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2016年6月3日金曜日

都市部における精神科遠隔医療の可能性 (3) 日本精神神経学会のシンポジウム

現在、幕張メッセを中心にした会場で、日本精神神経学会が開催されています。私も教育講演の座長で、昨日参加しましたが、その中に遠隔医療のセッションが有りました。精神科における遠隔医療の可能性について、精神科の中心的学会でもある日本精神神経学会で取り上げられるようになったというのは、非常に驚きした。プログラムの赤丸の、大西先生の精神障碍者スポーツに関する教育講演の座長を務めたのですが、同時進行でシンポジウム19に遠隔医療のセッションが有りました。

都市部における遠隔医療については、私は非常に興味をもっており、自分自身でも実践していきたいと考えています。これについて、群馬大学医学部の長谷川高志先生のお話は、非常に有用な情報を沢山含んでいました。遠隔医療についての基本的な考え方を十分に理解したうえで実践していくことが重要と思われますが、法的な問題や、診療報酬制度との整合性についても十分に検討することが必須だと思います。

このような中で、ビデオ会話(テレビ電話)を用いて行う精神療法についての有効性や、これを診察とみなすかどうかということ、更にはこれにともなって発行する処方箋、あるいは薬物療法をどのような形で行うのかということが具体的な課題になるのではないかと思います。

既に自費診療を主体として行っているクリニックは存在するようですが、この点についても慎重により良い形での実践ができるよう、更に情報を集めていきたいと思っています。

2014年7月14日月曜日

第110回 日本精神神経学会 (4) 大人の発達障害の外来プログラム

このセッション名は、「高機能発達障害の職場における課題と精神科医療の取り組み」というのが正式です。様々な先生がお話になりましたが、札幌駅前クリニックの横山太範先生のサイコドラマについての紹介が非常に興味深い発表でした。サイコドラマというものについて、私自身は漠然とした知識はありましたが、あまり詳しいことは知りませんでした。横山先生は、これまでにも熱心にサイコドラマに取り組んでおられるようで、このような技術を持った人の認定団体なども立ち上げているようです。横山先生は、そのビデオをお持ちになって、サイコドラマの様子を紹介されました。

サイコドラマについては、東京サイコドラマ協会という会があり、そこで公認のサイコドラマディレクターの認定をしているようです。その方法については、正確には専門家に問い合わせて欲しいのですが、シンポジウムで取り上げられたのは、ある人が職場などのある状況にあった場面を作り、そこで同僚が言う言葉に対して本人がその反応を発します。その後、今度は同僚と本人が入れ替わって同じことをする。これによって、本人の振る舞い、また心理的な動きを外から客観的に見るということを行うということがひとつの要素になっているようでした。

この方法は、ずいぶん効果があるだろうなと私は思いました。なかなか、客観的に自分を見ることはできませんし、発達障害のある方々は、どうしても独善的で一つのことに囚われるとそのことばかりを考えてしまう傾向があるので、そういった自分を客観的な視点から見る経験ができるというのは良いと思いました。

この他にもいくつかの発表がありましたが、自分が診療する上での悩みとしてもあることで、発達障害の「傾向」のある人達について、この人達を発達障害の治療ベースに乗せるのが良いかどうかという問題について、考えさせられました。患者さんにとっては、もし生活が改善するのであれば、それで良いということもあるかもしれませんが、障害とまで言えない人に対して、薬物療法を含めた治療をするのかどうか。また、そのラインはどこに引くのか。これは、臨床の現場の中で、患者さんのニーズなども鑑みながら考えていくことではあるとは思いますが、そこから積極的に薬物療法をすべきかについては、特に更に考えていくべき問題とも考えさせられました。

2014年7月2日水曜日

第110回 日本精神神経学会 (3) DSM-5セッション

精神神経学会でDSM-5のセッションにも出席しました。

特別講演6:(司会 岸本 年史)
・Evolutionary Conceptual Changes in DSM-5
Darrel A. Regier

委員会シンポジウム14:(司会 神庭 重信・大野  裕)
・DSM-5 の基本を理解する

最初に、Daniel A. Regier先生の講演があり、DSM-5についての概論、シンポジウムでも、Regier先生からDSM5のIVからの主な変更点についてのまとめがあり、その後、日本人の研究者からのさまざまな分野の今回の改変の特徴についてのまとめがありました。

正直なところ、今回のこのシンポジウムはさほど面白くはありませんでした。Regier先生の変更点についての講演は、変更点についてもう一度頭のなかでまとめることができてよかったのですが、その他の先生方の発表は、解説ということでさほど自分自身の考えを述べるというものでもなく、自分としては、むしろ以前に出席した製薬会社の勉強会のほうが興味が持てたように思います。

DSM5に関しては、もっとアメリカで作ったこの診断に順を日本に持ち込むときの問題点などについて、しっかり議論をしたほうが良いと考えています。これも、各カテゴリーごとに異なっているようにも思いました。今回、発達障害に関連したカテゴリーが大きく変わりましたが、これはむしろ私はポジティブに捉えています。発達障害の専門家の方々もそういう意見が多いように思います。しかし、その他の診断病名の追加や削除、また、それぞれの病名や、それぞれの診断項目が日本での臨床(日本の文化)に、適合したものなのかどうかについて、十分な議論を早いうちに始めるべきだとも思っています。

