の勉強をしました

先日、エアウィーヴの「成長期における睡眠についての勉強会」に登壇しました。この会は、製品紹介というよりも、成長期の子どもたちになぜ睡眠が必要なのかということについて、勉強する会として開かれたものです。私は、松岡修造氏と一緒に登壇できて、とても楽しい一日でした。

エアウィーヴ勉強会の様子
左から、高岡会長、松岡氏、内田、田野瀬理事長
楽しい雰囲気です
冒頭に、松岡修造氏のトークショーが有り、進行役の進藤晶子さんとなかなか絶妙な駆け引きで、聴衆を惹きつけたあと、エアウィーヴの高岡本州会長、京大合格日本一の西大和学園中学校・高等学校の田野瀬太樹先生、そして私が登壇し、成長期の睡眠についてのお話をしました。

西大和学園は、寮にすべてエアウィーヴが入っているようです。また米国のIMGにおいても、寮はすべてエアウィーヴで、これによって競技力が向上したというデータも紹介されました。

私は、この中で睡眠がスポーツ選手にとっても非常に重要な事だということを、Cheri Mah先生のデータなどを取り上げながら話しました。これには、松岡修造氏も興味深く聞きいっておられました。また、アスリートはこういうデータを示せば、なるほどと納得しますというお話もしておられました。

成長期の睡眠は、非常に重要です。成長期は、まさに脳の発達期でもあり、様々な変化が脳の中で行われています。この時期に、質の良い睡眠を十分取るということは脳の発達を促進するという意味で重要だと考えられます。この結果として期待できることは、本来持っているその子供の能力を十分引き出し、更には精神面では情緒の安定も得られると思います。この時期の脳の安定した成長は、成長後にうつ病になりにくいなどのストレスに対するレジリエンス(逆境から立ち直る力)が強くなるということも言えると思います。

時には、真面目な内容もあり、また、松岡修造氏の楽しいコメントも有り、とても楽しめる勉強会だったと思います。このようなことを通じて、成長期の子どもたちにおける睡眠の重要性などについても広く知識が広がるのはとても良いことだと思っています。

2015年11月20日金曜日

duloxetineとatomoxetineのKi値とADHDへの効果

先日勉強会の中で、duloxetineというノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害剤のKi値についての解説がありました。Ki値というのは、再取り込みを半分にする濃度で、ナノモル(nM)で表現されます。したがって、この値が小さいほうが少ない量で阻害ができるということなので、阻害作用が強いということです。

そして、ノルアドレナリンの再取り込み阻害をすれば、その分取り込まれないノルアドレナリンが神経伝達に働くのでノルアドレナリンの働きを強める事ができるということになります。つまり大まかには、Ki値が小さいほど、それぞれの神経伝達物質の働きを強めるということです。

そこで、duloxetine(サインバルタ)とatomoxetine(ストラテラ)の各神経伝達物質に対するそれぞれのKi値を比較してみました。サインバルタは抗うつ剤で、ストラテラはADHDの治療薬です。


Ki (nM)               5-HT        NA        DA

duloxetine           3.7           20        439

atomoxetine       152           4.5        658



この結果を見ると、atomoxetineは、やはりセロトニン(5-HT)に対しては、余り効果が期待できないことが分かります。duloxteineのほうが40倍以上強いということです。

ノルアドレナリンに関しては、duloxetineはatomoxetineほど効果は無いというものの、四分の一程度の効果はあります。したがって、60mg投与の場合は、atomoxetine 15mg投与くらいの効果は期待できるということになります。ともに、ドパミンのKi値はノルアドレナリンよりも高くドパミントランスポーターに対する直接的な効果は期待できません。しかしながら、前頭前野においては、ノルアドレナリントランスポーターがドパミン神経の投射系でも働いているため、前頭前野におけるドパミンの増強は期待できます。(*2015年11月21日訂正、参考資料…http://www.psychiatrist.com/brainstorms/documents/br6403jap.pdf)

このようなことを整理してみたのは、ADHDの患者さんに対して、duloxetineが薬理学的にどの程度の効果があるのかどうかを考えてみたかったからです。うつ病の患者さんの中には、時にADHD傾向があり、このことも含めてストレスの多い生活になり、うつ状態になる方が居ます。このような方に対して、まずはduloxetineを選択し、寛解状態に達した後に、疾病教育や認知行動療法を行い、診断的に可能であれば、atomoxetineを投与するという方法も考えられます。

適用外使用なので、あまり積極的に使用するのが良いかどうかはわかりませんが、ADHD傾向のある患者さんで、これが原因で社会との摩擦が多くなり、ストレスを感じるというタイプの人に対して、うつ病治療としてduloxetineを用いた場合に、これがNAの作用としてatomoxetineの作用のどの程度の部分を担えるのかは抑えておいたほうが良い知識と思って調べてみました。

2015年11月16日月曜日

北関東のドライブ

余りアカデミックでない話で恐縮ですが、いわき市で講演を頼まれ、先日車で早稲田大学所沢キャンパスからいわき市まで行きました。これは、圏央道が、桶川から先東北道までつながったという情報があったので、ここを通ってみたいという気持ちもあったからです。Google Mapで、所沢キャンパスからいわき市までのルートを検索すると、都内を通過するルートが示されます(地図1)。しかし、私が通ったのは地図2のルートです。多分、都内を通過しないので地図2のルートのほうが速いと思うのですが、比較はしていないのでわかりません。地図をみると、距離は40kmくらい長いようです。これもちょっと以外ではありました。

地図1 都内を通るルート
さて、このドライブを取り上げたのは、北関東から南東北に至る自然がとても美しかったからです。圏央道から東北道のあたりは、首都圏のイメージです。宇都宮に近づくと栃木県も随分と広々としていて、自然が豊かなことに気づきますが、宇都宮の手前から北関東道に入り、水戸方面にルートをとると、本当に美しい自然が広がっています。

このルートの途中には、先日の大雨で下流でお大きな被害の出た鬼怒川も渡ります。北関東道は、一旦少し南下して水戸の南にある笠間で常磐道につながります。このルートが多少距離が多くなっている要因であるように思います。ただ、水戸と宇都宮をつなぐという意味で重要なルートなのだと思います。

地図2 北関東道を通るルート
私の感覚だと、水戸まで来るといわきはもうすぐと思うのですが、実は地図をみると、水戸までで半分くらいです。そこからいわきまで更に100kmあります。このルートもとても自然がきれいでした。紅葉も始まっている景色は、ドライブにはもってこいです。いわきに近づくと、トンネルがとても多くなってきます。

いわきでは、講演後食事をしたのですが、地魚は全く出ませんでした。未だに、原発事故の影響があり、出荷ができない状況なのだそうです。試験捕獲をして、放射能の影響をみているようですが、今年の10月では、基準値以上の検体はでなかったと、水産庁のホームページには書いてあります。

出荷が始まるのは近い将来なのかもしれませんが、未だに海産物への影響が大きいということについて、暗澹たる思いがあります。

いわき市は、福島第一原子力発電所の事故処理に関連したベースキャンプになる街であるようで、人の行き来は多いようです。しかし、やはりこの事故のもたらした影響の大きさを考えさせられました。

水産庁のホームページより
北関東の美しい自然と、福島第一原子力発電所の事故とその影響、そんなことを考えさせるドライブでした。

2015年11月13日金曜日

変形性膝関節症

今年の4月ころ、学生とフットサルをやったのが一つのきっかけだと思うのですが、左膝の不調が続いていました。また、少し良くなった後7月ころにはジョギングなども再開し、再び悪化。更に、この不調は夏に、1年生の野外活動実習(サマーキャンプ)で、菅平の根子岳に登った(というより、おりた)時に更に悪化してしまいました。階段を特に降りるときに右足を下に下ろすときに左膝が痛みます。登る時もそれなりに痛みます。平らな道を歩くのは、比較的楽でした。その後、本学の福林徹教授(フランスワールドカップ日本代表チームドクター)に御高診を賜り、レッグ・エクステンションをして筋力をつけるように言われていたのですが、痛みのためなかなか筋力もつけられない状態が続いていました。


私が滞在したホテルのフィットネスルーム
なかなかよい機材が揃っていました。
毎日利用しました!
10月に入って、再び福林先生に御高診賜りました。変形性膝関節症ではないかと思うとお話しましたところ、「診断は、正解ですね。」とお褒めの言葉をいただきました。そして、アルツ(ヒアルロン酸ナトリウム注射液)+他の混合薬の膝関節への注射をしていただきました。もう、数年前にこれをしてもらった時に、非常に良くなったので、期待していたのですが、痛みは軽くなったものの、以前ほどすっきり良くなりません。

