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2018年2月5日月曜日

注意欠如症におすすめノート

大人の発達障害の一つであるADHDでは、多動性衝動性は比較的収まっており、不注意優勢型であることが多くあるともいます。本人は、仕事を真面目にやろうという気持ちは十分にあるのですが、幾つもの仕事を振られると、抜け落ちてしまう、やり残してしまうということがあります。約束事を忘れてしまうなどがあると、仕事上は大きな問題になってしまうと思います。

もう一つは、時間配分がうまくいかないということもあります。一つのことをやり始めると時間を忘れて仕事に取り組んでしまうために、やるべき仕事の半分しかできずに一日終わってしまうということもあります。

こういうときに、メモをとることはとても大事です。しかし、多くの場合はあちこちにメモを書いて、そのメモがどこにあるのかわからなくなってしまうなどということが有り、これは薬物治療などもしながら、ノートは一つにするということを徹底することがとても大切になります。すべてのことを一つのノートに書くということです。

もう一つは、時間配分もノートに書くということです。そのような意味でのおすすめのノートについて考えていたところ、私の患者さんが良いノートを見せてくれました。調べてみたところ、ロフトのHPにノートについての解説がありました。

ロフトのおすすめ手帳の選び方

という、サイトですが、リンクを張っておきます。
ロフトのサイトより:週間バーチカルタイプの例
この中で私がおすすめするのは、「週間バーチカルタイプ」というものです。一週間のスケジュールを、日にちごとに縦の時間軸に沿って、埋めていくというものです。これを用いれば、その日一日の自分の行動がイメージとして頭に入りやすいと思います。注意欠如症の方は、イメージを覚えるのが上手なことも多いので、そういった意味でも良いと思います。使い慣れれば、絵を入れたり、色分けをしたりすることでかなり効率的な仕様ができるのではないでしょうか。


2016年7月24日日曜日

マシュマロ テスト

先日に行われた、日本睡眠学会のシンポジウムについては、神山潤先生がマシュマロテストのお話をされたということを紹介しましたが、そのテストについて、私は知識がありませんでした。そこで、少し調べてみましたが、非常に面白いので、紹介したいと思います。まず、YouTubeを御覧ください。これを見るだけでもとても面白いです。子どもたちがとても可愛いですよ。




このテストについては、ジェームス・クリアという人のサイトにその詳細な記述があるので、それを参考にしました。下記のURLです。
http://jamesclear.com/delayed-gratification

マシュマロテストというのは、Marshmallow Experimentとも呼ばれていて、1960年代にスタンフォード大学で行われた研究のようです。被験者は、4-5歳の子どもたちです。実験では、子どもたちを個室に招き入れて、一個のマシュマロが目の前に置いてある机に座らせます。そして、子どもに、今からちょっと部屋を離れるけれども、その間にマシュマロを食べてしまったら、もうそれじょうマシュマロはあげないけれども、もし我慢できたらもう一つマシュマロをあげて、2つ食べても良いよという風に説明します。

そして、検者は15分部屋を離れるわけです。そして帰ってきた時に、マシュマロを食べてしまっているのか、それとも待っていてもう一つマシュマロをもらえるのかを確かめます。この研究の非常に興味深いのは、その後、子どもたちが成人した後に、マシュマロを食べずに我慢できた子たちと、食べてしまった子たちがどうなったのかをフォローアップしたところです。

この結果、マシュマロを我慢できた子どもたちは、
1.大学の入学共通試験で良い成績を取る
2.物質乱用の傾向が低く
3.肥満の割合が低く
4.ストレスへの対応がよく
5.社会的スキルも高い
ということが分かりました。

そう考えると、人生はすでにこの子どもの時に備わっている抑制する力によって決まってしまうとも言えるようですが、じつは別の実験も紹介されています。ロチェスター大学の研究者による研究です。彼らは、このマシュマロテストを行う前に、被験者の子どもたちを2つの群に分けて、片方は約束してもそれを果たさない実験を何度も行い、もう一群は約束をしっかり守る実験を何度も行うということをしています。

