2015年2月27日金曜日

ラミクタール (ラモトリギン) (2) 作用機序

さて、前回はラモトリギンの薬理作用を書きましたが、このようなナトリウムチャンネルの抑制が、双極性障害(躁うつ病)の治療にはどのように関わっているのでしょうか。

ここでは、双極性障害のドパミン仮説について理解しておく必要があると思います。双極性障害では、ドパミンが過剰に作用するということが、躁症状発現のきっかけになっているという仮説です。ドパミン仮説は統合失調症も有名ですが、このあたりの仮説は多分かなり大雑把な仮説なんだと思います。ドパミンが増えれば、どうなるというようなことではなく、ドパミンについてもそれに関わる脳部位などの違いや、そこから派生して起こる様々な神経伝達物質の「変化が関わって、躁状態や、統合失調症の症状が発現してくるのであろうと推察されます。これは、多くの研究者も考えているところであろうと思います。

さて、話を戻して、双極性障害のドパミン仮説では、ドパミンが放出され、さらにそれが興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の放出を促すわけです。このようなメカニズムでグルタミン酸の過剰遊離が起こると、アポトーシス(細胞の自殺)がおきて、脳細胞が壊れるわけですから、その結果として病状が悪くなったり認知機能の障害が起きたりすると考えられています。

ラモトリギンは、ナトリウムチャンネルの抑制を介して、このグルタミン酸の過剰放出を抑えるはたらきがあるようです。これによって、上記のアポトーシスが絡むプロセスを抑制しているということです。つまり、細胞の自殺を防いで、細胞を保護する働きを持っているということです。

しかしながら、双極性障害に用いられる気分安定剤に分類される他の薬剤である、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンもこのようなアポトーシスの抑制作用は見られます。

一方で、副腎皮質から分泌されるストレスホルモンに似た合成ホルモン剤であるデキサメサゾンを投与すると、海馬という記憶などに関連した脳の部位の細胞の増殖が抑制されてしまう。つまり、おおまかに言えば、ストレスで海馬の働きが悪くなるという現象に対して、リチウム、バルプロ酸はこれを抑制するようですが、ラモトリギンはこの効果が弱いようです。

このように、気分安定作用のある各薬剤(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン)は、それぞれ特徴を持っていて、患者さんによって効果が様々であろうと思います。ラモトリギンの特徴としては、グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体を活性化するということがあります。AMPA受容体を活性化させることが、双極性障害のうつ病相を改善させると考えられているわけです。このような作用は、他の気分安定剤では顕著には見られない作用です。

総じて、双極性障害に対する働きは複雑でわかりにくいものです。また、さまざまな解説を読みましたが、本当に何が双極性障害の病相安定に働いているのかは、まだ解明の途上であるというのが妥当なところだと思いました。しかし、このようなメカニズムが少しずつ明らかになってくることが、双極性障害の解明にもつながり、またよりはっきりとした作用機序で治療的に用いられる薬物の開発にもつながるのだとも思いました。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ


参考URL
北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座精神医学分野 講師 井上 猛 先生
 第21回日本臨床精神神経薬理学会|第41回日本神経精神薬理学会 合同年会ランチョンセミナー
http://lamictal.jp/bp/seminarlecture/contents_a_02.html

2015年2月25日水曜日

集団化と暴走について (朝日新聞記事)

朝日新聞インタビュー記事
(人質事件とメディア)集団化と暴走を押しとどめよ映画監督・作家 森達也さん

この記事を読みました。要点は、イスラム国を残虐として交渉の余地なしと考えるのが多勢で、少数意見は握りつぶされてしまう。これは、ファシズムの世論と一緒だというポイントです。中核の部分だけ少し引用します。

「 「イスラム国」の行為に対して「人間が行うとは思えない」的な言説を口にする人がいます。人間観があまりに浅い。彼らも同じ人間です。ホロコーストにしても文化大革命にしてもルワンダの虐殺にしても、加害の主体は人間です。人間はそうした存在です。だからこそ交渉の意味はあった。そうした理性が「テロに屈するな」のフレーズに圧倒される。利敵行為だとの罵声に萎縮する。こうして選択肢を自ら狭めている。」