しかし、筋トレが可能になったので、先週一週間タイに行った時に、到着した月曜日から、帰国の日曜日の朝まで7日間、ホテルのジムに通いました。良いレッグ・エクステンションのマシンがあり、これでかなり筋トレをしたところ、痛みが取れてきました。また、膝のあたりもしっかりしてきた感じがします。また、有酸素運動と食事にも気をつけて体重を3週間ほどで3kgほど減らし、更に減量中ですが、非常に良くなってきています。痛みが取れると、スクワットもできるようになり、現在継続中です。




ヒンズースクワットを日課にしようと思います。使用しているアプリとこのヒンズースクワットのYouTubeを参考にしています。

私も、来年は60歳になりますので、体のケアは大切です。運動、食事、睡眠 と、講演などでは話していますが、自分が実践できなければ意味がありません。これを機会に、しばらくサボっていたトレーニングを再開します。

なかなか定期的にジムには行けないので、自宅でのトレーニングをします。自重のトレーニングと、ダンベル、チューブなど、あとは自転車エルゴメーター(そしてウォーキング⇒ジョギング再開)です。私は、トレーニングの専門家ではないので、すこし同僚のトレーニング専門家にメニューを相談して、続けられるメニューをつくってみたいと思っています。

2015年11月9日月曜日

あれ、何しに来たんだっけな (ADHDとワーキングメモリー)

ADHDの患者さんは、「記憶力が悪くなった。」というふうに言われます。やらなくてはいけないことを、忘れてしまう。ものをどこかに置いて、そのままどこに行ったかわからなくなってしまう。こういったことが多くおきるからです。しかし、これはアルツハイマー型認知症にみられる記銘力障害とは異なっています。アルツハイマー型認知症では、朝ごはんを食べたことを忘れてしまうなどということが、中等症くらいからは出てきます。

ADHDにみられる、このような「記憶力の低下」は、ワーキングメモリーの障害というふうに思われます。ワーキングメモリーというのは短期記憶に分類される記憶で、例えば、電話をかける時などメモをみて、数字を覚え、それでプッシュして電話をかけるという時に、作業に関わる短時間の間記憶をとどめておくものです。このような記憶は、「そうだ、隣の部屋に行って、ハサミを取ってこよう。」と隣の部屋にいった時に、目的を頭に留めておくということにも用いられます。そういうときに「あれ、この部屋に何を取りに来たんだっけなぁ。」となる場合は、このワーキングメモリーの働きが不十分だという事にもなります。

このようなワーキングメモリーの障害は、臨床の場で見ていてもADHDの患者さんには多く見られて、冒頭に書いたように「記憶力が悪くなった。」と言われます。文献1に示されているように、様々な研究で、ADHDの患者さんではワーキングメモリーが障害されていることが示されています。これは、臨床的な愁訴ともよく合う結果です。

この症状は、ADHDの治療に用いられる薬物の効果とも整合性が有り、一般にワーキングメモリーは、ドパミン系の働きが強く関与していると考えられています。またノルアドレナリンもこれを補足する役割を持っていると考えられています(文献2)。したがって、薬物療法も直接的に意味があるわけです。

また、文献3に示されているように、ワーキングメモリーのトレーングが効果があるということです。これらは、成人に対しても行うべきトレーニングであるようにも思います。

ADHDに関連しては、注意や覚醒レベルに関わる薬物療法とともに、こういった特徴的な症状に対する個々のトレーニングはやはり重要であろうと思います。




1.  Martinussen, R.,  Hayden, J.,  Hogg-Johnson, S.,  Tannock, R.
A meta-analysis of working memory impairments in children with attention-deficit/hyperactivity disorder  (Review)
Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry
Volume 44, Issue 4, April 2005, Pages 377-384

2 Dash PK, Moore AN, Kobori N, Runyan JD.  Molecular activity underlying working memory.  Learn Mem. 2007 Aug 9;14(8):554-63.

3.  Klingberg, T. ,  Fernell, E.,  Olesen, P.J.,  Johnson, M.,  Gustafsson, P.,  Dahlström, K.,  Gillberg, C.G.,  Forssberg, H.,  Westerberg, H.
Computerized training of working memory in children with ADHD - A randomized, controlled trial  (Article)
Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry
Volume 44, Issue 2, February 2005, Pages 177-186




2015年11月6日金曜日

映画: Me and Earl and the Dying Girl, Alfonso Gomez-Rejon監督 (2015)

タイへの飛行機の中で、表題の映画をみました。なかなか良い新作映画なのですが、日本公開は未定ということです。飛行機にのると、ほぼ必ず映画を見ますが、今回はJulassic Worldとこの映画を見ました。

この映画は、なかなか考えさせられる感動のある映画です。白血病で亡くなる運命にある、しかし特別仲良しでもない同級生の女の子に会って話をしろと急に母親に言われた、どちらかと言うとひここもりがちの、しかしユニークな男子高校生Gregとその友達のEarlと、そしてその女の子の様々な心の交流について描いたものです。

まだ公開されていないので、細かくストーリーを書かないほうが良いのですが、最初のあたりはあまり引き込まれなかったのですが、次第に引き込まれていって、なかなか感慨深い余韻の残る映画でした。

人とのつながりというのは、長く一緒にいるという時間の中で作られてきて、そして、それは一方的に観ている世界だけでなく、相手からの世界、これらはなかなか共有できないのですが、それもあり、これがまた後からわかる。そして何よりティーンエージャーの純粋な心の動きに心を洗われる思いです。

もし見る機会があるならば、おすすめです。

2015年11月2日月曜日

タイ・プレミアリーグ観戦

10月31日土曜日、チュラロンコン大学のJuta先生のご好意で、タイ・プレミアリーグを観戦しました。それも現在リーグ2位のムアントン・ユナイテッドとバンコクの地元チーム、アーミー・ユナイテッドの人気カードです。

タイ・プレミアリーグでは、かなりの日本人選手が活躍しているようです。実は、私のゼミだった学生も、タイ・プレミアリーグでプレイするかもしれないという話をしていたのを覚えています。プロとしてサッカーを続ける道がいろいろと増えたなぁという気がします。自分の人生は自分のものなので、やりがいのある仕事としてプレイできるなら素晴らしいことだと思います。



私がこの日に応援した、アーミー・ユナイテッドにも日本人の平野甲斐選手がおりました。セレッソ大阪からレンタル移籍をしているようですが、なかなか活躍しているようでした。連れて行って下さったJuta先生(私の隣の黄緑のポロシャツ。タイ・プレミアリーグではなかなかの顔のようです)のご好意で、ロッカールームにも行き、平野選手にも挨拶してきました。

試合は、2-1でホームのアーミー・ユナイテッドが勝利しました。自分が応援しているチームが勝つのは、いつも良いものです。決定力にかけるところがありますが、これは日本のリーグも似たところです。全体的には、Jリーグよりもレベルは低いと思いますが、決して非常に低いわけでもなく、なかなか楽しめる試合でした。


タイ・プレミアリーグの結果URL:
http://www.goal.com/jp/tables/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0/519

2015年10月30日金曜日

チュラロンコン大学訪問

早稲田大学の、スーパーグローバル大学プロジェクトの関連で、タイのチュラロンコン大学を訪問しています。チュラロンコン大学は、タイの初めての大学で、国立大学です。したがって、タイにおける東大のような存在だと思います。ロケーションが大変良く、バンコクのまさに商業のどまんなか、SIAMという地区にあります。周りは、SIAM Paragon, SIAM Center, MBKなどたくさんの商業施設が有り、まさに都会のどまんなかに広大なキャンパスが有るという感じです。話を聞くと、キャンパスの一部は商業施設に貸し出しており、これによって大学の収入の一部を得ているようです。

私は、スポーツ科学部を訪問し、今回は英語で睡眠の講義を行いました。また、今後の早稲田大学との交流についても話し合いを行いました。今回の訪問でタイについて、いろいろ知識を深めたので紹介したいと思います。

チュラロンコン大学での講義の後の記念撮影
1.タイはずっと独立を保ってきた国では有りますが、第二次大戦の末期では、日本軍の駐留が有り、更に、選択肢なく枢軸国側について一時期戦ったということがあったようです。私が、タイはずっと独立を守ってきているということを、チュラロンコン大学の先生と話していると、彼は、そういうことになってはいるが、少なくとも一時期は日本の支配下にあったと言っていました。確かにそういうことが有り、枢軸国側で戦ったことについては、戦後の裁判では敗戦国の中には入らなかったということです。

2.タイの大学には制服が有り、少なくとも学部生は殆どの大学で制服を着用することが義務付けられているようです。そのうち、なくなるかということを話したところ、多分そうなるだろうと言うことでした。ただ、その話の中で、制服については、男子が女子の制服を着ることは認めることになったと話していました。急にそういう話が出てきたので、ちょっと戸惑ったのですが、タイは、セクシュアル・マイノリティに対しての寛容度は非常に高いように思いました。