その結果は、想像の通り、約束をまもらない実験を繰り返した群では、すぐにマシュマロを食べてしまう率が高くなったわけです。

結局、このような人生の成功は、生まれながらに備わっている抑制力によるだけでなく、環境、すなわち、教育、社会的規範などによっても培われるものだということを示しているようです。これは、結局のところ、精神的な問題を考えるときには常にそこにあるものです。

近年、発達障害が問題になっていますが、資質としていわゆる発達障害に相当するものを持っている子どもに対しても、丁寧で誠実な教育をしていくことによって、その行動は変わるということも示しているように思います。

考えてみれば、本当にあたりまえのことですが、いろいろな場でしっかりと認識されるべき事柄でもあるように思いました。

非常に、興味深いトピックでした。

2016年5月18日水曜日

第41回日本睡眠学会 シンポジウム 発達障害と睡眠障害



2016年7月7日8日の二日間、東京都新宿区の京王プラザホテルで、日本睡眠学会が開催されます。
http://www.c-linkage.co.jp/jssr41/

この学会で、私と中島先生(下記)がオーガナイザーとなって、発達障害と睡眠障害というシンポジウムを行います。

シンポジウムは、

私
中島亨先生 杏林大学
http://dr-guide.net/www/%E4%B8%AD%E5%B3%B6%E4%BA%A8/
神山潤先生 東京ベイ・浦安市川医療センター CEO
http://www.j-kohyama.jp/profile.cfm
本田秀夫先生 信州大学
http://www.shinshu-u.ac.jp/hp/bumon/kokoro/goaisatu.html

この4名で行います。

私自身は、成人の注意欠如多動性障害と日中の眠気についての話をする予定です。

この問題は、このブログでも何度も取り上げてきており、エントリーのヒット数もこれまで上位を維持してきています。また、ブログの記事を読んで来院される患者さんも大勢おられます。これまで睡眠障害専門外来では、睡眠に焦点をあてて診断治療を行ってきました。これは、いわば当たり前のことでは有りますが、しかし、その背景にある疾患に目を向けなければ、根本的な治療ができないのがこの、成人ADHDにみられる日中の眠気、だと思います。主訴が日中の眠気であるために、どうしても睡眠専門医は、無呼吸やナルコレプシー、午前中の眠気だと睡眠相遅延症候群となどに診断が傾いてしまって、その背景にある根本的な問題を見いだせない場合があるからです。

このシンポジウムが実り多いものになると良いと考えています。

2015年5月22日金曜日

知っていますか? 五月病とうつ病の違い (日経記事)

先日、日経の記事に表題のようなものがありました。結論から言うと、良い記事だなと思いました。第一印象では、五月病とうつ病の違いというのを読んで、それはいろいろ違うだろうなと思ったのですが、どういうことを書いてあるのかについて、興味がそそられました。

五月病と呼ばれるものは、4月に新しく学校に行き始めたり、仕事を始めたところ、5月ころに元気がなくなり無気力になってくるというのが大雑把な経過だと思います。このような状態の多くは、この記事にも書かれているように「適応障害」と呼ばれているものです。適応障害の診断は、大まかには


  • 明らかなストレス因子があり、それが生じた3カ月以内に症状が出現している
  • 症状が通常予測されるよりも強い苦痛を与え社会的・職業的機能に障害を与えている
  • 他の精神疾患の診断基準を満たしていない、そしてすでに存在している精神疾患の単なる悪化ではない
  • 死別反応ではない
  • 因子が消失した6カ月以内に症状が改善される

日経記事の写真(リンクしたものです)
というようなものです。4月に学校や新しい職場に入り、三ヶ月以内に症状が出現し、本人が苦痛に感じて、社会的機能や職業的機能に問題が生ずるということですので、まさに五月病にはピッタリと当てはまります。しかし、少しだけ注意が必要なのは、症状としては必ずしもうつ状態が出てくるとは限らないということです。適応障害の診断基準の中には、うつ状態になることが必須ではありません。抑うつや不安は多い症状ですが、その他の症状でも適応障害の診断はできます。また、因子を消失させれば症状が改善されるということも大切です。

