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2016年4月4日月曜日

スマホ診療、事実上解禁 外来「7割不要説」も (日経テクノロジーオンライン記事)

スマホ診療、事実上解禁 外来「7割不要説」も という記事がありました。

また、4月1日の朝のニュースでもこれが事実上解禁されたということが出ています。



まず、私の日常臨床の経験についてですが、ある割合の患者さんは、わざわざ足を運んでもらわなくても、定期的に短時間コンタクトする時間があれば大丈夫だなと思います。また、時に新患や時間のかかる患者さんが先に入って、そういった患者さんを長時間おまたせしてしまうこともあります。辛抱強く待っていただいている患者さんも居ますが、やはりイライラして1時間も待たせられたと仰る方も居ます。まさに、仰るとおりで申し訳ありませんでしたと、謝ることがほとんどです。

この記事を見た時に、こういった患者さんに対しては、このような遠隔診療を行うことが意味があると思っています。おまたせせず、オンデマンドでの診療が可能になるからです。

また、外に出ることができずに診療が中断してしまう患者さんも大勢居ます。そういう方々にとっても、このような遠隔医療はとても治療の助けになると思います。

こういった診療の形態は、診療の質ということがいつも問われるわけですが、既に実際の対面とくらべて、うつ病の精神療法としては遠隔医療が同程度であるという調査もあるようです。(下記)

うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度
https://www.carenet.com/news/general/carenet/40635

このようなことで、日本でも遠隔医療を始めたクリニックもあるようです。私は、この新六本木クリニックについては全く知識がありませんが、新しい挑戦として興味深いと思っています。

都心でオンライン診療 新六本木クリニックの挑戦
2016/3/23付
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO98706140S6A320C1H56A00/

新しいことを始めるときには、いろいろな反対意見、慎重論がでます。これは、とても大事なことではあると思いますが、対面式の診療とこの遠隔医療とのコンビネーションで、良い医療が成り立つ可能性は充分あると思っています。

2014年4月17日木曜日

認知行動療法を行った反復性うつ病の再発についての6年間の経過

論文の解説

Six-Year Outcome of Cognitive Behavior Therapy for Prevention of Recurrent Depression
Giovanni A. Fava, M.D.; Chiara Ruini, Ph.D.; Chiara Rafanelli, M.D., Ph.D.; Livio Finos, Ph.D.; Sandra Conti, M.D.; Silvana Grandi, M.D.
Am J Psychiatry 2004;161:1872-1876. doi:10.1176/appi.ajp.161.10.1872

この論文は、「認知行動療法を行った反復性うつ病の再発についての6年間の経過」について述べた論文です。うつ病の患者さんは、普段の生活の中でも、自分自身を否定的に捉えたり、自分に対してよりストレスを掛けたりする行動を取りやすい傾向があります。このような傾向は、メランコリー親和型とも共通するものですが、このような行動パタンを修正するのが、認知行動療法の目的です。

この研究では、40名のうつ病の患者さんを、通常の医療の中での治療と、認知行動療法を行うという2群に分けて、双方に薬物療法は行い、寛解状態に至ったところで、薬物を減量していき、最終的には服薬をしない状態にしたあとで、その後の再発率がどのように違うかを6年間にわたってフォローした研究です。

結果は下記のグラフです。


グラフの最初のところを1.0として、良い状態を保っている人の割合を、横軸の72ヶ月=6年間にわたって示してあります。青の、認知行動療法を行ったグループにくらべて、赤の通常の医療だけのグループは、6年間の経過の中で良い状態を保っている人が、1割程度にまで減少してしまうことが示されています。

認知行動療法は、我々は通常の診療の中でも多く行うようにしています。患者さんが見えた時には、なるべく日常生活で困難と思われる事象や人間関係の問題、物事の捉え方などについて伺って、それについて、考え方の修正をしたり、アドバイスをしたりいたします。このような認知行動療法的なアプローチは、この結果をみると、うつ病の患者さんが寛解して良い状態を保つのに非常に重要な役割をしていることが分かります。