3.大学における宗教儀式(仏教)にも出席しましたが、仏教が生活の中に深く浸透しています。どのような人にあっても、手を前で合わせてお辞儀をしてくれます。更に、日経の記事でタイの仏教について読んだところ、現在でも若い世代が短期間出家して仏教について学ぶ習慣があると書いてありました。実際に、チュラロンコン大学の先生に聞いてみると、自分もやったと話してくれました。そのように、短期間出家することが、家族にとっても誇りであるようです。僧侶を敬う気持ちが非常に強いことにも感銘を受けました。

4.バンコクは大都会では有りますが、やはり人々の生活は日本よりもゆったりとしているように思いました。私が今回コンタクトしているチュラロンコン大学の先生も、早稲田大学を訪れてカンファレンスに参加した際も、聴衆の殆どが最後まで残っているのには感銘をうけたと言っていました。またいろいろな新聞記事等からの知識を得ているようですが、サラリーマンが夜遅くまで仕事をし、その後飲んで家に帰って、ネクタイしたまま寝込んで朝を迎えるという話を何処かで読んだといって、笑っていました。何か自分も、ゆったりした生活を忘れていたような気持ちになりました。

また、訪れたい国の一つです。

2015年10月26日月曜日

NIMH所長Googleに転職 (Forbes記事、Psychiatric Times記事)

Psychiatric Timesの記事を読んでいたところ、グーグルの生命科学部門がTom Inselを雇ったということが、米国の経済誌Forbesの記事として紹介されていました。(Google Life Sciences Hires The Government's Top Brain Scientistグーグルの生命科学部門が米国のトップ脳科学者を雇用)。Tom Inselは、NIMH(米国精神保健研究所)の所長だった人で、DSM-5に対しては批判的な意見を持っていた人です。



私が何より驚いたのは、Googleがライフ・サイエンスの部門を持っているということです。正確には今年立ち上がったグループ会社Alphabetですが、すでにライフ・サイエンス部門においても幾つかの成果を上げているようです。

Forbesに引用されていたのは(多分、最初の大きな成果なのだと思いますが)、コンタクトレンズに血糖値を経時的にモニターするデバイスを組み込んで、血糖のモニターを容易にする装置を開発したというものです。これは、まだ実用化段階ではないようですが、臨床治験にまもなく入るようです。このような臨床治験などについては、大手製薬メーカーであるAbbvie社などとも資金協力するようなことが書いてありました。Abbvie社は、精神科医をしているとルボックス(Fulvoxamine)という抗うつ薬くらいでしか関連がないのですが、抗TNF-α薬「ヒュミラ」などが主力である、大きな製薬メーカーです。

さて、Tom Inselは、自身のブログでこの「転職」について述べているようで、Forbesにも引用されていました。彼は、コンタクトレンズで血糖値測定をするような斬新なアイディアが、精神神経疾患においても実現できると良いと考えているようです。

Forbesの記事では、彼は、共通した脳内の病態があるにも関わらず、表現形としての精神症状がことなることがあり、現在のDSMなどの診断基準では、それにもかかわらず表現形で精神疾患をカテゴライズしようとするために、異なった病態のものが一つの診断名の中に入ってしまうと考えている。Inselはむしろ、表現形(症状)にかかわらず、病態によって疾患を分類し、それぞれに適した治療を行う方向を考えていると紹介されています。実際に、NIMHにおいても彼はDSM-5とは異なったRDC(Research Diagnostic Criteria 研究用診断基準)を作ろうと試みていたのはこういった考えからだと思います。

このような、医療における斬新な試みが新しい物を生む可能性は、アメリカにおいてもかなり大変な要素もあるようで、Forbesにも医療への異種業の参入は、規則によってがんじがらめになった世界ではなかなか困難があると書かれていました。しかし、Googleのような新しい発想をもった会社が、更に新しい発想をもった先端臨床脳科学者を雇用し、そして何らかのブレークスルーを作っていけると胸がすく思いがあります。

我が国においても、規制緩和により、十分に科学的な根拠に基づいた新しい治療や、新しい工夫のある治療が供給されるようになると、臨床業務もやりがいのあるものになってくるのではないかと思いました。





2015年10月22日木曜日

文献:うつ病治療におけるオメガ3系脂肪酸のエビデンス(西、松岡 臨床精神薬理 2012)

以前にも、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果についてこのブログに書いたことがあります。最近、表題の論文を読む機会があり、これについて紹介したいと思います、

この総説論文によって、自分自身が新しく得た知識としては、DHA, EPAというオメガ3系脂肪酸のうつ病に対する効果としては、女性に効果があり、男性では効果が見られないという性差があるということです。しかし、報告によっては男性で効果があるというものも有り、まだ今後のさらなる知見が必要とされる段階であるようです。

また、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果についての、ランダム化比較試験(RCT)の論文を集めて、総合的に統計処理をするメタアナリシスの最近の論文では、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果については、有効であると結論づけています。この中では、DHAよりもEPAがより抗うつ効果として有効であることも示されています。(EPAが60%以上含まれているサプリメントを使用した場合有効。)

さて、それではこのようなオメガ3系脂肪酸がどのような機序で、抗うつ効果を発揮しているのかについて疑問が湧くわけですが、これについては、まだあまりはっきりとはわかっていないようです。仮説として有力なものは示されているので、列挙すると…。

1.抗炎症作用
2.神経新生の活性化など神経細胞への影響
3.セロトニン代謝への影響
4.CRFの調整 (CRF=corticotropin-releasing factor)の調整
5.Protein Kinase Cの阻害
6.HRV(心拍変動)の調整
7.シナプス形成の亢進
8.脳血流量の改善

等が挙げられています。

まだ、メカニズムもわかっておらず、エビデンスとしてもまだ不安定な要素のあるものでは有りますが、やはり食事というのは精神衛生に対して影響を与える者の一つであることは間違いないと思います。今後も、研究の動向に注目していきたいトピックの一つだと思っています。

2015年10月19日月曜日

ドパミンが睡眠覚醒に果たす役割 (ショウジョウバエの研究)=>ADHD症状も関連して

臨床をしていると、製薬会社の方がいろいろと情報を持ってきてくれます。そういう情報の中には、薬を売るための情報も多く有るわけですけれども、中には興味深い基礎的な研究の論文を持ってきてくれることも有ります。今回、ショウジョウバエを用いた睡眠の基礎研究についての論文がてにはいりました。これは、名古屋市立大学の粂先生と上野先生というかたの研究ですが、粂先生は何かの会で、隣の席になり名刺交換をしたことがあるように思います。もう一人の上野先生は、東京都医学総合研究所の所属ですが、この研究所が私が以前所属していた研究所の改組後の名前なので、親しみが持てます。
ショウジョウバエ

この研究は、ショウジョウバエを対象としてますが、ショウジョウバエは、遺伝子構造がよく解析されているということから遺伝研究には大変良く用いられる生物です。

さて、この研究ではショウジョウバエのドパミン系がより活発に動く個体を遺伝子操作によってつくり、その個体が、正常型(野生型というのが普通です)と比較して、どのような特徴を持っているのかを比較しています。遺伝子操作によって、ドパミントランスポーターの変異型を作っていますが、これによってドパミンが再取込されにくくなり、より強く働くようになると考えられます。

この中で、興味が持たれるのはドパミンの活動性の上がっている、ドパミントランスポーターノックアウト型では、

1.活動性の上昇
2.睡眠の不安定さ

が認められたということです。

これらの症状は見方を変えればADHDの症状とも考えられます。しかし、ADHDでは、むしろドパミン系の機能低下があるというのが一般の考え方で、実際に治療的に用いられるメチルフェニデートやアトモキセチンは、ドパミン系の働きを上昇させます。

こう考えると、ADHDの病態生理は、ショウジョウバエのこの実験に比して更に複雑なものであるという気がします。これは、人の脳の働きの複雑さを表しているものであるかもしれませんし、またドパミン系のだけでなく、他の神経伝達物質や、他のネットワークが関わっている可能性を示唆するものかもしれません。また、ADHDの病態が一つだけでないことを示唆している可能性もあります。

この論文は、睡眠覚醒のコントロールという意味で興味深いと思ったのと同時に、臨床においては必ずしもそのまま基礎研究の結果が反映できない側面もあると強く感じさせるものでした。

2015年10月15日木曜日

ラグビワールドカップ 2015 その2

今回のワールドカップラグビーは、歴史的な日本の3勝で、日本の試合は終わりました。準決勝に進めなかったのは非常に残念ですが、エディー・ジョーンズ監督のもと、Brave Blossomsは本当によく頑張ったと思います。(英語の新聞を読むと、日本のチームはBrave Blossomsと呼ばれているようです。)

さて、結果的に勝点が及ばずに3位だったのは致し方無いと思うのですが、スコットランド戦が中3日であったのには、やや不平等さを感じていました。しかし、他のチームもそのような条件なのかなと思っていたのですが、日経にそこらへんの説明がありました。

