「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」は、5年ほど前に厚生労働省の研究班が、様々な視点から適正な不眠治療について調べた、非常に中身の濃い良い内容のガイドラインだと思っています。私も、不眠治療を行う際に睡眠薬を用いるときには、このガイドラインを参考にしています。このガイドラインは、「出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル」ともされており、漫然と睡眠薬を使い続けることに対しての警告を発しています。
私自身も、不眠治療の際には、規則正しい睡眠週間や食事、そして運動などを取り入れた生活指導や、睡眠に対する不安感を取り除く精神療法、不眠症の認知行動療法などをもちいて、なるべく薬物療法に頼らない不眠治療を行っています。その中で、高齢者への運動療法は、非常に効果のあるケースもあり、推奨されるものです。
このような、治療をおこなっている中で、最近疑問に思うことが有ります。「睡眠薬を続けることは、良くないことなのか?」という疑問です。例えば、高血圧治療を考えてみましょう。高血圧の因子としては、肥満、運動不足、塩分過剰摂取などがあり、これらを生活習慣から変えていく必要があると思われます。しかし、その上でも高齢になると加齢による心血管系の変化から、血圧の上昇がおきてきます。このような加齢による高血圧に対しても、薬物療法が行われます。そして、薬物療法をしっかり続けることが生命予後の改善につながると考えられています。
不眠の場合はどうでしょうか。高齢になると、睡眠時間が短くなるとは言われますが、しかし極端に短縮するとも言えません。むしろ、短くなるよりは中途覚醒が多くなり、睡眠が浅く分断されるという変化が主体であると考えられます。その上で、夜中に起きて、なかなか眠れないという状態になる人が多く居ます。
このような人に対して、適切な睡眠薬を適量投与し続けることは、中途覚醒を減少させ、睡眠時間を延長させることに繋がります。これを続けることは、生命予後に対して良い影響を与えるでしょうか、それとも、適切な生活療法をした上でも、なるべくであれば睡眠薬を離脱する方向に持っていったほうが生命予後が良いのでしょうか。
この問題に正確に応えられる睡眠医学者は居ないように思います。近年発売された、ベンゾジアゼピン受容体作動薬でない薬物は、薬理学的に報酬系を強化せず、依存が形成されにくいと言われています。このような薬物を用いて、老化による睡眠の質の劣化を防ぐことの生命予後への影響についての研究は、非常に興味深いと思っています。
2018年2月13日火曜日
2018年1月22日月曜日
日中の過度の眠気再考
すなおクリニックの診療で、過眠症のケースが増えています。
この中で、MSLTの解釈について難しいと思っています。これは、すでにブログにも書きましたが、4回やるか5回やるかで平均睡眠潜時が変わってくる検査は、検査の一義性がなく、不備のある検査だという気がします。また、8分をこえても日中の過眠を訴える中に、ADHDやASDなどの発達障害があることは、私自身がここ4−5年取り組んでいる課題ですが、このようなケースには、DSM-5のADHD診断基準に照らして診断可能な場合には、コンサータ、ストラテラの服用も選択肢に入れています。眠気が強い場合には、コンサータを投与することが多いですが、ストラテラのケースもみられます。
一般には、過眠症治療薬のモディダールはヒスタミン系への作用が主体で、依存性が少ないと書かれていますが、日本医大の大久保教授らの論文ではドパミントランスポーターへの阻害作用も非常に強くて、報酬系を賦活することが示唆されています。
そう考えると、モディオダールもリタリンなどと比較して特別な薬剤ではなく、更には、ADHDにも効果があるとも考えられます。実際に海外論文ではADHD治療に効果がある可能性を示唆するものもあります。
Modafinil for the treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder: A meta-analysis.
ADHD症状および、MSLTで過眠症の当てはまるケースには、どちらも投与が可能ですが、一般的には頭痛や同期などの副作用は、コンサータとモディオダールで変わりないあるいは、コンサータのほうが少ないという印象もあります。
これらを総合して考えると、検査だけでなく、様々な臨床症状(本人の困っている点を含めて)総合的に話を聞きながら、睡眠時間の延長を含めた生活の改善、慎重な薬物の選択を通じて日中の過度の眠気で困っている患者様のための生活改善のための治療方針を考えていくことの重要性を感じます。
この中で、MSLTの解釈について難しいと思っています。これは、すでにブログにも書きましたが、4回やるか5回やるかで平均睡眠潜時が変わってくる検査は、検査の一義性がなく、不備のある検査だという気がします。また、8分をこえても日中の過眠を訴える中に、ADHDやASDなどの発達障害があることは、私自身がここ4−5年取り組んでいる課題ですが、このようなケースには、DSM-5のADHD診断基準に照らして診断可能な場合には、コンサータ、ストラテラの服用も選択肢に入れています。眠気が強い場合には、コンサータを投与することが多いですが、ストラテラのケースもみられます。
一般には、過眠症治療薬のモディダールはヒスタミン系への作用が主体で、依存性が少ないと書かれていますが、日本医大の大久保教授らの論文ではドパミントランスポーターへの阻害作用も非常に強くて、報酬系を賦活することが示唆されています。
そう考えると、モディオダールもリタリンなどと比較して特別な薬剤ではなく、更には、ADHDにも効果があるとも考えられます。実際に海外論文ではADHD治療に効果がある可能性を示唆するものもあります。
Modafinil for the treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder: A meta-analysis.
ADHD症状および、MSLTで過眠症の当てはまるケースには、どちらも投与が可能ですが、一般的には頭痛や同期などの副作用は、コンサータとモディオダールで変わりないあるいは、コンサータのほうが少ないという印象もあります。
これらを総合して考えると、検査だけでなく、様々な臨床症状(本人の困っている点を含めて)総合的に話を聞きながら、睡眠時間の延長を含めた生活の改善、慎重な薬物の選択を通じて日中の過度の眠気で困っている患者様のための生活改善のための治療方針を考えていくことの重要性を感じます。
2017年11月14日火曜日
過眠症の診断のMSLT検査について思うこと
2017年9月から本格的に、すなおクリニックにて、MSLT検査をはじめました。MSLT検査は、過眠症の診断のための客観的検査で、一日4-5回の昼寝を、暗い防音の部屋でしてもらい、眠り込む時間(睡眠潜時)を測定するものです。これで、平均8分以内の睡眠潜時があれば、過眠症と診断でき、更には、15分以内にレム睡眠が出現するSOREM(sleep onset REM)の回数などによって、ナルコレプシーと診断できるかどうかが決まってきます。
これらの診断基準は、ICSD-3(睡眠障害の国際分類 第3版)によるものですが、この中にも、診断基準の他に患者さんの状況について、よく確認して診断すべきとされても居ます。特発性過眠症は、日中の眠気はあるが、眠気の性状がナルコレプシーとは異なり、短時間の睡眠でも頭がすっきりしないということや、SOREMの特徴がないという点が異なった疾患であると考えられています。
これらを総合的に考えると、睡眠潜時が平均8分以内ということがまずは、必要な要件ですが、これについては、幾つかのポイントがあります。
緊張が高い患者さんで、初回に眠らなかった場合、記録は20分間行いますので、初回の睡眠潜時が20分になります。その場合、残り4回が、睡眠潜時6分でも、全体が平均8分以内になりませんので、基準を満たしません。
また、SOREMがでない、あるいは最初の4回で2回以上SOREMが出れば、4回でやめることも可能ではあるのですが、その場合には、1回目に眠らなければ、基準を満たすためには残りは4分以内に眠らなければなりません。
更に、前日の睡眠を含め、普段の夜間睡眠は十分である上で日中の眠気があることが病的な眠気の意味であろうと思いますが、現代人は一般には、十分な睡眠を取っているとも言えないので、これをどう考えるかということにもなります。
更に、治療薬モディオダールとの関連についても
1.MSLTを行えないクリニック、あるいは検査をしていない患者さんにはモディオダールは投与できないか。
⇒ 添付文書をみると、投与できないことになっています。
2.MSLTで睡眠潜時が、8分以内だけれどもSOREMのない特発性過眠症には投与できないか。
⇒ 添付文書をみると投与できません。
このようなことで、いろいろと困る事例があるように思います。したがって、過眠症の診断と治療は、検査だけでなく、本人の生活史や、生活時間などについても十分な問診を行い、これらも考慮しながら行うことが必要になってくるのだと思います。
2017年5月1日月曜日
◆GWこそ「至福の眠り」を手に入れる
「週刊朝日」5月5-12日合併号発売中!
