2014年6月30日月曜日

第110回 日本精神神経学会 (2) 患者さんの自動車運転

「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」が、日本精神神経学会で配布されていました。このガイドラインは、学会員向けのものです。また、シンポジウムにも出席してみましたのでこれらについての感想を少し書いてみたいと思います。

平成25年の道路交通法では、運用基準として、患者さんが問い合わせた時には、具体的に疾患名を提示し、それらについて運転の可否を示すことになっています。しかしながら、私の受ける印象として、患者さんが自分の診断名を知っている場合に、警察に「実はわたしはこれこれこういう病気なのです。」と話すことは非常に大きな抵抗があると思いますし、大きなストレスを感じることになると思います。また、実際に、精神疾患によって交通事故を起こる確率が上がるというデータは、全くないということです(シンポジウムより)。したがって、一過性の急性精神病状態で運転に万が一問題があったとしても、それは、例えば高熱のために運転がままならないということと何ら違いがないということです。したがって、このような特定の精神疾患を取り上げて、法律の運用を行うことは、偏見にほかならないということは言えると思います。

これらの法律は、てんかん発作をもったドライバーが発作のため意識を失い、子どもたちの列に突進し死者が出るという非常に痛ましい事故がおきたために、ご遺族の強い活動がおこり成立したといういきさつもあるようです。しかし、私は疾患を持った人について吟味して運転しないようにするということで、このような事故が無くなるとは思えません。むしろ、このガイドラインが示すように、積極的に担当医師が運転について患者さんに関わるということが大切なのではないでしょうか。これは、この法律運用に関わるうえでリストされている疾患だけでなく、どのような疾患でもしっかりと医師が、危険運転が起きないように指導するということが大切だという意味です。

実際に、このガイドラインでも、こういった可能性が予想される場合には積極的に医師が、運転をしないような指導をすべきであるとも述べています。これは、非常に大切なことです。私は、やはり医師が積極的に関わることが大切だという教育を普及することが、抑制の効果があると思います。

私が診療の中で、注意が必要だと思うのは、過眠症や睡眠発作のある患者さんです。このような患者さんには、充分に注意を与えるようにしています。決して、威圧するようなプレッシャを与えないように配慮しながら、眠気によって事故の起きる可能性や、治療によって症状が回復する可能性などについて説明するようにはしています。その中で、症状が安定してから慎重に運転を考えるようにお話することが多くあります。また、交通事故を回避するのは、やはり自己責任が最も大切で、自分が危ないと思ったら絶対に運転はしてはいけないということもお話することもあります。更には、仕事が関わってくる場合には、仕事場の側の疾患に対する理解などについても充分に情報を聞いた上で、どのように対処するのかを一緒に考えるようにはしています。

交通事故を避けるように努力することは、最も大事なことです。しかし、この中で、まったく根拠となるエビデンスのない偏見によって、精神疾患の患者さんが不利益を被ることはあってはならないと思います。


===引用:一定の病気等に係る運転免許関係事務に関する運用上の留意事項について==

http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20140410.pdf

2 運転適性相談窓口の充実等
(1) 問い合わせへの適切な対応
免許の拒否又は取消し等に関する事項や免許の取得等に関する問い合わせに対しては、運転適性相談窓口(以下「相談窓口」という。)や警察署において、制度の趣旨、内容等を十分説明するとともに、免許の取得又は継続(以下「免許の取得等」という。)に係る具体的な運用基準について照会がなされた場合には、別添の「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」を教示するなど適切な対応を行うこと。



2014年6月28日土曜日

第110回 日本精神神経学会 (1)

第110回 日本精神神経学会に参加してきました。日本精神神経学会は、精神科医が集まる日本で最も大きな学会です。金曜日のみの参加でしたが、参加したセッションは、大人の発達障害の外来プログラム、精神疾患と道路交通法、そしてDSM5です。どれも興味深いセッションでしたが、特に道路交通法のプログラムは、非常に人気があり、立ち見が出た上に、別室へ中継されるほどでした。また、新しく成立した法律は、精神疾患に対する世の中のスティグマの強さに驚くとともに、がっかりさせられる側面もありました。



それぞれのセッションのことはまた少しずつ報告したいと思います。

参加したセッションはたかだか4つほどでしたので、あまり正確に学会の印象を述べることはできませんが、それぞれのセッションのレベルにはずいぶんと差があるように思いました。ある発表は、科学的な研究には基づかず、自分の臨床経験に基づいた話を討論しあうものもありました。これも悪くは無いと思いますが、こういう発表者ばかりのシンポジウムであると、私の目から見ると締りがない気がします。経験則だけでは、どのようなバイアスがかかっているのかは見えにくくなるからです。

また、これは正直な印象なのですが、私が出席したセッションだけでも、何を言っているのかわからない質問を延々とする人、周りの人に、スライドの写真を撮っては駄目だなどやたらに注意を与える人、また一旦部屋から外に出てくださいと言われているにもかかわらず、我が物顔で部屋に居座る人などが居て、自分としては、特に精神科医に変わり者が多いとは思っていないのですが、現実はどうなのかなとも思いました。

2014年6月27日金曜日

クラウドストレージ (DropBox、Yahoo!ボックス、Google Drive、SugarSync、Box、Amazon Cloud Driveなど)

最近は、クラウドストレージをよく使うようになってきました。実は、Gmailもクラウドストレージの一つとして使えますが、まとめてみると自分が使っているものは以下のとおりです。

Gmail: 時に宛名なしのメールとして文章を一時保存

Google Keep: 体重表、血圧表などをつけている

Google Drive: ファイルのやりとりに主に使う

Google ToDo List: やることリスト

Google Calendar: 予定表 (他人とも共有)

DropBox: ファイルのやりとりに主に使う

Box: 電子化した本の保存に使っている

SugarSync: PDFの論文を保存している

Yahoo!ボックス: 最も使っている様々な用途

Amazon Cloud Drive: 写真の保存に使っている

Evernote: 講演会メモ、ミーティングメモ、名刺管理

Simple Note: Androidスマホのメモとして利用。PCでも閲覧可能。

このようにたくさんのサービスを使い分けている理由は、無料での容量が少しずつなので、幾つものものを用途別に分けて使っているからです。この中で、容量が大きい物はBoxで、なぜ50GBももらえたのか不明なのですが、無料でもらってあります。ここに、比較的サイズの大きい電子化した本などを入れています。また、Yahoo!は、プレミア会員になっているので、ここも50GBのサイズをもらっていてせっかくお金を払っているからというのが主な理由で、ここを自分の様々な用途に使っています。

これらのサービスは、使い勝手はWindowsのコンピュータ上ではあまり変わりませんが、Androidのスマートフォンで使う場合には、ファイルを使うと一旦ローカルにファイルが残る、様々なアプリが選択できるかどうか、などによって少しずつ便利さが違います。しかし、スマートフォンなどで使う場合には、使うものを一旦ダウンロードして保存しローカルで作業をする。そしてクラウドに戻し、必要に応じていつでもクラウドからダウンロードできるようにしておくという考え方で使えば良さそうです。


2014年6月26日木曜日

クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか イーサン・ウォッターズ

カリフォルニアによった時に、友人のローゼンリクト先生が、この本を紹介してくれました。勿論英語版ですが、和訳が出ていたのでそちらを購入してみました。この本は、アメリカ文化が世界に輸出され、世界中がアメリカナイズされているという、アメリカ人の好きそうなカテゴリーの本で、精神医学に関連した事柄が輸出されていることについての実例を4つ挙げて議論したものです。その中の一つにグラクススミスクライン(GSK)が日本にパキシルを売り込むときの戦略が取り上げられていて、とても興味深いです。



