2014年11月10日月曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (3) ドパミンの仮説

注意欠如障害の治療薬であるコンサータは、メチルフェニデート(リタリン)の徐放剤で、血中濃度の急激な上昇をさせずに、12時間程度の作用時間を保つように設計されている薬です。この薬は、下記に示すようにノルアドレナリンとドパミンの取り込みを司るトランスポーターの働きを抑えて、シナプス間隙のドパミンまたはノルアドレナリンを増やします。







脳の側坐核という部分のドパミンの放出が増えると、これが快刺激となって依存が形成されると言われています。メチルフェニデートはドパミンの作用を増強させるので、依存性がある薬物ですが、コンサータは徐放剤であるために急激な血中濃度の上昇がなく、比較的依存性が少ないと言われています。

さて、日中の眠気に関してこのドパミンはどのように働いているのでしょうか。ドパミンは、直接的にどのように睡眠覚醒に関与しているのかは、まだ良くわかっていないようです。しかし、細胞外のドパミン濃度が睡眠時よりも覚醒時に増加することが知られています。更にドパミントランスポーターが生まれつき無い動物では、ドパミンがより強く働いていることが推察されますが、そのような動物では覚醒時間が増加するといわれています。このようなことから、ドパミンは覚醒を起こさせる作用があるようにも考えられています。

従って、このようなドパミンの機能低下が場合によるとADHDの日中の眠気に関与している可能性もあります。

ところで、メチルフェニデートは、日中の睡眠発作を主症状とする過眠性疾患であるナルコレプシーにも用いられる薬物で、これを投与すると日中の眠気はとれます。多くの場合は、強い日中の眠気を呈するADHDの患者さんにコンサータを投与すると、眠気はとれます。この場合に、この眠気の改善に一体どのような神経メカニズムが関与しているのかは、非常に興味が有るところです。ナルコレプシーに欠けているオレキシンは、ノルアドレナリンにもドパミンにも作用してこれらの働きを増強させます。従ってADHDの眠気には、一般的に覚醒系全般の機能低下が関わっているのかも知れません。今後の研究が期待されるところです。



参考
ドパミンと睡眠に関わる研究の例
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6000

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