統括団体のワールドラグビーは、貴族社会のようなティアという階級制を敷いていて、日本はスコットランドよりも階級が低いようです。そのために、不利な条件で試合をするような形になっているということでした。徐々にこの制度は平等な形に変えられていくようですが、まだそのような規則は残っているようです。

これは、まさにラグビーが英国植民地のスポーツだということを示しているようにも思います。

国内の、大学ラグビー以外はこれまであまり見てきませんでしたが、大学ラグビーはさほどこのような植民地的な考えは無いと思います。しかし、国際試合を見てみると、日本チームにも外国人がたくさん入っています。これは、植民地ではその地に長く住んでいた人はチームに参加し良いというルールを作らないと、現地人のチームしかできないことになり、それでは植民地間の試合ができないということになってしまうという事の名残だということです。

図に示したのは、コモンウェルスゲームズという、もと英国連邦の間で行っているオリンピックのような世界大会に参加している地域の図です。これは、日本は関係ないのであまり知られていませんが、以前インドに行った時に親しい友人なら、来年はデリーでコモンウェルスゲームズが開かれるので、今、空港や地下鉄の整備が進んでいるという説明を受けて、随分大きな大会だということがわかりました。コモンウェルスゲームズには、7人制ラグビーも含まれています。

このように、ラグビーのことが話題になるのも、このBrave Blossomsの活躍の賜物です。是非、日本のラグビーのちからが伸びて、植民地のスポーツからこの伝統を引き継ぎながらも世界のスポーツにラグビーがなっていくことを期待しています。

2015年10月11日日曜日

TV出演 報道ライブ21 INsideOUT 10月12日午後9時

明日10月12日午後9時に、報道ライブ21INsideOUTに出演して、露木さんとお話します。

内容は、運動と脳の健康についてです。

私自身は、うつ病の運動療法についての可能性を主にお話したいと思っていますが、番組としては認知症の治療予防について興味が有るようです。この治験は、まだ限定的なものですが、これについても触れたいと思っています。

更には、運動のし過ぎによる脳へのダメージとしてオーバートレーニング症候群についても言及されるかもしれません

ぜひご覧ください。

2015年10月8日木曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (5) 真性ナルコレプシーとのCo-morbidity 

以前にも同様の題名でエントリーをしましたが、その後もEDS(Excessive Daytime Sleepiness=
日中の過度の眠気)という主訴で来院される方の中に、ADHDの診断基準に当てはまる方が多く居ます。その中には、このブログを読んで見える方も居ます。勿論、日中の過度の眠気を主訴として来院される方の中には、ADHDの診断が可能な方もいればそうでない方も居ます。診断的には、いわゆる睡眠不足症候群や、睡眠時無呼吸症候群、ムズムズ脚症候群、ナルコレプシーなどの存在をきちんと確認しなくてはいけません。

この、睡眠とADHDの関係については、文献的な考察も行い、先日はヤンセンファーマ株式会社の講演会でもお話する機会を得ました。

さて、こういった患者さんの中には真性のナルコレプシー、つまり、日中の過度の眠気、睡眠発作、短時間睡眠ですっきりする、カタプレキシー(情動脱力発作=驚いたり、おかしいなど強い情動で力が抜ける)、入眠時幻覚、睡眠麻痺などの症状が揃っているナルコレプシーの方がいるということも少なからず経験しています。また、このような点については、論文も出されています。

例えばこちら。
http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=30124

しかし、この点については、まだ十分に自分自身も整理できていませんし、また文献的にもクリアにこの関係について説明するものはありません。今後、更に経験を重ねて、治療経過を見ながら、この関係については考えていきたいと思っていますが、現状の考えをまとめると以下のとおりです。

ナルコレプシーの病態は、オレキシン細胞の脱落ということが言われています。オレキシンの役割は何かというと、これは脳幹部(脳が脊髄に繋がるあたり)の、覚醒に関わる神経細胞に対してその活動を維持させるような働きをもっていることが知られています。ナルコレプシーの患者さんは、おきていることができないわけではありませんが、維持が難しく睡眠発作が出現してしまいます。

このような、脳幹部の覚醒に関わる神経核には、ノルアドレナリンやドパミンを産生する核も含まれます。これは、以前にも書いたようにADHDの病態に関わる神経伝達物質です。したがって、考えられる病態は、オレキシンが欠落していると、これらの細胞に対する持続的な活動の維持のための刺激がなくなり、ノルアドレナリンやドパミンの神経細胞の機能低下が起こり、その結果としてADHD様の症状が出現する可能性があるということです。

ADHD様の症状と書きましたが、そうすると、これはADHDではないということにもなりますが、もしこういった考え方が正しならば、ADHDではないが、ADHDに似ているということになります。しかしながら、ADHDそのものの原因も、均一な疾患であるのかどうかもよくわかっていない現在では、これは、ADHDとは別のものだとも言いがたいようにも思います。

ADHDの診断は、血液検査や脳波検査、MRI検査などによってなされるものではなく、病歴や現在の症状などによって、一定の診断基準を満たした場合になされます。このような中で、睡眠障害は除外診断には入っていませんので、ADHDの基準を満たせば診断は可能です。

私は、Co-mobidity(共存症=2つ以上の疾患が共存している)という捉え方を先ずはして、先にADHDの治療を行い、これによってナルコレプシーの症状がどこまで改善されるかという経過を診るようにしています。勿論、カタプレキシーなどの症状がひどければ、これを改善する薬物を先に投与することも有ります。

睡眠と発達障害の関連は、今後も更に研究の発展が見られる分野であると確信しています。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

2015年10月5日月曜日

ラグビワールドカップ 2015

ラグビーの日本代表の活躍に、感動を禁じ得ない。

南アフリカとの試合も、素晴らしいものでしたが、サモアとの試合は本当に日本のスタイルが発揮できた試合だったのだろうと思う。

私は、ラグビーは早稲田大学のラグビー部との関わり以外ではよく知らない。早稲田大学に着任した2003年ころに、ラグビー部OBの宝田教授と一緒に研究をすることが多くあった。彼には、そのころいろいろとラグビーの活動についれ行ってもらった。そのころ監督であった、清宮克幸さんと一緒に食事をしたり、菅平に行って、関東学院大学との試合を見たりした。ゼミにも、後に優勝チームのキャプテンになる、権丈太郎(現在NECグリーンロケッツ)がやってきたりもした。

その頃のチームのメンバーが、五郎丸、畠山だ。彼らが、日本のトップ選手となり、本当に仲間と寝食を共にして作り上げたチームが活躍しているその姿には、本当に感動を禁じ得ない。

このワールドカップでの戦いぶりを前にして、ラグビー部との関わりで学んだ言葉には、重みがある。

One for all, all for one.

2015年10月2日金曜日

ランニングが命を救った(うつ病の運動療法) The Guardianの記事

イギリスの大手新聞「ガーディアン」に、運動療法によって命が救われたという患者さんの記事が出ていました。これについて紹介したいと思います。Runnning Saved My Life (ランニングが私の命を救ってくれた)というこの記事は、運動によってうつ状態が改善したことを綴っています。どん底にあった自分の状態から、ウォーキングを始め、次第にランニングをするようになり、生活に光が差してきた様子が、自分の体験からありありと書かれています。

MyFitnessPalとRunKeeperという2つのアプリを使っているという話も書かれていますが、このうちRunKeeperは私も使っています。なかなかよいアプリです。

この文章の最後には、何と村上春樹が引用されていて、ほとんどのランナーは長生きするために走っているのではない、ただ単に充実した人生を送りたいからだ(Back Translation)と書かれています。

最近は、生活習慣からうつをなおすという話を時々講演でしていますが、これは本当のことだと思っています。生活の三要素、運動、睡眠、食事の中で、運動は睡眠を改善し、食欲を増すという意味でもっとも重要なものではないでしょうか。

こういった、うつ病に関わる運動療法は徐々に普及してきています。現在、私もうつ病、双極性障害に関する市民フォーラムで話をする予定が有り、その準備を進めていますが、これについてもまたご紹介したいと思っています。

2015年9月28日月曜日

中国訪問 2015 (2) 吉林省長春 満州国新京

吉林省の長春は、日本の満州時代の首都である新京であった街です。実は私の87歳の母親は、新京で女学校時代を過ごしました。父親が満州鉄道で働いていたからです。私は、この長春を訪れすのは今回が3回めですが、1回目に訪れた時に母の住んでいた家のあった場所に行ってみました。場所がわかったのは、私が最初に訪れるより前に、父と母が長春を訪れて、地図に印をつけていたからです。両親がその場所には行っていないようですが、その地図をもとに吉林大学の劉忠民教授が来るまで連れて行ってくれました。

吉林大学訪問時の記念写真
一番左の赤シャツが劉教授、私は右から3人目
満州時代のその家はなく、新しい家が立っていてロシア料理の店になっていました。母が通っていた、新京錦ヶ丘高等女学校は、富錦小学校という学校になっていました。満州国の時代の写真を見ると、今の様子とは随分違って、広々した感じがします。今は、発展して、長春の街には高層ビルが立ち並んでいます。

