2016年4月28日木曜日

ディケアのバスハイク

私が臨床をしているクリニックは、エレベーターを上がると、左側にディケア、右側に外来があります。私はディケアにはほとんど関わっていないのですが、先日エレベータをあがって、左側をみるとディケアの電気がついていません。あれ、今日はお休みなのかなと思って、診療をしていると、ディケアの患者さんが電子カルテにリストされていました。

順番が回ってきて、ディケアの患者さんを呼ぶと、「今日は、バスハイクで疲れました!」と、笑顔で入室されました。バスハイクというのは、バスで行く遠足のようなもので、ディケアで時々やっているようです。今回は、ディズニーランドに行ったということで、患者さんからおみやげをもらいました!(写真)  

このようなバスハイクは、様々なプログラムを用意しているとは言うもののどうしても、マンネリ化しがちなディケアのプログラムに非常によい新鮮な刺激をあたえます。患者さんたちは、普段と違う日常を味わうことができますし、確かに、スタッフも患者さんも疲れる面もあると思いますが、しかし、やる価値のあるものだと思いました。

おみやげを頂いた患者さんも、とても楽しかった!と感想を述べておられました。

いただいた、ミッキーマウスのコーヒーも美味しかったです!

2016年4月25日月曜日

【CD Review】 Sign o' the Times (1987) - Prince

Princeが亡くなったというニュースは、やはり衝撃的でした。私は、ミュージシャンが亡くなったという追悼ニュースはよく追っていて、特にジャズミュージシャンが亡くなったというニュースは、フォローしています。これまで、一番ショックを受けたのはMichael Breckerが亡くなった時でしたが、彼はなくなる数年前に、骨髄異形性症候群という白血病の全段階と診断され、その後白血病に発展して亡くなりました。無くなる前に録音した、Pilgrimageという自分自身への追悼アルバムとも言える遺作は、今でも私の愛聴盤です。Michael Breckerが亡くなったあとは、しばらく彼のアルバムを聴けなかったくらいでした。

今回のPrinceの死亡記事はやはり同じくらいショックでした。彼の、隙のない、しかし音的にはスカスカの音楽は私の若い時代の非常に気に入ったBlack Musicで、なかでも表題のSign O' the Timesは、何度も繰り返して聴いたアルバムです。

このアルバムは最初から最後まで、それぞれの曲想が、物語のようにつながり、一つの流れになっています。CD2枚組の長いアルバムではありますが、最初から最後まで聞き通して飽きることがありません。

この中で、特に私が好きな曲は、 The Ballad of Dorothy Parker というバラードです。この曲のYouTubeとサンプルMP3をリンクしておきます。

Rest in Peace, Prince.

https://youtu.be/ameEuXBoK1I?t=14m41s

14分44秒からThe Ballad of Dororhy Parkerです。


https://www.amazon.com/Ballad-Dorothy-Parker-Explicit/dp/B001M00DP4


2016年4月22日金曜日

長生きするためには「どこに住むか」が大切だった (Huffinton Post 記事)

裕福な地域に住む貧しい人が、長生きする理由について、そういった地域では健康的な生き方を促進するからではないか、と研究者たちは考えている。良い医療を受けられるかどうかより、喫煙しない、健康的な体重を維持する、運動するといった習慣が寿命に影響する可能性があるのだ。 引用:  ハッフィントンポストの記事 )

この記事は、JAMAの論文をもとに書かれているようです。

これは、当たり前といえば当たり前かもしれませんが、それだけ生活習慣というものが大切だということ。そして、良い生活習慣を維持するには、個人だけでなく社会の教育が必要だということを示しているようにも思います。

例えば、その地域の人が運動指向性があれば、ジムができる、ヘルシーフードのお店ができるなど街の雰囲気もそう変わっていくということなんだと思います。

その結果として、平均余命が伸びるということは非常に衝撃的でもあります。

以前、沖縄県は長寿県でしたが、現在はアメリカ軍の駐留、食事のアメリカ化、電車がないことから自家用車の普及で歩かなくなるなどの変化が起きて、一時期は30位くらいまで落ちてしまったこともあります。現在は、男性は25位、である一方、女性は現在1位を確保しています(厚生労働省統計)。

生活習慣の大切さを改めて認識する記事でした。

2016年4月17日日曜日

瞑想ヨガと睡眠 (我々の論文が出版されました)