アメリカ人は、アフガンゲリラでもベースボールキャップをかぶっているとかいうようなジョークが好きです。アメリカは、驕り高ぶったところのある国なので、時に嫌気がさすこともありますが、しかし世界情勢を考えるときには外して考えたり、全く否定したりもできない国です。集団的自衛権の議論が昨今盛んですが、この場合もアメリカについて考えずにこの議論は全く成り立たないでしょう。一方で、アメリカは日本のことはすごく考えてくれていると思いすぎることも注意が必要だと思います。日本はアジアの国なので、基本的にはアジアの国との友好関係をしっかりと築いていかなくてはいけないでしょう。

さて、前置きはこのくらいにして、この本は各章に4つの実例を出しています。

第一章 香港で大流行する拒食症
第二章 スリランカを襲った津波とPTSD
第三章 変わりゆくザンジバルの統合失調症
そして
第四章 メガマーケット化する日本のうつ病

ローゼンリクト先生は、この第四章の感想を聞きたいということを言ったので、今回のブラジル旅行中に第四章を読んでみました。

この章は精神科医の先生たちも、場合によったら製薬会社のMRの人たちも読むと面白いと思います。先に述べたように、いかにしてGSKが日本にパキシルという抗うつ剤(SSRI)を売り込んでいったかを書いてあります。私が思うに、この本には誇張や記述の誤りはあると思います。たとえば、1990年頃には日本の精神科医は本当に重い患者しか診ていなかったとか言うようなことです。日本におけるうつ病の概念が、ここ20年くらいの間に大きく変わって、それに多くはGSKの戦略も荷担していたというようなニュアンスが書かれもいます。これも誇張があるなとも思いますが、しかし、少し客観的に見てみると、必ずしも誤りでも無いのかなと思う面もあります。

正直なところ、ここに書かれている時期は私自身は、研究所で研究に多くの時間を費やしていたので、ここに書かれているそのようなキャンペーンや、製薬会社からの接待のことなどについては経験がありません。製薬会社の人から、講演の後食事会に招かれることは最近になってありますが、ここに書かれている時代はそういう世界からは遠いところにいて、実際どうだったのかが、自分の経験から言えないということもあります。

本の中では、アメリカの例として、製薬会社が医学研究者たちの論文を代筆して、出版していたということ。それによって、製薬会社とそのような関係にある研究者は、どんどんと業績(論文出版によるインパクトファクターという点数)をのばし、出世していったという事が書かれています。ある意味ではアカデミックなキャリアを積んでいくための道を、製薬会社が作るようになったということで、医学の重要なポジションに着く人たちを製薬会社がコントロールできるようになったと、アメリカの例として書いてあります。

日本においては、これよりも大分控えめなものであったように思いますが、それでも数年前は、食事会などもよく開かれていたようです。結局のところ、このような製薬企業と研究者との癒着は使用する薬物の選択にバイアスがかかるという結果となり、それは患者さんの症状に応じた薬物処方とは異なった視点からの薬物処方がなされる可能性を示しています。しかし、このような接待は、日本でも現在はなくなりました。

*GSKの方にも伺いましたが、GSKは、2016年までに医師の講演謝金などはすべて廃止する方針を決めたようです。ロイターの新聞記事でも確認しました。GSKはこのような問題となる活動を初めましたが、自らそれに終止符を打つことにしたということでしょうか。

さて、私の感想としては、このような問題がこれまでにもあり、現在もそのようなことがあるのは事実だと思います。DSM5のケースでも、アメリカ精神医学会(APA)とNIMHが協調しないことになり、APAはどちらかと言えば、臨床家と製薬会社よりの立場になっている気がします。これに対して、NIHはより純粋に研究的な視点に立った診断基準を考えているようです。日本精神神経学会は、APAほど製薬よりの立場ではなく、むしろ中立になろうとしていると思います。そのような中で、精神科医の教育にも力を入れ始めています。一方で、日本においても、ノバルティスのケースなど、アメリカに近い問題が発覚しており、今後も、中立的な研究者が主体的に研究をして、治療法の評価をするという仕組みを確立していくことは、重要な課題であると思います。

私は、薬は治療の役にたつと思っています。また、そのような薬物の開発は、製薬会社がしのぎを削る資本主義社会の競争の中でより良い物が出てくるという側面もあると思います。しかし、それを評価するのは、科学的に客観的に行われなければならないことは言うまでもありません。

従って、より望まれるものは研究者のあるいは医師・精神科医の倫理観なのでしょう。客観的にものを見るというのは非常に難しいことです。これは、研究をやっていると非常によく判ります。つい、自分の考えに近い方向にデータを導こうとしてしまう無意識の意識が働いてしまいます。お金を渡されれば、その方向に配慮するということも起きてきます。そういう意味でも、臨床家もある程度の研究経験を持ち、物事を客観的に評価する視点を学ぶ機会を持つことが大切だと思います。そういう意味では、最近研究をする医師が少なくなったのは残念なことでもあります。このような経験をすれば、その中で、データに対する客観的な判断力も養われます。このような精神科医が増えれば、一方的な視点のデータだけで、薬物の効き目を評価すると言うことは少なくなってくるようにも思いました。

治療に関わる、さまざまな製薬企業との関わりはなくすことはできないと思います。したがって、これをどのようにコントロールしていくのか、また実際に医師がどのような形で客観性や倫理観を担保していくのかが今後の重要な課題となると考えさせられる本でした。


2014年6月25日水曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (11) 予選リーグ敗退

はあ、やはり足りないなという感じがしました。早稲田大学の堀野先生も、結局FIFAランキングどおりですねと、ギリシャ戦のあとは話していましたが、予選リーグを終わってみて、きれいにFIFAランキングどおりに並びました。

コロンビア
12ギリシャ
23コートジボワール
46日本

ということです。

昨日はちょっと遅かったのですが、今朝5時に起きてテレビを見ました。前半はそれでも可能性を感じましたが、後半コロンビアが入れ替えてきてからは、プレイのクオリティーの高さに圧倒されたと思います。テレビでセルジオ越後も言っていましたが、コロンビアは先発は8人も入れ替えてきて、主力を休ませたチームで、後半ちょっと主力が入ったら、すぐにやられてしまった。それを、受け止めなければいけないと言うことは、まさにそのとおりだと思います。FIFAランキングでも、38位の差があることをみて、少しでも押し上げられるように、またこれからJFAのスタッフには考えてもらいたいと思います。

一方で、日本のサッカーは、確実に前に進んでいるので、あとは最後の勝負で決めていける世代を作っていくことでしょう。そしてそれは、まさに実現されつつあるのだと思います。今回も、ヨーロッパで活躍している選手たちは、普段のリーグ戦でチームメイトだったり対戦相手だったりした選手が、国の代表として出てきた時にどのように変わるのかを肌で感じたと思います。次は、日本がそれを実現できれば良いわけです。ヨーロッパで活躍選手たちは、それを感じ取り、そして次の世代に確実に伝えていけることでしょう。

今回のワールドカップは、ブラジルまで足を伸ばしたこともあり、大変感情移入して楽しめました。ワールドカップは、まだまだ続きます。決勝トーナメントでどこが活躍するか、見ものです。