こういうことをオープンに話すことは難しいことです。私はそういうことを、心を開きながら少しずつでも話し合えると良いと常々思っています。例えば、中国の留学生ともいろいろと話をします。南京大虐殺の話、文化大革命の話、抗日ドラマの話などです。オープンに話す姿勢を保てば、いろいろと新しいこともわかります。相手がどう考えているのかもわかります。

こういった問題は、誤解を招かないように丁寧に説明することが大事ですが、やはり恐怖から短絡的になる傾向は免れないかもしれません。ここで、あえてこのような意見をインタビューで話した、森さんは、しっかりした考え方を持っている方だと思いますし、こういった視点は忘れてはいけないことだとも思いました。

2015年2月23日月曜日

ADHDの流行は、まもなくおさまりそう Allan Francesのコメント (Neurology Times)

My Prediction: The ADHD Fad Is About to Fade
April 24, 2014     By Allen Frances, MD

時々、Psychiatric Times (Neurology Times) を読んでいますが、アメリカの精神科診療の知識が入り、また興味深い記事もたくさんあります。上記のは、アレン・フランセスのコメントで、ADHD(注意欠如多動性障害)の流行はまもなくおさまるだろうという、なんとも流行病のようなコメントで興味深く思いました。アレン・フランセスは、DSM-IVの編集者で、すでに引退していますが、精神科臨床に対しての様々な示唆に富むコメントをしています。Twitterでも多く発信し、@AllenFrancesMD 私も、フォローしています。

Allen FrancesのTwitterの画像

ADHDは、ストラテラ、コンサータという治療薬が発売され、成人にも治療的に使えるようになったために、製薬企業も精力的にキャンペーンをしています。こういった製薬企業のキャンペーンが、過剰な投与を生み出しているという指摘は、このADHDに限りません。私も、製薬企業の医師向けの講演をすることもありますが、こういうバイアスについては意識するように務めています。多分、アレン・フランセスは、もっと厳格にこれを実行しているのではないかと思います。尊敬できる人だと思います。

ADHDの診断はとても難しいと思います。ごく典型的な症例以外だと、ADHDと診断して良いかどうか迷う例は多くあります。一方で、診断のもとの投薬し、著しく生活が改善する人もいます。そういう意味では、常に頭においておくべき疾患であることは間違いありません。

いずれにしてもこのコメントには、精神科の歴史をみると、ある時期に急に診断が増え、そしてまた治まるということが繰り返されているとも指摘されています。確かにそのとおりだと思います。これには、功罪の両方があります。悪い点は、上記のように診断されすぎ、時に必要のない薬が使われることです。良い点は、その疾患に対する精神科医の理解が進むことです。

ストラテラ、コンサータの成人への使用がなされて、私の発達障害への理解は著しく進んだとも思います。かなりの文献も読みましたし、日中の眠気との関連についても、多く経験しました。これがなければ、多くの人が日中の仮眠をナルコレプシーと診断され、漫然とモディオダール(覚醒メカニズムを刺激する薬)を投与され続けていたのだと思います。

もちろん、誤診もあります。しかし多くの場合、誤診も患者さんに、ADHDの可能性もありその疾患の特徴はこのようなもので、自分でも自分に当てはまるかどうかを検討してほしいというような、相互の情報交換を多くする中で、明らかになってきます。薬物の投与開始についても、患者さんの意見を聞きながら決めていきます。治療の目的は、患者さんの生活を改善し、より幸せな人生を送れるようにすることです。そのための診断であって、診断が最終目的でもないのです。誤解を恐れずに言えば、誤診のままでも良くなる精神科の患者さんは多くいます。

アレン・フランセスの言うように、流行はおさまり、より適切な使われ方が浸透するように思います。彼は、エイブラハム・リンカーンの言葉を最後に引用しています。「ある時期すべての人をだますことはできる。また、一部の人をずっとだますこともできる。しかし、すべての人をずっとだますことはできない。」