インドのバンガロールにある、国立神経科学精神医学研究所との共同研究で、瞑想ヨガ行者の睡眠の特徴についての論文が出版されました。

私は、これは非常に重要な発見だと思っています。

Senior Vipassana Meditation practitioners exhibit distinct REM sleep organization from that of novice meditators and healthy controls


ヴィパッサナー瞑想とは、
自己観察によって
自分を変えていく一つの方法である
上記に、この論文へのリンクが有りますので興味のある方は是非原典を読んでください。私は、アドバイザーとして後ろから2番目の著者になっています。主たる研究推進者はラストオーサーのBindu Kutty先生です。対象はヴィパッサナー瞑想ヨガの実践者で、インドのこういった研究をみると非常に特殊な人達と思われるかもしれませんが、むしろ通常は普通の仕事をしていて健康のためにヨガに取り組んでいるオフィスワーカーなどです。瞑想を主体とするインドで始められたヴィパッサナー瞑想ヨガのトレーニングを受けエキスパートになった人と、初心者、そして全くトレーニングを受けていない人を比較して、その睡眠の質についてポリグラフ記録を用いて評価したものです。

科学的には、きちんと脳波を含んだポリグラフ検査をしているところが質の高い研究であること。さらには、介入のないNo Treatment Controlを有しているところも優れた研究である点です。

被験者は
ヨガ習熟者 20名
ヨガ初心者 16名
コントロール 19名
です。

この論文の抄録を以下に示します。

Abstract/Summary
The present study is aimed to ascertain whether differences in meditation proficiency alter rapid eye movement sleep (REM sleep) as well as the overall sleep-organization. Whole-night polysomnography was carried out using 32-channel digital EEG system. 20 senior Vipassana meditators, 16 novice Vipassana meditators and 19 non-meditating control subjects participated in the study. The REM sleep characteristics were analyzed from the sleep-architecture of participants with a sleep efficiency index >85%. Senior meditators showed distinct changes in sleep-organization due to enhanced slow wave sleep and REM sleep, reduced number of intermittent awakenings and reduced duration of non-REM stage 2 sleep. The REM sleep-organization was significantly different in senior meditators with more number of REM episodes and increased duration of each episode, distinct changes in rapid eye movement activity (REMA) dynamics due to increased phasic and tonic activity and enhanced burst events (sharp and slow bursts) during the second and fourth REM episodes. No significant differences in REM sleep organization was observed between novice and control groups. Changes in REM sleep-organization among the senior practitioners of meditation could be attributed to the intense brain plasticity events associated with intense meditative practices on brain functions.

重要な部分は、上記の抄録の中にアンダーラインを引いたところです。すなわち「瞑想習熟者では、徐波睡眠とレム睡眠が増加し、中途覚醒とノンレム段階2が減少した。」ということです。運動による睡眠の変化では、徐波睡眠は増加しますが、レム睡眠は減少します。こう考えると、睡眠の質の変化としては運動とは違った変化がここにあることになります。

レム睡眠が多くなることが、睡眠の質として良いのかどうかについてはまだ議論が必要と思いますが、少なくとも被験者に対するインタビューでは、ヴィパッサナー瞑想ヨガを行うことによって、心の平静が得られ生活が非常に改善したという人が多く居ました。私自身も被験者と話をする機会があったからです。

レム睡眠を増加させる操作は、これまでには殆ど無かったように思います。どのようなメカニズムがここにあるのか、今後の研究の発展が期待されるところです。

2016年4月15日金曜日

患者さんのブログ読者 Funkyとは…

Funkyという言葉で
Googleを検索したところ
一番最初に出てきた画像です
Funkyとはこういうものでしょうか
先日、あべクリニックで診察をしていたところ、患者さんのこのブログの読者に出会いました。いろいろ読んでいるのですけど、難しくてよくわからないと言ってましたけど、先生はファンキーだからと、笑っていました。

私もどの部分がファンキーかよくわからなかったのですが、一緒に笑っていい雰囲気で面接を終わりました。

それだけのことなのですが、いろいろな方に目に停めていただいてありがたいと思いました。

Funkyとはどういう意味ですかね。


998万語

funkyとは




主な意味おじけづいた、おびえている、憂うつな、落ち込んだ、臆病な、ファンキーな、(よい意味で)一風かわった、いかす、いやなにおいのする、悪臭のする

良い意味で、一風変わった、いかす、という感じであれば良いのですが。

2016年4月11日月曜日

都市部における精神科遠隔医療の可能性 (1)