2014年6月24日火曜日

映画:リベンジマッチ とらわれて夏

帰りの便が前日に変更になったとユナイテッドから連絡があり、ヒューストンから成田の便が、一度ロサンジェルスを経由することになりました。その確認の時に、ビジネスクラスへのアップグレードをお願いしたところ、うまくアップグレードされました。ビジネスクラスは、健康には良いと思います。フルフラットで眠れますし、体を伸ばせるので血栓ができにくいと思います。また、仕事もしやすい環境。そして、食事も非常に良いです。もちろん高いので、自分でビジネスを予約することはありませんが、今回のような長旅の時のためにマイルをためて、ビジネスにアップグレードするのがちょっとした楽しみです。

映画を二本観ました。一つは、リベンジマッチという、ロバートデニーロとシルベスタースタローン主演の映画。若い頃に、ボクシングを戦った、お互いに憎み合うライバルが、年を経た60歳代になり、リベンジマッチを行うというコメディーですが、出演者が良いこともあって、面白かったです。このリベンジマッチをやることになり、若い頃にあった様々なこだわりや、お互いの誤解などが時をへて、解決しこの二人をとりまく人たちの家族や夫婦、友人がたちの人間関係が解決していく様子も描かれています。



もうひとつは、とらわれて夏。これは、離婚した傷心の女性と息子が、ふとしたことから脱獄犯を車に乗せることになり、自宅にかくまえと言われるのですが、次第にこの脱獄犯の人間性に引かれていくというストーリーです。この映画も、ストーリーを多くは書けませんが、年を経て若い頃を見直すという側面がある映画です。




どちらも、大傑作とは言えませんが、自分自身がすでに60歳に近づいてきて、若い頃の自分の様々な葛藤をもう一度見直し、自分の人生について考えるという時期にきているので、そういった意味で感ずるところのある映画でした。

最近、漱石の「こころ」を読みましたが、こちらは若いときの問題が大きく、年をとってこれを解決という構図は同じでも、その重さや深さは大きいものでした。

初老期のうつ病の患者さんを診察する際には、やはりこのような視点で患者さんを診ることが大切なように思います。初診か、診察を始めた早い時期に、最近のストレス状況だけではなく、これまでの人生について伺うことの重要性を改めて考えました。このようなことを最初に伺うことで、治療関係はより良好になるでしょうし、また、治療成績も上がると思います。そんなことも、考えた映画でした。

2014年6月22日日曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (10) リオデジャネイロ空港での最終総括

ナタウを出て、リオデジャネイロに移動しました。リオデジャネイロでは、コルコバードの丘を見に行く予定でしたが、ケーブルカーの乗り口に行ったところ、次のチケットは18時と言われました。それでは、飛行機には間に合わず、したから見えるところはどこ、と聞いて、そこから写真をとりました。

解像度がわるいですが、丘の上のキリスト像は見えました。

その後、街を歩き、結局最終的に早めに空港に戻ったので、総括を書いています。

ブラジルのサッカーに対する情熱は計り知れないものがあることが、よく判りました。ワールドカップのテレビ番組はエンドレスでやっています。また、試合もブラジルの試合だけでなく、どの国の試合も熱心に報道していますし、街を行けば、多くの人がサッカーのユニフォームを着て歩いています。その中に、日本のユニフォームを着ている人も少なからずいるのがうれしいところです。我々が昔、スペインやイタリア、イングランドのユニフォームを格好いいと思って着たように、日本のユニフォームをブラジルに人たちが着てくれるのは、本当にうれしいことです。

ブラジルは、私の印象ではやはりまだまだ貧しい国だと思いました。ワールドカップにお金を使うならもっと国民の生活を考えるというデモが起こるのもある意味当然かもしれません。リオデジャネイロには、多くのスラム街があり、ストリートチルドレンもいます。経済は発展しつつあるとは思いますが、まだまだアンバランスで、貧富の格差の問題をどのように解決していくのか、多くの課題が残っていると思います。一方で、世界にはこのような国は多く、特別な国でもないかもしれません。こういう国に来ると、ブラジルそのものが今後どのように発展するのかというよりも、ブラジルなどの発展の可能性のある国がどのように、アメリカ、西ヨーロッパなどのバランスをもって発展していくのかに興味が引かれます。先進国も、自国の利益を犠牲にして、発展を手助けすることは無いからです。

初めて、南半球にきましたが、ラテンアメリカは余りに英語が通じないのにも驚きました。一方で、日本はアメリカ西ヨーロッパ文化圏に確実に入っているという事も痛感しました。

短い旅でしたが、ブラジルでのワールドカップを見に来て、多くの感動も得ましたし、またいりろと考えることもありました。まだ、日本代表は第3戦が残っています。日本に帰ってもこれを現地いる気持ちで応援したいと思います。なかなか厳しい状況ではありますが、全力で第3戦は戦ってほしいものです。この結果がどうあれ、日本のサッカーが確実に発展しているのは、多くのブラジル人が日本のユニフォームを着ていることからも判ります。試合の勝ち負けは、いろいろな要素がありますが、日本のサッカーが、ワールドカップごとに確実に前に進んでいることは間違いないとも確信しました。


2014年6月20日金曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (9) ギリシャ戦

試合は引き分けましたが、ブラジルでのワールドカップは本当に楽しめました。会場には日本のユニフォームを着た人たちが大勢集まりました。それは当然なのですが、結構な数の人たちがブラジル人あるいは外国の人です。はちまきを配る運動が功を奏して、みんな必勝、日本などと書いたはちまきをしています。逆さまにはちまきをつけている人などもいて、日本人サポーターがなおしてあげていました。

会場は、ほぼ日本のホームという感じでした。時折、あの飛行機で会ったギリシャ人と思われるトランペットの音色が聞こえてはきましたが、ニッポンコールが体勢を閉めていました。実際、試合後の道でも、ニッポンコールが耳についたと見えて、ブラジル人がニッポンニッポンと歌いながら帰っていました。

試合については、残念でした。比較的早い段階で、数的な優位を保ちながらも、勝つことができませんでした。ギリシャの堅守をこじ開けるには、単にクロスをあげただけでは駄目だと思います。慎重も高いですし、時に最終ラインは6枚になっていました。ショートコーナーからこじ開けるなどのアイディアが必要で、これも試みていましたが、それでもなかなかゴールを割れなかったです。

ギリシャよりも確実に良かったです。ただ、良かっただけでは勝ち点がもらえないのがサッカーですね。

2014年6月19日木曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (8) リオ、そしてナタウに到着!

リオデジャネイロの空港で荷物を預け、コパカバーナビーチに行ってきました。良いところでしたが、1-2時間いて、どうだという所でもなかったです。ただ、各国のサポーターがいて、ワールドカップの雰囲気は盛り上がっていました。帰りのタクシーが渋滞にはまって、飛行機に乗れなくなるのではないかと焦りましたが、何とか間に合いました。



ナタウへの飛行機は、日本人とギリシャ人だけのような雰囲気でした。私の横に座ったギリシャ人は、トランペットを持ってきて応援でふくんだと話していましたが、ナタウに着くと、飛行機の中でトランペットを取り出し、景気の良いギリシャ応援歌を一曲やり、同乗のギリシャ人は大いに盛り上がっていました。

ナタウにつくと雨でした。宿は問題なく探し当て、堀野先生達と合流。ほっとしました。ブラジルのお酒ピンガで乾杯をし、メラトニンを飲んで寝ました。割とよく眠れました。

今朝は、大学院の田村君とジョギングを5kmほどしましたが、また、雨が降ってきました。夜の試合までにやむと良いです。



このワールドカップ、日本は雨にたたられてますね。


2014年6月18日水曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (7) ヒューストンでトランジット