2015年2月20日金曜日

慢性の痛み

日経メディカルに2015年2月9日付けで「痛みは脳や体に記憶される」という記事が出ていたので興味深く読みました。私自身は、うつ病の痛みに興味をもって、臨床的にはなるべく患者さんにそのことを尋ねるように心がけています。多くのうつ病患者さんが痛みをもっており、これをうつ病の症状でないので、ここで話す必要はないと思っています。痛みは、うつ病の一つの症状でありえるし、もしそうでないとしても、痛みについて一緒に考えて必要あれば他の専門医の受診を一緒に考えるという立場で患者さんに接することで、患者さんの生活全体を改善するという本来の治療アプローチが出来るようになるからです。

さて、日経メディカルの記事をみると、うつ病にかぎらず慢性の痛みがあると、生活の様々な側面がが障害されることが示されています。また、更には痛みが慢性に続くと、神経末端からの神経伝達物質の放出が促進され、痛み感覚が亢進されるということです。また、痛みが記憶されることも示されています。したがって、痛みが記憶されるまえの初期の段階できちんと痛み治療をしていくことが、慢性化させないために重要であるということです。

痛みには、心理的な要素も大きく関わっています。痛みの研究をするときに難しいのは、痛みが主観的なものであるという点です。ちょっとの痛みに対しても、「痛い痛い」と叫び声を上げる人も言えれば、じっと我慢できる人もいます。しかし、それぞれのレベルで、痛みは生活に負の影響をあたえ、生活の質を悪くするということがあるわけです。

さて、精神科医である私の立場からすれば、精神科の患者さんのもっている痛みの訴えをどう取り扱うかということです。痛み症状を持った人を、身体表現性障害として捉えて、精神的な問題に直面化させるというような方法とともに、注意深く観察しながらも、痛みに対しては積極的な治療をするという方法も合わせて重要であるように思います。また、うつ病の痛みに対しては、これをしっかりと把握し、慢性化する前にしっかりと治していくことも重要になると思います。

これらの治療は、薬物療法ととともに、生活を改善する生活療法、精神分析的な精神療法などを合わせて行うことですが、この中では痛みを軽減されるという視点は常に頭においておくことが大事であると思います。

2015年2月16日月曜日

ラミクタール (ラモトリギン) (1) 薬理作用

ラミクタール(ラモトリギン)は、グラクソ・スミスクライン社から発売されている抗てんかん薬です。新しい抗てんかん薬で、難治性のてんかんにも有効であると言われています。また、この薬は双極性障害の治療にも使われます(病相予防に効果がある)。

このようなラモトリギンですが、副作用として重篤な皮膚障害が出現する可能性があるため、先日「安全性速報」が配布されました。ラモトリギンの皮膚障害は、よく知られていることで、私自身もかなり慎重に投与するようにしていますが、問題になるケースが有るために、更に使用に注意を喚起させるために配布されたものと思います。

この機会に、ラモトリギンの作用機序と、副作用を最小限に抑えるための投与方法についてまとめてみました。

なお、なぜ皮膚障害が起きるかについては、明確な機序はわかっていないようです。これについては、グラクソ・スミスクライン社のホームページに解説が出ています。
http://lamictal.jp/bp/product_summary/qa_03.html


ラモトリギンの薬理作用

まず、薬理作用ですが、完全にはよくわかっていないようです。使用されている薬の作用がよくわかっていないというのは不思議なことですが、こういうことはよくあります。薬は、1.効果が確実にある。2.害になる副作用よりも効果が大いに優っている。この2つがあれば、使用できるということになるわけです。どうして効くかは、その後の研究で明らかになってくる場合もあります。したがって、使用しているうちに他の疾患にも効くことが見つかる薬は多くあります。

最近の話題では、緑内障の治療薬の副作用でまつげが伸びることが知られたので、これが主作用として保険外で使うことが可能になったことなどがあります。美容のためですね。


さて、ラモトリギンは、グルタミン酸の分泌を抑制する(遊離抑制)が主な作用なようです。この、グルタミン酸というのは代表的な興奮性神経伝達物質で、神経活動を興奮させ活動性を高める作用があります。てんかん発作というのは、脳のかなり広範囲の神経が、制御されずにどんどん興奮状態になってしまうために、運動系の神経細胞が活性化されて体が痙攣するというのが典型的な発作になるわけです。違って、ラモトリギンはこの活動を抑制するという意味で、理にかなった作用があります。

