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2016年3月4日金曜日

北京大学からのADHDの運動療法: スーパーグロバル大学プログラムによる早稲田大学スポーツ国際シンポジウム

本日、文部科学省によるスーパーグロバル大学(SUG)プログラムの、国際シンポジウムが早稲田大学東伏見キャンパスで開かれました。これは、早稲田大学のSGUプログラムの中の、スポーツ科学学術院が中心になっている健康科学のプロジェクトが開いたものです。

最初の発表は、北京大学のDr. DongによるADHDの子供に対する、コンピュータベースおよび、身体運動による介入プログラムの効果についての発表でした。私としては、この発表がいわば最も興味のある発表でした。これについて紹介したいと思います。

Dong先生は、予備的研究として、中国のADHDの子どもたちに対して、コンピュータを用いた身体運動のゲームと、これと同じ身体運動を実際のスポーツとして3ヶ月行いました。

この研究の結果、運動プログラムは様々なテストの結果を改善させ、また教師や両親による子供の評価についても改善したということです。

実際に、ADHDに対しての行動療法は非常に効果があると思います。私がした質問は、このプログラムの間、子どもたちには薬物投与がなされていたかどうかということです。答えは、何人かはその前に薬物投与がなされていたが、プログラム参加時には薬はやめたということです。

私の印象では、薬物はこのような行動療法の効果を更に促進するように思います。我々が、アトモキセチンやメチルフェニデート徐放剤を投与する際に、薬だけで治療をするということはありません。時には、構造化された認知行動療法を導入しますし、そうでなくても日常生活についてのアドバイスを毎回の診療でしています。

私のこういったコメントに対して、Dong先生はそのとおりだともうとのお話でした。今後、このような行動療法と薬物療法の組み合わせが、ADHDの治療をより効率的に行っていくことに繋がると良いと思っています。

2014年3月29日土曜日

パニック障害の認知行動療法

西埼玉心と体の研究会という、私が世話人をしている会が先日あり、千葉大学の清水栄司先生から、パニック障害の認知行動療法についてのお話を伺いました。

まず、名称ですが、パニック障害にせよ他の障害にせよ、英文名のDisorderを障害と訳すのは、患者さんにとっては抵抗があるため、清水先生たちはこれを変更するように学会に働きかけているそうです。我々も、患者にお話しするとき、障害という名称でお話するのは、やや抵抗があります。これを、たとえば「パニック症」などという翻訳名に変えるわけです。これは採用されそうだとう事でしたが、良いことだと思います。

パニック障害はパニック発作によって特徴付けられる病態ですが、パニック発作はDSM5の診断基準では、

「下記のうち4つ以上の症状を含む強い恐怖あるいは強い不快感が突然起こり、10分以内にその頂点に達する。(A discrete period of intense fear or discomfort, in which four (or more) of the following symptoms developed abruptly and reached a peak within 10 min) 」 (拙訳)

となっています。症状は13個あり、

1.動悸,心悸亢進,または心拍数
2.発汗
3.身震い,または震え
4.息切れ,または息苦しさ
5.窒息感
6.胸痛,または胸部不快感
7.嘔気,または腹部不快感
8.めまい感,ふらつく感じ,頭が軽くなる感じ,ま
たは気が遠くなる感じ
9.冷感(悪寒),または熱感(hot sensations)
10.異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
11.現実感喪失(現実でない感じ)
12.コントロールを失うことに対する,または気が狂
うことに対する恐怖
13.死ぬことに対する恐怖

(塩入:精神経誌(2012)より訳語引用)


このような発作は、パニック障害の患者さんで繰り返し起こるということが診断の基準になっています。そのために、患者さんは外出を控えるようになったり、電車などに乗れなくなったりし社会生活が大きく障害されます。

このようなパニック障害の治療には、薬物療法が著効する例も多くあります。一方で、パニック障害の認知行動療法が治療的効果をあげることはよく知られています。しかしながら、この認知行動療法は、診療報酬点数化されていないために、治療として外来でしっかりと認知行動療法が行われることはあまり多くありません。

清水先生たちは、厚生労働省に働きかけて認知行動療法が点数化されるよう活動されています。また、一方で治療効果のエビデンスを明らかにするために、千葉大学の施設で認知行動療法の治療も行っています。

下記のURLが、その臨床研究のホームページで、無料で最高水準の認知行動療法を受けられるようです。お近くの方は、ぜひ試されると良いと思います。

http://www.chibasad.com/pd/index.html

また、清水先生の本もためになりそうです。私も読んでみようと思います。


2014年3月18日火曜日

藤沢保健所での講演(うつ病の運動療法、 うつ病の痛みと睡眠障害)