多くの人が言いますが、ブラジルへの旅は長いです。ヒューストンのトランジットは3時間ほど。アメリカ人の友人に電話をしたりしていたら、あっという間でした。

時差を解消するため、今は夜と思うこと。メラトニンも飲もう!これでもう一度眠って、ブラジルの朝が快適に迎えられると良いのですが。

2014年6月17日火曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (6) もうすぐブラジルへ出発

本日ブラジルに出発します。ヒューストン経由でリオデジャネイロへ行き、予定では日中にシュガーローフマウンテンか、コパカバーナビーチを観光して、夕方の便でナタウに向かいます。ナタウにつくのは、水曜日の夜です。

ナタウの街は、調べてみるととても素敵な街で、国立大学がありビーチリゾートで比較的安全な街のようです。宿泊するホテルもPonta Negraという地域で、ここもリゾートホテルが集まっているようなところです。海岸沿いにジョギングでもすれば楽しいでしょう。同僚の堀野先生と同宿で、堀野先生の大学院生もおられるようなので、彼らは当然サッカープレーヤーでしょうから、一緒にジョギングしたり、現地でちょこっとサッカーしたり楽しみは満載の滞在になるでしょう。

もちろん、ギリシャには勝ちます!

また、行き帰りに長時間の待ち合わせのあるリオも楽しみなってきました。帰りもリオデジャネイロの待ち合わせは長いので、観光しようと思います。今のところは、コルコバードの丘に行こうかと思っています。

今回の旅行も、一週間とったのですが、もっと長くすればよかったかと少しだけ後悔しています。たしか、スポーツと睡眠に関連した研究をやっている人がブラジルにいて、多分サンパウロだったと思いますが、ブラジルに来たら連絡しろと言っていたことも思い出しました。たしか、いつかのアメリカ睡眠学会で会ったと思います。もう一週間くらい居て、そこに行ったり、そこで講演でもさせてもらったりすればよかったとも思いますが、また次の機会を考えます。

これを持っていきますよ!
次にうちだという選手が出るまで出ないので貴重です

2014年6月16日月曜日

日本老年精神医学会 シンポジウム 老年期うつ病の臨床

日本老年精神医学会の老年期うつ病の臨床というシンポジウムにご招待を受けて、6月13日金曜日に話をしてきました。座長は、首都大学東京の繁田雅弘先生と舞子浜病院の田子久夫先生でした。演者は、5名で

1.身体症状、睡眠障害とうつ病  内田直 (早稲田大学)
2.老年期うつ病と薬物療法: 個別の細やかな対応を目指した治療戦略について考える 堀輝 (産業医科大学)
3.高齢者のうつ病に対するECT 上田諭 (日本医科大学)
4.高齢者のうつ病と認知行動療法 渡辺範雄 (国立精神神経医療センター)
5.老年期うつ病の臨床:精神療法の視点から 繁田雅弘 (首都大学東京)

でした。






それぞれの先生の発表はとても興味深く勉強になりました。2番めの堀先生は、日本スポーツ精神医学会でも活躍して頂いています。非常に優秀な先生で、まだ30代だと思いますが、ポールヤンセン症なども受賞されて、薬理学に長けた先生です。老年期のうつ病における、薬の使い方について細かく教えていただきました。特に、抗鬱剤の維持療法についてのディスカッションが興味深いと思いました。抗鬱剤の維持療法については、私自身は自分の治療法としての考えが少しずつ固まってきているので、そのうち書いてみようと思っています。

次の上田先生は、東京医科歯科大学の医局の後輩で、ずいぶん以前から知っている先生でしたが、こんなにECT(電気けいれん療法)について詳しいとは知りませんでした。私自身は、最近は電気けいれん療法は行う施設で働いていないので全くしなくなりましたが、有効な治療法であること、また施行上の注意すべき点などがよく分かりました。

渡辺先生は、認知行動療法についてお話になりました。私は、認知行動療法には非常に興味があり、認知行動療法について是非今後も渡辺先生に教えを請いたいと思っています。彼は、うつ病の認知行動療法だけでなく、不眠症の認知行動療法などについてもプログラムを統括しており、様々な少佐な知識を持っていました。このような治療法は、一般臨床の中にもっと取り入れていくべきもので、このような自分の中でも運動療法と同様どのように実践するかを今後も考えていきたいと思っています。

最後に繁田先生が統括されましたが、精神療法という視点から、繁田先生自身の長年の経験に基づいた、深みのあるお話を聞くことができまいした。それぞれの演者が熱弁したために、総合討論の時間が少なくなってしまいましたが、それでもとても有意義な会だったと思います。


2014年6月15日日曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (5) リオ・デ・ジャネイロの治安

いよいよワールドカップはスタートしました。ネイマールの活躍で、まずはブラジルが勝利をあげています。ホームはやはり強いですね!オランダとスペインの試合は楽しめました。オランダの根性の入り方が違っていましたね。同僚はすでに現地入り。ナタウのホテルもチェックしましたが、良い所ですね。

私は、リオ・デ・ジャネイロでの乗り換えでナタウに行きます。そこで3泊してまたリオ・デ・ジャネイロで乗り換えて、帰国します。それぞれの乗り換えの時間がずいぶんあるので、その間にリオ・デ・ジャネイロの街を観光しようかと思っています。しかし、治安はどうなのでしょうか。やはり本家本元外務省海外安全ホームページの情報が確かでしょう。

http://www.anzen.mofa.go.jp/manual/rio_de_janeiro.html

ブラジルはどんなところなんだろう?


自分のことは、自分で守りなさいと書いてあります。当たり前ですが、しかし、ずいぶんと注意しないといけなさそうです。殺人事件ですが、リオ市においては、

リオ市
2006年2007年2008年2009年2010年
殺   人2,4512,3772,0692,1551,628
というような感じで、安心はできません。私は、日中のみの行動で(単独行動ではありますが)、コパカバーナビーチとコルコバードのキリスト像を見てきたいと思っています。

邦人被害時間帯(2010年)
06:00~09:00~12:00~15:00~18:00~21:00~00:00~総件数
コパカバーナ121116
このように、昼間の時間も危ないですね。と言っても、多分置き引きなどだと思います。別のサッカー関係者に話をきてみますと、コパカバーナやその近辺の市場などでは、安全を自分たちで守ろうという意識はあって、お互いに守ってくれるということもあるので、大丈夫でしょう…ハハハ、という感じでした。

* 追加情報ですが、先にブラジル入りしている同僚からの連絡では、ブラジルの人たちは皆さん親切で、夜間歩くあるいは治安の悪い地域に入るということがなければ、それほどの心配はいらないということです。勿論、海外ですから注意は必要ですが。

** リオデジャネイロでの告白ですが、私はCentro、現代美術館まえで、ストリートチルドレンのひったくりにあいました。ものを奪われました。その後、警察が来て、一緒に顔を見に行こうと言われて、歩いて子どもたちが屯しているところに行きました。擦り切れた毛布にくるまって20人以上の子どもたちが居て、なんともやりきれない気持ちになりました。(2013.06.21)


2014年6月14日土曜日

DSM5 (3) アレン・フランセスによるDSM-5精神疾患診断のエッセンス(講談社)

DSMについていろいろ勉強してみようと思って、本を購入しています。アレン・フランセスの書いたDSM-5精神疾患診断のエッセンス(講談社)を手に入れて、ざっとみてみましたが、これはなかなか興味深い本です。DSM-5そのものの日本語訳が出る前にこの本が出たのも、かなり迅速に翻訳したためと思いますが、非常に興味深い読み物です。