もう少し詳細なメカニズムとしては、ナトリウムイオンチャンネルと、部分的にはカルシウムイオンチャンネルの働きを阻害して、これらのイオンが細胞外から細胞内に流れこむのを防ぎます。こういう働きは、神経細胞の働きを抑制する働きになります。

細胞の内外のイオン濃度は、著しい差があります。下記は、イオン濃度の値を示した表ですが、細胞外には、ナトリウムイオン(Na+)と塩素イオン(Cl-)が多くあるのがわかると思います。この覚え方は、もともと生物は太古の昔海の中で単細胞生物として発生した。この時は海の中は、食塩(NaCl)が多くあり(海水はしょっぱい)、そのような中で生物の仕組みが作られたので、細胞の外には食塩のイオンがたくさんある、つまりNa+とCl-が多くあるのだと学生には話しています。

細胞内外のイオン濃度
さて、これらの濃度勾配があると、イオンチャンネルが開くと、イオンは濃度の高い方から低い方へどっと流れ込みます。したがって、ナトリウムイオンチャンネルが開くと、細胞内にプラスに帯電したナトリウムが流れ込み、そして細胞の膜電位はプラス方向に傾きます。その結果、神経細胞が興奮するわけです。ラモトリギンは、これを抑制する、つまり開かないようにするというのがその主な作用です。

これも、細胞内外のイオン濃度をまとめた表です。
面白いのは、この表を持ってきた先のURLはみんカラ(自家用車の趣味のサイト)だということです。


ところで、同じてんかんの治療薬であるベンゾジアゼピンは、これとは逆に、塩素イオンチャンネルを開くようにします。そうすると、マイナスに帯電した塩素イオンが細胞内にどっと流れ込み、膜電位が下がって細胞の興奮性が低下します。ラモトリギンと基本的には、同じ方向への変化です。そして、どちらも抗てんかん薬としての働きがあるわけです。








2015年2月13日金曜日

安全に対する考え方 - 工事現場と医療

私の家の隣接地では、現在マンション工事が行われています。このマンション工事にともなって、セメントサイロと言われる、背の高い構造物が家のすぐ横に設置されました。写真を掲載しますが、この構造物は基礎工事などはしておらず、底の部分は水平を保つためにブロックで調節をしているというような状態です。このようなものでは、いくらワイヤーで下の鉄板にステイを張っても、現在注意が喚起されている東京直下型地震などがおきれば、倒れてしまいます。また、地震でなくとも竜巻なども近隣で起きているので、倒れる可能性は十分あるわけです。セメントを充填すれば何トンにもなり、倒れれば方向によっては我が家を直撃し、夜間であれば眠っている人の頭を直撃して死亡事故にも繋がりかねません。
移動前
移動後
そこで、私はこれを境界線から離れた内部に移動するように現場の所長に申し入れました。しかし、当初現場の所長や部長の答えは以下のとおりでした。

・ メーカーが安全だと言っているので大丈夫。
・ どんなものでも100%ということは無いが、やむを得ない。
・ 更に倒れないように補強をするので、それで納得してほしい。

しかし、どのような補強をしようとも、倒れる可能性はある。その上でこれをより内部に移動すれば倒れても隣接する家屋への被害は起きないのだから必ず内部に移動してほしいと何度も、そして強く申し入れました。その結果、申し入れから3日目で移動してもらえることになりました。このことを理解し、移動に尽力してくださった現場の所長さんには私は感謝の気持を伝えました。

私はこの時、我々の生活の中には、福島第一原発の経験が全く生きていないなと思いました。このような人の命に関わるような事柄に対しても、人は、利益を優先してしまいます。職場における仕事効率には直接不必要な提案への億劫さと、これを弁護する自己意識から、そうしなくても大丈夫だという根拠を懸命に探すようになります。そして、それを何とか正当化するようになります。これに対して、そうでないことを、論理だてながら必要につきつけることをしなければ、事態は改善しないわけです。

