ラベル 精神疾患 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 精神疾患 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014年8月8日金曜日

第12回 日本スポーツ精神医学会学会総会・学術集会 鹿児島 (2) メンタルヘルス運動指導士について

学会の初日には、メンタルヘルス運動指導士の講習会が開かれます。これについて少し紹介したいと思います。

メンタルヘルス運動指導士は、この資格が最初に学会で提案された際には、精神科の病院で患者さんに運動指導をしているスポーツ体育系の学部出身者が医療に関わる資格がないということで、病院内での認識が充分でないという学会員からの問題提起から、何らかの資格を作りたいという形で始まりました。精神科の病院などでは、デイケアや入院患者さんのレクリエーション等でスポーツを多くします。また、スポーツが治療的に役立つということで、スポーツ活動を治療的な意味をこめて取り入れているところも多くあります。そういうところでは、スポーツ好きの看護師さんや作業療法士さんが運動指導をすることも多いですが、スポーツの専門家を指導者として雇用して運動指導をする場合も多くあります。このような人が、病院の職員になった場合には、病院における運動指導士という正式な資格が無いために、医療資格(看護師、作業療法士、精神保健福祉士など)のある人と比較して位置づけが充分でなく、肩身の狭い思いをするということがありました。日本スポーツ精神医学会では、このような仕事に就いている人に対して、資格をつくり、精神疾患の患者さんに運動指導をする知識と技術を持った人だということを保証するようにしたわけです。

日暮里あべクリニックで行っている、リワークディケアの運動療法。
近隣のスポーツジムと連携して行っています。


しかし最近になってくると、また別の方面からの希望も出てきています。例えば、スポーツジムやヨガ教室などに通っている利用者の中には、精神科に通院している患者さんもおられます。そういった人たちの多くは、うつ病の患者さんですが、パーソナルトレーナーなどの仕事をしている人たちは、このような患者さんから、運動をするようになってメンタル面でも良くなってきたという話を聞いたりするということが有ります。このようなときに、パーソナルトレーナーの人たちは、もう少しきちんとした精神医学の知識をもって、このような患者さんたちの運動指導をしたいと考えるようになります。また、最近ではうつ病患者さんの職場復帰のための、EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)の中に運動指導を取り入れることも多くなってきています。この場合の運動指導は、一般のアスレティックトレオーナーやパーソナルトレーナーなどが行いますが、このようなEAPは、利用者がうつ病から職場復帰するプロセスにあるということが前提なので、利用者がうつ病の患者さんであるということがわかった上で運動指導をするわけです。つまり、ある意味では準医療機関的な要素があります。このような場で、運動指導をする人も、資格を取りたいという希望もあるようです。

資格の要件としては、きちんとした知識や技術を持っていることが大切なので、それを保証できるような実績を持った人に資格を与えるということが大前提ですが、そのうえで、病院だけでなく2つ目に上げたような職場の人達にも資格をとってもらい、さらにその人達が学会の場で交流しながら、この分野の知識や経験を広げていくということも大事だと思っています。

現在、このような背景を考えならが今後の資格制度の運営について様々な議論がなされています。今後については委員会の議論の中で決まっていくことですが、私は、このような資格が、精神疾患のある人に運動指導をしているひとたちの、指導の質の向上につながっていくと良いと考えています。その中で、この資格を持った人たちが増加し、精神疾患の人たちの精神・身体の健康度の向上、日常生活の質の向上に繋がると良いと思っています。

2014年6月30日月曜日

第110回 日本精神神経学会 (2) 患者さんの自動車運転

「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」が、日本精神神経学会で配布されていました。このガイドラインは、学会員向けのものです。また、シンポジウムにも出席してみましたのでこれらについての感想を少し書いてみたいと思います。

平成25年の道路交通法では、運用基準として、患者さんが問い合わせた時には、具体的に疾患名を提示し、それらについて運転の可否を示すことになっています。しかしながら、私の受ける印象として、患者さんが自分の診断名を知っている場合に、警察に「実はわたしはこれこれこういう病気なのです。」と話すことは非常に大きな抵抗があると思いますし、大きなストレスを感じることになると思います。また、実際に、精神疾患によって交通事故を起こる確率が上がるというデータは、全くないということです(シンポジウムより)。したがって、一過性の急性精神病状態で運転に万が一問題があったとしても、それは、例えば高熱のために運転がままならないということと何ら違いがないということです。したがって、このような特定の精神疾患を取り上げて、法律の運用を行うことは、偏見にほかならないということは言えると思います。

これらの法律は、てんかん発作をもったドライバーが発作のため意識を失い、子どもたちの列に突進し死者が出るという非常に痛ましい事故がおきたために、ご遺族の強い活動がおこり成立したといういきさつもあるようです。しかし、私は疾患を持った人について吟味して運転しないようにするということで、このような事故が無くなるとは思えません。むしろ、このガイドラインが示すように、積極的に担当医師が運転について患者さんに関わるということが大切なのではないでしょうか。これは、この法律運用に関わるうえでリストされている疾患だけでなく、どのような疾患でもしっかりと医師が、危険運転が起きないように指導するということが大切だという意味です。

実際に、このガイドラインでも、こういった可能性が予想される場合には積極的に医師が、運転をしないような指導をすべきであるとも述べています。これは、非常に大切なことです。私は、やはり医師が積極的に関わることが大切だという教育を普及することが、抑制の効果があると思います。

私が診療の中で、注意が必要だと思うのは、過眠症や睡眠発作のある患者さんです。このような患者さんには、充分に注意を与えるようにしています。決して、威圧するようなプレッシャを与えないように配慮しながら、眠気によって事故の起きる可能性や、治療によって症状が回復する可能性などについて説明するようにはしています。その中で、症状が安定してから慎重に運転を考えるようにお話することが多くあります。また、交通事故を回避するのは、やはり自己責任が最も大切で、自分が危ないと思ったら絶対に運転はしてはいけないということもお話することもあります。更には、仕事が関わってくる場合には、仕事場の側の疾患に対する理解などについても充分に情報を聞いた上で、どのように対処するのかを一緒に考えるようにはしています。

交通事故を避けるように努力することは、最も大事なことです。しかし、この中で、まったく根拠となるエビデンスのない偏見によって、精神疾患の患者さんが不利益を被ることはあってはならないと思います。


===引用:一定の病気等に係る運転免許関係事務に関する運用上の留意事項について==

http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/menkyo/menkyo20140410.pdf

2 運転適性相談窓口の充実等
(1) 問い合わせへの適切な対応
免許の拒否又は取消し等に関する事項や免許の取得等に関する問い合わせに対しては、運転適性相談窓口(以下「相談窓口」という。)や警察署において、制度の趣旨、内容等を十分説明するとともに、免許の取得又は継続(以下「免許の取得等」という。)に係る具体的な運用基準について照会がなされた場合には、別添の「一定の病気に係る免許の可否等の運用基準」を教示するなど適切な対応を行うこと。