先日書いた、古茶先生の文章を読んで思うのは、ここで他の精神疾患の診断基準として、うつ病の診断基準を満たしていれば、適応障害とはならないということです。両方の診断名を併記することは、ここではありえません。しかし、このあたりの診断は意外と曖昧になっている可能性もあります。

それからら、五月病でもう一つ思うのは、それまで学生だった人が、4月から新入社員として就職した場合に、発達障害などの問題が表面化して非常にストレスを感じるようになるという場合です。このような場合は、単に適応障害とだけ診断して治療したのでは、根本的な解決にはなりません。むしろ、今後の人生についてどのように社会に適応していくのかということについて、時間をかけながら共同作業で探していくような治療が必要になると思います。


2014年9月15日月曜日

成人発達障害支援研究会 (1)

成人発達障害支援研究会に入会することにしました。最近外来診療の中で、発達障害と診断される方が多くなってきたということも有ります。また、以前にも書きましたが、睡眠専門外来において、日中の眠気、過眠を主訴に来院される患者さんのなかに、かなりの割合で発達障害と診断できる方がおられることも、この会に入会しようと考えた大きな要因です。

睡眠障害と発達障害は、実は非常に近いところにあるのではないかとも思います。例えば、AD/HDの治療に用いられるアトモキセチンやメチルフェニデートは、ノルアドレナリンやドパミンに関わる薬物ですが、これらの神経伝達物質は睡眠覚醒の機構においても重要な役割を果たしています。したがって、睡眠障害は、発達障害の症状の一部であるとも考えられます。睡眠障害を専門とする、他の専門外来で、AD/HDの患者さんが睡眠相後退症候群と誤診されたケースを経験しましたが、このようなことは意外と多く起きているのだとも思います。

できれば、この研究会で、睡眠障害と発達障害の関連についても、多くのこの分野の専門家の方々と意見の交換ができれば良いと考えています。この会の代表の加藤進昌(かとうのぶまさ)先生は、睡眠障害の専門家でも有りますので、とても楽しみです。

2014年5月11日日曜日

睡眠総合ケアクリニック代々木 10周年記念パーティー

昨日は帝国ホテル孔雀の間で、睡眠総合ケアクリニック代々木の10周年記念パーティーが行われました。このクリニックは、もともとは、晴和病院に当時おられた、私も指導を頂いた本多裕先生(故人)が開設されたクリニックで、開設当初より本多先生に協力して診療をされていた、井上雄一先生が、その後理事長となって、更に大きく拡大されたクリニックです。日本における、睡眠障害専門外来を行うクリニックとしては最も大きなもので、私も一度見学をさせていただいたことがありますが、PSGを行う部屋もたくさんあり、多くの患者さんが外来に見えていました。今回10周年記念ということで、10年一昔といいますが、もう10年経ったのかと思います。

このような、睡眠専門外来は次第に増えては居ますが、このなかの多くは睡眠時無呼吸症候群を専門に取り扱う睡眠専門外来で、その他の睡眠障害、たとえば、不眠症、ナルコレプシー、ムズムズ脚症候群、概日リズム睡眠障害などは、取り扱っていません。このような、広範囲の睡眠障害の患者さんを受け入れられるクリニックはあまり多くなく、睡眠総合ケアクリニック代々木は、そういう意味でまさに総合ケアクリニックだと思います。

