2016年3月27日日曜日

早稲田大学卒業式 2016

3月26日土曜日に、早稲田大学の卒業式がありました。昨年も卒業式についてのエントリーを書きましたが、もうあれから1年立ってしまったわけです。今年は、多くの卒業生と先月タイに行ったりしたので、何かもう大学ではこの学生たちに会えないと思うと寂しい思いです。

早稲田大学の卒業式では、教員が全員壇上に上がります。
その壇上から、総長、学術院長や退職する教員の挨拶、そして博士、修士、
スカラーアスリートらの表彰を行います。私も壇上に上がりました。
壇上から見た卒業式の写真です。

卒業式の後は、毎年のように行う追いコンがあり、昨日も楽しく過ごしました。




2016年3月25日金曜日

社会の変化とADHDの診断

多くのADHDの患者さんを診るようになって思うことは、社会の変化がADHDを顕在化させているのではないかということです。同じような考えを持っている人も多分多くいると思います。DSM-5によるADHDの診断項目を見てみましょう。注意欠如の項目は、以下のとおりです。

A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。
a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。

17歳以上では、このうち5つが当てはまればよいのですが、どれも個人レベルで言えば忙しさ、社会的には情報量や必要な処理の量によって該当するかどうかが変化することは想像できます。

いろいろな雑誌などのインタビューで、うつ病の増加やADHDの問題などについては、このような視点で答えています。このような社会の変化は様々な点で明白です。

例を上げてみましょう

  • 離れていても意思交換ができる。テレパシーなど夢のようでしたが、携帯電話の普及でほぼこれと同じことができるようになっています。電話をして相手に「今どこ?」などと聞くのは、昔は考えられませんでした。
  • これによって、プライバシーはほぼ失われてしまいました。営業の人も、ちょっとの時間に一休み、裏道で昼寝もできましたが、今は下手をすればGPSで位置まで確認されてしまいます。
  • これ調べておいてね、と言われてできることは昔は限られていました。図書館に行くにしても開いてなければいけませんし、それなりの時間を取る必要もあります。ところが、今は、「オッケーGoogle」で、スマホが何でも教えてくれます。24時間いつでも調べられます。調べれば調べるだけ、指数関数的に更に調べることが増えてくるということになります。
  • コンピュータも便利で良いのですが、これによってやれることが増えて過ぎています。昔は、学会のスライドを作るにも、原図をつくって、グラフは綺麗に定規でつくる。これをスライド屋に頼んで、ブルースライドにしてもらう。そうすると、どうしても学会の3日前までに原図を仕上げなければなりません。また、それからあとはスライドは直せないわけです。ところが、今は発表の直前まで修正が効きます。

自分の生活を考えてみれば、それぞれの方がそれぞれの生活に当てはまる様々な例を上げることができると思います。

このようなことから、昔であれば社会生活に特に問題なく、少し不注意なくらいで、いろいろとアイディアもあるしということで、問題なく社会に溶け込んでいた人が、他の処理能力の早い人と同じように仕事をしなくてはならないということで非常に苦労をする結果となってきているわけです。

さりとて、人は生きていかなければなりません。社会との摩擦の中でストレスを感じ、そしてうつ状態になる。そういう人が増えているようにも思います。

休暇を十分に取る、そういうことの大切さが次第に気づかれているようにも思いますが、一方で逆方向への動きもあるようにも思います。競争が重要な社会では、少しでも前にという意識が働くのも無理はありません。

科学が人々の生活を豊かにすると信じられていた時代から、生活を豊かにした面はありますが、患者さんとお話をしていると、精神的な世界の豊かさについてはまた別の側面で考える必要を改めて感じます。


2016年3月20日日曜日

春休みの工作 (1)

毎年、2月には入試などの業務があり、3月はじめには国際シンポジウムがあります。これが終わると、卒業式まで少し暇な時期ができます。いわば、これが大学教員の醍醐味といいますか、家でいろいろなことができます。2年前は、この時期に春休みの自由研究のような論文を一つ書きました。
2014年春休みの自由研究
昨年は、車のオーディオの工作をしました。

そして、今年は、日曜大工をしました。私は仕事部屋を持っていません。廊下の一部を仕事部屋としてオープンな空間で仕事をしています。そこも少し手狭になり、もう少し本棚がほしいと思いました。更には、ここのところ音楽はほとんどBluetoothを通じてスマートフォン(Xperia)で聴いているので、それで再生する良いシステムも付いていると良いと思いました。