形式は、まるでDSM-5のマニュアルそのもののような体裁です。多分、アレン・フランセスは自分自身で考える次のDSMを書きたかったのではないかとさえ思ってしまいます。勿論、そのためにはもっと違った診断分類(Nosology)ができあがるのでしょうが、もっと現実的にDSM5がより有効に使われるために書いた本であろうと思います。




このような疾患分類が、そのまま日本で有効かどうかは非常に重要な問題ですが、アレン・フランセス自身も日本語版への序で、興味深いことを書いています。

うつ病も、たとえば米国では悲しみや興味の喪失、絶望感や無力感を主訴として受診するのに対して、日本では頭痛や食欲減退、不眠などの身体症状を主訴として受診んするといった違いがあるのではないだろうか。日本では、Schizophreniaの訳語を精神分裂病から統合失調症に変えたが、こうしたことも精神疾患に対する視点の違いを反映している可能性がある。

このように考えると、DSM5は日本で診断基準として用いるためには、きちんとした科学的検証をしないといけないということになります。そのような検証をせずに、アメリカで作った診断基準をそのまま盲目的に用いることは、疑問が生じてきます。このような修正は、全く違ったものをつくり上げる結果になるのか、それとも微調整の範囲にとどまるのかはわかりません。しかし、盲目的にDSM5を使うことは避けたほうが良さそうです。

最近、様々なところでうつ病の身体症状について語られています。私自身もこのテーマに関連して何度かお話をしたことがありますが、このような症状がアラン・フランセスの言うように日本人で多いのであれば、これらも診断基準に加えた日本独自の診断基準があって良いということになります。また、そういった診断基準ができることで、日本における臨床はより質の高いものになるでしょう。米国で見てきたように、精神科の開業医のあり方は日本とアメリカで大きく違います。その違いも含めて、診断基準というものを考えるべきではないかというふうに思うようになってきました。

このアラン・フランセスの書いた本は、そういった意味でも日本とアメリカの精神医学の違いについて考える材料にはなりそうです。

2014年6月13日金曜日

3Dプリンターでカスタムメイドの人工骨を作る?!

製薬会社がおいて行ってくれるパンフレットや冊子は、あまり目を通すことが多いとはいえませんが、たまに時間があったりしてみてみると、各社それぞれ工夫をこらしています。中には、薬の宣伝ばかりというのもありますが、先日もらったものには面白い記事が出ていました。私は、整形外科医ではないので全く専門外ではあるのですが、アスリートとは付き合うので、整形外科領域の疾患をもったひと、と言いますか、骨折や靭帯損傷などを持った人と話をすることは多くあります。

目に引いたのは、表題の記事です。3Dプリンターというのはなにかとてもおもしろいものであるという気持ちが前からあって、手頃な価格になったら何の目的でもなく買ってみたいという気がしていました。そのうち、ピストルを3Dプリンターで作れるという記事が出てきて、そうこうしているうちにそれを作って捕まった人も出ました。どんなものでも、使い道を誤るとろくな事がありません。

私は、趣味的には、達人の域の職人が作ったハンドメードのサックスマウスピースをコピーしてみたらどうなんだろうと思ったりしていましたが、人工骨をつくるというのはアイディアがありませんでした。記事を読むと、骨も自分の骨と同じも形につくるとなると、これまでの技術では非常に費用がかかったのですが、この方法では非常に安価に作れるようです。

ネットで調べてみると、結構普及している技術らしく、日経にも紹介されていました。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0300H_T01C13A2000000/

こういうのを見ると、では精神科領域では何に使えるのだろうなと考えてみたくなります。


出展: ORTHO-VIEWS No.21 MSD株式会社

2014年6月12日木曜日

FIFAワールドカップ ブラジル大会 (4) 我らがサムライブルーはもうブラジル入りした

我らが日本代表サムライブルーはイトゥという日本ぽい名前の街に滞在しているそうです。彼らも調子は上々のように見えますが、ワールドカップに簡単な試合はひとつもありません。初戦の、コートジボワールは非常に強いチームでアフリカ予選無敗です。ガラタサライのドログバが話題になっていますが、アフリカ予選を負けなしで通過してきたことは、実力を感じさせます。彼達はまだ決勝トーナメントに入ったことが無いということですが、それは組み合わせが悪かった面もあるようです。日本代表は、フロリダでは仮想の相手としてザンビアには逆転勝ちをしています。是非この流れに乗ってほしいと思います。この試合は、私は日本で見ることになりますが、日本はこの試合に勝っても負けても第2戦は大きなキーになると思います。第2戦のギリシャをブラジルの地でみられることは、本当にエキサイティングです。

可愛らしい組み合わせ表

こう見るとどの組み合わせも面白そうですね。現地でチケット買ってもう一試合見られないかな?

2014年6月11日水曜日

DSM5 (2) Hanah Deckerの書いたDSMの歴史

Feinberg先生が、DSM5について批判的だったのは先述のPsychiatric Timesの記事からもわかりますが、彼にその話題について聞いたところ、アメリカではもう出版されて1年も経つので、すこし風化した話になっていました。それでも、彼がDSM-IVの編纂に携わったAllen Francisと連絡をとった話などを聞かせてくれました。興味深い話は、DSM-IVの著作権が切れて、新しい診断基準を出すことで、これで大きなお金が動き、アメリカ精神医学会(APA)にかなりのお金が入るということが一つの目的だった言うようなことで、こういうことは、公にそう言う人は居ないでしょうが、そういう側面もあったのだろうなと思います。




またこういう診断基準によって、精神医学の概念が固定されるということがあって、今回の改訂はそのことを強く意識することにもなったという気がするという話をしました。DSMのような診断カテゴリーはよく勉強すればするほど、この患者さんはどこに当てはまるのかと強く考える結果になりますが、そうすると診断基準にない症状や患者さんを取り巻く問題がおろそかになる可能性もあります。このようにカテゴリー分類は、自由な思考を固定化し拘束する面もあるので、このような面には注意は必要だと思います。

更に、議論をしていて思ったのは、このような分類や診断基準を日本の精神科医は、今度はこうなったと頭から受け入れるのが良いのかどうかも疑問でした。やはり、日本では日本の事情にあった診断カテゴリー分類があったほうが良いのではないでしょうか。国際的な共通性を考える場合には、ICDカテゴリーとの対応を考慮する必要はあると思いますが、DSMに日本の精神医学が盲目的に従う必要もないように思いました。

ただ、この機会にDSMについてはもう一度勉強してみようという気にもなりました。先にも書いたように、診断カテゴリー分類は臨床精神医学の全体的な概念を校正する疾患群をどう捉えるかということでもあるので、臨床家にとってはやはり良い勉強になることは間違いないとは思います。

そんなことで、ネットを見ているうちにHanah Deckerという歴史学者が書いた、DSMの歴史についてのエッセイを見つけました。これが短いながらも、DSMの歴史をIから5まで書いてあり、また洞察も深いので大変参考になりました。これは、別の機会に紹介してみたいと思います。更に、Decker先生の書いた本なども探してみましたが、このような診断学の歴史を少し勉強してみようかという気になってきました。



*一つ疑問に思った点。DSMはIVまでは、ローマ数字で記載しているのに、どうして第5版からはアラビア数字になったのか?
→ 読者からの情報:5.1, 5.2と改訂していく予定だからだそうです。

2014年6月10日火曜日

肥満は世界に21億人。では、飢えている人は?