規模は小さいですが、私が勤務しているあべクリニックの睡眠専門外来もある意味では、睡眠総合ケアクリニックだと思います。睡眠時無呼吸症候群から、不眠症や様々な睡眠障害の患者さんが見えています。更に、以前にも書きましたがあべクリニックは、精神科・心療内科一般の診療をしているために、例えば日中の眠気で訪れた方の背景に、ADHDの存在を診断し、こちらのケアを行うということもスムーズにできているという利点もあります。ADHDに睡眠障害が多いことについては、昨日の会でも、昭和大学付属烏山病院病院長の加藤進昌先生が、ご挨拶の中で話されていました。

昨日の会は、関東地区を主体に、睡眠に関連した様々な先生方が集まっておられましたが、私は個人的には、日本大学医学部精神科の内山真教授と久しぶりにゆっくりとお話出来たのが、大きな収穫でした。

2014年3月16日日曜日

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方との関わり

DSM 5では、アスペルガー症候群という言葉は用いられなくなり、自閉症スペクトラム(ASD: autism spectrum disorder)という言葉が用いられる。この中で、従来自閉症と呼ばれていたもの、特に知的障害を伴うものも含まれています。このような中で、知的障害や、言語発達の障害を伴わず、「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「想像力の障害」を主な特徴とした、従来アスペルガー症候群と呼ばれている人たちとの関わりについて書いてみます。

外来で、こういった方たちと接する機会は多くありますが、コミュニケーションの障害の結果、診察が長くなるということがあります。外来では、順不同で患者さんを診察していきますので、うつ病の患者さんが続いた後に、このようなASDの患者さんになることがあります。安定したうつ病の患者さんでは、ざっとここのところの様子を聞いて、薬の処方や生活のアドバイスをして終わります。ところが、ASDの患者さんの場合は、ここのところの生活の様子を聞くと、その周辺の状況から始まって、事細かに話し始めます。

このようなことは、やむを得ないと思っています。障害がある方を診察しているわけですから、これで「もう少し手短にお願いします」では、一般社会の対応と同じになってしまいます。ひと通りの話を聞いたあとに、お話するのは、問題となっていることをもう少し大局的に見る視点です。これをASDの方に持てるようにしてもらうことは困難ですが、個別の問題について、「いまやっていることの大きな目的はなんでしょうか。」などと話をして、ある事柄について何が正しいかよりも、その問題を通して関わる人がスムーズに仕事が進むようになることのほうが、全体としての利益が大きいということを丁寧に説明し、そのために何をするのが良いかをお話します。

具体例としては、例えば「自分はある企画の説明をしなければならないが、その中には専門的な細かい内容を説明しなければみんなに意味がわかってもらえないのではないかと思う。そうすると、パワーポイントもたくさん作らなければならないし、話も2時間位になってしまうのでどうすればよいか。」という質問です。まず、この質問に到達する前に、事細かに企画の背景についても話をするので、この説明にずいぶん時間がかかります。さて、こういう質問をされた時に、いくつかの質問をします。「聞いている人たちは、何分くらいの話だったら聞いてもらえるのだろうか。」「そのためには、スライドを何枚に抑えなければならないだろうか。」そうすると、これまでの経験から15分位。スライドも10枚から15枚位という風に答えることはできます。そして、まずは10枚にする。その中には大事なものをいれる。入らないものは、しょうがないので捨てる。それによって第一には全体の概要を知ってもらうようにするのが良いということをアドバイスするわけです。

このアドバイスで、物事がどれだけうまくいくようになるかはわかりません。しかし、このような事柄はASDの患者さんにとっては、毎日の生活の中でつねに起きてきていることです。外来では、そのことを取り上げて、説明するようにします。そうすることによって、少なくとも患者さんは方向が見えて安心します。結果として、どれだけうまく出来たのかは確認もできない場合が多いのですが、それでも患者さんは、安心される場合も多くあります。

ASDは、ADHDのような治療薬と呼べるものがなく、治療法も確立されているとは言えません。また、社会の理解をと言っても、なかなか職場の理解を得ることも難しいと思います。しかし、根気強く、このようなアドバイスを繰り返すことは、日々の患者さんのストレスを軽減する方向には働いていると思っています。


加藤進昌先生の本は参考になりました。