是非、学会ではこのような議論をするシンポジウムを今後の学会活動の中でしていってほしいと思います。また、日本の精神科臨床にあった、精神科分類、診断基準というものもできていくと良いとも思っています。

2014年6月30日月曜日

第110回 日本精神神経学会 (2) 患者さんの自動車運転

「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」が、日本精神神経学会で配布されていました。このガイドラインは、学会員向けのものです。また、シンポジウムにも出席してみましたのでこれらについての感想を少し書いてみたいと思います。

平成25年の道路交通法では、運用基準として、患者さんが問い合わせた時には、具体的に疾患名を提示し、それらについて運転の可否を示すことになっています。しかしながら、私の受ける印象として、患者さんが自分の診断名を知っている場合に、警察に「実はわたしはこれこれこういう病気なのです。」と話すことは非常に大きな抵抗があると思いますし、大きなストレスを感じることになると思います。また、実際に、精神疾患によって交通事故を起こる確率が上がるというデータは、全くないということです(シンポジウムより)。したがって、一過性の急性精神病状態で運転に万が一問題があったとしても、それは、例えば高熱のために運転がままならないということと何ら違いがないということです。したがって、このような特定の精神疾患を取り上げて、法律の運用を行うことは、偏見にほかならないということは言えると思います。

これらの法律は、てんかん発作をもったドライバーが発作のため意識を失い、子どもたちの列に突進し死者が出るという非常に痛ましい事故がおきたために、ご遺族の強い活動がおこり成立したといういきさつもあるようです。しかし、私は疾患を持った人について吟味して運転しないようにするということで、このような事故が無くなるとは思えません。むしろ、このガイドラインが示すように、積極的に担当医師が運転について患者さんに関わるということが大切なのではないでしょうか。これは、この法律運用に関わるうえでリストされている疾患だけでなく、どのような疾患でもしっかりと医師が、危険運転が起きないように指導するということが大切だという意味です。

実際に、このガイドラインでも、こういった可能性が予想される場合には積極的に医師が、運転をしないような指導をすべきであるとも述べています。これは、非常に大切なことです。私は、やはり医師が積極的に関わることが大切だという教育を普及することが、抑制の効果があると思います。

私が診療の中で、注意が必要だと思うのは、過眠症や睡眠発作のある患者さんです。このような患者さんには、充分に注意を与えるようにしています。決して、威圧するようなプレッシャを与えないように配慮しながら、眠気によって事故の起きる可能性や、治療によって症状が回復する可能性などについて説明するようにはしています。その中で、症状が安定してから慎重に運転を考えるようにお話することが多くあります。また、交通事故を回避するのは、やはり自己責任が最も大切で、自分が危ないと思ったら絶対に運転はしてはいけないということもお話することもあります。更には、仕事が関わってくる場合には、仕事場の側の疾患に対する理解などについても充分に情報を聞いた上で、どのように対処するのかを一緒に考えるようにはしています。

交通事故を避けるように努力することは、最も大事なことです。しかし、この中で、まったく根拠となるエビデンスのない偏見によって、精神疾患の患者さんが不利益を被ることはあってはならないと思います。


===引用:一定の病気等に係る運転免許関係事務に関する運用上の留意事項について==

http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20140410.pdf

2 運転適性相談窓口の充実等
(1) 問い合わせへの適切な対応
免許の拒否又は取消し等に関する事項や免許の取得等に関する問い合わせに対しては、運転適性相談窓口(以下「相談窓口」という。)や警察署において、制度の趣旨、内容等を十分説明するとともに、免許の取得又は継続(以下「免許の取得等」という。)に係る具体的な運用基準について照会がなされた場合には、別添の「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」を教示するなど適切な対応を行うこと。



2014年6月28日土曜日

第110回 日本精神神経学会 (1)

第110回 日本精神神経学会に参加してきました。日本精神神経学会は、精神科医が集まる日本で最も大きな学会です。金曜日のみの参加でしたが、参加したセッションは、大人の発達障害の外来プログラム、精神疾患と道路交通法、そしてDSM5です。どれも興味深いセッションでしたが、特に道路交通法のプログラムは、非常に人気があり、立ち見が出た上に、別室へ中継されるほどでした。また、新しく成立した法律は、精神疾患に対する世の中のスティグマの強さに驚くとともに、がっかりさせられる側面もありました。



それぞれのセッションのことはまた少しずつ報告したいと思います。

参加したセッションはたかだか4つほどでしたので、あまり正確に学会の印象を述べることはできませんが、それぞれのセッションのレベルにはずいぶんと差があるように思いました。ある発表は、科学的な研究には基づかず、自分の臨床経験に基づいた話を討論しあうものもありました。これも悪くは無いと思いますが、こういう発表者ばかりのシンポジウムであると、私の目から見ると締りがない気がします。経験則だけでは、どのようなバイアスがかかっているのかは見えにくくなるからです。

また、これは正直な印象なのですが、私が出席したセッションだけでも、何を言っているのかわからない質問を延々とする人、周りの人に、スライドの写真を撮っては駄目だなどやたらに注意を与える人、また一旦部屋から外に出てくださいと言われているにもかかわらず、我が物顔で部屋に居座る人などが居て、自分としては、特に精神科医に変わり者が多いとは思っていないのですが、現実はどうなのかなとも思いました。