私は、朝日新聞のデジタル契約をしているので、だいたい新聞はデジタルで読みます。興味深い記事はたまにスクラップします。それを読み返すということは少ないのですが、後で読もうと思ってスクラップすることはあります。この記事、「肥満の人、世界に21億人 成人、80年から28%増(岡崎明子)」は、非常に興味深く読みました。これによれば、ワシントン大学や東京大学で作っているチームがまとめた情報で、ランセット電子版(5/29)に載ったようです。原典は読んでいません。読んだほうが良いですね。

朝日新聞の記事によれば、BMIが25以上の肥満は世界の人口の男性37%、女性38%だそうです。1980年と比べると成人では28%増え、子供では47%増えたということです。成人の約38%と考えれば、28%増えたのなら1980年は10%くらいしか太っている人は居なかったのでしょうか。日本は男性29%、女性18%となっています。

これを読んで思ったことは2つ。

1.これによって、生活習慣病あるいはメタボリックシンドロームと呼ばれている疾患は更に増えているということ、特に先進国では増加している。これは、精神的な健康度も低下させていることは間違いなく、ますます運動療法の必要性が出てくるということ。生活習慣を改善して、心も体も健康な生活をしていこうということの、重要性が確認された気がします。

2.このように太った人が世界中に増えてきた反面、食料の足りない人の数はどうなんだろうと考えました。ネットで見ると、案の定増えています。下記はネットからのグラフですが、10億人の人が飢えているということです。世界の人口の15%ですね。この現象は、食料の不均一分布という減少も示しているわけです。

肥えた人が増える。餓死する人も増える。このことも考えて、適量を食べること。食料をムダにしないことを考えて生活するということ。体重のことを考えるとき、自分の健康のことだけでなく、世界の人のことも考えてみたいものです。


2014年6月9日月曜日

時間学シンポジウム 保健医療経営大学+佐賀県に初めて行ったこと

67日に日本時間学会の時間学シンポジウムに招かれて「体内時計とスポーツ」という話をしました。時間学会は、山口大学の時間学研究所が中心になって作っている学会で、この学術集会は今のところ山口大学と他の地域で交代にやるという形になっているそうです。今年は、福岡県みやま市にある保健医療経営大学で行われました。この大学に、前の時間学研究所長の辻先生が赴任されたのがここで行うことになった理由だそうです。
時間学は、時間生物学だけでなく哲学的な意味での「時間」についても総合的に研究する分野で、山口大学の時間学研究所には生物学から物理学、歴史学に至るまで様々な先生がいるそうです。学会の一般発表も少し聞きましたが、旧東ドイツの労働者の時間ということから、分子生物学的な発表まで様々でした。しかし、それぞれの発表を理解し合いながら交流するという非常に面白い面もあります。

コーディネーターの山口大学明石教授


シンポジウムは、「体内時計の効率的活用」についてでしたが、山口大学の明石教授のイントロ、国立精神神経医療研究センターの栗山室長の体内時計と記憶の話し、山口大学の小野先生の内的時間感覚(楽しい時は時間がはやく過ぎる)、そして私の体内時計とスポーツ、そしてその後労働科学研究所の高橋先生が労働と時間、京都工芸繊維大学の小山先生が生活に関わる体内リズムの話をされました。聴衆は、学会員と地域の方でしたが、みやま市という都市部ではない地域で行ったにも関わらず100名近い参加者があり、なかなか盛況でした。

私の体内時計とスポーツの話も、それなりに質問をしていただき、高校教員と思われる先生が試合の日の午前に練習をするときに、どのようにして午前の時間帯によいコンディションを作っていくかということについて質問をしていただいたりして、良い交流が出来ました。更に、夜の食事会も非常に交流が盛んで夜遅くまで語り合い、時間学研究所の方々の暖かさを感じました。

講演する私



シンポジウムが行われたみやま市は福岡県ですが、この地域は福岡県が有明海につながっている部分で、久留米市、柳川市などが近くにあります。また、佐賀県と熊本県にも挟まれており、私は行き帰りに有明佐賀空港を利用しました。私は、佐賀県に降り立ったのは多分初めてだと思います。九州で行ったことのない県は、佐賀県と宮崎県だったのですが、これで宮崎県だけになりました。この地域はなかなか良い所だと思いました。非常にのんびりしています。広い田んぼがあり、筑後川がゆったりと流れ、水は有明海に注いています。柳川市は以前にテニス選手で柳川高校出身の学生と話をしたことがあったので、そのイメージが強かったですが、水路が非常に発達していて屋形船で水路をめぐるツアーなどもあるそうです。行きの車では佐賀空港から柳川市を通って、水路や柳川高校の横を通って高校生が非常に盛んにスポーツをやっている姿なども見ました。帰りは、久留米のホテルからタクシーで有明佐賀空港に向かいましたが、筑後川の川沿いで非常に景色の良い所を通り、景色も非常に楽しめました。

のんびりした佐賀県


佐賀有明空港も佐賀県はこの空港の利用度を上げようと、いろいろと工夫をしていました。一番良かったのは、離陸の飛行機に向けて「快適な空の旅を楽しんでくんしゃい。」という横断幕を掲げていたところですが、その他にも久留米駅から空港までのタクシーが1000円で、佐賀県から補助が出ているということなどなかなか好感が持てました。確か、今度またこの地域に来る予定があったと思いますが、その時も福岡でなく有明佐賀空港を利用してみようかと思っています。おみやげの有明海の海苔やむつごろうクッキーも美味しかった。

2014年6月8日日曜日

映画: 大統領の執事の涙

アメリカ出張などで、ちょっとした楽しみの一つは映画を見ることです。行きのUnited Airlinesは、自由なセレクションでもありませんでしたし、東向き飛行の時はなるべく眠るようにしているので、映画は見ませんでした。帰りはシカゴから12時間の飛行で、なるべく起きているようにしたかったので、映画を見たり仕事をしたり、読書をしたりしました。読書は、夏名漱石の「こころ」を読んでいましたが、そのうちこれは書いてみようと思います。

帰りには3本見ましたが、その中で「大統領の執事の涙」というのが一番楽しめました。ちなみにあと2本は、ロボコップの新板と3デイズ・トゥ・キルです。映画の概要は、上のリンクから見ていただければよいですが、この映画は2つの側面からみたアメリカ黒人公民権運動についての映画だと思います。ひとつは、奴隷解放から一般市民の中で黒人が生活する中で、その地位を地道に確立していく過程を父親である大統領の執事の主人公が、そして、その父親の姿に反発するように、息子はブラックパンサー党などの、より過激な黒人公民権運動に参加し、そして映画の最後では親子の和解と絆の深まりが描かれています。

モデルとなった執事が居るようですが、彼はアイゼンハワーからレーガンまで7人の大統領に使えてきたようです。最後は、バラク・オバマが大統領となり、黒人が大統領となるアメリカの大きな良心の証を見て、そしてそれに向かって戦ってきた黒人たちの努力が実って感動する場面があります。

主役の、フォレスト・ウィティカーは、アルトサックスの名手、ジャズのチャーリー・パーカーを描いた映画「バード」の主役としてよく知っていましたが、ここでは全く違う役柄で登場していますが、素晴らしい演技を見せています。

アメリカの公民権運動は、1960年代から盛んになったことは言うまでもありませんが、たかだか50年の間に、本当に世界は大きく動いていたんだと思います。50年前は、黒人はまだ実質的には奴隷でした。この時代は、日本人を含むアジア人もアメリカでは同じように扱われていたとも言えます。実際、現代でもその残異物のような人が居て、時に失礼な言葉に出会うこともありますから。このように世界が動くということはこの先の50年でも動くということでしょう。