日本軍は、植民地として傀儡政権を立ち上げた満州国は、第2次世界大戦後には本来の中国の当地に帰るわけです。しかし、満州時代に満州政府の建物として使われていた国務院などは、今も吉林大学の医学部が使っているなど、健在です。

植民地支配のために、長春の人たち、特に高齢の人たちの日本に対する感情は必ずしも良くないのかもしれないのですが、吉林大学の先生方との交流からはそれは感じられません。早稲田大学スポーツ科学学術院にも、留学生が訪れるようになってきました。

今回の訪問は、吉林大学のホームページにも紹介されています。

2015年9月25日金曜日

中国訪問 2015 (1) 情報統制

9月20日から24日の5日間、中国を訪問しました。今回の訪問は、大学の仕事ですが、中国訪問は多分3-4年ぶりです。まずは、私が以前にも訪問した吉林省の長春を訪問し、その後北京を訪問しました。

ブログの更新が遅れたのは、中国のインターネット事情からです。中国は、以前訪問した時よりもインターネット規制が強くなりました。Google, Facebook, Twitter, LINEにはアクセスできません。話を聞くと、「時々できることもある」そうです。Googleが使えないので、Yahoo!を主に使いましたが、検索が普段通りの方法で出来無いというのは不便です。Googleが中国から撤退した当時のいきさつを読むと、Googleの潔さが現れているように思います。

このような一つの状況を見ても、中国での情報統制が相当強いものだということがわかります。中国に済む日本人や若い中国人と話しをしていても、例えばインターネット警察が問題のある文字列を検索し、内容が問題があれば削除するなど、強い言論統制がなされていることが分かります。

更に、テレビをみると抗日ドラマが毎日のように放映されています。

このような国では、特に人文科学の分野では、政府が好ましいと思うような研究しかできないという問題点があるように思いますが、しかし、一方で大学人はこれに対しては、思想の自由、言論の自由を確保できるような考え方を強く持っているということも感じます。

しかし、大学にしても中国では、大学の学部など各組織には、中国共産党に所属する教員が必ず居て、学問の府の自由をある程度許容するものの、中国共産党の方針に反する運営を行わないようにするという仕組みは作っているようです。

Sensational Triumphという
日本のラグビーチームを称える中国日報の記事
日本に留学している中国の学生たちと話しをすると、日本という環境の中では比較的自由に考えを話し、学問の自由が保証されることが重要だという考えを持っていることは、安心する材料です。中国は、国が発展するプロセスにあり、まだこれからいろいろな変化が起きてくるという好意的な捉え方もできるとは思いますが、しかし国自体は既に強力な軍事力を持っており、近隣諸国だけでなく世界中への影響をすでに持っているので、やはり注意深く観察を続けていく必要のある国だと思いました。

この中で、ほっとする良いニュースは、飛行機でもらった中国日報英語版に、日本のラグビーチームが南アフリカを負かすというアジアチームとして初めての快挙を成し遂げた、という記事が出ていたことです。スポーツのもつ、平和な良い力を感じさせる記事でした。

2015年9月17日木曜日

Google Play Musicに入ってみました

3500万曲聴き放題の定額制音楽配信サービスのGoogle Play Musicに入ってみました。この手のサービスはいろいろ有りますが、私自身はほぼJazzしか聴かないので、国内のサービスよりは、アメリカに拠点をもったサービスのほうが自分の聴きたい音楽を聴くには良いと思います。また、10月18日までに入会すれば、月々780円というのも相当魅力です。

このサービスは、聴き放題ですがファイルを手元に置くことはできないので、インターネットに繋がっていなければ使えません。しかし、殆どの場合、自分はインターネットに繋がっているので、これを払い続ければ、もうCDを買う必要はないかなと思ったりもします。

CDを良いオーディオシステムで聴くことは、確かに音質の良い音楽を楽しむ上では良いのですが、そんな暇は殆ど無いというのが実際のところです。殆どの場合は、カーステレオか、移動中に電車の中で音楽を聞くくらいです。

カーステレオの場合は、Bluetooth接続をしているので、スマートフォンでGoogle Play Musicを再生すれば、まさに3500万曲を選び放題で聴けるというわけです。

もう一つ面白いサービスは、あるミュージシャンの音楽に似た音楽をシリーズで流してくれるラジオ機能です。私の好きなMichael Breckerのラジを試したところ、まさに私の好みの音楽がつづき、時に聴いたことの無いアルバムなども流れて、新しい情報を得ることもできました。

私はジャズが好きで、若い頃はLP盤のレコードを買いました。そのレコードも、学生時代はやはり高価なものなので、一枚を何度も聴くということをしたわけです。そういう意味では、その頃のアルバムを聞くと、ミュージシャンのソロがどう展開していくのかを今でも分かります。

一方、このような配信サービスの形になると、一枚を聴きこむということが少なくなってしまったような気がします。いつでも聴けるため、ついいろいろな音楽を聴くというふうになってしまいます。このような傾向は、良いのか悪いのかわかりませんが、変わってしまったということはあります。

ただ、楽器の練習ということになれば、気に入った一曲のソロをトランスクライブ(譜面に書き留めること)するなどという作業も楽しくしますので、そういう場合には一曲を相当聴きこむということもやはりありますね。

概して考えれば、どこに居ても、昔の好きな音楽も、最新の新譜ジャズも、その時の気分で聴けるこのサービスはありがたいものだと思います。

2015年9月10日木曜日

マリファナの医学的使用 (その後のTwitterでの反応)

先日、マリファナの医学的使用についてのブログを書き、これについてもTweetしたところ、いくつかの反応がありました。「日本でのマリファナ使用の状況が分かっていないね」というもの、また「解禁されるとね、事件事故が減る」という反応も同じTweetでありました。この他には、積極的に医学利用することについての臨床研究ができない状況があるということを教えていただいた、Tweetもありました。(下記画像)

Twitterでの反応


Twitterは、短い文章で書くので、気を使うのですが、いろいろな人達の意見が見えるので、自分の気づいていないことに気づける面があり、有効ですね。このTweetで紹介してもらった、日本臨床カンナビノイド学会の情報を下記に転送します。

実際、2003年のLancetの論文をみると、Cannabis(大麻成分)は、アルコールや多く用いられるベンゾジアゼピン睡眠薬・安定剤よりも有害性が低いとされています。この論文は、私は睡眠薬使用上の注意について話をするときに使いますが、今回改めて別の角度から認識しました。必要なときに、医療使用を行うことについては、今後日本でもデータを集める活動が出来る仕組みはあったほうが良いように思いました。

臨床で使われる薬物にしても、このような大麻の医学利用にしても、議論の途上には様々なバイアスのかかったデータが示されて、結局のところ、一応客観的なエビデンスをベースにした判断は難しいのだと思います。さらに言えば、最終的なところは、一応客観的と思われるデータをもとに、その時に、その地域に居合わせた人たちが、「価値判断」をして決めることなのだとも思います。現状の日本では、まだまだ現状の客観的と思われる知識が普及していないことなどもあって、使用禁の意見を持っている人が多くいるのではないかと思います。下記のような学会や、様々な場で、今後も議論が進むべきテーマなのだと分かりました。

いろいろと、勉強になりました。


http://cannabis.umin.jp/index.html
9月27日(日)9:30(受付開始) 10:00 ~17:00  懇談会17:30~19:00
第1回 日本臨床カンナビノイド学会 設立記念講演会
場所:昭和大学旗の台キャンパス 上條講堂(懇親会は入院棟 17 階 タワーレストラン昭和)
<見所>
カンナビノイドの医療利用研究の世界的権威 メラメード博士が来日
スタンフォード大学フーバー研究所教授 西 鋭夫博士が来日
日本臨床カンナビノイド学会編「カンナビノイドの科学」が刊行 学会当日に購入可

2015年9月7日月曜日

第13回 日本スポーツ精神医学会

9月4日から6日、札幌市において第13回日本スポーツ精神医学会が開催されました。会長の井上誠士郎先生始め、石金病院のスタッフの方々、大変ご苦労様でした。今回は、北海道らしくウィンタースポーツのモーグル競技から、伊藤さつきさんの、怪我を乗り越えての講演がありました。また、フットボーラーの井上先生らしく、障害者フットボールについてのシンポジウムが開催されました。

壇上で開会の挨拶をする井上会長
(フットボーラー精神科医)
日本スポーツ精神医学会は、様々な形で発展しています。その幾つかをご紹介したいと思います。

1.会員数の増加
未だに、小さい学会ではありますが、現在は会員数が300名を超えました。

2.メンタルヘルス運動指導士制度
学会では、精神医学の知識を持ちながら、精神科の患者さんに運動指導をするメンタルヘルス運動指導士制度を制定しています。今年度からは、これに加えて更に資格を取りやすい、メンタルヘルス運動指導員の制度を制定しました。指導士は、基本的には医療資格をもって、より臨床に近い場で行う制度ですが、指導員は、スポーツジムなどやヨガ教室で、指導をおこなう人たちが、精神医学の知識ももちながら、また、学会で他の学会員と交流しながら活動することを目的とした制度です。

4.精神障害者スポーツへのサポート
障害者スポーツ大会や、精神障がい者ソーシャルフットボール大会などの活動にたいして、サポートをしています。また、理事がこれらの活動に携わっています。

5.スポーツ心理学との連携
アスリートのメンタルヘルスの問題に対して、日本スポーツ心理学会と連携してサポート体制を構築しようとしています。


このような、活動に興味のある方はぜひ入会をおねがいいたします。
入会は、日本スポーツ精神医学会のホームページより、入会申込書をダウンロードしてお送りください。http://sportspsychiatry.jp/

ぜひよろしくお願いいたします!

