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2016年7月10日日曜日

発達障害と睡眠障害 第41回日本睡眠学会シンポジウム

2016年7月7日8日に、日本大学医学部の内山真先生を会長として、日本睡眠学会が京王プラザホテルで開催されました。私は、シンポジウム「発達障害と睡眠障害」を8日の午後行いました。シンポジウムでは、聴衆が部屋に入りきれず、廊下にまであふれだす状況で、非常に好評でした。

演者は
本田秀夫先生
信州大学医学部附属病院 子どものこころ診療部
初めてお会いしましたが、素晴らしい先生でした。
発達障害の概論を睡眠と結びつけて話していただきました。非常に分かりやすくユーモアに富んだお話でした。
http://www.shinshu-u.ac.jp/hp/bumon/kokoro/goaisatu.html

内田 直
早稲田大学スポーツ科学学術院
私です。
睡眠障害外来に来院する日中の過度の眠気を呈するケースを提示して、背景にある注意欠如多動性障害の可能性や考える背景の神経メカニズムについてお話しました。

中島亨先生
杏林大学医学部精神神経科学教室
このシンポジウムを一緒に協力して開催した先生です。
発達障害にみられる、起床困難例についてケースを上げてその背景に見られるメカニズムや、具体的な薬物療法(ノルアドレナリン再とり込み阻害剤の使用、ドパミンD2パーシャルアゴニストの使用など)についてお話し頂きました。
http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/medicine/education/staff/detail/?id=med19003

神山潤先生
東京ベイ・浦安市川医療センター
研究所の時代から交流を持たせていただいている、神経生理学にも詳しい小児科の先生です。
発達障害と睡眠障害に関連した、神経メカニズムについての仮説的なお話を提示していただきました。特に、報酬系が覚醒メカニズムとも大きな関わりがあるという桜井先生の仮説や、マシュマロスタディーに関わる脳内神経機構などとのお話が逸品でした。(マシュマロスタディーは非常に興味深かったので、また取り上げます。)
http://www.j-kohyama.jp/


発表後の総合討論では、聴衆からも熱心な質問が出て、我々も非常に勉強になりました。とても良い、シンポジウムになったと自負しています。





2015年2月23日月曜日

ADHDの流行は、まもなくおさまりそう Allan Francesのコメント (Neurology Times)

My Prediction: The ADHD Fad Is About to Fade
April 24, 2014     By Allen Frances, MD

時々、Psychiatric Times (Neurology Times) を読んでいますが、アメリカの精神科診療の知識が入り、また興味深い記事もたくさんあります。上記のは、アレン・フランセスのコメントで、ADHD(注意欠如多動性障害)の流行はまもなくおさまるだろうという、なんとも流行病のようなコメントで興味深く思いました。アレン・フランセスは、DSM-IVの編集者で、すでに引退していますが、精神科臨床に対しての様々な示唆に富むコメントをしています。Twitterでも多く発信し、@AllenFrancesMD 私も、フォローしています。

Allen FrancesのTwitterの画像

ADHDは、ストラテラ、コンサータという治療薬が発売され、成人にも治療的に使えるようになったために、製薬企業も精力的にキャンペーンをしています。こういった製薬企業のキャンペーンが、過剰な投与を生み出しているという指摘は、このADHDに限りません。私も、製薬企業の医師向けの講演をすることもありますが、こういうバイアスについては意識するように務めています。多分、アレン・フランセスは、もっと厳格にこれを実行しているのではないかと思います。尊敬できる人だと思います。

ADHDの診断はとても難しいと思います。ごく典型的な症例以外だと、ADHDと診断して良いかどうか迷う例は多くあります。一方で、診断のもとの投薬し、著しく生活が改善する人もいます。そういう意味では、常に頭においておくべき疾患であることは間違いありません。

いずれにしてもこのコメントには、精神科の歴史をみると、ある時期に急に診断が増え、そしてまた治まるということが繰り返されているとも指摘されています。確かにそのとおりだと思います。これには、功罪の両方があります。悪い点は、上記のように診断されすぎ、時に必要のない薬が使われることです。良い点は、その疾患に対する精神科医の理解が進むことです。

ストラテラ、コンサータの成人への使用がなされて、私の発達障害への理解は著しく進んだとも思います。かなりの文献も読みましたし、日中の眠気との関連についても、多く経験しました。これがなければ、多くの人が日中の仮眠をナルコレプシーと診断され、漫然とモディオダール(覚醒メカニズムを刺激する薬)を投与され続けていたのだと思います。

もちろん、誤診もあります。しかし多くの場合、誤診も患者さんに、ADHDの可能性もありその疾患の特徴はこのようなもので、自分でも自分に当てはまるかどうかを検討してほしいというような、相互の情報交換を多くする中で、明らかになってきます。薬物の投与開始についても、患者さんの意見を聞きながら決めていきます。治療の目的は、患者さんの生活を改善し、より幸せな人生を送れるようにすることです。そのための診断であって、診断が最終目的でもないのです。誤解を恐れずに言えば、誤診のままでも良くなる精神科の患者さんは多くいます。