アメリカは、雑多な人種がいる国ですが、まだまだ階級社会だと思います。日本はどうなるでしょうか。日本は、比較的平等な日本人の国で今後もあり続けるでしょうか。アメリカや日本、ヨーロッパに居るとよくわかりませんが、現在は差別は国内でなく地球規模でおこっていて、これは、健康科学で取り上げられる肥満と国際社会問題となる飢餓というような形でもあらわれています。

2014年6月7日土曜日

日米の精神科開業の違い (2)

そこで、いろいろと疑問が沸いてきたので質問してみました。例えば、「ローゼンリクトクリニック」というような看板はつけないのかとかです。あるいは、インターネットに宣伝は載せないのかとか、あるいは、そもそも患者さんはどうやって、この医院を見つけてやってくるのかなどです。これらに対する答えは大変興味深いものでした。(つづく)

まず、看板はつけないと言うことでした。どうして?「ローゼンリクトクリニック:メンタルヘルス、不眠」とか書けばいいのにと思ったのですが、来たひとが分かるように小さなサインを付けるだけだと言っていました。じゃあ、どうやって患者さんが来るのかと聞くと、殆どすべて紹介だと言っていました。WORD OF MOUTH(口コミ)と言っていました。

では、そんなに患者さんがこなくても良いのかとも思って、一人何分くらい診るのかと聞くと、25分か50分だということです。そうすると、1日に診察する患者さんの数は、多くても10人位になります。処方箋は勿論院外です。また、注射や採血その他の処置はしないようでした。は患者さんは自費で払い、後で患者さんの方で保険からの払い戻しはできるのではないかといっていました。アメリカは、日本のような国の保険制度はなく、全部個人の保険ですので自分が入っている保険によって支払いの違いがあるわけです。

このアメリカの医療保険制度はアメリカの非常に悪い点です。このような制度なので、アメリカでは、収入が少ないと良い医療を受けることができません。この様子は、マイケル・ムーアの映画、シッコに紹介されています。




今回ローゼンリクト先生に伺った診療は、1人の患者さんに多くの時間がとれるので、とても良い医療が提供できるという点では良いのですが、お金がなければこのような医療は受けられないと言うことです。日本の医療制度は良いのだとつくづく思いました。

2014年6月6日金曜日

Kapur先生に学会でまた会う:精神科疾患と無呼吸

学会場を歩いていると、Sunaoと声をかけられました。誰かと思うと、4月に鎌倉をご案内したKapur先生でした。意気投合し、ひとしきり日本でのその後の話などをし、昼を一緒に食べようと言うことになりました。お昼に待ち合わせると、彼の医学部研修医時代の同級生も一緒に来て、一緒にご飯を食べることになりました。Kapur先生とは日本に見えたときのその後の話でもしようと思ったのですが、お友達も来たので、学会関連の話をする事になりました。

彼らは、呼吸器内科医なので、精神科のことは知りません。睡眠学会へは、睡眠時無呼吸症候群の発表を聞きに来て居ます。私は精神科医なので、精神疾患で睡眠時無呼吸症候群が多いことに話をふってみました。すると、その友達が興味深い話を聞かせてくれました。自分の患者さんで統合失調症の患者さんがいて、なぜその患者さんを診ることになったのか忘れましたが、無呼吸症候群が疑われたそうです。それで、検査をしたところ重度の睡眠時無呼吸症候群だったので、治療にCPAPをする事にしたそうです。しかし、主治医の精神科医はこれに理解がなく、必要無いのではないかという反応だったそうです。しかし重度だったので、必要だと説得してCPAP治療を始めたところ、精神症状も大幅に改善し、ある日母親もやってきて、本当にここのところ良くなった。ありがとうございましたと、御礼を言われたという事でした。こういう話を聞いても、国によらず、精神科医は、睡眠疾患の有無を頭において診療に臨む事の大切さを感じます。

この他にも、こうやってアメリカの呼吸器科の医者と話をしたりしていると、いろいろと雑多な情報を得ることができます。例えば、MediCareというアメリカの大きな医療保険会社の基準だと、CPAPの導入にはAHIは5以上あれば良いということは驚きでした。正確にはRDIで4%以上無呼吸で血中酸素濃度が下がった場合が一時間に5回以上ということですが、私はいぜんやった簡易検査ではRDI3%が9位だったので、アメリカではCPAP導入ケースになります。日本では、簡易型で40以上、通常の病院に宿泊してやるポリグラフ検査では20以上が基準です。

いろいろな解釈ができますが、軽症例でもCPAPはやったほうが良いという考え方をとっているということ。それから、基準を低くすれば、それだけCPAP会社が儲かるということ。両方あるのだと思います。アメリカは、よくも悪くも自由経済の国ということが、医療を通じても思い知らされます。

2014年6月5日木曜日

日米の精神科開業の違い (1)

精神科の医療が、全体を見れば日米で大きく違うとも思えません。私は、1990年にカリフォルニアに留学している時から、機会があるごとにアメリカの精神科の医療を見せてもらってきました。私が最初働いていた、Martinezの退役軍人病院の病棟も(職場だったので)見せてもらいましたが、入院は大学病院やその他の総合病院精神科とそんなに変わらない気がしました。勿論、アメリカなのでスペースは広かったです。外来に関しては、総合病院での精神科診療でも、それぞれの医者が自分の個室の仕事部屋に患者さんを招き入れて診療をしているところが、日本と違いました。日本では、多くの総合病院は医者は医局と呼ばれるタコ部屋で机をあてがわれ、その上で文献を読んだり書物をしたりします。そして診察は、診察室が外来にあって、そこは交代で精神科であれば精神科医が使うことになります。

ワインで有名なナパ・バレーにある、ナパ州立精神病院も見学させてもらったことがあります。ここも、日本との違いといえば、広大な敷地にあって、敷地内に教会があったりするところが違うとは思いましたが、基本的な機能がそれほど違うとも思いませんでした。更には、地域のハーフウェイハウスや、ディサービスセンターなども見たことがありますが、その時は比較的低所得者層が使っているのだと思ったくらいでした。

しかし、Rosenlicht先生の言う、「プライベート・プラクティス(開業)」は、日本とは全然違いました。彼からは、最近までは自宅から比較的近いバークレイの街なかにオフィスを構えて週に一度そこで診療をしているという話を聞いていました。それで、私は日本の医療モールのようなものかなと思っていたわけです。しかし、街を走っていても、医療モールのようなものは見たことは、ありませんでした。それでも、あまり不思議とは思わずに居ました。

ところがカリフォルニア滞在中に、今まで使っていたオフィスだよと連れて行ってもらったところは、下の写真のようなところだったのです。




両方にFeinberg先生が写っていますが、概観は普通の家となんら変わりがありませんでした。この中には、玄関近くに待合室があり、奥に数個の部屋があって、その一つが下の写真です。小さな暖炉がある普通の居室です。また、処置室などもありませんでした。それぞれの部屋も、この建物では数人の心理士や作業療法士がそれぞれここで開業をしているということでした。施設によっては、ほとんど全員が医者の施設もあるということでした。

Rosenlicht先生は、ここをずっと借りていて、週に1度だけ診療をしていたわけです。今週からは、自宅の半地下部分(あるいは、1階部分と言っても良いかもしれませんが)を改造して、やはり週1度の開業の場をそこに移すことにしたわけです。自宅と開業の場を同じにする精神科医は少ないとは思いますが、日本にも居ないわけではありません。アメリカは比較的多いということでした。この部屋も見せて貰いましたが、やはり同じような部屋でした。