2015年9月3日木曜日

東京五輪エンブレム使用中止 組織委方針 佐野氏が制作 (朝日新聞記事)

国立競技場の設計変更に続いて、一度は大々的に公開された東京五輪の正式エンブレムが使用中止になりました(朝日新聞記事)。ほんとうに残念であるとともに、このような選定に関わった組織に猛省を促したいと思います。このような、ことが続いた背景にはなにか共通の要素があるように思います。国立競技場にしても、エンブレムにしても何か、華やかな権威に頼って選ばれたような印象を受けます。そして、一度決めてしまったことについて、真摯にその問題に取り組まず、防衛的に対応する結果になっているように思います。


没になった2つのデザイン
また、審査委員会についても、国立競技場もエンブレムも審査委員が会見をするという事態にもなりましたが、これも少なくともある時期は、責任逃れ的な発言が目立ったようにも思います。

一部のネット情報を鵜呑みにするのは良くないかもしれませんが、審査委員も相互に知り合いが多いという情報なども目にすると、中立性が十分に保たれていたのかについて疑いたくなります。

一つ、思うのは、こういう時にこれみよがしに個人攻撃が行われることです。これは、慎まなければならないと思います。このような自体は、問題点を明らかにし、改善の方向をきちんと見出すことが最も重要な事で、個人バッシングのためのバッシングがあってはなりません。

今、国民の総意をきちんと反映した、また多くの人達がこれは良い、我々の代表がしっかりと考えてつくってくれた、そう思えるものを国民が願っていることは間違いありません。是非、そういうものを作り上げる真摯な取り組みをお願いしたいとおもいます。そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、是非とも良いものにして、多くの外国からのお客様に満足して帰ってもらいたいものだと思います。

2015年8月31日月曜日

学校死ぬほどつらい子は図書館へ (話題のツイート)

Twitterに、表題のようなTweetが話題になっています。

<引用ここから>

もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。

<ここまで>

この記事を最初に見た時は、鎌倉図書館の公式Tweetとも思いませんでしたし、むしろやや過激なTweetが問題になっているのかと思いましたが、むしろこのTweetは好意的に受け止められているようです。Huffinton Postには、鎌倉図書館も削除せずにここまま残すことに決定したと、書かれています。

不投稿の中学生、高校生を診察することはしばしばあります。私は、児童精神科医ではありませんが、大学の教員もしているということで、大学生の問題は日常的に取り扱いますし、そういうことからか、高校生、中学生が訪れることもあります。また、睡眠障害専門外来には、朝起きられないという主訴で来られる患者さんのある割合は、いわゆる「不登校」の患者さんです。不登校の背景には、様々な理由がありますが、まずは本人の、もし本人があまり話しをしなければ家族の話に耳を傾けて、現在のことや本人の特徴だけではなく生育史全般について、また家族関係や学校の関係についても詳細に話を聞きます。これも、一度だけでなく診察のたびに、話題を広げるようにはしています。

しかし、それでも「学校が始まるのが死ぬほどつらい子」が、図書館に行くと良いというのは、あまり意識していませんでした。確かに、受験生だったか浪人の頃図書館に行くと、司法試験の受験生とか様々な人が朝から勉強していました。図書館は、おしゃべりは基本的に厳禁なので、人と交流するのは場所を移動しなければなりません。むしろ、人と交流しないで済んで一日過ごせるのは良いかもしれません。私も、そんなに頻繁に図書館に行きませんが、図書館によってはビデオ閲覧ができるところもあるので、昔、暇な日に図書館に行って音楽のライブビデオを一本みて、これは使えるなと思ったこともありました。

さて、こう考えるとこのような子どもたちの行く場所として図書館は、確かに治療的な意味があるようにも思います。ただ、図書館の司書の人たちが、皆このような役目を自分の仕事と思っているかどうかはわかりません。このTweetをした鎌倉図書館の司書の方は、児童・思春期の心理に理解のある方何だなあと思いますが、そうでない人もいる可能性もあります。基本的に、このような資質が司書に求められているわけではないので。しかし、考えてみると、あまりこのような役目を意識しないのがむしろ良いのかもしれません。

子供の指導とは無関係で、干渉されずに自分の好きな時間を過ごせる。そんな場所としての図書館の存在は、一つ頭においておいて良いこととして勉強になりました。


2015年8月27日木曜日

マリファナの医学的使用 (Psychiatric Times)

米国では、カンナビノイドという大麻に含まれる化学物質が、医学的使用として疼痛の緩和のために使われることが許可されています。米国全土で許可されているわけではなく、23州とワシントンDCにて許可されているということですが、この仕様の効用についてのPsychiatric Timesに記事が載っていました。

この記事は最近のメタアナリシスなどの総説論文を幾つか紹介したものですが、簡単に言えばまだ癌などによる疼痛緩和のためにカンナビノイドを用いることに対する、科学的評価はまだ確立はしていないということのようです。他のオピオイドなどと比較して優れているのかどうかについて、十分な調査報告は無いということでした。特に、副作用についても十分な調査が得られていない面があるということです。

日本では、カンナビノイドの医療目的の使用は禁じられていますが、国によって規制が異なっているのでこらの薬物の持ち込み持ち出しには非常に注意が必要です。カンナビノイドからは外れますが、最近トヨタの米国人重役が、疼痛緩和のためにアメリカからオキシコドンというオピオイド系の薬物を、かくして輸入したということで逮捕されましたが、米国では処方によって用いることができる薬剤で、このような感覚の違いがこのような事件となって表面化したとも言えるかと思います。(オキシコドンは、日本でも登録医が処方することはできます。)

このような規制の違いは、科学的根拠というよりは、それぞれの国の文化などによる考え方の違いというものが大きな要素になっているようにも思います。そもそも、マリファナ自体も合法化されている国も多くあります。図は、合法化されている国と非合法の国を示した世界地図にリンクしたものですが、青い部分が合法、赤が非合法、その他の色は中間です。

私自身は、医学的目的でカンナビノイドを用いることについては、自分の臨床の近くにそのニーズはあまりなく、むしろそこに依存が生まれることへの懸念のほうが強くあります。しかし、必要とする患者さんが居るのであれば、オキシコドンのように登録医師などが必要な人に用いることは良いのではないかとも思います。その場合は、更に十分な医学的根拠、既存の薬物と比べて優位な点があるということ、などの調査が十分に行われているべきだと思います。

一般のマリファナについては、日本の社会で積極的にこれを解禁することの利点は見つかりません。

2015年8月24日月曜日

双極性スペクトラム障害 (1)

先日、西埼玉心と体の研究会(明治製菓ファルマ提供)にて、双極性スペクトラム障害をテーマにした会合がありました。双極性スペクトラム障害は、双極性障害、つまり双つ(ふたう)の極(躁の極とうつの極)をもった精神的な障害=躁うつ病、をとらえる広い概念です。

図は、米国のクリーブランドクリニックのHPにリンクしたものですが、気分のレベルとして、真ん中の波が書いてある範囲は、概念的には「正常」な、気分の変動範囲です。Good timesつまり調子が良い時、Bad timesつまり調子の悪い時、は誰にもあることで、これは環境に左右されたり様々ですが、基本的には様々なストレス解消法などで生活をして行けます。

しかし、下の青と紫の部分はうつ状態、上のオレンジと赤の部分は躁状態を示しています。

いわゆる躁うつ病(双極性障害I型)というのは、紫とオレンジの間を波が行ったり来たりするという大きな揺れです。

しかし、その揺れの範囲は、病型(あるいは患者さん)によって様々で、紫の方にはしっかり行くけれども、上はオレンジ辺りまで、あるいはときに黄色くらいまでで振れる場合もあります。そのような場合には、うつ病ということになるのですが、しかし、少し元気になる時期がある場合には、双極性の要素をもった病態であると考えるわけです。

この図は、それぞれの気分の状態をはっきりと線で区切ってありますが、実際にはただ調子が良いだけなのか、すこし元気すぎるのかの境目は曖昧です。したがって、概念としてこのようなものがあっても、なかなか「正確に」診断するのは難しいケースが多くあります。