遠隔医療について少しずつ考えてみたいと思っています。日本には、日本遠隔医療学会があり、私も会員になりました。遠隔医療の歴史は、もともとは僻地における医療を対象として、僻地に居るGP(総合診療医)が、より専門的な知識を得て治療を行うときに専門病院の医師と連絡をとりあうということ。あるいは、患者さん自身が遠隔地の医師と連絡をとって、診断治療を受けるということが主だった対象でした。私自身の認識もそうだったのですが、最近は事情が変わってきたということを認識してきています。
平成27年8月10日の厚生労働省からの事務連絡

大きく変化が起きたと思われるのは、平成9年に出された事務連絡にたいして補完的に平成27年に出された事務連絡で、『「離島、へき地の患者」は、例示である』と示したことだと思います。つまり、必ずしも無医村など医者が常駐しない地域に住む方々に対しての医療を行うというのが遠隔医療という意味ではないということを示しているわけです。

厚生労働省HPのその部分(遠隔医療の項目の平成27年の事務連絡)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/

これまでの遠隔医療の研究をざっと見てみると、旭川医科大学や防衛医科大学校などの名前が挙がってきます。これらの大学は、まさに遠隔地にいる患者さん(へき地や遠隔の駐留地)にたいしての医療が必要であるという役割を持っている大学です。しかし、今後は必ずしもこれらの役割だけではなく、病院に来にくい、あるいは来るのが困難な人たちへの医療としても遠隔医療の仕組みを積極的に利用できるということがあると思います。

例えば、内科において高血圧の管理は、病院にくると血圧が高くなってしまう人が居るということはよく知られていることです。したがって、家庭での血圧を日常的に測定していくことが大切なことになります。このような患者さんの管理については、わざわざ病院に越させて血圧を上げることを定期的にさせることは全く必要が無いわけです。勿論採血など、本人が居なければできないことはあります。したがって、遠隔医療だけで良いということにはなりませんが、遠隔医療は対面式の医療よりも優れている面もあるという一例として示しています。

その他様々な疾患に対して遠隔医療が可能になると思います。

では、精神科においてはどうか。

これについて、考えてまたエントリーを書きたいと思います。




2016年4月9日土曜日

東京医科歯科大学医学部附属病院での診療を開始しました

この4月から、月に2度ほどですが、東京医科歯科大学医学部附属病院にて診療を行うことになりました。診療は主には、アスリートに関連した治療を行う予定です。東京医科歯科大学は、私が精神科医としての初期研修を受けた病院で、いまだにつながりがあります。私にとって見れば古巣に戻ったという気持ちです。

御茶ノ水駅近辺からみた東京医科歯科大学
私が研修医の頃居た古い建物はすべて取り壊されて
新しい病院となっています。
昨日は、オリエンテーションを受けましたが、久しぶりの大学病院の診療で楽しみです。昨日のオリエンテーションは主には、医療安全に関するものです。近年、様々な病院で患者の取り違えや、基本的なミスによる事故がおきています。東京医科歯科大学はこういった問題を起こさないための医療安全に対して全病院をあげて取り組んでいる様子が感じられました。入職者全員に、医療安全マニュアルを配布しています。

大学病院で診療の機会をもつことは、非常に役に立つと感じた一日でもありました。やはり大学病院は、先進的な医療をおこなっており、これは大きな病院でしか役に立たないことばかりではありません。医療安全だけではなく、様々な疾患に対する診断・治療に関わるアプローチも日常臨床をこういった場で行うことで、身につくものが多くあるように思います。

こちらでの診療を通じて、またいろいろと勉強していきたいと思っています。

2016年4月4日月曜日

スマホ診療、事実上解禁 外来「7割不要説」も (日経テクノロジーオンライン記事)

スマホ診療、事実上解禁 外来「7割不要説」も という記事がありました。

また、4月1日の朝のニュースでもこれが事実上解禁されたということが出ています。



まず、私の日常臨床の経験についてですが、ある割合の患者さんは、わざわざ足を運んでもらわなくても、定期的に短時間コンタクトする時間があれば大丈夫だなと思います。また、時に新患や時間のかかる患者さんが先に入って、そういった患者さんを長時間おまたせしてしまうこともあります。辛抱強く待っていただいている患者さんも居ますが、やはりイライラして1時間も待たせられたと仰る方も居ます。まさに、仰るとおりで申し訳ありませんでしたと、謝ることがほとんどです。