しかし、これは他人ごとではありません。我々医師も同じことをしている可能性もあります。薬物の投与や、手術の適応の判断など、すべて生命に関わる事柄に対して、どれだけの労力をかけても安全を優先するということが大切であるという考え方。これを忘れないようにしなければなりません。これは、患者さんがセカンド・オピニオンを求めることの重要性にもつながります。この一件を通じて、このことを他人への批判ではなく、自分自身への戒めとしても考えようとも思った出来事でした。

2015年2月11日水曜日

モンティー・ホール問題

この時期は、修士課程学生の修士論文公開審査が行われます。私もいくつかの審査に加わりましたが、私が参加した研究で興味深い話題が出ていて、私自身もちょっと騙された感じがあったので、それについて書いてみます。

Monty Hall Dilemmaとしてこの問題は紹介されていましたが、モンティー・ホール問題(Monty Hall Problem)としても紹介されているのでこの名前を使います。Wikipediaにも解説があります。

これは、モンティーホールというアメリカの芸人が司会をしていた、商品付きの商品当てゲームのやり方を示しています。やり方は次のようなものです。

モンティー・ホール問題


1.まず、3つのドアが提示されます。回答者は、その一つに商品の自動車がはいっており、残りの2つにはやぎが入っていると説明されます。
(* 自動車とヤギとどちらが価値があるかわかりませんが、私はヤギも面白いなとちょっと思いました。)

2.そして、回答者はひとつのドアを選ばされます。それに自動車があれば、それが商品としてもらえるわけです。しかし、まだドアは開きません。

3.その後、モンティー・ホールが、残り2つのうち、ハズレのドア、つまりヤギが入っているドアを開いてみせます。そして、回答者に、ドアは今のままで良いか、それともまだ開いていないもう一つのものにするかを聞きます。(Stay=そのまま、か、Change=変える、かどちらかということです。)

4.そして、回答者がStayかChangeを選び、そのドアを開くわけです。


さて、この回答者はStayにしたほうが良いのでしょうか、それともChangeにしたほうが良いのでしょうか。確率的には、Changeにしたほうが、確率が2倍に高まります。これは、なかなか直感的に理解し難いですし、私も理解するのにちょっと時間がかかりました。ですので、みなさんもいろいろなサイトを見ながら、考えてみてください。

簡単に言うと、最初の段階でそれぞれのドアの確率は3分の1ずつ。そして、モンティー・ホールが残りの一つのうちハズレをばらしたところで、残りの方の確率が3分の2に上がったということです。ですので、そちらを選んだほうが二倍当選確率が上がるということです。

この問題のもう一つの面白いところは、人間の心性として、自分の最初に選んだものが外れるのと、最初に選んだものから変えたものが外れるのでは、後者のほうが心の痛みが大きいということです。したがって、このままで良いと思う人の割り合いのほうが結果的には多くなるという興味深い側面もあります。

肝心の修士論文の方ですが、脳波の誘発電位を用いて良い内容のものでした。そちらの方は、研究をした人が論文発表をしたものが出たら、ご覧下さい。

2015年2月9日月曜日

同僚 早稲田大学 広瀬統一准教授 世界一受けたい授業へ”また”出演

早稲田大学の同僚の広瀬統一先生が、また世界一受けたい授業に出演しました。興味深かったのは、広瀬先生が出た話を家族から聞いたあと、私のブログの以前の広瀬先生に関するエントリーのヒット数が上がったことです。広瀬先生は、ホントかっこいい人で、このようにテレビに出るだけで、すぐにGoogle検索する人がいるんだなぁと思うと、羨ましい限りです。

先日、彼と雑談していて、あるスポーツジムの会員になって、週に2-3回は時間を見つけてトレーニングしていると話していました。テレビに出るのも、みっともない体では出られないと言っていたので、これはみらなわなければイカンなと思いました。

広瀬氏のような人がどうしてスポーツジムに入らないといけないのか、よくわからなかったのですが、なでしこジャパンのフィジカルトレーナーで練習に参加していても、トレーナーは運動する時間はなく、運動は自分で時間を見つけてしなければならないということでした。確かにそうかもしれませんね。いくら、スポーツ科学部で教授をしていても、自分で動かなければ太ってしまいますから。