しかし、このような概念は、病態を理解する上では非常に助けになります。また、治療についても少しずつ研究は進んでおり、いわゆるうつ病相だけを呈するうつ病とは異なった薬物療法(気分安定剤や非定型抗精神病薬)をしていくのが良いとされています。

新しく発刊された、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、気分の変化を呈する躁うつ病とうつ病は、別のカテゴーリに分けられて、「双極性および関連障害群」と「抑うつ障害群」に分けられました。つまり、躁うつ病とうつ病は別の疾患であるということです。この概念は昔からのものですが、よりはっきりしたとも言えます。

これらの概念が明確で、治療アプローチが確立されていれば良いわけですが、しかしながら、現段階では、必ずしもそうではありません。それには、診断のための長い経験と、一方で科学的知見を得るための臨床研究が更に続けられなければなりません。

この、双極性スペクトラム障害の概念については、時々取り上げて論じてみたいと思っています。


2015年8月20日木曜日

早稲田大学 軽井沢セミナーハウス

早稲田大学には、幾つものセミナーハウスがあります。首都から離れて自然の中に建つセミナーハウスで、休みや学期中の土日に学生と教員が集い、集中して勉強をしたり、リクリエーションをしたりします。

私は、個人的に一番好きなのは、軽井沢セミナーハウスです。軽井沢セミナーハウスは、JR軽井沢駅から更にしなの鉄道で二駅行った信濃追分駅からほど近い場所にあります。北には、浅間山を抱く、本当に広大な敷地です。

軽井沢セミナーハウスの入り口から長く続く道。
その彼方には浅間山が見えます。
これまで、このセミナーハウスは夏のゼミ合宿で3回利用しました。セミナーハウスで、勉強会を行い、あとはスポーツです。テニスをしたり、バスケットボールをしたり、サッカーをしたりです。

記憶に残っているのは、GPSオリエンテーリングをした時のことです。GPSオリエンテーリングは当時の大学院生と一緒に我々が考案したオリエンテーリングの亜型です。これについては、そのうち細かいやり方を書いて紹介したいと思います。

今回は、実は家族と行きました。セミナーハウスは、教職員は家族も利用できるのですが、とても素晴らしい施設なので、ぜひ家族も連れて行きたいとかねがね思っていたのが、今回実行することが出来ました。一日目は雨でしたが、アウトレットや温泉で過ごしました。二日目は天候にも恵まれてとても良い家族旅行が出来ました。

軽井沢は東京からも近く、また利用したいと思っています。

2015年8月17日月曜日

横向き寝で、アルツハイマー病になりにくくなる?

Could sleeping on one's side reduce risk of Alzheimer's?
表題のような記事が、出ていました。この手の記事は、まだ十分な科学的根拠につながらないものが多いのですが、しかし、興味を引く面もあるので読んでみました。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/297807.php

論文は、Journal of Neuroscienceに出ているようです。この雑誌は、神経科学研究を発表する雑誌としてはレベルの高いものです。ここに、側臥位(横向きね)で寝ている場合は、仰臥位(仰向き寝)の場合よりも、より効率的に脳内の老廃物を除去できるという結果が発表されています。またこれを根拠に、神経変性疾患(アルツハイマー病が含まれる疾患群)の発症が減少する可能性がある、としています。

少し調べてみると、この記事は、もっと以前にロチェスター大学のMaiken Nedergaardという研究者のグループがScience誌に発表した、Glymphaticシステムという脳の中のリンパ系が、睡眠中により活発に動いて老廃物を除去するという論文があり、その続編であるようです。かれらは、マウスを対象として、睡眠中にはGlymphaticシステムがより活発化することを示しています。

今回の研究は、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のHelene D. Benvenisteというデンマークからの女性研究者が行った研究のようです。この論文にはNadergaard先生の名前も共著者として入っています。この研究では、先のGlymphaticシステムがラットがを横向きねにした時に最も効率的に働いていることを示しています。そして今後、ヒトでも確かめられると良いと結んでいます。

このような研究は、基礎研究としては非常に興味深いものですが、これをヒトで確かめる方法としては、何らかの非侵襲的な方法を用いて、ヒトでもこのGlymphaticシステムが横向き寝の睡眠中により効率的に動くことを示せばよいのだと思います。しかし、これはあくまで「代替エンドポイント」と呼ばれているものです。本当はその先にその結果としてアルツハイマーになりにくいかどうかを明らかにしなければアルツハイマーの予防になるかどうかは分かりません。しかし、そこまで調べるのは非常に時間もかかり難しいので、その前の段階で物質レベルの変化だけを調べるということになります。これは、よく行われる研究手法です。

このような方法だと、横向き寝がアルツハイマー病予防によいという「傍証」は得られるのですが、最終的な結論はわからないということになるわけです。

それでも、このようなニュースを聞くと、ヒトは横向き寝信奉者になるのだと思います。

2015年8月13日木曜日

精神神経医学雑誌Online書籍化される

日本精神神経学会は、我が国における最も大きな精神医学の学会です。私も若い頃から長く会員になっていました。私が若い頃は、反精神医学などの流れもあって、現在のような学会機能が十分に果たされていなかった時代もありました。しかし、現在ではやはり、我が国においては中心的に精神医学の情報が集まる場所です。

その学会誌が精神神経医学雑誌です。この雑誌が、PDF化されていることはしばらく前から知っていたのですが、更に電子書籍化されたことに気づきました。8月に入って私も講義がなくなり、比較的ゆっくりと仕事をする時間ができたために、余裕ができ、このような様々な発見があります。

さて、PDF化と電子書籍化の違いは、読みやすさです。PDFファイルは、その本の大きさにフォントの大きさが設定されているため、必ずしも読み易くありません。一方で、電子書籍はアプリによって、スマートフォンやタブレット、あるいはPCなど使っている端末に最適化されるため、非常に読みやすいです。スクリーンショットをとると、こんな感じです。

精神医学の知識は日々アップデートされています。それらの知識に遅れるということは、取りも直さず、患者さんに新しい情報を還元できずに居るということです。そういう意味で、自分のこれまでやってきた研究分野以外の分野においてもアップデートが常に必要です。

私は、よく Psychiatric Timesを読みます。しかし、日本語で国内外の様々な精神医学の動向を知るには、精神神経医学雑誌を読むのが良いと思います。

早速、Kalibというアプリをスマートフォンにインストールし、読んでみました。会員であれば、無料で全ての記事にアクセスできます。電車の中など、手軽に読めると思うととても楽しみです。

2015年8月10日月曜日

悪夢に対する治療 (2) AASMによる悪夢治療のBest Practice Guide

悪夢に対する治療について調べてみたところ、下記のような総説がありました。

Best Practice Guide for the Treatment of Nightmare Disorder in Adults
成人における悪夢に対する最良の治療法ガイド
Journal of Clinical Sleep Medicine, Vol. 6, No. 4, 389-
R. Nisha Aurora, M.D. et al.

Nighmare by Steven Stahlberg
著者のAuroraという人は、マウントサイナイ医科大学の医者のようです。私は、名前は知りませんでした。

さて、この総説を読むと、まず最初に悪夢に対する臨床研究は、そのほとんどがPTSD(外傷後ストレス障害)にともなう悪夢障害に対する治療です。したがって、この悪夢ガイドもPTSDにともなう悪夢に対する治療について述べられていました。

13ページに渡る解説ですが、内容的にはさほど込み入ったことは書かれていません。治療という観点から解説すると以下の様なものです。



・ 悪夢は、ノルアドレナリン系の過活動によるものであろうと考えられている。
・ 薬物療法としては、ミニプレス(Prazosin:αアドレナリン受容体アンタゴニスト)が、グレードAの治療評価を受けている。
・ その他の、エビデンスレベルの低い薬剤としては、Clonidine, Trazodone, Olanzapine, Risperidone, Aripiprazole, Topiramate, Fulvoxamine, Triazolam, Phenelzine, Gabapentin, Cyproheptadine, 三環系抗うつ薬, Nifazodoneなどが挙げられています。
・ 日本では発売されていませんが、Venlfafaxineは治療に推奨されないとされています。
・ 認知行動療法としては、イメージ・リハーサル療法(IRT: Image Reharsal Therapy)が推奨される。【これは、悪夢を思い出し、それを実際に記述し、そして、その悪夢のストーリーを自分でよりポジティブな方向に改編するという作業をするものです。これによって、悪夢による誤った、あるいは歪んだ認知を矯正する作用があるとされています。覚醒した後に、10-20分くらいの時間をかけて行うものです。

・ 特発性の悪夢に対しては、Progressive Deep Muscle Relaxation Training (漸進性筋弛緩法)がグレードBで推奨される。この方法については、こちらのリンクを参照。