いろいろ思いを巡らせているうちに、バックロードホーンのスピーカーを作ってみようと思いました。バックロードホーンスピーカーはオーディオ好きの粋人がいろいろとインターネットに書いているので、情報がたくさんあります。どうせ作るなら、最も小さな8cm経のフルレンジスピーカーを使って、バックロードホーンでどれだけ低音を増幅できるのか挑戦してみようと思ったわけです。それで、上部にスピーカー。下部に収納のある、本棚スピーカーを制作してみました。



まだ、途中ではあるのですが、なかなか良いできなので紹介してみたいと思います。春休みの工作で引っ張るつもりまありませんが、この途中経過と、完成した最終形も一度紹介したいと思い、(1)としました。

写真にあるように、アンプはBOSEのPLS-1210というものを使っています。このアンプは、後ろのイコライザーのスイッチがついていて、BOSEのスピーカーに最適な出力を作れるのが特徴ですが、これを一般スピーカーのXの位置にしておくことも大切です。それがわからず、何かボンボンという低音が妙に強調されて割れるような状況でしばらく使っていました。スピーカーユニットはFOXTEXのFE83Enというものをつかました。自作スピーカーの世界では定番のスピーカーのようです。経が8cmの本当に小さなスピーカーですが、良い音を引き出すことができるので驚きました。

結局、写真のようなものをつくりました。内部も撮影したものを掲載します。

スピーカーは音を聴かなければなんとも言えないのですが、バックロードホーンという、スピーカーの後部から長い筒を使って、低音を増幅する仕組みがとてもうまく働くのだということを実感しました。いわば弦楽器の箱が共振して鳴るのと同じ仕組みです。箱全体が鳴るので、楽器がなっているようなイメージが有ります。

もう少しポリッシュ・アップして、本棚なども含めて完成版となった時にもう一度ご紹介したいと思います。

2016年3月19日土曜日

うつ病の運動療法 (2) 介入効果の判定


うつ病の運動療法に関して、総説を書く機会が得られました。そこで、Exercise と Depressionをキーワードとして、最近の臨床研究を調べなおしてみました。新しいこの総説は、出版されてしばらくしたら、ここで読めるようにしても良いかとも思っています。

この総説には含めませんでしたが、少し面白い文献があったので紹介します。2005年に発表された、イリノイ大学のキネシオロジーのグループの論文です。論文では、174名のもともと運動習慣がなかった高齢者に対して、運動介入をしました。

運動は、6ヶ月間のウォーキング あるいは 低強度の筋肉トレーニングとストレッチ です。対象となった174名を2つの群にわけて、このどちらかの運動をさせたということです。

結果としては、どちらの群も介入を初めて、すぐにうつスコアは改善し、これは開始後60ヶ月でも継続していたということでした。運動の種類は、この改善に関連がなく、どちらの運動群も同様の改善が見られたということです。

このような結果を見て思うのは、SEDENTARY(座ってばかりの習慣)な人たちは、まずは精神的に抑うつ的になりがちだということ。それに対して、運動介入はこれを改善する効果があるということです。しかしながら、ここで運動介入は、運動したことが良かったのか、実際に心拍数が上がるなどの身体的な改善効果が効果的なのか、身体運動という介入方法が良い効果をあたえるのか(これはわかりにくいかもしれませんが、運動に関わる介入はたとえ心拍数がそれほど上がらなくても、様々な身体の部位に刺激をあたえることになるのと、その場面の様子も他の介入、たとえば認知療法とは異なったものになるとうことです)、はまだ良くわからないという気もします。

こういった論文は、興味深いですが、上記のような切り分けができる研究をしていかないと、何がうつ状態の改善に良いのかはよくわかりません。よくわからなければ、応用もできないということです。そういう意味で、この論文は今回の総説には取り上げなかったということもあります。


<引用した論文>
Depressive Symptoms Among Older Adults: Long-Term Reduction After a Physical Activity Intervention

Motl, Robert W.; Konopack, James F.; McAuley, Edward; Elavsky, Steriani; Jerome, Gerald J.; Marquez, David X.