アレン・フランセスの言うように、流行はおさまり、より適切な使われ方が浸透するように思います。彼は、エイブラハム・リンカーンの言葉を最後に引用しています。「ある時期すべての人をだますことはできる。また、一部の人をずっとだますこともできる。しかし、すべての人をずっとだますことはできない。」

2014年11月10日月曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (3) ドパミンの仮説

注意欠如障害の治療薬であるコンサータは、メチルフェニデート(リタリン)の徐放剤で、血中濃度の急激な上昇をさせずに、12時間程度の作用時間を保つように設計されている薬です。この薬は、下記に示すようにノルアドレナリンとドパミンの取り込みを司るトランスポーターの働きを抑えて、シナプス間隙のドパミンまたはノルアドレナリンを増やします。







脳の側坐核という部分のドパミンの放出が増えると、これが快刺激となって依存が形成されると言われています。メチルフェニデートはドパミンの作用を増強させるので、依存性がある薬物ですが、コンサータは徐放剤であるために急激な血中濃度の上昇がなく、比較的依存性が少ないと言われています。

さて、日中の眠気に関してこのドパミンはどのように働いているのでしょうか。ドパミンは、直接的にどのように睡眠覚醒に関与しているのかは、まだ良くわかっていないようです。しかし、細胞外のドパミン濃度が睡眠時よりも覚醒時に増加することが知られています。更にドパミントランスポーターが生まれつき無い動物では、ドパミンがより強く働いていることが推察されますが、そのような動物では覚醒時間が増加するといわれています。このようなことから、ドパミンは覚醒を起こさせる作用があるようにも考えられています。

従って、このようなドパミンの機能低下が場合によるとADHDの日中の眠気に関与している可能性もあります。

ところで、メチルフェニデートは、日中の睡眠発作を主症状とする過眠性疾患であるナルコレプシーにも用いられる薬物で、これを投与すると日中の眠気はとれます。多くの場合は、強い日中の眠気を呈するADHDの患者さんにコンサータを投与すると、眠気はとれます。この場合に、この眠気の改善に一体どのような神経メカニズムが関与しているのかは、非常に興味が有るところです。ナルコレプシーに欠けているオレキシンは、ノルアドレナリンにもドパミンにも作用してこれらの働きを増強させます。従ってADHDの眠気には、一般的に覚醒系全般の機能低下が関わっているのかも知れません。今後の研究が期待されるところです。



参考
ドパミンと睡眠に関わる研究の例
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6000

2014年4月26日土曜日

睡眠専門外来をメンタルクリニックで行う意義

現在、日暮里のあべクリニックと、所沢市小手指の平沢記念病院で、睡眠専門外来を開いています。あべクリニックは、都会型のメンタルクリニックで、精神科ディケアもやっています。平沢記念病院は、入院病床もある精神科単科の病院ですが、老人病棟もあり思春期の患者さんから高齢者までが見えています。

そこで、睡眠専門外来をやると、訴えは睡眠に関連したものだけれども、実際のところは他の疾患の症状として睡眠を訴えて見える患者さんが多くいることに気づきます。最も普通にあるのが、うつ病です。うつ病はほとんどの患者さんで睡眠障害がありますが、うつ病の症状を訴えるよりも、睡眠障害のほうが訴えやすい面があるためか、睡眠障害で見える方も多く居ます。

また、最近多く見えるのが発達障害です。これは、すでに書き込みましたが多くいるので驚きます。私のところに見えるのは多くは、中学生、高校生以上です。成人の方も多く見えます。正直なところ、ストラテラやコンサータといった、発達障害の薬が使えるようになって、この疾患の診断が多くなったようにも思います。ここ2年位のことです。

また、まれですがてんかんの患者さんが見えることもあります。てんかんは、多くは痙攣を伴う疾患ですが、単純部分発作という病型は、意識の低下を主体とする病態で、日に何度かこのような状態になります。ある患者さんは、意識がなくなって、はっと気づいたら、時間が経っていて、その間の時間が抜けていたというようなことを言っておられました。このような場合は、てんかんの治療を行います。てんかんの治療で、この症状は収まりました。

睡眠専門外来は、このように誤診を防ぐためには、精神科一般の幅広い知識が必要だと思います。このようなことは、7月に行われる学会で発表をしようと思って現在準備をしているところです。

2014年3月3日月曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (1)