主なコンテンツ
◆GWこそ「至福の眠り」を手に入れる
◆私立に負けない地方高の名門
◆難関私大に強い高校1649
◆PTA「他人任せ」に潜む子どもの危機
◆600万部超!「科学漫画サバイバルシリーズ」特集
◆岩合光昭さん「猫撮影」に密着
週刊朝日のインタビューにこたえたものが、現在店頭に並んでいる号にでています。上記のタイトルの記事です。記事は、GWにしっかりと睡眠の付けを返せると良いという内容を含んでいます。では、一体どんな睡眠が良いのでしょうか。
睡眠には、
1.良い質の睡眠をとれること
2.十分な量の睡眠をとること
3.良い時間帯に睡眠をとること
の3つの要素があります。
1.良い質の睡眠は、ストレスや緊張のない状態を作ることが大事で、趣味のことをやって過ごしたり、スポーツをすることも大事だと思います。2.また、十分な量の睡眠をとることは確実に重要なので、睡眠不足の方はGWに寝すぎてはいけないということはありません。十分な睡眠をとるようにいたしましょう。ただ、3.良い時間帯に睡眠をとることが大事です。長く眠るために早寝をするということを心がけてください。早寝をすることによって、睡眠に適した時間帯を含んで眠ることができます。
とかく、休みなんだから普段できない夜更かしをして、すこし、怠惰な生活をしてと思われるかもしれませんが、これは勧められません。自由に時間をすごし、楽しい趣味などに時間を費やすことは大切ですが、それはあまり遅い時間までとならないようにしたいものです。
結果として、十分にリフレッシュした心と体で、また仕事に向かいたいものですね。
2017年4月29日土曜日
週刊朝日「眠らなきゃでも眠れない」の虜にならないように
現在書店に並んでいる「週刊朝日」の「健康寿命を延ばす快眠法 − 極上の眠りに浸る」に、筑波大学櫻井先生、国立精神神経医療研究センター三島先生、とともに私のインタビューが掲載されています。
取材を担当された山内さんも非常に熱心な方で、睡眠についてよく勉強されていました。他の先生方も話しておられますが、やはり十分な睡眠時間を確保することはとても大事なことです。一方で、こう眠らなければならないと過剰に注意が向いてしまう結果、「眠らなきゃでも眠れない」の虜にならないようにしないといけません。
患者さんたちと話をしていると、このように睡眠に過剰な注意が向いてしまう背景には様々な生活上の要因があることがわかります。
睡眠の問題を睡眠をみるだけで解決することは、多くの場合はできません。その患者さんを取り巻く様々な背景をしっかりとお聞きして、患者さんが語るその背景から、ときに自分でも気づいていない生活上の問題をとりあげ、それを同時に解決していくことも大事です。
高齢者の場合には、これに対してなんとかしてあげたいと懸命に頑張る家族の訴えを傾聴することもとても重要な事になってくると思います。
その中に、生活を改善する運動習慣や食事の問題なども取り入れながら、患者さんの興味を他に持っていくことが大事だと思います。このような視点で話をしていくと、時には、睡眠の問題から他の問題に主たる話題が移っていく場合もあります。
この記事は、そういった意味でも、正しい内容によって構成された良い記事で、一読の価値があると思います。
2週間店頭に並ぶようなので是非お買い求めください。
2017年4月11日火曜日
高齢者の不眠症治療 (1)
すなおクリニックで臨床を始めて、近隣の内科の先生方が不眠症の患者さんを紹介してくださるようになりました。そういった患者さんの中に、すでに幾つかの医療機関を転々として、多くのベンゾジアゼピン受容体作動薬をたくさん投与されている人が見受けられます。
患者さんにとってみれば、「眠れない」という訴えは、深刻です。ねむりは毎日毎日のことですから、夜になるのが怖くなってしまいます。また、一日中、眠れるのかどうか、眠れないとからだに悪いのではないかと思い悩んでしまうこともあります。このような状態は、精神生理性不眠症 と言える状態です。
さて、このような方に眠れるようにと、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を投与すると、ある程度は眠れますが、その分昼間だるくなります。そうすると、日中の活動量が低下、さらにうとうとする時間が増えてしまうということもあります。その結果、夜の眠りの質が低下して、また眠れないということになり、また薬が増える、そしてまた日中ウトウト。高齢者の場合、このように日中の活動量が少ないと、サルコペニア(筋肉量の減少)がおき、だんだん動けない状況になってきます。散歩ができなくては、日中陽の光に当たることもできず、運動量も更に低下し、不眠を助長、薬が増えるという、悪循環に陥ってしまいます。
このような、高齢者の不眠について、
考えてみましょう。
*サルコペニアについての解説はこちらをクリック
患者さんにとってみれば、「眠れない」という訴えは、深刻です。ねむりは毎日毎日のことですから、夜になるのが怖くなってしまいます。また、一日中、眠れるのかどうか、眠れないとからだに悪いのではないかと思い悩んでしまうこともあります。このような状態は、精神生理性不眠症 と言える状態です。さて、このような方に眠れるようにと、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を投与すると、ある程度は眠れますが、その分昼間だるくなります。そうすると、日中の活動量が低下、さらにうとうとする時間が増えてしまうということもあります。その結果、夜の眠りの質が低下して、また眠れないということになり、また薬が増える、そしてまた日中ウトウト。高齢者の場合、このように日中の活動量が少ないと、サルコペニア(筋肉量の減少)がおき、だんだん動けない状況になってきます。散歩ができなくては、日中陽の光に当たることもできず、運動量も更に低下し、不眠を助長、薬が増えるという、悪循環に陥ってしまいます。
このような、高齢者の不眠について、
考えてみましょう。
*サルコペニアについての解説はこちらをクリック
2017年1月20日金曜日
睡眠時間の短縮が肥満リスクを増加させるメカニズムを解明 - 花王との共同研究
株式会社花王と、以前から行っていた短時間睡眠と代謝に関連した研究が、論文として発表されました。これにともなって、早稲田大学と花王の両方からプレスリリースが出されました。
論文は以下のものです。
http://www.nature.com/articles/srep39640
英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに2017年1月10日にオンラインで掲載されました。
この研究の詳細は、早稲田大学のプレスリリースをお読みください。
https://www.waseda.jp/top/news/47804
この研究は、花王の研究所が所有している、メタボリックチャンバーの使用なしにはできない研究でした。我々の睡眠の生理学測定についての技術と、花王の代謝に関連した研究の技術の両者の協力で、非常に興味深い研究ができたと思います。
睡眠時間が十分でない生活をすると、食欲が増し、肥満のリスクが増加する。十分な睡眠をとることが、健康な体を維持する上でも重要な事が明らかになりました。
論文は以下のものです。
http://www.nature.com/articles/srep39640
英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに2017年1月10日にオンラインで掲載されました。この研究の詳細は、早稲田大学のプレスリリースをお読みください。
https://www.waseda.jp/top/news/47804
この研究は、花王の研究所が所有している、メタボリックチャンバーの使用なしにはできない研究でした。我々の睡眠の生理学測定についての技術と、花王の代謝に関連した研究の技術の両者の協力で、非常に興味深い研究ができたと思います。
睡眠時間が十分でない生活をすると、食欲が増し、肥満のリスクが増加する。十分な睡眠をとることが、健康な体を維持する上でも重要な事が明らかになりました。
2016年12月29日木曜日
女性と睡眠 (3) 妊娠と睡眠