Journal of Behavioral Medicine;Aug2005, Vol. 28 Issue 4, p385

ABSTRACT:  We examined the effects of two physical activity modes on depressive symptoms over a 5-year period among older adults and change in physical self-esteem as a mediator of changes in depressive symptoms. Formerly sedentary, older adults ( N = 174) were randomly assigned into 6-month conditions of either walking or low-intensity resistance/flexibility training. Depressive symptoms and physical self-esteem were measured before and after the 6-month intervention, and 12 and 60 months after intervention initiation. Depressive symptoms scores were decreased immediately after the intervention, followed by a sustained reduction for 12 and 60 months after intervention initiation; there was no differential pattern of change between the physical activity modes. Change in physical self-esteem predicted change in depressive symptoms. This study supports the effectiveness of an exercise intervention for the sustained reduction of depressive symptoms among sedentary older adults and physical self-esteem as a potential mediator of this effect.

2016年3月15日火曜日

【CD Review】 Midnight Sun - Dee Dee Bridgewater (2011)


ジャズボーカルは、実はあまり聞かないのですが、たまたまテナーサックスのCraig Handyの最近の活動についていろいろとネットブラウジングしていた時に、彼がDee Dee Bridgewaterの歌伴をやっていることを知って、それからDee Deeのアルバムを聞いたりしています。Dee Dee Bridgewaterは、若いころフュージョンバンドをやっていた頃にはいくつかのレコードを買ったことがあります。最近またちょっと気になってGoogle Play Musicで聴いてみたところ、表題のこのアルバムがバラード集として逸品でした。

最近、ジャズボーカルでメインストリームのレコーディングがどうも少ないように思っています。今風のボーカルも良い物は勿論ありますが、このDee Deeのアルバムは、ストリングスも入って、ゆったりとバラードを、メインストリームジャズ、正統派ジャズとして歌い上げています。

録音も良いと思います。ベースの音が、太くしまっているので、これに彼女のボーカルが支えられて、落ち着いて聞けます。ピアノトリオバックになっても、同様にベースのバックにピアノが生きています。

いくつもスタンダードの名曲が入っていますが、私は特にMy Shipが好きです。この曲は、Michael Breckerも演奏していたと思いますが、ボーカルナンバーであることはよく知りませんでした。Dee Deeのボーカルもやはり逸品です。

Dee Dee Bridgewater ‎– Midnight Sun

2011
1 Midnight Sun 7:22
2 Angel Eyes 5:51
3 My Ship 4:56
4 Que reste-t-il? 4:58
5 Lonely Woman 5:21
6 Speak Low 4:17
7 I´m A Fool To Want You/IFall In Love Too Easily 4:09
8 L´Hymne à lÁmour 5:04
9 The Island 3:42
10 Good Morning Heartache 5:11
11 Here I´ll Stay 5:45



2016年3月13日日曜日

胃の内視鏡検査

先日、胃の内視鏡検査を受けました。胃にポリープがあり、一年に一度チェックをずっとしていたのですが、今回は随分小さくなっており、またヘリコバクター・ピロリの感染もないので、もう毎年やる必要はないということでした。次は3年後で良いということですが、2年後くらいにやろうかと思っています。

内視鏡検査は、まず喉に麻酔をしますが、麻酔薬を含んだ液(多分キシロカインだと思います)を10分くらいの奥にためておくのは、なかなか苦痛です。どうしても嚥下反射がおきてしまって、飲み込みそうになります。唾液も出てくるので、口の中がいっぱいになって辛いなと思う頃に、そろそろh吐き出しても良いでしょうと言うお許しが出ます。

その後、口にバイトブロックをはめられて、内視鏡のチューブを飲み込みます。私がやっているのは、鼻から入れる細いやつではなく、従来の太いやつですが、毎年やっていると大分慣れてきて、口からチューブが食道をとって、胃に入り、更に十二指腸に行くのもさほど苦でなくなります。と言いますか、いずれ何事も無く終わることはわかっているので、それなりには苦しいのですが、毎年のことだったので、まあこんなもんだろうと思ってその時間を過ごせるようになっています。きちんとチェックしてもらっているという達成感もあります。それが来年ないというのは少々拍子抜けした感じもありましたす。

さて、私の胃の内部の写真を掲載しましたが、そんなものは見たくないという方もいるかもしれませんので、やや低い解像度で掲載しました。こういう自分の内部の様子を見る機会があるのは、いろいろなことを考えさせられます。

この検査のために、前の日の午後9時以降は食事を取らないわけですが、確かに昨夜食べたものが、胃になくなっているということも、何か新しい発見です。自分の胃が動いていることや、胃の写真を見て食べたものがここに入ってくるのであれば、もう少し良く噛むようにしたほうが良いとか…。

