2016年2月28日日曜日

タイ国立カセサート大学でのゼミ合宿

ここのところ、一週間ブログを更新していませんでしたが、タイ国立カセサート大学へ、ゼミ生14名を連れてゼミ合宿に行ってきました。このゼミ合宿は、カセサート大学スポーツ科学部長のシリポン・サシモントンクル先生のご好意で実現できたものです。お礼を申し上げたいと思います。

カセサート大学は、バンコク市内にもキャンパスがありますが、我々が訪問したのはバンコクの西北に移動距離で約90kmほど離れたカセサート大学キャンフェンシーンKamphaeng Saenキャンパスです。ここにはスポーツ科学部があり、ここで実際にカセサート大学スポーツ科学部の学生と交流しながら、講義を受け、私も講義をし、また学生も日本における大学生活について発表しました。

カセサート大学学部長 シリポン・サシモントンクル先生(中央向かって右)
とゼミの学生
最終日には、フットサルの試合なども行い、学生からも非常に評判の良い楽しい交流でした。

タイは、ASEANの中では最も経済的発展の著しい国の一つだと思います。また、非常に経験の仏教国で、私は大学間交流のために2014年12月から幾つかの大学を訪問してきました。今回が3回めの訪問になりますが、多くの大学関係者と親しくなりました。そういう中で、タイの文化にも深く振れるようになり、いくつもの文化的興味をもちました。そんなことをこれから何回か書いてみたいと思います。

2016年2月15日月曜日

NHK TVシンポジウム「うつ病と躁うつ病 ~当事者とともに考える~」

昨年10月18日に東京で行われた、NHK主催のフォーラムが、下記に放送されます。フォーラムでは、帝京大学溝の口病院教授の張先生、杏林大学名誉教授の田口先生と、双極性障害の当事者の方々と様々なディスカッションを行いました。

精神的な疾患を持ちながらも、価値ある人生を送る。そういうことについて、非常に多くを学ぶことができたフォーラムでした。

お時間があれば、是非御覧ください。 

日時:2016220() NHK Eテレ 14:00-14:59
 タイトル:TVシンポジウム「うつ病と躁うつ病 ~当事者とともに考える


番組情報

TVシンポジウム「うつ病と躁(そう)うつ病~当事者とともに考える~」 ウェブ検索
2/20 (Sat) 14:00 ~ 15:00 (60分) この時間帯の番組表
NHKEテレ1・盛岡(Ch.2)
ドキュメンタリー/教養 - インタビュー・討論 , 情報/ワイドショー - 健康・医療

番組概要

うつ病や躁(そう)うつ病の当事者本人の声を聞きながら、家族や専門家とともに、自分らしく生きていくためにはどうしたらよいのかを考えるパネルディスカッション。

番組詳細

うつ病や躁(そう)うつ病と診断された後も、自分らしく生きていくためにはどうしたらよいのか。当事者本人の声に耳を傾けながら、家族や専門家とともに考えるパネルディスカッションの模様を伝える。討論の中では、薬を減らしながら症状を改善していく「引く治療」、人や地域との関わりを増やしながら回復を目指す取り組みなども紹介する。

【パネリスト】帝京大学医学部教授…張賢徳,杏林大学名誉教授…田島治,早稲田大学スポーツ科学学術院教授…内田直,【司会】福祉ジャーナリスト…町永俊雄
HD 16:9 コピー可

2016年2月12日金曜日

Psychiatric Times 女川町

Psychiatric Timesという精神科の情報サイトのMLに参加しています。こちらのブログでも幾つかの記事を紹介していますが、日本国内の情報だけでなく、アメリカの情報も入るので、いろいろと幅広く知識を得ることができます。少し前になりますが、このPsychiatric Timesに女川町の名前があったので、読んでみました。<記事へのリンク>

DSM IVを編集した、アレン・フランセスの文章でした。以前にもアレン・フランセスについては、紹介しましたが、彼の書いた、私が何度も引用する言葉は、この記事でも生きています。

うつ病も、たとえば米国では悲しみや興味の喪失、絶望感や無力感を主訴として受診するのに対して、日本では頭痛や食欲減退、不眠などの身体症状を主訴として受診んするといった違いがあるのではないだろうか。日本では、Schizophreniaの訳語を精神分裂病から統合失調症に変えたが、こうしたことも精神疾患に対する視点の違いを反映している可能性がある。

この文章は、東日本大震災で被災した女川町に、大野裕先生が何度も訪問しているという紹介で始まります。大野先生は女川町の佐藤さんという看護師さんのサポートをしているようです。アレン・フランセス先生は、大野先生の招きで女川町を訪れたようです。そして、そこで佐藤さんの話を聞いて非常に感銘をうけたという話です。