最近、東京医科歯科大学で、産婦人科のグループと妊婦の睡眠についてディスカッションする機会がありました。睡眠専門外来に来るほどでない程度の妊婦の睡眠の問題は、我々にとってもとても勉強になるものです。また、不眠症やうつ病、その他の精神疾患で外来に受診されている患者様が、妊娠するということもありますので、このような問題について産婦人科の視点をよく知っておくということも大事だと思います。
妊婦に比較的よく見られる睡眠の障害についての研究は、東京医科歯科大学の精神科の阿部又一郎先生に教えていただいた下記のものを読んでみました。
S. Suxuki, L. Dennerstein, K. M. Greenwood, S. M. Armstrong and E. Satohisa. Sleeping patterns during pregnancy in Japanese women. J. Psychosom. Obstet. Cynecol. 15 (1994) 19-26
この論文は、札幌医大で行われた調査に基づいたものだということです。時期は、秋から冬で、睡眠日誌と質問紙による調査です。(睡眠日誌は、実際の患者さんにも私はよく用いますが、簡便でいろいろなことが分かる方法だと思っています。)
結果として、9割近い(88%)方々が妊娠して睡眠が変化したと答えているということです。また、妊娠期間を3つに分けた最初の3分の1の期間では、睡眠の質は悪化し、真ん中の3分の1の期間では、改善し、その後妊娠後期の3分の1の期間では再び悪化するという変化があるということでした。
特に、妊娠の前期は、悪阻のため、妊娠の後期では、お腹が大きくなってくるために、頻尿があり、腰や背中の痛み、そして胎児の動きによって睡眠が阻害されるということもあるようです。
その他、参加の先生方とのディスカッションでは、妊娠期間中の睡眠の質と、出産後の産褥期のうつ状態などとの関連も話し合われました。しかし、この分野はまだ十分な研究が行われているようではないようです。
もう一つは、妊娠期間中、授乳期間中に睡眠に関わる薬物投与がどうかということが有ります。
妊娠中の薬物投与は特に慎重にしたほうが良いと思いますが、妊娠継続のために薬物治療を続けたほうがければ相対的な重要性のために、続ける場合もあると思います。しかし、その場合の適応や、薬物の選択、投与量などは、主治医と慎重に相談する必要はあると思います。
![]() |
| 女性は、10ヶ月もの長期にわたって、自分だけでなく 生まれてくる赤ちゃんを一日24時間感じながら 生活をするという時期をへて出産します。 男性には体験できない貴重な経験です。 |
S. Suxuki, L. Dennerstein, K. M. Greenwood, S. M. Armstrong and E. Satohisa. Sleeping patterns during pregnancy in Japanese women. J. Psychosom. Obstet. Cynecol. 15 (1994) 19-26
この論文は、札幌医大で行われた調査に基づいたものだということです。時期は、秋から冬で、睡眠日誌と質問紙による調査です。(睡眠日誌は、実際の患者さんにも私はよく用いますが、簡便でいろいろなことが分かる方法だと思っています。)
結果として、9割近い(88%)方々が妊娠して睡眠が変化したと答えているということです。また、妊娠期間を3つに分けた最初の3分の1の期間では、睡眠の質は悪化し、真ん中の3分の1の期間では、改善し、その後妊娠後期の3分の1の期間では再び悪化するという変化があるということでした。
特に、妊娠の前期は、悪阻のため、妊娠の後期では、お腹が大きくなってくるために、頻尿があり、腰や背中の痛み、そして胎児の動きによって睡眠が阻害されるということもあるようです。
その他、参加の先生方とのディスカッションでは、妊娠期間中の睡眠の質と、出産後の産褥期のうつ状態などとの関連も話し合われました。しかし、この分野はまだ十分な研究が行われているようではないようです。
もう一つは、妊娠期間中、授乳期間中に睡眠に関わる薬物投与がどうかということが有ります。
妊娠中の薬物投与は特に慎重にしたほうが良いと思いますが、妊娠継続のために薬物治療を続けたほうがければ相対的な重要性のために、続ける場合もあると思います。しかし、その場合の適応や、薬物の選択、投与量などは、主治医と慎重に相談する必要はあると思います。
2016年12月23日金曜日
女性と睡眠 (2) 月経周期と睡眠
![]() |
| 女性の月経周期とホルモンの関係です 月経前の高温期には、プロゲステロンの 影響で、子宮内膜は肥厚し、体もむくんできます |
図は、女性の月経周期にともなう子宮内膜の肥厚や体温やホルモンの変化を表した図です。このような図は、たくさんの本に出ていますので、ご存じの方も多いと思います。
月経前の約2週間は高温期といって、体温が高くなります。図で言うと上から2番めの赤い線で書かれているのが体温です。矢印の眠い・だるいという時期に体温が高めなのがわかります。
また、その下に紫色でまるい山のように盛り上がっているのが、黄体ホルモンの量を示したものです。この時期は黄体ホルモンの量が多く、これによって子宮内膜は肥厚し、体もむくんでくるわけです。
そして、月経が始まると体温は下がり、黄体ホルモンも少ない状態に移行します。
体温が高く、黄体ホルモンが高く、子宮内膜が肥厚している時期に、なぜ眠気があったり、だるかったりするのかは、詳細なメカニズムはよく分かっていないと思います。月経前には体温が下がっていくので、これが眠気と関係あるということを書いているものもありましたが、推論であって正しいかどうかはわかりません。
しかし、現象としてこのようなことがあるのだということは、よく知っておく必要はあると思います。また、このような現象には個人差があり、この個人差が何からくるものかもよくわかりません。
女性ならではの、このような変化は、男性から見れば「神秘的」ともいえる現象ですね。
2016年12月16日金曜日
女性と睡眠 (1) 女性の睡眠時間
睡眠の外来を行っていると、女性の患者さんで睡眠の障害を訴える方も多く見えます。これから、しばらく、女性の睡眠についても取り上げてみたいと思っています。
表に示したのは、NHKが5年に一度行っている、国民生活時間調査の最も新しい、2015年調査の結果です。結果のポイントは、以下に示されていますが、これはNHKの報告サイトから引用したものです。これをみると、睡眠時間に男女差があるのがよくわかります。
男女ともに、最も睡眠時間が短いのは40代50代なのですが、その中でも最も短いのはこの調査では、50代の女性です。5年前は40代の女性だったので、5年前の調査のときに40代だった人たちが一部移行したという解釈もできるかもしれません。いずれにしても、この働き盛りの人達は、睡眠を多分「削って」仕事をしているように思います。
女性の方が睡眠が短いのは就床時刻(床につく時間)が遅いからのようです。この理由はハッキリとはわかりませんが、一つには生活のリズムとして男性の方が早く朝型になっていくということがあるようです。このデータは、以前日本大学医学部の内山真先生が出しておられました。これが、生物学的な男女差による要因か、それとも社会的な要因、つまり家庭内で寝る前におこなう仕事量が女性の方が大きいのかについては、更に調べる必要があるかと思います。日本においては、下記のサマリーにもあるように、家事を行う時間の男女差をみると女性の方が圧倒的に長く、更に女性の就労割合が増加していることを考えると、女性が睡眠時間を削って、家事と自分の仕事をしている様子が見ててくるようにも思います。家族の協力の中で、お母さんの睡眠時間を長くできるのであれば、協力していくことは大事なことですね。
また、これ以外の結果のポイントとしては、以下のものがあり、睡眠時間の減少が止まったというのは非常に良いニュースだと思います。
【2015年調査 結果のポイント】
表に示したのは、NHKが5年に一度行っている、国民生活時間調査の最も新しい、2015年調査の結果です。結果のポイントは、以下に示されていますが、これはNHKの報告サイトから引用したものです。これをみると、睡眠時間に男女差があるのがよくわかります。