PTSDの悪夢治療として、ミニプレスは使ったことが無かったので、適応のある患者さんには試してみても良いと思います。ただ、降圧剤なので血圧には気をつけなければいけません。また、漸進性筋弛緩法は、今後も多くの患者さんに試してみましょう。


この論文で、クロニジンの睡眠に対する効果について、私のグループで以前行った研究論文が引用されていたのは、ちょっと嬉しかったです。


推奨グレード (Wikipediaより引用)

推奨の強さの分類と表示 
グレードA強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる
グレードB行うよう勧められる
グレードC1行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない
グレードC2科学的根拠がないので、勧められない
グレードD無効性あるいは有害性の科学的根拠があり、行わないよう勧められる
「根拠の強さ」の分類と表示
グレードA言いきれる強い根拠がある
グレードB言いきれる根拠がある
グレードC言いきれる根拠がない
※グレーディングの根拠
グレードA少なくとも1つのレベル1(1a/1b)の研究がある
グレードB少なくとも1つのレベル2(2a/2b)の研究がある

2015年8月6日木曜日

広島 原爆の日 70周年

朝のニュースでは、本日が広島市にアメリカ軍によって原子爆弾が投下されてから70年が経ったと報道されていました。日本の8月上旬は、暑い夏で、そしていつも第二次世界大戦の敗戦を思い出す時期でもあります。

今年は、広島に原爆が投下されてから70年と、本当に長い月日が流れたと思います。以前、広島大学の堀教授が睡眠学会を開催された時に、懇親会の挨拶で、当時秋田大学の菱川教授が、原爆投下について触れていましたが、今日の朝刊で改めて原爆投下4日後の写真をみると、本当に焼け野原、死体の山ということが強く認識されます。

朝日新聞をみると、当時の写真からデジタル処理をした原爆投下4日目の8月10日に撮影された写真が掲載されていますが、一瞬にして街がなくなる核兵器の恐ろしさを思い知ることができます。現在の水爆は更に威力を増して圧倒的な破壊力を持っているのだと思います。

私は、昨年暮れから今年にかけて、トルコ国境のコバニの様子をフォローしていたのですが、ISとクルド人勢力との戦いによって、毎日毎日破壊と殺戮の日々が繰り返され、これが戦争なのだと強く認識しました。

現在、国会では安全保障関連法案の審議がなされていましたが、核兵器の輸送についてはこれを排除しないという回答が昨日ありました。原爆の日を前に、タイムリーな質問だったとも思いますが、戦争の悲惨さは被曝した国がしっかりと世界に発信していかなければならないことです。この点はやはり我々国民がしっかりと認識し、その視点に経ったリーダーを選んでいくことが大事だと思います。我々のリーダーは我々が選んだものです。経済も大切ですが、国際関係の中で正しいことを主張していくことも大事です。

日本の方向を決めていく責任は、国民我々に有ることは認識していくべきだと思います。

先の戦争で亡くなった、すべての方のご冥福をお祈りします。

2015年8月4日火曜日

第13回日本スポーツ医学会 in 札幌

第13回の日本スポーツ精神医学会が、9月4日(金)5日(土)6日(日)の日程で、札幌で開催されます。とても素敵なポスターが送られてきました。

私ももちろん参加致します。
ぜひ多くの方に参加していただきたいと思います。

ホームページ、Facebookのページも有ります。
http://www.ishikane-hospital.or.jp/13sport/
https://www.facebook.com/sportspsychiatry
http://sportspsychiatry.jp/
よろしくお願い致します。

2015年8月3日月曜日

菅平の野外活動実習 2015

早稲田大学では、一年生の夏に菅平で野外活動実習を行っています。学年全体が、交代で2泊3日の野外活動を含む実習を行うわけです。私もこれが始まった2004年度から一年を除いて毎年参加しています。(引率メンバーにならなかった年も、家族で菅平の根子岳には登りました。)
根子岳山頂にて!

学生たちは、大学に入学して大分慣れてきたところで、皆で二泊三日を共にする経験が得られて、とても楽しそうです。

到着した日にウォークラリー、セミナーハウス宿泊、翌日根子岳登山、その夜は飯盒炊爨、テント泊、翌日レクをして帰ります。

いよいよ本格的に大学生になった学生たち、4年生卒業までに皆、大きく成長します。

2015年7月30日木曜日

悪夢に対する治療 (1) ニューヨークマガジンとMITのビデオ

先日、クリニックにいらっしゃるMRの方々と話していて、悪夢に対する治療というのは、どのようにしているのかという質問を受けました。

確かに、悪夢を訴える患者さんは多く居ます。私は、そのたびに、経過を見たり、薬を変えてみたりしながら対処してきましたが、系統的なストラテジーで悪夢の治療をしてきていなかったなと、反省の材料を得ました。そこで、今回、悪夢についてどのような研究がなされているのか調べてみることにしました。

いくつかの回にわけて、少しずつ調べてみたいと思っています。

今回は、調べていく中でたまたま見つけた、New York Magazine(ニューヨークマガジン)による、悪夢にも良い面が有るという動画を紹介します。





このビデオが教えるところは、日中の経験の中から起こる不安や恐怖を、このような悪夢が「処理をする」ということです。実際の漠然とした不安や恐怖を、夢の中でそれにストーリーをつけ、記憶の倉庫に入れる。記憶は漠然とした不安よりも扱いやすいものであり、それ故漠然とした不安や恐怖に悩まされることから、悪夢によってより扱いやすい記憶に変化し、これはメンタルヘルスに良い影響を与えているという説明です。

夢と記憶の関係は、これまでにも多くの研究がなされていますが、このような仮説が本当に正しいかどうかはまだ良くわからないと思います。しかし、そういった視点で患者さんの悪夢の話を聞きながら経過をみていくことは、経験を共有していくプロセスの一つの視点として良い面もあるかと思いました。

このビデオの中では、こういう研究が有るというだけで具体的な出典は挙げていませんでした。そこで、もう少し調べた所下記の
MIT(マサチューセッツ工科大学)のHPをみつけました。

http://video.mit.edu/watch/the-good-side-of-nightmares-7805/

こちらは、映像はありません。音声だけですが、この中でMcNamaraという研究者の名前がでてきており、どうもこれらの情報源は、写真を掲げた本のようです。この本も購入してみようと思います。

悪夢の治療は、なかなか難しいですが、既にある程度の研究はなされているとも思われ、また特定の薬物で多いなどということがあれば、これは薬理学的に治療可能なものである可能性もあると思います。これらについて、暫くの間自分の課題として調べてみようと思います。

2015年7月27日月曜日

夏のゼミ合宿 2015

夏のゼミ合宿に行ってきました。今年は、久しぶりに九十九里のペンションに行きました。千葉県のこの付近は、私が若い頃に勤務していた浅井病院があり、よく知っている地域です。

記念撮影
宿泊した真亀という地域は、一番混んでいる砂浜からは少し離れていて、ビーチでいろいろなスポーツを楽しみやすいということも有ります。

やったスポーツは、ビーチバレー、ビーチフットサル、それからビーチ野球です。ビーチでやるスポーツは、下が砂浜ということがあって、非常に足腰のトレーニングになります…と言いますか、足腰がつかれます。私も参加しましたが、なかなか大変でした。

夜はバーベキューをしました。この辺りは、東京や埼玉の内陸部よりも涼しく、夜バーベキューをやるにはとても気持ちのよい気温です。

楽しい二日間でした。

2015年7月23日木曜日

立派な精神科医とは… 10 Hallmarks of a Great Psychiatrist (Psychiatric Times)

Psychiatric TimesにGreatな精神科医の条件は何かというようなコラムがありましたGreatといのは、なんと訳したら良いのでしょうか。立派なというも良いかどうかわかりませんが、書いている内容をみると、「ちゃんと患者さんを診察できる精神科医」というような意味で使っているようです。

大切なことなのですが、このスライドの絵をクリックすると、11の条件が書いてあります。これを訳して見ようかと思ったのですが、途中まで呼んでみてちょっと馬鹿らしくなりました。

最初の、『疾患をしり、その疾患をもった患者を知り、そしてそれらの間の相互作用を知っていること』というのは、なかなか含蓄のある言葉だと思いました。しかし、その後、11あるうちのいくつもを見ていると、まあ、そう言えることもあれば、そうでないこともあるなぁという感じで、こんな11の条件を意識するより、柔軟に患者さんの目から見える世界、感じている世界を知ろうとするということのほうが大切という気持ちになってきます。

例えば、Admits mistakes and tries to learn from them—practice makes progress. 『間違いを認め、そこから学ぶ。練習が進歩を生む。』というようなことは、正しいとは思いますが、どのような分野でも真摯に学ぼうとする者にとってはアタリマエのことであって、ちょっとくだらない内容に思えました。

Psychiatric Timesは、時々読んでいてそれなりにためになる記事が多いので、個々でも紹介していますが、これは私にとってはハズレでした。