私が、特にこの文章で印象に残ったことは2つあります。

一つは、佐藤さんは、津波が来たら人を助けるのではなく、ただひたすら自分が高いところに上がることだけを考えろと、何度も伝えるのだけれども、このような自分中心的な考え方はなかなか日本人に浸透しないということ。人を助けに戻ることは、命を無駄に捨てること以外の何ものでもないと懸命に伝えているその佐藤さんの背景には、佐藤さんご自身が、祖母を助けようと息子さんと戻ったことで、大切な息子さんの命を失ってしまったという背景があるということでした。その話の途中で、佐藤さんは泣き出したということを書いていました。

もう一つは、この災害の後にPTSDが見られるのではないかということだったが、むしろPTSD症状を呈する人たちは少く、うつ、引きこもり、無気力、罪悪感(depression, withdrawal, apathy, and guilt)が多くみられたとしています。アレン・フランセスは、ここでも文化や様々な背景によって、診断は変わってくるものであるし、DSM至上主義での精神科医療に対しての疑問を投げかけています。

患者さん自身をよく知ること。そして、その人の背景にある生育史、家族、そして生活そのものについて十分に知り、その人の内的な世界、その人の目から見ている世界がどのようなものかを知ろうとする視点が、良い精神科医療に求められているということは、ここでもまた教えられた思いがありました。




2016年2月8日月曜日

日本人の糖質制限食のRCT (Medical Tribune記事)

Medical Tribuneという、医師向けの広報誌のメーリングリストにいつからか入っているらしく、時々メールが送られてきます。だいたいあまり目を通さずにいるのですが、下記の記載が目について読んでみました。

日本人の糖質制限食のRCT,エネルギー摂取量が400kcal抑制
学会レポート | 2016.01.19

Diabetes Daily より転載
順天堂大学の金澤昭雄先生(代謝内分泌内科学)が行ったランダム化比較試験(RCT)で、良い成績を上げたようです。記事を読むと、一日130gの糖質制限食とエネルギー制限食を比較したようですが、学会には出席していないので詳細は不明です。

良い成績というのは、
・ 一日の総エネルギーが約400kcal抑制できた
・ HbA1c(過去の血糖値を反映するマーカー)や、BMIが有意に低下した(エジェルギー制限食では低下せず)

ということでした。

糖質制限食に興味を持ったのは、私自身、変形性膝関節症の治療の一環として減量が必至の目標だったので、昨年10月より糖質制限食を実施して、この4ヶ月で5kg減量しました。これによって、先に書いたようにフットサルができるまでになったわけですが、糖質制限食について、専門家はどのように考えているのかも調べてみたところ、日本経済新聞に良い記事が出ていました。

ご飯・パン減らす「糖質制限食」、是非巡り論争続く
糖尿病を予防・安全に懸念…
2014/1/28

という記事ですが、日本糖尿病学会では、糖尿病患者さんが糖質制限をすることは注意が必要という立場をとっているようです。

まとめると、

1.健康な人のダイエットとしては、問題視する面は少なく、効果がある
2.一方、糖尿病患者さんや高齢者では代謝のバランスを崩して、時に重篤な状態も起こりうるので注意が必要

ということのようです。

私が実際に行ってみると、全く糖質を取らないようにするということよりも少なくするということで、栄養のバランスもある程度保たれるようになるのではないかという実感を持ちました。実際に、例えば、お寿司屋さんにいって、自分だけ全く握りを食べないとか、あるいはお弁当が出た時に、白米を全く食べないとかいうことはなかなか難しくて、ついそういう時は、私も食べていました。また、食事の後にでるデザートも一口二口食べたりもしました。

このような状態で続けた結果、私の場合は体重5kg減少し、いろいろと良い面がありました。実際に午後の眠くなる時間に眠気が少ないというのも大きな利点です。

私は、内分泌代謝の専門家でないので、専門的な視点からの推奨はできませんが、特に代謝疾患などのない人が、比較的効率的に半年程度の期間の中で減量するという意味では効果があるのではないかと思います。これは、運動と合わせればより効果があるでしょうし、適応のある人に対しては、進めていっても良いのではないかという感想を持ちました。

2016年2月5日金曜日

稲門医師会の設立 (2016年1月31日)

早稲田大学の校友会(同窓会)の一つとして、さる1月31日に稲門医師会が設立されました。これは、日経メディカルにも紹介されました。

設立集会の様子
(日経メディカルより転載)
私も、真ん中の後ろから3番めに写っています。
海老茶色の早稲田のジャージの方の左隣です。
早稲田大学には、医学部がありませんが、早稲田大学から他の医学部に入学して医者になる人の数は、非常に多いと思います。私自身が医者であるということもあり、私の大学院やゼミからも複数の人が医者になっています。そういった人たちが相互に交流し、親睦を深める会として非常に興味深いかいだと思いました。