下の写真を御覧ください。広瀬氏とひょんなことから、カナダのウィスラーで一緒にスキーをすることになった時の写真です。写真をとると、差が目立ちますなぁ。

広瀬先生とカナダのウィスラーにスキーに行った時の記念写真
右から 私 広瀬統一氏  カナダの友人のリンダ川本さん(日系人)

そんなことで、広瀬統一先生のこのエントリーも、広瀬人気故にヒット数が上がるのではないかと期待しています。

2015年2月6日金曜日

アスリートの不眠に筋弛緩作用が少ない睡眠薬:日経メディカル

日経メディカルに取材を受けたものが、12月にウェッブに公開されています。日経メディカルは、印刷されたものもありますが、ウエッブ版もあって、会員に公開されています。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201412/539889.html

上記が私の記事のURLですが、会員登録しないと読めないようです。スクリーンショットを掲載します。

日経メディカルの記事より


ポイントは、筋弛緩作用です。病院やクリニックでは比較的多く使われているベンゾジアゼピン系の薬物には、筋弛緩作用があります。このような作用は、身体的に健康な若年者であれば、さほど問題になる作用ではありません。しかしながら、アスリートとなると、競技会では100分の1秒を争う競争をするわけです。そんな時に、筋弛緩作用のある薬物を投与されていたのでは、競技にマイナスになってしまいます。そういう中で、できるだけ影響の少ない薬物で、かつ効き目のある使い方をするというポイントについて解説したものです。具体的には、ノンベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリー、ルネスタ)などの仕様や、ロゼレム、ベルソムラなどについても言及しています。

このような、筋弛緩作用に配慮した薬物の使用は、実は高齢者への配慮とも重なるものです。高齢者は、もともと筋力や反射の能力が低下しているため、転倒のリスクが有ります。転倒⇒骨折、そしてこれからベッド上安静、更に筋力低下、そして寝たきりという事にならないよう、転倒には十分注意しなければなりません。したがって、睡眠薬の選択も、アスリートに対する視点と同様な視点が必要になってくるわけです。

2015年2月4日水曜日

コバニ Kobani (2)

以前に「コバニ Kobani の状況を見て思うこと」という投稿をしました。この時は、イスラム国とクルド人の戦いが毎日毎日続いている状況があり、その状況を見ながら暗澹たる思いを綴ったわけです。一時はイスラム国に街の殆どを占領されていたコバニが、クルド人によって奪還されました。イスラム国については、2名の日本人が殺され、今朝はヨルダン人パイロットも殺害されたというニュースが流れました。いずれも残忍な殺害の仕方です。ご家族のことを考えると、断腸の思いです。日本人に対するテロも予告されているということで、更に日本も国際協調の中で、この勢力を意識せざるをえない状況になってきました。

Washington Post: Kobane after the Islamic State: A town in ruins


このコバにについては、クルド人が自分たちの街を奪還するために、イラクのクルド勢力も協力し、そして、連合軍の空爆も大きな力となって奪還したという経緯です。昨年9月にイスラム国が侵略し、その後半年近くの戦闘が続いて、それを時々Twitterなどでフォローしていたのですが、私はこれから、戦争は絶対に避けなければいけないという思いを強くしました。Twitterでは毎日毎日が戦闘の繰り返しでした。毎日、何人の人が死んだのかも報告されています。住民が長い歴史の中で作りあげた街が、どんどんと破壊されていきました。連合軍の空爆によっても破壊が続いたということです。これをフォローしていて、どちらが良い悪いというよりも、戦争というものが何もかも破壊してしまうのだという思いを強くしました。

写真は、インターネットへのリンクで掲載しているものですが、このように、コバには奪還されたものの、シリア側の街の周りは、未だイスラム国に包囲され、さらに写真のように街はほぼ完全に破壊された状態になってしまいました。