私も、医学部を卒業しているので人の内臓の仕組みはわかっているつもりです。教わったように、胃は十二指腸につながり、そして小腸、そして上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸肛門とつながっています。食べたものは、胃を通り過ぎればそれらに送られ、習ったように小腸で主に栄養分が吸収されます。別のエントリーで触れた、炭水化物ダイエットをすれば、個々に入ってくるものの質が異なり、それによって吸収のメカニズムは同じように働いても、実際に取り込まれるものの内容が変化して、体組成に影響を与える。

内蔵は、胃などの消化管だけでなく、ここに肝臓、膵臓など様々な実質臓器がつながっていますが、それらが実際に習ったように体の中では働いており、その結果として物理的に体重が減ったり、体組成が変わったりすることを体の内側から見て実感するのは非常に興味深いことです。

さらに、循環器系の働き、あるいは血管の質の変化なども確かに常に血液の性状が好ましくない状態が続けば次第に劣化してくるであろうということも理解できます。筋トレをすれば筋肉は肥大し、それには栄養も絡み、更に神経系もこれと同様に、刺激によって反応して変化するわけです。

そう考えているうちに、ここに加わる別の因子…。「老化」ということについて、考えが及んできます。加齢による変化というのは、このような物質レベルのメカニズムとはもう一つ別の軸を、生体の変化の理解に加えます。

自分も、最近は老化ということを自覚しています。胃の内側をみて思うのは、顔を見て思うのと同様に、体全体に老化のプロセスは進んでいて、これはいくら胃に入れるものに注意を払っても、あるいは、一般的に生活に気をつけても止めることができるものではないということです。

健康科学的には、それでも健康に老化するということは可能なわけですが、胃の内側を眺めながら思ったのはそれよりも、一体、どうして老化のプロセスがあるのかということです。動物は、成長して、成人に達したら、そこで定常状態を保てないのはどうしてなんだろう、とふと思いました。

2016年3月7日月曜日

タイでのセクシャル・マイノリティー

タイの大学は、ご存じの方も多いと思いますが、学部にはほぼ制服があります。日本の私立高校の制服のような感じですが、女子は、白いブラウスに濃い色のボタン。紺のスカートで、スカートの丈はいろいろでした。男子は、ブレザーという感じです。大学生の制服は、日本ではほぼないので、その話をすると、タイでも制服を廃止しようと言う動きはあるようです。タマサート大学は自由な校風で知られているようで、少なくとも一部の学部では制服を廃止しているようです。チュラロンコン大学の先生にその話を聞いたのですが、チュラロンコン大学はやや保守的な大学で、制服は廃止されていないということでした。

しかし、そこで彼が意外なことを言いました。制服は、女子のものも男子のものもどちらでも自由に着ることが認められているんだよ…と。最初、私は意味がよくわかりませんでしたが、性的違和(性同一性障害)などのいわゆるセクシュアル・マイノリティーの学生に対する配慮という意味だとわかりました。

タイの大学に滞在していると、ゲイであろうと思われる学生がいます。この話から、タイはなぜそんなにセクシュアル・マイノリティーに対してオープンなんだろうとう疑問を先生に投げかけてみました。チュラロンコン大学の先生は、最近の人権教育の話や、テレビなどでも随分とゲイやレズビアンの人が出る。また、政治家などにもいるので、国民がそういう人たちを受け入れるのではないかと言っていました。しかし、むしろ国民が受け入れているから、そういう人たちがテレビに出たりするということを話していました。しかし、むしろそれは逆で、受け入れられる素地があるから、テレビに出たりそういう職業についたりするのではないかというと、確かにそうだということで、実際、なぜタイでセクシュアル・マイノリティーの人たちが受け入れられやすいのかは不明でした。

私は、一つには仏教的な考え方が根底にあるのではないかと、思いました。しかし、本当のところは良くわかりませんでした。もう少し考えてみると、チュラロンコン大学の先生はおっしゃり、次に会った時にまた聞いてみようと思っています。

このことは、精神医学的にも興味深いです。社会的なスティグマがほぼ無いとすれば、比較的セクシャル・マイノリティーに対する疫学研究がやりやすく、実際にどのくらいの割合の人たちがこういう問題を持っているのかが明らかになると思います。タイの状況をみると実はかなり多くの人達がこの悩みを持っているようにも思いました。