この記事を見た時に、こういった患者さんに対しては、このような遠隔診療を行うことが意味があると思っています。おまたせせず、オンデマンドでの診療が可能になるからです。

また、外に出ることができずに診療が中断してしまう患者さんも大勢居ます。そういう方々にとっても、このような遠隔医療はとても治療の助けになると思います。

こういった診療の形態は、診療の質ということがいつも問われるわけですが、既に実際の対面とくらべて、うつ病の精神療法としては遠隔医療が同程度であるという調査もあるようです。(下記)

うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度
https://www.carenet.com/news/general/carenet/40635

このようなことで、日本でも遠隔医療を始めたクリニックもあるようです。私は、この新六本木クリニックについては全く知識がありませんが、新しい挑戦として興味深いと思っています。

都心でオンライン診療 新六本木クリニックの挑戦
2016/3/23付
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO98706140S6A320C1H56A00/

新しいことを始めるときには、いろいろな反対意見、慎重論がでます。これは、とても大事なことではあると思いますが、対面式の診療とこの遠隔医療とのコンビネーションで、良い医療が成り立つ可能性は充分あると思っています。

2016年4月1日金曜日

不健全な有意差へのこだわりが、科学を駄目にする - VOX記事

http://www.vox.com/
上記のURLにある、VOXという評論サイトに興味深い記事が載っていたので取り上げてみます。

タイトルは、An unhealthy obsession with p-values is ruining scienceというタイトルで、拙訳でこのエントリーのタイトルの通り「不健全な有意差へのこだわりが、科学を駄目にする」としました。p-valueというのは、p値で、有意差の水準を示すものです。

原文のURLは下記です。
http://www.vox.com/2016/3/15/11225162/p-value-simple-definition-hacking

P値は、ある事象とある事象の差が統計的に意味のあるものかを示す統計学的な数値です。わかりやすく言えば、例えば、ある血糖値を下げる効果があるとされる薬が、実際に効くのかを調べる研究をするとします。この時には、様々な影響を排除するために、2つの同じような人で構成されるグループに対して、片方には調べる薬を投与し、もう片方にはプラセボ(偽薬=ニセの薬)を投与して、その結果どうかを調べます。

この時に、ある期間投与した後の空腹時血糖値などを調べるわけですが、本物の薬のほうが、血糖値が下がっていたとしても、その差が小さければ、たまたま下がっていたのか、薬の効果として意味のあるものと評価のできるものかの判断が必要になってきます。この時に、統計演算をして、p値を算出して、意味があるかを判断するわけです。

このp値は、一般には科学論文で必須のものになっていると思います。

しかし、この記事はp値の違った側面に光を当てています。スタンフォード大学のメタ解析の研究者、John Ioannidesらは、過去25年間に及ぶ385000もの研究論文を調べ、それらの研究論文のうち、96%の論文が、p値を算出して統計的に有意であったことを示してあったということです。また、どの程度の効果があるのかの度合いを示す効果量=エフェクトサイズ(Effect Size)を示してあった論文は10%ほどであったということです。

統計的には、有意差とともに効果量をみるということはより意味があると考えられます。(上記の効果量のリンクを参照)。しかし、このVOXの評論ではそこに言及している論文は少なかったということです。また、上記のような例でも統計的な有意差があっても本当に薬の効果によるものかどうかは、研究のデザインを詳細に検討しなければわからないという側面もあります。

しかし、この批評ではそれに詳細に限局するよりも、有意差を出すということにこだわるがために、有意差があれば論文が出版されやすくなり、有意差がなくても実はそこに真実が隠されている論文が出版されにくくなっているということもしてきています。この点が特に私が共感した点です。

確かに、若い研究者は多くの論文を出すことが、職を得る上で重要になってくるということはあると思います。したがって、論文が通りやすくするために何とか有意差を弾き出そうとする意識・無意識の力が働くということは容易に想像されます。この批評はそうでなく、真実を探り当てる本来の研究の方向をもう一度考えようと言っているようにも思われます。