このように考えると、薬物療法を中止したあとも、認知行動療法的なカウンセリングに通院することも意味があるように思われます。

2014年3月20日木曜日

木の芽時(このめどき)と精神科外来

そろそろ春を感じる季節になりました。この季節は「木の芽時」とも呼ばれていますが、木の芽時には、暖かくなったかと思えば寒くなったりして、体調を崩す方も大勢いるので注意が必要です。精神科の外来でも、この季節に調子が悪くなる方も多いような印象は受けます

患者さんにそのことを訪ねてみると色々な答えが帰ってきます。多くは、年度の変わり目に関連したことです。例えば、学生時代にはこの時期になるとクラス替えがあるということがあり、そのことで緊張感が高まるというようなこと。これは、多くの人にとっては楽しみでもあるかもしれませんが、新しい環境への適応が難しい素因をもっている方々にとっては、変化の季節であまり歓迎できない季節なのかもしれません。また、会社では部署の異動などもあります。そのような場合も、新しい部署で今度はどのような人たちとどのような仕事をするのだろうかという不安と緊張が訪れるということもあります。

木の芽時の季節としての特徴が、精神症状を悪化させるということは、もしかするとあるのかもしれませんが、これについての明確な説明はあまり聞いたことはありません。多分、気候の急激な変化によって、自律神経系や内分泌系(ホルモン)がそれについていけないということから体調をくずすという事はありそうで、これが精神症状にも影響をあたえるということであれば、それは納得できる説明にもなると思います。

一方で、この時期に良くなる人も居ます。冬期うつ病(季節性感情障害)の患者さんは、この時期になると次第に回復してきます。患者さん自身にとっては、待ち遠しい時期でもあるでしょう。

新しく始まる4月からの年度への期待も膨らむ時期ですが、精神科の患者さんにとっては、複雑な気持ちが交錯する時期でもあるわけですね。

2014年3月16日日曜日

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方との関わり

DSM 5では、アスペルガー症候群という言葉は用いられなくなり、自閉症スペクトラム(ASD: autism spectrum disorder)という言葉が用いられる。この中で、従来自閉症と呼ばれていたもの、特に知的障害を伴うものも含まれています。このような中で、知的障害や、言語発達の障害を伴わず、「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「想像力の障害」を主な特徴とした、従来アスペルガー症候群と呼ばれている人たちとの関わりについて書いてみます。

外来で、こういった方たちと接する機会は多くありますが、コミュニケーションの障害の結果、診察が長くなるということがあります。外来では、順不同で患者さんを診察していきますので、うつ病の患者さんが続いた後に、このようなASDの患者さんになることがあります。安定したうつ病の患者さんでは、ざっとここのところの様子を聞いて、薬の処方や生活のアドバイスをして終わります。ところが、ASDの患者さんの場合は、ここのところの生活の様子を聞くと、その周辺の状況から始まって、事細かに話し始めます。

このようなことは、やむを得ないと思っています。障害がある方を診察しているわけですから、これで「もう少し手短にお願いします」では、一般社会の対応と同じになってしまいます。ひと通りの話を聞いたあとに、お話するのは、問題となっていることをもう少し大局的に見る視点です。これをASDの方に持てるようにしてもらうことは困難ですが、個別の問題について、「いまやっていることの大きな目的はなんでしょうか。」などと話をして、ある事柄について何が正しいかよりも、その問題を通して関わる人がスムーズに仕事が進むようになることのほうが、全体としての利益が大きいということを丁寧に説明し、そのために何をするのが良いかをお話します。

具体例としては、例えば「自分はある企画の説明をしなければならないが、その中には専門的な細かい内容を説明しなければみんなに意味がわかってもらえないのではないかと思う。そうすると、パワーポイントもたくさん作らなければならないし、話も2時間位になってしまうのでどうすればよいか。」という質問です。まず、この質問に到達する前に、事細かに企画の背景についても話をするので、この説明にずいぶん時間がかかります。さて、こういう質問をされた時に、いくつかの質問をします。「聞いている人たちは、何分くらいの話だったら聞いてもらえるのだろうか。」「そのためには、スライドを何枚に抑えなければならないだろうか。」そうすると、これまでの経験から15分位。スライドも10枚から15枚位という風に答えることはできます。そして、まずは10枚にする。その中には大事なものをいれる。入らないものは、しょうがないので捨てる。それによって第一には全体の概要を知ってもらうようにするのが良いということをアドバイスするわけです。