LGBT rights in Thailand
https://en.wikipedia.org/wiki/LGBT_rights_in_Thailand

2016年3月4日金曜日

北京大学からのADHDの運動療法: スーパーグロバル大学プログラムによる早稲田大学スポーツ国際シンポジウム

本日、文部科学省によるスーパーグロバル大学(SUG)プログラムの、国際シンポジウムが早稲田大学東伏見キャンパスで開かれました。これは、早稲田大学のSGUプログラムの中の、スポーツ科学学術院が中心になっている健康科学のプロジェクトが開いたものです。

最初の発表は、北京大学のDr. DongによるADHDの子供に対する、コンピュータベースおよび、身体運動による介入プログラムの効果についての発表でした。私としては、この発表がいわば最も興味のある発表でした。これについて紹介したいと思います。

Dong先生は、予備的研究として、中国のADHDの子どもたちに対して、コンピュータを用いた身体運動のゲームと、これと同じ身体運動を実際のスポーツとして3ヶ月行いました。

この研究の結果、運動プログラムは様々なテストの結果を改善させ、また教師や両親による子供の評価についても改善したということです。

実際に、ADHDに対しての行動療法は非常に効果があると思います。私がした質問は、このプログラムの間、子どもたちには薬物投与がなされていたかどうかということです。答えは、何人かはその前に薬物投与がなされていたが、プログラム参加時には薬はやめたということです。

私の印象では、薬物はこのような行動療法の効果を更に促進するように思います。我々が、アトモキセチンやメチルフェニデート徐放剤を投与する際に、薬だけで治療をするということはありません。時には、構造化された認知行動療法を導入しますし、そうでなくても日常生活についてのアドバイスを毎回の診療でしています。

私のこういったコメントに対して、Dong先生はそのとおりだともうとのお話でした。今後、このような行動療法と薬物療法の組み合わせが、ADHDの治療をより効率的に行っていくことに繋がると良いと思っています。

2016年3月2日水曜日

タイの飲酒事情 (タイ国立カセサート大学におけるゼミ合宿での経験)

日本はお酒に対して非常に寛容な国だと思います。日本のようにお酒に対して寛容な国は、勿論他にもあって、例えば中国に行った時も宴会では非常に度数の高い白酎(パイジュウ)を、「カンペー」の掛け声のもとに一気飲みしたりもします。しかし、お酒はあまり良いことでないという常識のある国もあります。最初に感じた国はインドです。インドでもお酒は飲みますが、街にいわゆる飲み屋がたくさんあるわけではありません。通常食事をする場所ではお酒は飲まず、飲むとすれば食事の後にバーで飲むという感じです。

タイもそういう国の一つです。食事の時に、ビールを飲むという習慣はありません。歓迎の食事会でも、ビールが出てくることはなく、水を飲むか、ジュースを飲むかです。マンゴージュースやグアバジュースなど、美味しいジュースはたくさんあります。

このような、禁酒の考え方は大学キャンパスでは徹底しています。キャンパスでの飲酒は一切禁止です。勿論、お酒は売っていません。また、キャンパスから300m以内では、レストランでアルコールを販売することも禁止されています。また、仏教の祝日ではアルコールはスーパーマーケットでも販売しません。

WHOによる、各国一人あたりの平均アルコール摂取量
しかし、一週間アルコールのない生活をしてみると、日本の学生もお酒は別になくても良いということが分かりました、というような感想を持っていました。カルチャーナイトと題して、食事をしながら交流をする夜があったのですが、ダンスを踊ったりしながら、お酒なしでも十分騒げましたし、私もみんなといっしょに踊りました。

そういうことなので、タイではアルコール依存症が少ないのかと思いましたが、話を聞くとやはり低所得者層ではそうでもないようです。もう少し客観的な数字がないかとおもって調べたところ、WHOのかなりしっかりした調査がありました。図に国別の一人あたりのアルコール摂取についての世界地図を示してありますが、これをみると宗教とアルコール摂取には強い関係があるようです。一番アルコール摂取が少ないのは、イスラム圏、その次がヒンドゥー、そして、仏教、キリスト教という旬です。キリスト教でも、カトリック系はやや少なめかもしれません。

しかし、大学生の飲酒に限ってみれば、日本の大学生の方が確実にアルコール摂取量は多いように思われました。早稲田大学の学生にとっては、良い経験ができたようにも思います。

アルコール反対のデモンストレーションの記事 (死体が並んでいるようですが、デモンストレーションです。)