これから、まだまだ厳しい状況が続くと思います。また、クルド人の独立問題なども絡んでトルコ政府の立場も微妙で、この地域の安定はまだ遠いと思います。この状況をみると、話し合いによる解決などきれいごとという意味も分からないではありませんが、最大限の努力をする。そして、日本も安易に参戦できる法改正をしないということも大事な気がします。

2015年2月2日月曜日

クリスチャン・ギラン先生の思い出 と フルボキサミンマレイン酸

先日、フルボキサミンマレイン酸についてのコメントをアッヴィ社の方から求められました。フルボキサミンマレイン酸は、日本で初めて発売されたセロトニン再取り込み阻害剤です。現在は、Meiji Seikaファルマとアッヴィからそれぞれデプロメール、ルボックスという名称で発売されています。比較的副作用が少なく、副作用に対して過敏だと感じされる患者さんには、少量から少しずつ増量していく時には使いやすい薬物であるように思っています。また、社交不安障害にも適応があり、このような患者さんに対しても使える薬物です。

その話をしているうちに、この薬が日本で紹介される際の研究会で、クリスチャン・ギラン先生ご夫妻と過ごしたことを思い出しました。フルボキサミンマレイン酸を処方するときに、クリスチャン・ギラン先生のことが思い出されるというのは、興味深いものです。

クリスチャン・ギラン(Christian Gillin)先生は、アメリカの精神医学者で睡眠科学者です。私が、1990年から1992年にカリフォルニアに留学している際に、留学先のアーウィン・ファインバーグ先生とも親しかったことから、学会などでもお会いするようになり、親しくなりました。その頃、Neurospychopharamacologyという臨床精神薬理学の雑誌の編集長をしておられました。また、所属は、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部精神科でした。実際の仕事は、La Jollaというまさにビーチリゾートというような場所にある退役軍人病院の精神科で、臨床と研究をやっておられました。

Christian Gillin先生 (UCSDの追悼サイトより)


http://ucsdnews.ucsd.edu/archive/newsrel/health/Gillin.htm

1992年に日本に帰ってきたあとも、いろいろな形で交流を持ったのですが、このフルボキサミンマレイン酸が日本に紹介される時の招待講演者として、箱根のカンファレンスに来られることになったのです。このカンファレンスはクローズドで行われたのですが、その頃東京医科歯科大学神経精神医学教室の教授だった融道男先生から一緒に行きましょうとご招待を受け、私も参加しました。その時に、ギラン先生からはメールをもらい、その後京都も観光で訪問したいのだが、旅館やどこを回ったらよいかなどのアドバイスをくれないかと書かれていました。デプロメールの発売は1999年なので、多分その年だったか前の年くらいだったのではないでしょうか。私は、旅館を探して紹介しました。その際に、旅館は、エアコンは効いているのか、トラディショナルな雰囲気は味わいたいけれども、エアコン無しでは厳しいからなどというやりとりをしたことを覚えています。

ギラン先生はとてもフレンドリーな人で、合うたびに楽しい思いをしました。時期をはっきり覚えていないのですが、カリフォルニア大学サンディエゴ校では、講演をさせていただいたこともあります。2000年にラスベガスでアメリカの睡眠学会があった時にも、ギラン先生にはお会いしました。その時に、私は5000mランに参加したのですが、ギラン先生に先生も参加しませんかなどとお話した覚えがあります。その時に、いやあ、という感じではっきりとした答えがなくて、少し元気が無いなと思いました。

その後、日本に帰って多分この年に、ギラン先生が食道がんにかかっていることがわかったのだと思います。その頃に、私の研究室にいた若い研究者をギラン先生の研究室に留学させたいと思っていたのですが、その話の時に食道がんのことをはっきり聞いて、もう留学生の研究員などは募集できないということを伺ったように思います。

その後は、上記の追悼サイトにも書いてありますが、ご家族ととても親密な日々を過ごされたようです。私の記憶違いかもしれませんが、スカイダイビングなどにも挑戦したと聞いた覚えもあります。上記の追悼サイトをみると2003年に亡くなっていますが、私は、ラスベガスでお会いしたのが最後でした。

会った人の心に残る、素晴らしい方です。フルボキサミンマレイン酸が、またギラン先生のことを思い出させてくれました。