これまでの図にはありませんでしたが、ヒスタミンに対してもミルタザピンは非常に強い作用があります。ミルタザピンの副作用には眠気が有りますが、眠気を起こす作用は、不眠を伴う患者さんに対して使いやすいということが有ります。眠気はヒスタミンのH1受容体遮断作用によるものです。このヒスタミン受容体への遮断作用は、非常に強いものです。したがって、ごく少量のミルタザピンでもヒスタミンへの遮断作用がおきます。ヒスタミンの遮断は、非常にシャープな睡眠導入作用ではないかもしれませんが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を安易に使うことを考えれば、不眠症状のあるうつ病患者さんに対して、ミルタザピンを試すのは良い選択かもしれません。
ただ、食欲に対しての少し厄介な副作用も有ります。ヒスタミンは、視床下部の食欲をコントロールする部位を刺激して、食欲を抑える働きがあります。ヒスタミンをブロックすると、この部位が働かず、満腹感が起こりにくいために食欲が増加するということが有ります。このため、ドカ食いをしてしまうということも起こるわけです。ミルタザピンを服用しはじめて、非常に太ってしまったとおっしゃる患者さんは多く居ます。したがって、この副作用は投与する前に予めお話しておいたほうがよいでしょう。
一方で、この副作用は、食欲のない患者さんに対しては治療的な効果としても発揮されるわけで、詳細に症状を聞きながら、処方を行っていくと、非常に効果的にミルタザピンを使える可能性も出てきます。
このように、ミルタザピンは非常に様々な作用を持った薬物ですが、使い方によっては一度に多くの症状を改善するという可能性もあり、臨床においても治療のための良い薬物として頭においておきたいと思っています。
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