男女ともに、最も睡眠時間が短いのは40代50代なのですが、その中でも最も短いのはこの調査では、50代の女性です。5年前は40代の女性だったので、5年前の調査のときに40代だった人たちが一部移行したという解釈もできるかもしれません。いずれにしても、この働き盛りの人達は、睡眠を多分「削って」仕事をしているように思います。
女性の方が睡眠が短いのは就床時刻(床につく時間)が遅いからのようです。この理由はハッキリとはわかりませんが、一つには生活のリズムとして男性の方が早く朝型になっていくということがあるようです。このデータは、以前日本大学医学部の内山真先生が出しておられました。これが、生物学的な男女差による要因か、それとも社会的な要因、つまり家庭内で寝る前におこなう仕事量が女性の方が大きいのかについては、更に調べる必要があるかと思います。日本においては、下記のサマリーにもあるように、家事を行う時間の男女差をみると女性の方が圧倒的に長く、更に女性の就労割合が増加していることを考えると、女性が睡眠時間を削って、家事と自分の仕事をしている様子が見ててくるようにも思います。家族の協力の中で、お母さんの睡眠時間を長くできるのであれば、協力していくことは大事なことですね。また、これ以外の結果のポイントとしては、以下のものがあり、睡眠時間の減少が止まったというのは非常に良いニュースだと思います。
【2015年調査 結果のポイント】
- 減少が止まった睡眠時間~一層進む『早起き』、そして『早寝』の増加~
- テレビの視聴時間が高年層まで減少
- 広がるビデオ・インターネットの利用
- 続く長時間労働と働く時間の『早朝化』
- 急速には縮まらない家事の男女差
- 自由行動(レジャー活動・マスメディア接触など)の増加が止まり、必需行動(睡眠や食事など)が増加
2016年11月15日火曜日
仕事が睡眠確保の妨げに 厚労省調査 (朝日新聞記事)
朝日新聞の記事によれば、厚生労働省の国民健康・栄養調査によって、20代から50代の男性の3−4割の人たちが、仕事が忙しくて眠る時間が取れないということが明らかになったということです。一般の人達に対する調査なので、頭に入れておく必要があると思いました。
私が普段接している患者さんは、何らかの問題があってクリニックに来る人達なので、いわゆる一般人口とは違います。しかし、一般人口のなかで3−4割という高い割合の人達が仕事が原因で眠れないと思っているのは、非常に大きな問題だと思いました。
ある人の睡眠時間がどのくらいかということは、なかなか正確には図りにくい面があります。勿論、活動量計と呼ばれている、多くは腕時計型の装置を用いて24時間活動量を測定すると、その中で睡眠をとっている時間帯をある程度正確に特定することはできます。しかし、そういったものなしに、ただ何時間くらいの睡眠時間ですかと聞くと、多くは7時間くらいかなとか、6時間半くらいかなと答えますが、実際に測定してみると大抵はそれよりも短い時間になる場合が多いです。幾つかの理由が考えられますが、一つは普通に満足して眠る睡眠時間を平均的睡眠時間として、それを答えているということがあります。しかし、実際は、3日に一度くらいは飲み会があったり、遅くなったりして、平均するとそれよりも、30分からときには1時間位短い実測値となるということです。あるいは、布団に入ったあとに、スマホをやったりするのが習慣になっているけれども、その時間は入れていないという場合もあると思います。

私の患者さんの中には、睡眠時無呼吸症候群の治療としてCPAP(持続式陽圧呼吸療法)をやっている人たちが大勢居ます。最初は、日中の眠気ということで来院され、無呼吸が発見されCPAPを開始するわけですが、これによってCPAPをつけている毎日の時間がわかります。その中には、睡眠時間がとても短い方もおられます。そうしますと、CPAPをやっても、絶対的な睡眠時間が短ければ、やはり日中は眠いわけです。そういった中で、忙しい仕事をしますから、当然ストレスはより大きくなり、結果としてはうつ状態になる人も居ます。
この記事は、仕事が睡眠確保の妨げになっているということですが、雇用者から見ると、「睡眠が、仕事時間確保の妨げになっている」というような意識があるのかもしれません。そうであれば、労働者が健康に仕事を続ける環境を阻害するという結果になっており、これは改善する必要があるとも思います。このような、勤務時間についてのデータは、今回の電通の例を考えても、正確でなく企業に都合の悪い部分は隠蔽されてしまっているかもしれません。
いずれにしても、このデータは深刻な事態で、早急に改善されるものだとも思いました。
私が普段接している患者さんは、何らかの問題があってクリニックに来る人達なので、いわゆる一般人口とは違います。しかし、一般人口のなかで3−4割という高い割合の人達が仕事が原因で眠れないと思っているのは、非常に大きな問題だと思いました。
ある人の睡眠時間がどのくらいかということは、なかなか正確には図りにくい面があります。勿論、活動量計と呼ばれている、多くは腕時計型の装置を用いて24時間活動量を測定すると、その中で睡眠をとっている時間帯をある程度正確に特定することはできます。しかし、そういったものなしに、ただ何時間くらいの睡眠時間ですかと聞くと、多くは7時間くらいかなとか、6時間半くらいかなと答えますが、実際に測定してみると大抵はそれよりも短い時間になる場合が多いです。幾つかの理由が考えられますが、一つは普通に満足して眠る睡眠時間を平均的睡眠時間として、それを答えているということがあります。しかし、実際は、3日に一度くらいは飲み会があったり、遅くなったりして、平均するとそれよりも、30分からときには1時間位短い実測値となるということです。あるいは、布団に入ったあとに、スマホをやったりするのが習慣になっているけれども、その時間は入れていないという場合もあると思います。

私の患者さんの中には、睡眠時無呼吸症候群の治療としてCPAP(持続式陽圧呼吸療法)をやっている人たちが大勢居ます。最初は、日中の眠気ということで来院され、無呼吸が発見されCPAPを開始するわけですが、これによってCPAPをつけている毎日の時間がわかります。その中には、睡眠時間がとても短い方もおられます。そうしますと、CPAPをやっても、絶対的な睡眠時間が短ければ、やはり日中は眠いわけです。そういった中で、忙しい仕事をしますから、当然ストレスはより大きくなり、結果としてはうつ状態になる人も居ます。
この記事は、仕事が睡眠確保の妨げになっているということですが、雇用者から見ると、「睡眠が、仕事時間確保の妨げになっている」というような意識があるのかもしれません。そうであれば、労働者が健康に仕事を続ける環境を阻害するという結果になっており、これは改善する必要があるとも思います。このような、勤務時間についてのデータは、今回の電通の例を考えても、正確でなく企業に都合の悪い部分は隠蔽されてしまっているかもしれません。
いずれにしても、このデータは深刻な事態で、早急に改善されるものだとも思いました。
2016年7月30日土曜日
アイマスクで快適夏の睡眠
この季節になると、朝早く起きてしまって眠れないという人が時々居ます。もちろん、うつ病などの背景に他の精神疾患のある患者さんも居るのですが、ちょっとした落とし穴がある場合もあります。
よく、カーテンを開けて眠って、朝日を浴びましょうということが言われています。私も、そんな話をすることも有りますが、朝日を浴びると、生体リズムの位相が前進して早寝早起きになるわけです。別の言い方をすると、時計がリセットされて、また新しい一日のリズムが始まるともいえます。ただ、夏の朝は4時ころから明るくなります。そうしますと、朝早く目が覚めすぎてしまうということもおきるわけです。
特に、45歳以降の方で、幾分睡眠が浅くなってきた年代については、朝の光で早く起きすぎてしまって眠れないという方が居ます。そういう方にはアイマスクをすすめています。写真は私がつかっているアイマスクですが、三次元立体式で、比較的大きめで快適です。
このアイマスクは、ebayで買いました。
http://www.ebay.com/itm/231985245621?_trksid=p2057872.m2749.l2649&ssPageName=STRK%3AMEBIDX%3AIT