このエントリーはより新しいエントリーが有ります。

より新しいエントリー      『ADHD(注意欠如多動症)の日中の眠気』
こちらも合わせてお読みください 『日中とても眠くて困っています』

睡眠専門外来を2つの医療機関で担当しています。そこには、様々な患者さんが来ます。日中の眠気で訪れる患者さんを睡眠障害の視点から、発達障害に発想を転換する必要があるケースに多くであいます。いくつかの症例をまとめて修飾してですが例としてあげますと、30代の女性が他院の睡眠専門外来で過眠症で治療を受けていた。ベタナミン(覚醒作用のある、過眠症に用いられる薬剤)を投与されていまし。いまひとつ良くならないというので、睡眠専門外来を変えてみようということで来院されました。よくよく話を聞いてみると、仕事を順序立てるのが苦手で、休みの日などはぐったりと一日寝てしまうということでした。また、別の患者さんも、昼間の眠気で来院されました。この方の場合、遅刻が多い、日中の眠気などから、睡眠相後退症候群(生物時計の障害)と誤診されていました。その他にも、小学校高学年から中学生の患者さんで、学校で居眠りが多いということで指摘を受けて来院した人が何名かいます。小さい頃の様子など詳細に聞いてみると、怪我が多い、忘れ物が多いなどということも多くあったようです。

【追記】このような患者さんに、ストラテラ(アトモキセチン)を投与すると、興味深いことに睡眠が改善するといいます。よく眠れるようになった。寝起きの悪さが治ったということをいう方が多くいます。ストラテラは通常、朝投与しますので、睡眠に対する直接的な効果は少ないと思われます。しかし、睡眠が改善するということは日中のノルアドレナリン系の機能亢進が、二次的に睡眠のメカニズムに好ましい影響を与えている可能性があるのかもしれないと思います。また、日中の眠気も改善します。これは、夜間睡眠の改善が日中の睡眠の改善に関わっているのか、それともストラテラの直接作用なのか、あるいはその両方なのかはわかりません。脳幹部の青斑核という部分にノルアドレナリンをつくる神経細胞があるのですが、この細胞の働きが、注意を集中するときには活発になります。アトモキセチンはこのノルアドレナリン神経系の働きを高めるため、日中の覚醒度が上がり、その二次的結果として夜間睡眠が改善するというのが考えられる作用機序です。

 先日日本に来ていて、たまたま講演を聴く機会のあった、Umesh Jain先生(カナダ人でAD/HDが専門家)に、講演後の食事会で話しを聞いてみたことがあります。自分は睡眠が専門というと、彼もAD/HDの睡眠をやっているといことで、論文を幾つか紹介してくれました。


Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences / Yoon-SYR, Jain-UR, Shapiro-CM / Sleep Medicine 14 (2013) 648–655


 この論文は、成人のAD/HDの眠気について質問紙調査したものです。これによると、なんと約85%の患者さんが昼間の眠気や睡眠の質の悪化を訴えています。夜間睡眠については、入眠困難、睡眠の中断、睡眠中の暑さなどです。ADHDにはサブタイプがあって、Inattentive(注意欠如が主体)とCombined(多動もあり)に分けて結果を解析していますが、Inattentiveタイプの方が、睡眠の問題や日中の疲労感があるようです。また、男女では日中の疲労感はInattentiveの女性が一番強いようです。

 このように考えると、注意欠如障害のひとの日々の生活の質を向上させるための治療は、注意欠如の症状だけでなく睡眠覚醒を含めて総合的に行うのが良さそうです。それで、私は、運動などもお勧めしています。コンサータなどは覚醒系の薬物なので、夜間には効果は切れているかもしれませんが、影響が出る可能性はあります。ここで、眠剤を投与することが誤りではないかもしれませんが、生活指導として運動などを取り入れながら、生活リズムを整え、夜間睡眠の質を生活から向上させることも大切であるように思われます。


しかし、何よりも、睡眠専門外来に来ても、睡眠の障害以外の可能性も考えて、きちんと診断することが、それ以前のこととしてもっとも重要であることは、言うまでもありません。専門外来は、専門的な診断治療という意味では良いのですが、このような他の疾患を見逃す可能性については、十分に注意しておくことも大切であるように思われます。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

2014年2月22日土曜日

大人のAD/HD

田中康雄先生(北海道大学)の、大人のAD/HDをいう本(講談社)を患者さんがもっている。見せてもらったところ、大変わかり易く書かれている本で、購入してみようと思いました。
12月から、コンサータも成人に使えるようになり、ストラテラとコンサータの両方が成人でも用いることができます。また、成人に対してのコンサータの効果についての手応えはまだ少ないですが、小児に対するのと同様に成人に対してもコンサータは効果発現は即日に現れるように思います。このような中で、生活指導を丁寧にしていくことが真の治療に結びつくと思いますが、やはりそのようなときに、このような本があると指導がしやすくなります。

発達障害があると、社会の中ではさまざまな苦労があります。ADHDあるいはADD注意欠如障害の場合も、自分が努力しても間違いがあり、社会からは努力していないように思われてしまう面があり、患者さんは苦労しています。このような、薬物療法がそのギャップを埋めてくれる事になれば、患者さんにとっては朗報です。