先週、藤沢保健所での講演を頼まれて話をしました。2つの話をしたが、ひとつは「うつ病運動療法の可能性」。もう一つは「うつ病の痛みと睡眠障害」についてです。これらの話は、今まで主には医療関係者を対象にしてきたのですが、今回は一般の方々、および当事者(患者さん)やご家族むけにしました。同じように睡眠の話を、所沢市の並木公民館でも少し前にしましたが、こういう講演会では、講演の後の質疑応答がわりと活発になります。

ここで難しいのは、診療と同じようにならずに一般論として話をすることです。質問は、時に非常に個人的なことになりますが、それを皆さんの前でやりとりして答えたりすることは、無理があるので、その問題を一般的な問題としてとらえて回答するのが良いと思っています。しかし、それでもそれを丁寧にすれば、質問されたご本人にも、あるいは聴衆の方々一般にも役に立つ面があります。

この場合、やはり基本になるのは、うつ病の患者さんを治療するときに、症状だけをお聞きするのではなく、生活全体をお聞きすることです。何時に寝て何時に起きるのか、朝ごはんは食べるのか、運動はしているのか、人との交流はどうか、などです。これらをお聞きして初めてその方の生活が分かります。質問の際には、あまり個人的にならずさらっと一般的なこともお聞きして、一般論としてお話します。その中で、質問された方も、他の聴衆の方も自分に当てはまるエッセンスを持ち帰っていただけると思っています。こうして、答えると質問がたくさん出ます。時に30分位になり、時間でそこまでになることもあります。

表題にあるような様々なうつ病の症状や、これに係る生活状況は、個人個人でできることが異なっています。したがって、実際の診療の中ではそれを詳しく聞いて、様々な医学的知識をもとにできることをやっていくということになります。それを、患者さんにわかっていただくのが、こういった講演の一番の目的になります。

2014年3月16日日曜日

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方との関わり

DSM 5では、アスペルガー症候群という言葉は用いられなくなり、自閉症スペクトラム(ASD: autism spectrum disorder)という言葉が用いられる。この中で、従来自閉症と呼ばれていたもの、特に知的障害を伴うものも含まれています。このような中で、知的障害や、言語発達の障害を伴わず、「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「想像力の障害」を主な特徴とした、従来アスペルガー症候群と呼ばれている人たちとの関わりについて書いてみます。

外来で、こういった方たちと接する機会は多くありますが、コミュニケーションの障害の結果、診察が長くなるということがあります。外来では、順不同で患者さんを診察していきますので、うつ病の患者さんが続いた後に、このようなASDの患者さんになることがあります。安定したうつ病の患者さんでは、ざっとここのところの様子を聞いて、薬の処方や生活のアドバイスをして終わります。ところが、ASDの患者さんの場合は、ここのところの生活の様子を聞くと、その周辺の状況から始まって、事細かに話し始めます。

このようなことは、やむを得ないと思っています。障害がある方を診察しているわけですから、これで「もう少し手短にお願いします」では、一般社会の対応と同じになってしまいます。ひと通りの話を聞いたあとに、お話するのは、問題となっていることをもう少し大局的に見る視点です。これをASDの方に持てるようにしてもらうことは困難ですが、個別の問題について、「いまやっていることの大きな目的はなんでしょうか。」などと話をして、ある事柄について何が正しいかよりも、その問題を通して関わる人がスムーズに仕事が進むようになることのほうが、全体としての利益が大きいということを丁寧に説明し、そのために何をするのが良いかをお話します。

具体例としては、例えば「自分はある企画の説明をしなければならないが、その中には専門的な細かい内容を説明しなければみんなに意味がわかってもらえないのではないかと思う。そうすると、パワーポイントもたくさん作らなければならないし、話も2時間位になってしまうのでどうすればよいか。」という質問です。まず、この質問に到達する前に、事細かに企画の背景についても話をするので、この説明にずいぶん時間がかかります。さて、こういう質問をされた時に、いくつかの質問をします。「聞いている人たちは、何分くらいの話だったら聞いてもらえるのだろうか。」「そのためには、スライドを何枚に抑えなければならないだろうか。」そうすると、これまでの経験から15分位。スライドも10枚から15枚位という風に答えることはできます。そして、まずは10枚にする。その中には大事なものをいれる。入らないものは、しょうがないので捨てる。それによって第一には全体の概要を知ってもらうようにするのが良いということをアドバイスするわけです。

このアドバイスで、物事がどれだけうまくいくようになるかはわかりません。しかし、このような事柄はASDの患者さんにとっては、毎日の生活の中でつねに起きてきていることです。外来では、そのことを取り上げて、説明するようにします。そうすることによって、少なくとも患者さんは方向が見えて安心します。結果として、どれだけうまく出来たのかは確認もできない場合が多いのですが、それでも患者さんは、安心される場合も多くあります。

ASDは、ADHDのような治療薬と呼べるものがなく、治療法も確立されているとは言えません。また、社会の理解をと言っても、なかなか職場の理解を得ることも難しいと思います。しかし、根気強く、このようなアドバイスを繰り返すことは、日々の患者さんのストレスを軽減する方向には働いていると思っています。