非常に安くて、性能は良いので、もう少したくさん買って、臨床の場で患者さんにあげようかとも思っています。
アイマスクをして眠ると、朝部屋が明るくなってきてもわからないので、意外と冬場のように長眠をできるように思います。睡眠は、デリケートな面もあるので、アイマスクをしても変わらない人も居るかもしれませんが、しかし早朝の光の影響は回避できることは間違いありません。
早朝の光は良いと言われますが、しかし、これもこのような季節では早朝覚醒の原因になって、もう少しゆっくり眠る機会を奪ってしまうことにもなります。そこで、このような少しの工夫をするだけでも、よりよい睡眠が得られる様になるというわけです。
| ebayで購入したアイマスク |
特に、45歳以降の方で、幾分睡眠が浅くなってきた年代については、朝の光で早く起きすぎてしまって眠れないという方が居ます。そういう方にはアイマスクをすすめています。写真は私がつかっているアイマスクですが、三次元立体式で、比較的大きめで快適です。
このアイマスクは、ebayで買いました。
http://www.ebay.com/itm/231985245621?_trksid=p2057872.m2749.l2649&ssPageName=STRK%3AMEBIDX%3AIT
非常に安くて、性能は良いので、もう少したくさん買って、臨床の場で患者さんにあげようかとも思っています。
アイマスクをして眠ると、朝部屋が明るくなってきてもわからないので、意外と冬場のように長眠をできるように思います。睡眠は、デリケートな面もあるので、アイマスクをしても変わらない人も居るかもしれませんが、しかし早朝の光の影響は回避できることは間違いありません。
早朝の光は良いと言われますが、しかし、これもこのような季節では早朝覚醒の原因になって、もう少しゆっくり眠る機会を奪ってしまうことにもなります。そこで、このような少しの工夫をするだけでも、よりよい睡眠が得られる様になるというわけです。
2016年7月10日日曜日
発達障害と睡眠障害 第41回日本睡眠学会シンポジウム
2016年7月7日8日に、日本大学医学部の内山真先生を会長として、日本睡眠学会が京王プラザホテルで開催されました。私は、シンポジウム「発達障害と睡眠障害」を8日の午後行いました。シンポジウムでは、聴衆が部屋に入りきれず、廊下にまであふれだす状況で、非常に好評でした。演者は
本田秀夫先生
信州大学医学部附属病院 子どものこころ診療部
初めてお会いしましたが、素晴らしい先生でした。
発達障害の概論を睡眠と結びつけて話していただきました。非常に分かりやすくユーモアに富んだお話でした。
http://www.shinshu-u.ac.jp/hp/bumon/kokoro/goaisatu.html
内田 直
早稲田大学スポーツ科学学術院
私です。
睡眠障害外来に来院する日中の過度の眠気を呈するケースを提示して、背景にある注意欠如多動性障害の可能性や考える背景の神経メカニズムについてお話しました。
中島亨先生
杏林大学医学部精神神経科学教室
このシンポジウムを一緒に協力して開催した先生です。
発達障害にみられる、起床困難例についてケースを上げてその背景に見られるメカニズムや、具体的な薬物療法(ノルアドレナリン再とり込み阻害剤の使用、ドパミンD2パーシャルアゴニストの使用など)についてお話し頂きました。
http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/medicine/education/staff/detail/?id=med19003
神山潤先生
東京ベイ・浦安市川医療センター
研究所の時代から交流を持たせていただいている、神経生理学にも詳しい小児科の先生です。
発達障害と睡眠障害に関連した、神経メカニズムについての仮説的なお話を提示していただきました。特に、報酬系が覚醒メカニズムとも大きな関わりがあるという桜井先生の仮説や、マシュマロスタディーに関わる脳内神経機構などとのお話が逸品でした。(マシュマロスタディーは非常に興味深かったので、また取り上げます。)
http://www.j-kohyama.jp/
2016年6月26日日曜日
毎日小学生新聞に私の監修記事が掲載されました
毎日小学生新聞に私の監修記事が掲載されました。ウェッブでもある程度読めるようなので、左記のリンクをご参照ください。
取材に見えた、小丸記者もお母様で、子育てに関連した睡眠の問題について随分と苦労されているようでした。子どもの睡眠や母親の睡眠はとても大事なことで、これらについては、一緒に生活する父親の強力も欠かせないところです。
産休育休制度は次第に充実しつつあるというものの、一日中子育てに時間を費やしている母親の生活について、よく知ることも大事だと思います。そんな話で、小丸さんとは話が盛り上がりました。
勿論、その中で子どもの睡眠の話もたくさんいたしました。小丸さんには、そのエッセンスを子どもたちに分かりやすくまとめていただきました。ありがとうございました。
取材に見えた、小丸記者もお母様で、子育てに関連した睡眠の問題について随分と苦労されているようでした。子どもの睡眠や母親の睡眠はとても大事なことで、これらについては、一緒に生活する父親の強力も欠かせないところです。
| 見開きで楽しい記事が掲載されました |
勿論、その中で子どもの睡眠の話もたくさんいたしました。小丸さんには、そのエッセンスを子どもたちに分かりやすくまとめていただきました。ありがとうございました。
2016年4月17日日曜日
瞑想ヨガと睡眠 (我々の論文が出版されました)
インドのバンガロールにある、国立神経科学精神医学研究所との共同研究で、瞑想ヨガ行者の睡眠の特徴についての論文が出版されました。
私は、これは非常に重要な発見だと思っています。
Senior Vipassana Meditation practitioners exhibit distinct REM sleep organization from that of novice meditators and healthy controls
上記に、この論文へのリンクが有りますので興味のある方は是非原典を読んでください。私は、アドバイザーとして後ろから2番目の著者になっています。主たる研究推進者はラストオーサーのBindu Kutty先生です。対象はヴィパッサナー瞑想ヨガの実践者で、インドのこういった研究をみると非常に特殊な人達と思われるかもしれませんが、むしろ通常は普通の仕事をしていて健康のためにヨガに取り組んでいるオフィスワーカーなどです。瞑想を主体とするインドで始められたヴィパッサナー瞑想ヨガのトレーニングを受けエキスパートになった人と、初心者、そして全くトレーニングを受けていない人を比較して、その睡眠の質についてポリグラフ記録を用いて評価したものです。
科学的には、きちんと脳波を含んだポリグラフ検査をしているところが質の高い研究であること。さらには、介入のないNo Treatment Controlを有しているところも優れた研究である点です。
被験者は
ヨガ習熟者 20名
ヨガ初心者 16名
コントロール 19名
です。
この論文の抄録を以下に示します。
Abstract/Summary