このアドバイスで、物事がどれだけうまくいくようになるかはわかりません。しかし、このような事柄はASDの患者さんにとっては、毎日の生活の中でつねに起きてきていることです。外来では、そのことを取り上げて、説明するようにします。そうすることによって、少なくとも患者さんは方向が見えて安心します。結果として、どれだけうまく出来たのかは確認もできない場合が多いのですが、それでも患者さんは、安心される場合も多くあります。

ASDは、ADHDのような治療薬と呼べるものがなく、治療法も確立されているとは言えません。また、社会の理解をと言っても、なかなか職場の理解を得ることも難しいと思います。しかし、根気強く、このようなアドバイスを繰り返すことは、日々の患者さんのストレスを軽減する方向には働いていると思っています。


加藤進昌先生の本は参考になりました。


2014年3月15日土曜日

運動がけん引する睡眠と食事-生活習慣病としてのうつ病

健康に関連する生活習慣の3要素として、運動、睡眠、食事があります。しかし、これらの3つは同等の位置関係にあるのではありません。たとえば、たくさん睡眠を取れば運動す量になったり、食欲が出たりすることはありません。また、食事をとれば運動したり、よく眠ったりするわけでもありません。しかし、運動を良くする、運動習慣をつけると、お腹が空き食欲が増し、睡眠の質が向上します。このように、運動は、他の要素をけん引する生活習慣の本質を占める要素であると考えられます。

生活習慣の乱れから起きてくる疾患を、「生活習慣病」と呼んでいます。厚生労働省のホームページをみると、生活習慣病として6つの疾患が挙げられています。それらは、糖尿病、脳卒中、心臓病、脂質異常症、高血圧、肥満です。

私は、ここに「うつ病」を入れたいと思っています。うつ病はご存知のように高強度のストレスが長期間続いて起きてくる、抑うつ状態ですが、現代時の日々の生活にはストレスがつきものです。そのようなストレスの中でも、うつ病にならない人は居ます。これは、体質の違いと大きくくくっても良いかもしれません。そう考えると、例えば、必ずしも良い生活習慣でなくても生活習慣病を発症しない人もいるということと似ています。

他の生活習慣病と同様に、各個人の体質と環境の両方が関連してうつ病は発症してきます。人によっては、うつ病を発症しないケースも有りますが、生活習慣を整えることによって、うつ病の発症は、全体として減ると思っています。また、うつ病になった人たちについても、生活習慣を整えることが、治療的な意味があると思っています。

そのためには、生活習慣に運動を取り入れることがとても大事です。運動は、決してジャージを着て、激しいスポーツをすることだけではありません。日々の生活の中で、階段を使ったり、歩く距離を増やしたりすることも大切です。そして、それにけん引されて、バランスの良い食事と、良い睡眠を確保することも合わせて行わなくてはなりません。これによって、身体的な健康と、良い精神状態が保たれるようになることが期待できます。

このような、生活習慣病としての側面をもったうつ病について、実際の臨床では、薬物療法に合わせて、細かな指導をすることで、寛解に早く至り、良い状態を維持することができるようになるケースが多くなると考えています。


2014年3月10日月曜日

マスクと精神科の患者さん

この季節になると、花粉の影響で街にはマスクをしている人たちがあふれています。こんなにマスクをしている人が多い国は珍しいと思いますが、最近は北京などもPM2.5の影響でマスクしている人は多いようですね。精神科の患者さんもたくさんの人がマスクをしてきます。患者さんによっては、花粉症の薬出してくださいとおっしゃいます。先日の日経メディカルには、下記のような記事が出ていました。眠気の少なさを考えると、アレグラが良さそうですね。

医師1067人に聞いた「お気に入りの抗ヒスタミン薬」
花粉症医師の8割が抗ヒスタミン薬を服用
一番人気はアレグラ、続いてザイザル、アレロック
2014/2/28 田島健=日経メディカル