実際参加してみると、必ずしも理工学部から医学部に行った人がメインではありません。政治経済学部、法学部、や文学部、教育学部などからも多くの人が医学部に入学し、医者になっていることがわかりました。出席してみると、私の滋賀医科大学の後輩も居たりして、新しい出会いもありました。

この会の設立と合わせて勘ぐられるのが、早稲田大学が医学部を作る準備をしているのではないかということです。日経メディカルにもそのようなことが書いてありましたが、我々の耳には全くそのような情報は入ってきていません。しかしそれは別として、早稲田大学に医学部ができれば確かに良いなぁという気はします。すでに、生命理工の分野では多くの研究がなされていますし、スポーツ科学部でも医学に関連した研究は多く行われています。これらが、臨床という場に集結されて、実際の医療の中で実践されていくということがしやすくなれば更に研究が発展すると思います。

会では、みんな早稲田大学に対する思いは一様に強く、何か医学部の同窓会とはまたひと味違った会でした。

2016年2月1日月曜日

ISAK (International school of Asia, Karuizawa) での睡眠セミナー



Last night, “Airweave”, one of our generous donors, kindly organized and held a Sleep Seminar for ISAK students. Prof....
Posted by ISAK [International School of Asia, Karuizawa] on 2016年1月29日
背中向きであまり良いショットではありませんが、NHKでも紹介されました。
1月29日にInternational School of Asia, Karuizawa (ISAK) にて、睡眠セミナーを行いました。この模様は、翌日のNHK(長野)のおはよう日本でも紹介されました。

上記は、ISAKのFacebookへのリンクです。ISAKについては、多くの場所で紹介されているので、そちらを御覧ください。私は、早稲田大学スポーツ科学学術院の副学術院長(国際担当)としては、うかつにもISAKについては十分な知識を持っていませんでした。今回の訪問での感想を少し書いてみたいと思います。

1月28日のセミナーは、私が関連している寝具メーカー、エアウィーヴの提供で行われたものですが、ISAK訪問と代表理事である小林りんさんとの面会を通じて、国際化に大きな示唆を得られました。エアウィーヴは、全寮制のこの高校にすべての寝具を提供しています。

ISAKは、インターナショナルハイスクールで、文部科学省の高等学校卒業資格と、国際バカロレア資格の両方が取れます。代表理事の小林りんさんは、東大卒、金融などで仕事をしたあと、ユニセフの仕事をし、起業家としてこの高等学校を作りました。世界中から学生が集まっていて、非常に期待されている高校です。

ISAKのホームページ
https://isak.jp/jp/

小林りんさんWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%82%8A%E3%82%93

ISAK日経記事
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO76269890Y4A820C1000000/

ISAKは、現在2年生までの生徒100名がいますが、この100名が一同に介して、セミナーを行いました。セミナーは英語で90分。私が通常日本語で行っている一般向けのセミナーを少し高校生向けにアレンジして行いました。セミナー自体も好評でしたが、それと同時に、このような国際的な教育機関が日本で運営されていることに非常に感銘を受けました。小林さんとも少しの時間でしたが、対談させていただきました。生徒は、アジアが主体ですが、一部は欧米やアフリカからも来ています。生徒によっては非常に裕福はプライベートジェットを持っているような家庭の子もいれば、非常に貧しくすべて奨学金で勉強している子供もいるようです。このようなほんとうの意味での多様性が、高校生に幅広い視野を植え付け、グローバルな世界観をもつ自由な発想を育むと話しておられました。

そういった理念を持つことと、実際にそのような環境(多様な生徒が実際に集まってくるということ)を実現することの間には大きなギャップがあって、これを実現するための苦労はいろいろあったのだろうという話をしたところ、非常に示唆に富む話をいただきました。学校を作るにまで至らない時点では、2週間のサマースクールを何年かやったそうです。これによって、各国の教育者との交流が可能になり、多様性のあるユニークな教育への信頼も得られたと言っていました。また、このようなサマースクールを通じて、カリキュラムのファインチューニング(微修正)も可能になったということでした。サマースクールでは、毎日アンケートをとり、生徒たちが求めているもの、気づいた点などについて、翌日にはそれをフィードバックできるような体制を作ったということです。

小林りんさん「2週間で子供は変わる」ISAKサマースクール 軽井沢に全寮制の学校をつくる
http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/27/lin-kobayashi-isak-womans-story2_n_4168648.html

今後、これらのリソースを更に人の集まりという形での、グローバル化を実現するためには、ぜひともサマースクールのような学生を招聘し、学部教育を行う企画が有効であろうと思いました。そこに、早稲田大学の学生も参加し、交流を通じて人と人とのつながりをつくり、これを修士課程入学者の増加につなげていくということです。

今回の訪問で、非常にレベルの高い人材育成の組織を立ち上げた、小林さんに感銘を受けるとともに、東京オリンピックまでの次の4年間に更に早稲田大学スポーツ科学学術院が国際化されていく大きな示唆をもらった気がしました。