The present study is aimed to ascertain whether differences in meditation proficiency alter rapid eye movement sleep (REM sleep) as well as the overall sleep-organization. Whole-night polysomnography was carried out using 32-channel digital EEG system. 20 senior Vipassana meditators, 16 novice Vipassana meditators and 19 non-meditating control subjects participated in the study. The REM sleep characteristics were analyzed from the sleep-architecture of participants with a sleep efficiency index >85%. Senior meditators showed distinct changes in sleep-organization due to enhanced slow wave sleep and REM sleep, reduced number of intermittent awakenings and reduced duration of non-REM stage 2 sleep. The REM sleep-organization was significantly different in senior meditators with more number of REM episodes and increased duration of each episode, distinct changes in rapid eye movement activity (REMA) dynamics due to increased phasic and tonic activity and enhanced burst events (sharp and slow bursts) during the second and fourth REM episodes. No significant differences in REM sleep organization was observed between novice and control groups. Changes in REM sleep-organization among the senior practitioners of meditation could be attributed to the intense brain plasticity events associated with intense meditative practices on brain functions.
重要な部分は、上記の抄録の中にアンダーラインを引いたところです。すなわち「瞑想習熟者では、徐波睡眠とレム睡眠が増加し、中途覚醒とノンレム段階2が減少した。」ということです。運動による睡眠の変化では、徐波睡眠は増加しますが、レム睡眠は減少します。こう考えると、睡眠の質の変化としては運動とは違った変化がここにあることになります。
レム睡眠が多くなることが、睡眠の質として良いのかどうかについてはまだ議論が必要と思いますが、少なくとも被験者に対するインタビューでは、ヴィパッサナー瞑想ヨガを行うことによって、心の平静が得られ生活が非常に改善したという人が多く居ました。私自身も被験者と話をする機会があったからです。
レム睡眠を増加させる操作は、これまでには殆ど無かったように思います。どのようなメカニズムがここにあるのか、今後の研究の発展が期待されるところです。
私は、これは非常に重要な発見だと思っています。
Senior Vipassana Meditation practitioners exhibit distinct REM sleep organization from that of novice meditators and healthy controls
![]() |
| ヴィパッサナー瞑想とは、 自己観察によって 自分を変えていく一つの方法である |
科学的には、きちんと脳波を含んだポリグラフ検査をしているところが質の高い研究であること。さらには、介入のないNo Treatment Controlを有しているところも優れた研究である点です。
被験者は
ヨガ習熟者 20名
ヨガ初心者 16名
コントロール 19名
です。
この論文の抄録を以下に示します。
Abstract/Summary
The present study is aimed to ascertain whether differences in meditation proficiency alter rapid eye movement sleep (REM sleep) as well as the overall sleep-organization. Whole-night polysomnography was carried out using 32-channel digital EEG system. 20 senior Vipassana meditators, 16 novice Vipassana meditators and 19 non-meditating control subjects participated in the study. The REM sleep characteristics were analyzed from the sleep-architecture of participants with a sleep efficiency index >85%. Senior meditators showed distinct changes in sleep-organization due to enhanced slow wave sleep and REM sleep, reduced number of intermittent awakenings and reduced duration of non-REM stage 2 sleep. The REM sleep-organization was significantly different in senior meditators with more number of REM episodes and increased duration of each episode, distinct changes in rapid eye movement activity (REMA) dynamics due to increased phasic and tonic activity and enhanced burst events (sharp and slow bursts) during the second and fourth REM episodes. No significant differences in REM sleep organization was observed between novice and control groups. Changes in REM sleep-organization among the senior practitioners of meditation could be attributed to the intense brain plasticity events associated with intense meditative practices on brain functions.
重要な部分は、上記の抄録の中にアンダーラインを引いたところです。すなわち「瞑想習熟者では、徐波睡眠とレム睡眠が増加し、中途覚醒とノンレム段階2が減少した。」ということです。運動による睡眠の変化では、徐波睡眠は増加しますが、レム睡眠は減少します。こう考えると、睡眠の質の変化としては運動とは違った変化がここにあることになります。
レム睡眠が多くなることが、睡眠の質として良いのかどうかについてはまだ議論が必要と思いますが、少なくとも被験者に対するインタビューでは、ヴィパッサナー瞑想ヨガを行うことによって、心の平静が得られ生活が非常に改善したという人が多く居ました。私自身も被験者と話をする機会があったからです。
レム睡眠を増加させる操作は、これまでには殆ど無かったように思います。どのようなメカニズムがここにあるのか、今後の研究の発展が期待されるところです。
2016年2月1日月曜日
ISAK (International school of Asia, Karuizawa) での睡眠セミナー
Last night, “Airweave”, one of our generous donors, kindly organized and held a Sleep Seminar for ISAK students. Prof....