さて、ここでマスクを話題にしたのは、花粉症のことではありません。精神科の患者さんの中でマスクをしてくる人は、殆どと言って良いくらい顔を隠すためにマスクをしています。そういう意味で、この季節は患者さんにとっては、特別目立たずにマスクをできる良い季節かもしれません。マスクをしてくる患者さんの多くは、社交不安障害の方です。その他の疾患もありますが、外にでるときにマスクをしたりサングラスをすると、自分自身をみられずに安心できます。

そういう患者さんも、診察室の中ではマスクを取ってもらうようにしています。取るのが面倒くさくてそのままになっていたり、マスクを外してもらったことが何度もあるので、マスクをしていてもバリアにならないような患者さんの場合には、わざわざ、聞きませんが、初診の患者さんや、表情をよく知りたい患者さんの場合には、少し話をして慣れてきたら、「マスクを外すことができますか?」とお聞きします。

ほとんどすべての患者さんが、マスクを外してくれます。多くの患者さんは、自分自身がそういう問題を持っていて、そのことを相談する相手としての治療者に対しては、マスクは必要ない場合が多いです。逆に治療者に対しても顔を隠したい場合は、まだ十分な治療関係ができていないと考えても良いのではないでしょうか。

治療がうまくいくと、マスクが取れることもあります。マスクがとれて、イキイキとした顔を見られる患者さんは、この状態を是非維持するために、精神的なサポート、薬物治療、両方においてより気を抜かずにやっていかなければならないとも考えています。

2014年3月6日木曜日

外来精神療法の意味

患者さんが外来にみえると、お話をして処方をするというのが通常のパタンである。この、「お話」の部分が外来精神療法(通院精神療法=通精)というものであるが、この治療にはどのような意味があるのだろうか。多分、精神科医はそれぞれのスタイルを持っていて、そこでどのような話をするのかには、精神科医それぞれの考えがあると思われる。

薬物療法について相談することも多くある。薬物療法は、精神科医療については欠かせないものなので、これについて相談することは大切である。副作用は出ていないか。患者さんが副作用と気づいていないことが実は副作用であることもある。精神的な症状と気づきにくい、様々な身体的な訴えについても丁寧に聞いて、必要であれば薬物療法を変更する。ただし、これだけだと患者さんの側から見れば、自分のことよりも薬の調節に興味があるということになるし、また実際そのような治療になってしまう。

薬物療法よりも更に大切と思われることは、その人がどのような生活をしているか、どのような内的な世界にいるのかを確認することだと思う。確認するだけでなく、それにコメントする。コメントは、多くの場合微調整を含む。この微調整は大きな意味を持っている。例えば、「退職など具合悪い時には人生の大切なことを決定しないほうが良いですよ。」などということである。そういうことは、外来に来ていなければ患者さんは、自分の考えで進めてしまうことも多い。そういうコメントをすると、ちょっと思い留まる。その会話は1分以内のことなのだけれども、これが後の人生に影響をあたえることも少なくない。

以前、あるスポーツチームの有名な監督と話をする機会があって、どんな指導をしているんですかと聞いた。そうしたところ「毎日、練習に行って、これは良い、これは悪いって言うだけですよ。」と話しておられた。これはとても大事なことで、そんなことを通じて、選手は良い方向が何かを日々の練習から確実に、そして確固とした方向として自分の中に位置づける事ができる。これは、大学院生の指導をしていてもそうだが、日々少しずつの微調整が、効率的で良い研究活動に繋がる。

このような指導は、一つ一つは本当に僅かなものであるが、これがないと誤った方向にどんどんと進んでしまう。そして、半年たったところではとんでもなく離れたところに行ってしまうこともある。それからの修正は大変である。

2週間に一度の外来精神療法はそのような意味を持っていると思う。まあ、先生の言うとおりだ。だけども、自分もそう思っていた、と患者さんは思うことは多いと思う。ただ、そうでもないことも時にはある。このような共同作業を続けることで、患者さんの良い自己決定ができるようになってくるということが外来精神療法の意味なのかなと思っている。