加藤進昌先生の本は参考になりました。


2014年3月15日土曜日

運動がけん引する睡眠と食事-生活習慣病としてのうつ病

健康に関連する生活習慣の3要素として、運動、睡眠、食事があります。しかし、これらの3つは同等の位置関係にあるのではありません。たとえば、たくさん睡眠を取れば運動す量になったり、食欲が出たりすることはありません。また、食事をとれば運動したり、よく眠ったりするわけでもありません。しかし、運動を良くする、運動習慣をつけると、お腹が空き食欲が増し、睡眠の質が向上します。このように、運動は、他の要素をけん引する生活習慣の本質を占める要素であると考えられます。

生活習慣の乱れから起きてくる疾患を、「生活習慣病」と呼んでいます。厚生労働省のホームページをみると、生活習慣病として6つの疾患が挙げられています。それらは、糖尿病、脳卒中、心臓病、脂質異常症、高血圧、肥満です。

私は、ここに「うつ病」を入れたいと思っています。うつ病はご存知のように高強度のストレスが長期間続いて起きてくる、抑うつ状態ですが、現代時の日々の生活にはストレスがつきものです。そのようなストレスの中でも、うつ病にならない人は居ます。これは、体質の違いと大きくくくっても良いかもしれません。そう考えると、例えば、必ずしも良い生活習慣でなくても生活習慣病を発症しない人もいるということと似ています。

他の生活習慣病と同様に、各個人の体質と環境の両方が関連してうつ病は発症してきます。人によっては、うつ病を発症しないケースも有りますが、生活習慣を整えることによって、うつ病の発症は、全体として減ると思っています。また、うつ病になった人たちについても、生活習慣を整えることが、治療的な意味があると思っています。

そのためには、生活習慣に運動を取り入れることがとても大事です。運動は、決してジャージを着て、激しいスポーツをすることだけではありません。日々の生活の中で、階段を使ったり、歩く距離を増やしたりすることも大切です。そして、それにけん引されて、バランスの良い食事と、良い睡眠を確保することも合わせて行わなくてはなりません。これによって、身体的な健康と、良い精神状態が保たれるようになることが期待できます。

このような、生活習慣病としての側面をもったうつ病について、実際の臨床では、薬物療法に合わせて、細かな指導をすることで、寛解に早く至り、良い状態を維持することができるようになるケースが多くなると考えています。


2014年3月14日金曜日

季節性感情障害(冬季うつ病)

季節性感情障害(冬季うつ病)は、多くは冬場に(まれには夏場に)うつ状態になる気分障害のタイプです。多くは10月中旬くらいからうつ状態が始まり、3月中旬ころには良くなります。この期間をみても、日照時間と関連があることが分かりますし、冬場に日照時間が極端に短くなる、緯度の高い地域で多いことも知られています。冬場に何らかの理由で(例えば年末や年度末で忙しくなるなど)そのことが原因でうつ状態になるとすれば、そういったケースは季節性気分障害には当たりません。英語では、Seasonal Affective Disorderという言葉が使われ、略してSADとされています。Sad = 残念に思う、悲しげだなどの意味の単語と同じなので、よくこの言葉が使われます。しかし、現在うつ病や躁うつ病を含むカテゴリーは、気分障害Mood Disorderという言葉が使われているので、Seasonal Mood Disorderが良さそうですが、SADのほうが通りが良いためかこの言葉がよく使われます。

この疾患も、うつ期には抗うつ剤を服用します。また、予防的に秋ころから服用するケースも見られます。私が担当した患者さんも、このように秋ころから気分が低下する方が何人かいて、春になると元気になります。したがって、冬場には抗うつ剤を服用するのですが、この他に光療法が有効なケースが少なからず居ます。光療法器をいくつか、Amazonから探してみましたが、1万円台からあります。人によっては、卓上の蛍光灯やLEDのスタンドなどを幾つか並べて使っている人もいますが、これも有効でした。

光の波長は400nmあたりの青白光が有効であると分かっていますが、この波長が含まれている白色光であれば効果があります。明るさは、最低でも2000ルクスは必要だと思っています。できれば5000ルクスあると良いと思います。ルクスというのは、光源の明るさでなく、感じる場所での明るさですので、目に5000ルクスの光が入ることが大事です。この光を、早朝に1時間ほど浴びます。タイミングも重要で、もしこの時間に眠ければ、布団の中で目を閉じて、顔の目の前に光療法器があるようにしておいても効果があるとは思います。ただ、目を開けていたほうが光は多く網膜に達するので、そのほうが効果的であるでしょう。これに合わせて運動指導なども良い面があると思っています。

このような、光療法を含めた非薬物療法は、この疾患には効果があるので自分がそうかなと思う方は専門医に相談してみるとよいでしょう。