Posted by ISAK [International School of Asia, Karuizawa] on 2016年1月29日
![]() |
| 背中向きであまり良いショットではありませんが、NHKでも紹介されました。 |
上記は、ISAKのFacebookへのリンクです。ISAKについては、多くの場所で紹介されているので、そちらを御覧ください。私は、早稲田大学スポーツ科学学術院の副学術院長(国際担当)としては、うかつにもISAKについては十分な知識を持っていませんでした。今回の訪問での感想を少し書いてみたいと思います。
1月28日のセミナーは、私が関連している寝具メーカー、エアウィーヴの提供で行われたものですが、ISAK訪問と代表理事である小林りんさんとの面会を通じて、国際化に大きな示唆を得られました。エアウィーヴは、全寮制のこの高校にすべての寝具を提供しています。
ISAKは、インターナショナルハイスクールで、文部科学省の高等学校卒業資格と、国際バカロレア資格の両方が取れます。代表理事の小林りんさんは、東大卒、金融などで仕事をしたあと、ユニセフの仕事をし、起業家としてこの高等学校を作りました。世界中から学生が集まっていて、非常に期待されている高校です。
ISAKのホームページ
https://isak.jp/jp/
小林りんさんWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%82%8A%E3%82%93
ISAK日経記事
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO76269890Y4A820C1000000/
ISAKは、現在2年生までの生徒100名がいますが、この100名が一同に介して、セミナーを行いました。セミナーは英語で90分。私が通常日本語で行っている一般向けのセミナーを少し高校生向けにアレンジして行いました。セミナー自体も好評でしたが、それと同時に、このような国際的な教育機関が日本で運営されていることに非常に感銘を受けました。小林さんとも少しの時間でしたが、対談させていただきました。生徒は、アジアが主体ですが、一部は欧米やアフリカからも来ています。生徒によっては非常に裕福はプライベートジェットを持っているような家庭の子もいれば、非常に貧しくすべて奨学金で勉強している子供もいるようです。このようなほんとうの意味での多様性が、高校生に幅広い視野を植え付け、グローバルな世界観をもつ自由な発想を育むと話しておられました。
そういった理念を持つことと、実際にそのような環境(多様な生徒が実際に集まってくるということ)を実現することの間には大きなギャップがあって、これを実現するための苦労はいろいろあったのだろうという話をしたところ、非常に示唆に富む話をいただきました。学校を作るにまで至らない時点では、2週間のサマースクールを何年かやったそうです。これによって、各国の教育者との交流が可能になり、多様性のあるユニークな教育への信頼も得られたと言っていました。また、このようなサマースクールを通じて、カリキュラムのファインチューニング(微修正)も可能になったということでした。サマースクールでは、毎日アンケートをとり、生徒たちが求めているもの、気づいた点などについて、翌日にはそれをフィードバックできるような体制を作ったということです。
小林りんさん「2週間で子供は変わる」ISAKサマースクール 軽井沢に全寮制の学校をつくる
http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/27/lin-kobayashi-isak-womans-story2_n_4168648.html
今後、これらのリソースを更に人の集まりという形での、グローバル化を実現するためには、ぜひともサマースクールのような学生を招聘し、学部教育を行う企画が有効であろうと思いました。そこに、早稲田大学の学生も参加し、交流を通じて人と人とのつながりをつくり、これを修士課程入学者の増加につなげていくということです。
今回の訪問で、非常にレベルの高い人材育成の組織を立ち上げた、小林さんに感銘を受けるとともに、東京オリンピックまでの次の4年間に更に早稲田大学スポーツ科学学術院が国際化されていく大きな示唆をもらった気がしました。
2015年12月15日火曜日
ベルソムラ(スボレキサント)の長期処方が可能になった
オレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ(スボレキサント)は、これまでにない全く新しい作用機序の睡眠薬です。昨年11月に発売されましたが、1年間は14日までの処方で、処方に苦労しました。今月、2015年12月からは、やっと長期処方が可能になりました。
この薬物は、依存性が無いことなどから向精神薬に指定されておらず、処方の日数制限がなくなりました。14日から一挙に長く処方できることになり、処方しやすくなりました。
発売当初は、単剤で初発例にということで慎重に使用するようメーカーからもアドバイスが有りましたが、その後、少しずつ併用するなかで、併用によっても睡眠を安定させる作用があることがわかってきました。
私は、双極性障害や統合失調症などの患者さんで、他の薬物を多く服用している人に併用することも多くなってきています。このようなケースでは、依存性のあるベンゾジアゼピン系の睡眠薬の投与量を減らしていけるという利点があることも経験の中でわかってきました。
現在主に用いられている睡眠薬は
・ ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾジアゼピン、ノンベンゾジアゼピン)
・ メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)
・ オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)
です。この中で、オレキシン受容体拮抗薬のみが、睡眠に直接作用する薬物ではなく、覚醒の維持のために必要と考えられているオレキシンの役割をブロックする、いわば覚醒阻害剤としての役割をもっているユニークな薬物であるわけです。
経験により安全性が確かめられてくれば、このような薬物は併用によっても、より効果的に安定した睡眠を維持できる可能性があると思います。
この薬物は、依存性が無いことなどから向精神薬に指定されておらず、処方の日数制限がなくなりました。14日から一挙に長く処方できることになり、処方しやすくなりました。
発売当初は、単剤で初発例にということで慎重に使用するようメーカーからもアドバイスが有りましたが、その後、少しずつ併用するなかで、併用によっても睡眠を安定させる作用があることがわかってきました。
私は、双極性障害や統合失調症などの患者さんで、他の薬物を多く服用している人に併用することも多くなってきています。このようなケースでは、依存性のあるベンゾジアゼピン系の睡眠薬の投与量を減らしていけるという利点があることも経験の中でわかってきました。
現在主に用いられている睡眠薬は
・ ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾジアゼピン、ノンベンゾジアゼピン)
・ メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)
・ オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)
です。この中で、オレキシン受容体拮抗薬のみが、睡眠に直接作用する薬物ではなく、覚醒の維持のために必要と考えられているオレキシンの役割をブロックする、いわば覚醒阻害剤としての役割をもっているユニークな薬物であるわけです。
経験により安全性が確かめられてくれば、このような薬物は併用によっても、より効果的に安定した睡眠を維持できる可能性があると思います。
2015年12月7日月曜日
ポストランチディップと交通事故
昼過ぎ、14時か15時ころに眠気が来ることは、経験上よく知っていると思いますが、昼ごはんを食べなくてもこの時間は眠くなることが知られています。この時間帯のことを、ポストランチディップと言っていますが、この時間帯には交通事故も多いことが知られています。
私は、幾つかの著作の中で図のようなスペインのSantosら (2010) の論文からの図を引用して、この時間帯に事故が多いことを示しています。これはこれで、正しいと思っているのですが、警視庁のデータをグラフ化してみると、もう一つの図のようになり、必ずしもポストランチディップは見えてきません。朝の通勤と帰りの帰宅時のラッシュ時間帯に交通事故が多くなるのが見えるだけです。
日本人でも午後の時間帯は眠くなると思いますが、これが警視庁のデータで出てこないのは警視庁の図が2時間おきのデータだからなのか、日本では必ずしもポストランチディップと交通事故の数が相関しないのか、よくわかりません。