そこで、いろいろと疑問が沸いてきたので質問してみました。例えば、「ローゼンリクトクリニック」というような看板はつけないのかとかです。あるいは、インターネットに宣伝は載せないのかとか、あるいは、そもそも患者さんはどうやって、この医院を見つけてやってくるのかなどです。これらに対する答えは大変興味深いものでした。(つづく)

2014年6月4日水曜日

Sleep 2014 (2) ドリーム・ウォーター

学会場に行くと、機器展示というのがあります。学会に関連した様々な商品を展示して宣伝する場です。学会には、その分野の専門家があつまってくるので、宣伝にはまたとないチャンスです。最近は、ほとんどが睡眠時無呼吸症候群の治療器である、CPAP(シーパップ: 持続的気道陽圧法)の機械ですが、中には面白いものも宣伝しています。

DREAM WATER=ドリーム・ウォーターというのを見つけました。




中身を見ると、主なものはGABAとメラトニンとトリプトファンです。GABAは抑制性の神経伝達物質の代表格で、最近では江崎グリコがチョコレートにGABAが入っていると宣伝しています。メラトニンは松果体から分泌される神経ホルモンで、夜間分泌され睡眠を促進したり睡眠覚醒リズムを調節したりします。トリプトファンは、セロトニンという伝達物質になる前の前駆物質で、眠りを促進するとも言われています。

http://www.ezaki-glico.net/gaba/pouch.html


しかし、このDREAM WATERもグリコのチョコレートと同じで、それを飲んだからといって非常に強い作用があるとも思えません。むしろ、睡眠に関連したサプリメントというのはプラセボ効果が強いので、飲んだということで暗示にかかってよく眠れるようになるということは十分あると思います。

ドリームウォーター: ドラグフリー、良い目覚め!

このフレーズも効きそうな感じです。

2014年6月3日火曜日

Sleep 2014 (1)

昨日夕方ミネアポリスに到着しました。アメリカ睡眠学会に参加するためです。これは、APSSとも呼ばれていて、
http://www.sleepmeeting.org/
上記が、URLです。2014とURLに書いてないので、多分来年は別の内容がここにアップロードされるものと思います。今回は、今朝、現地時間6月3日の8時からの、運動と睡眠のセッションで我々の研究室の有竹先生が発表するので、それを応援するのがメインです。

昨夜は、ワシントン大学のMichael Vitiello教授が、食事でもしましょうという連絡をくれたので、一緒に食事をしました。他に二人連れて行ってよいかというので、構わないよと連絡したところ、スタンフォード大学のMaurice Ohayon先生とシドニー大学のRon Grunstein先生が来ました。Grunstein先生は、睡眠時無呼吸症候群などの研究をしておられるそうですが、Ohayon先生の方は、私も何度か引用をしたことがある論文を書いている有名な方で、一緒に食事ができてなかなか幸運でした。アメリカっぽいお店でステーキを食べましたら、なかなか美味しかったです。

Ohayon先生に関連しては、加齢と睡眠についてのLetterを日本の英文学術誌Sleep and Biological Rhythmsに投稿してもうすぐ掲載されるので、その時にまた紹介したいと思います。

右奥Ohayon、手前Vitiello、左奥Grunstein、手前内田

サンフランシスコ・ベイエリア (2)

海外出張をしていると、ブログを更新するタイミングを逸してしまいます。今日は、アメリカでは6月2日月曜日。日曜の朝に日本で更新したので、月曜日に更新すれば、一応毎日ブログを書いていることになりますが、実際に日本の時間にすると一日ずれてしまっているかもしれません。いずれにしても、毎日ブログを書くことは続けていきたいので、今日は、サンフランシスコ・ベイエリアの話を書きます。

米国に来た時には、ほぼ必ずIrwin Feinberg先生に会います。彼は、私がアメリカに留学していた時の指導者で、私が尊敬する睡眠研究の大家です。今回は、アメリカ睡眠学会に参加するために出張しました。昨年までは、彼も参加していてここ数年は、ホテルの部屋をシェアしていました。彼はもう85歳で私の母親と同い年ですが、これだけ仲良くなったのは本当に幸運なことです。しかし、もうさすがに高齢なので、もう睡眠学会に行くのはやめたと言っていました。今回はそれで、彼の家に行きました。

彼は、サンフランシスコ湾の西側、イーストベイと呼ばれているエリアのケンジントンという街に住んでいます。最近まではバークレイに住んでいましたが引っ越したようです。いつもはレンタカーを借りますが、今回は、電車(BART)で行きました。



彼は、精神科医でもあるのでFeinberg先生とはいろいろな話をします。精神医学の話し、睡眠科学の話し、それから話が合うのは美味しい食事の話、その他、国際政治の話などもします。今回も、安部総理はどうだとか、オバマのことはどう思うとか、最近の中国との関係、ウクライナ情勢、それに伴う経済の動きなど、多く意見交換をしました。

彼が中でも話したがったのは、子供の睡眠紡錘波(睡眠中に出現する特徴的な脳波の波形)の話です。私は、この睡眠紡錘波の研究で医学博士をとったのですが、これについてこんなに熱心に話をしたのは久しぶりでした。85歳になっても研究に対する情熱を忘れない姿は、心を現れる思いです。自分自身も、事実に対して真摯に取り組むようにしたいとは思っていはいますが、それでも彼の姿には打たれるものがありました。

ほぼ24時間だけの短い滞在でしたが、この他に旧友のRosenlicht(ロゼーンリクト)先生と奥様も含めて、夕食を一緒にしました。Rosenlicht先生は、サンフランシスコ退役軍人病院の精神科医で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神科臨床教授も併任しています。彼は週に一度病院から離れて、個人開業をしています。これについても色々と日米の精神科臨床の違いがわかって面白く思いました。

この訪問に関連しては、DSM5についての2回め、そして、日米の開業医の精神科臨床の比較も今後してみたいと思っています。

2014年6月1日日曜日

サンフランシスコ・ベイエリア (1)

本日、アメリカに発ちます。今回は短期の出張ですが、サンフランシスコベイエリアに一日滞在し、このエリアの精神医学、睡眠学研究者と交流。そして、ミネソタ州ミネアポリスで開催される、米国睡眠学会に参加します。ここでは、我々の研究室の有竹清夏先生がシンポジウムでアスリートの睡眠について発表されます。私は、それの応援です。

今回の出張の中で、自分の中ではサンフランシスコ・ベイエリアは、短時間ですがやはり一番楽しみです。私が若いころ2年過ごした地域で、これまでもほぼ毎年訪問しています。第2の故郷と言っても良いかもしれません。サンフランシスコの街は主要な部分はほと土地勘がありますし、更にシリコンバレーと呼ばれる、南の地域からサンノゼ。また、イーストベイと呼ばれるバークレイなどの地域も私は大好きです。

アメリカ滞在中は、バークレイやサンフランシスコに行って、音楽、映画、演劇などを見ました。また、車でワインで有名なナパバレーや、ヒッチコックの映画「鳥」の舞台となっているボデガベイという小さな漁村など、何度も訪問しました。時間があればゆっくりと過ごしたいところがたくさんあります。

昨日のトピックDSM5の中でも書いたFeinberg教授にも会います。そこでもDSM5の話を聞いてみようと思います。

今回は、短期の滞在ですが、楽しんできたいと思います。