著作の中では、こういうことを書いたほうが面白いのかもしれませんが、読者は何を言いたいのかわからない場合も多いと思うので、裏話として紹介してみました。
私は、幾つかの著作の中で図のようなスペインのSantosら (2010) の論文からの図を引用して、この時間帯に事故が多いことを示しています。これはこれで、正しいと思っているのですが、警視庁のデータをグラフ化してみると、もう一つの図のようになり、必ずしもポストランチディップは見えてきません。朝の通勤と帰りの帰宅時のラッシュ時間帯に交通事故が多くなるのが見えるだけです。
日本人でも午後の時間帯は眠くなると思いますが、これが警視庁のデータで出てこないのは警視庁の図が2時間おきのデータだからなのか、日本では必ずしもポストランチディップと交通事故の数が相関しないのか、よくわかりません。著作の中では、こういうことを書いたほうが面白いのかもしれませんが、読者は何を言いたいのかわからない場合も多いと思うので、裏話として紹介してみました。
2015年11月23日月曜日
松岡修造氏とエアウィーヴAirweaveの勉強会で一緒に睡眠の勉強をしました
先日、エアウィーヴの「成長期における睡眠についての勉強会」に登壇しました。この会は、製品紹介というよりも、成長期の子どもたちになぜ睡眠が必要なのかということについて、勉強する会として開かれたものです。私は、松岡修造氏と一緒に登壇できて、とても楽しい一日でした。
冒頭に、松岡修造氏のトークショーが有り、進行役の進藤晶子さんとなかなか絶妙な駆け引きで、聴衆を惹きつけたあと、エアウィーヴの高岡本州会長、京大合格日本一の西大和学園中学校・高等学校の田野瀬太樹先生、そして私が登壇し、成長期の睡眠についてのお話をしました。
西大和学園は、寮にすべてエアウィーヴが入っているようです。また米国のIMGにおいても、寮はすべてエアウィーヴで、これによって競技力が向上したというデータも紹介されました。
私は、この中で睡眠がスポーツ選手にとっても非常に重要な事だということを、Cheri Mah先生のデータなどを取り上げながら話しました。これには、松岡修造氏も興味深く聞きいっておられました。また、アスリートはこういうデータを示せば、なるほどと納得しますというお話もしておられました。
成長期の睡眠は、非常に重要です。成長期は、まさに脳の発達期でもあり、様々な変化が脳の中で行われています。この時期に、質の良い睡眠を十分取るということは脳の発達を促進するという意味で重要だと考えられます。この結果として期待できることは、本来持っているその子供の能力を十分引き出し、更には精神面では情緒の安定も得られると思います。この時期の脳の安定した成長は、成長後にうつ病になりにくいなどのストレスに対するレジリエンス(逆境から立ち直る力)が強くなるということも言えると思います。
時には、真面目な内容もあり、また、松岡修造氏の楽しいコメントも有り、とても楽しめる勉強会だったと思います。このようなことを通じて、成長期の子どもたちにおける睡眠の重要性などについても広く知識が広がるのはとても良いことだと思っています。
| エアウィーヴ勉強会の様子 左から、高岡会長、松岡氏、内田、田野瀬理事長 楽しい雰囲気です |
西大和学園は、寮にすべてエアウィーヴが入っているようです。また米国のIMGにおいても、寮はすべてエアウィーヴで、これによって競技力が向上したというデータも紹介されました。
私は、この中で睡眠がスポーツ選手にとっても非常に重要な事だということを、Cheri Mah先生のデータなどを取り上げながら話しました。これには、松岡修造氏も興味深く聞きいっておられました。また、アスリートはこういうデータを示せば、なるほどと納得しますというお話もしておられました。
成長期の睡眠は、非常に重要です。成長期は、まさに脳の発達期でもあり、様々な変化が脳の中で行われています。この時期に、質の良い睡眠を十分取るということは脳の発達を促進するという意味で重要だと考えられます。この結果として期待できることは、本来持っているその子供の能力を十分引き出し、更には精神面では情緒の安定も得られると思います。この時期の脳の安定した成長は、成長後にうつ病になりにくいなどのストレスに対するレジリエンス(逆境から立ち直る力)が強くなるということも言えると思います。
時には、真面目な内容もあり、また、松岡修造氏の楽しいコメントも有り、とても楽しめる勉強会だったと思います。このようなことを通じて、成長期の子どもたちにおける睡眠の重要性などについても広く知識が広がるのはとても良いことだと思っています。
2015年10月22日木曜日
文献:うつ病治療におけるオメガ3系脂肪酸のエビデンス(西、松岡 臨床精神薬理 2012)
以前にも、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果についてこのブログに書いたことがあります。最近、表題の論文を読む機会があり、これについて紹介したいと思います、
この総説論文によって、自分自身が新しく得た知識としては、DHA, EPAというオメガ3系脂肪酸のうつ病に対する効果としては、女性に効果があり、男性では効果が見られないという性差があるということです。しかし、報告によっては男性で効果があるというものも有り、まだ今後のさらなる知見が必要とされる段階であるようです。
また、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果についての、ランダム化比較試験(RCT)の論文を集めて、総合的に統計処理をするメタアナリシスの最近の論文では、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果については、有効であると結論づけています。この中では、DHAよりもEPAがより抗うつ効果として有効であることも示されています。(EPAが60%以上含まれているサプリメントを使用した場合有効。)
さて、それではこのようなオメガ3系脂肪酸がどのような機序で、抗うつ効果を発揮しているのかについて疑問が湧くわけですが、これについては、まだあまりはっきりとはわかっていないようです。仮説として有力なものは示されているので、列挙すると…。
1.抗炎症作用
2.神経新生の活性化など神経細胞への影響
3.セロトニン代謝への影響
4.CRFの調整 (CRF=corticotropin-releasing factor)の調整
5.Protein Kinase Cの阻害
6.HRV(心拍変動)の調整
7.シナプス形成の亢進
8.脳血流量の改善
等が挙げられています。
まだ、メカニズムもわかっておらず、エビデンスとしてもまだ不安定な要素のあるものでは有りますが、やはり食事というのは精神衛生に対して影響を与える者の一つであることは間違いないと思います。今後も、研究の動向に注目していきたいトピックの一つだと思っています。
この総説論文によって、自分自身が新しく得た知識としては、DHA, EPAというオメガ3系脂肪酸のうつ病に対する効果としては、女性に効果があり、男性では効果が見られないという性差があるということです。しかし、報告によっては男性で効果があるというものも有り、まだ今後のさらなる知見が必要とされる段階であるようです。
また、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果についての、ランダム化比較試験(RCT)の論文を集めて、総合的に統計処理をするメタアナリシスの最近の論文では、オメガ3系脂肪酸の抗うつ効果については、有効であると結論づけています。この中では、DHAよりもEPAがより抗うつ効果として有効であることも示されています。(EPAが60%以上含まれているサプリメントを使用した場合有効。)
さて、それではこのようなオメガ3系脂肪酸がどのような機序で、抗うつ効果を発揮しているのかについて疑問が湧くわけですが、これについては、まだあまりはっきりとはわかっていないようです。仮説として有力なものは示されているので、列挙すると…。
1.抗炎症作用
2.神経新生の活性化など神経細胞への影響
3.セロトニン代謝への影響
4.CRFの調整 (CRF=corticotropin-releasing factor)の調整
5.Protein Kinase Cの阻害
6.HRV(心拍変動)の調整
7.シナプス形成の亢進
8.脳血流量の改善
等が挙げられています。
まだ、メカニズムもわかっておらず、エビデンスとしてもまだ不安定な要素のあるものでは有りますが、やはり食事というのは精神衛生に対して影響を与える者の一つであることは間違いないと思います。今後も、研究の動向に注目していきたいトピックの一つだと思っています。
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