ラベル ナルコレプシー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ナルコレプシー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年11月14日火曜日

過眠症の診断のMSLT検査について思うこと

2017年9月から本格的に、すなおクリニックにて、MSLT検査をはじめました。MSLT検査は、過眠症の診断のための客観的検査で、一日4-5回の昼寝を、暗い防音の部屋でしてもらい、眠り込む時間(睡眠潜時)を測定するものです。これで、平均8分以内の睡眠潜時があれば、過眠症と診断でき、更には、15分以内にレム睡眠が出現するSOREM(sleep onset REM)の回数などによって、ナルコレプシーと診断できるかどうかが決まってきます。

これらの診断基準は、ICSD-3(睡眠障害の国際分類 第3版)によるものですが、この中にも、診断基準の他に患者さんの状況について、よく確認して診断すべきとされても居ます。特発性過眠症は、日中の眠気はあるが、眠気の性状がナルコレプシーとは異なり、短時間の睡眠でも頭がすっきりしないということや、SOREMの特徴がないという点が異なった疾患であると考えられています。

これらを総合的に考えると、睡眠潜時が平均8分以内ということがまずは、必要な要件ですが、これについては、幾つかのポイントがあります。

緊張が高い患者さんで、初回に眠らなかった場合、記録は20分間行いますので、初回の睡眠潜時が20分になります。その場合、残り4回が、睡眠潜時6分でも、全体が平均8分以内になりませんので、基準を満たしません。

また、SOREMがでない、あるいは最初の4回で2回以上SOREMが出れば、4回でやめることも可能ではあるのですが、その場合には、1回目に眠らなければ、基準を満たすためには残りは4分以内に眠らなければなりません。

更に、前日の睡眠を含め、普段の夜間睡眠は十分である上で日中の眠気があることが病的な眠気の意味であろうと思いますが、現代人は一般には、十分な睡眠を取っているとも言えないので、これをどう考えるかということにもなります。

更に、治療薬モディオダールとの関連についても

1.MSLTを行えないクリニック、あるいは検査をしていない患者さんにはモディオダールは投与できないか。
⇒ 添付文書をみると、投与できないことになっています。

2.MSLTで睡眠潜時が、8分以内だけれどもSOREMのない特発性過眠症には投与できないか。
⇒ 添付文書をみると投与できません。

このようなことで、いろいろと困る事例があるように思います。したがって、過眠症の診断と治療は、検査だけでなく、本人の生活史や、生活時間などについても十分な問診を行い、これらも考慮しながら行うことが必要になってくるのだと思います。

2015年10月8日木曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (5) 真性ナルコレプシーとのCo-morbidity 

以前にも同様の題名でエントリーをしましたが、その後もEDS(Excessive Daytime Sleepiness=
日中の過度の眠気)という主訴で来院される方の中に、ADHDの診断基準に当てはまる方が多く居ます。その中には、このブログを読んで見える方も居ます。勿論、日中の過度の眠気を主訴として来院される方の中には、ADHDの診断が可能な方もいればそうでない方も居ます。診断的には、いわゆる睡眠不足症候群や、睡眠時無呼吸症候群、ムズムズ脚症候群、ナルコレプシーなどの存在をきちんと確認しなくてはいけません。

この、睡眠とADHDの関係については、文献的な考察も行い、先日はヤンセンファーマ株式会社の講演会でもお話する機会を得ました。

さて、こういった患者さんの中には真性のナルコレプシー、つまり、日中の過度の眠気、睡眠発作、短時間睡眠ですっきりする、カタプレキシー(情動脱力発作=驚いたり、おかしいなど強い情動で力が抜ける)、入眠時幻覚、睡眠麻痺などの症状が揃っているナルコレプシーの方がいるということも少なからず経験しています。また、このような点については、論文も出されています。

例えばこちら。
http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=30124

しかし、この点については、まだ十分に自分自身も整理できていませんし、また文献的にもクリアにこの関係について説明するものはありません。今後、更に経験を重ねて、治療経過を見ながら、この関係については考えていきたいと思っていますが、現状の考えをまとめると以下のとおりです。

ナルコレプシーの病態は、オレキシン細胞の脱落ということが言われています。オレキシンの役割は何かというと、これは脳幹部(脳が脊髄に繋がるあたり)の、覚醒に関わる神経細胞に対してその活動を維持させるような働きをもっていることが知られています。ナルコレプシーの患者さんは、おきていることができないわけではありませんが、維持が難しく睡眠発作が出現してしまいます。

このような、脳幹部の覚醒に関わる神経核には、ノルアドレナリンやドパミンを産生する核も含まれます。これは、以前にも書いたようにADHDの病態に関わる神経伝達物質です。したがって、考えられる病態は、オレキシンが欠落していると、これらの細胞に対する持続的な活動の維持のための刺激がなくなり、ノルアドレナリンやドパミンの神経細胞の機能低下が起こり、その結果としてADHD様の症状が出現する可能性があるということです。

ADHD様の症状と書きましたが、そうすると、これはADHDではないということにもなりますが、もしこういった考え方が正しならば、ADHDではないが、ADHDに似ているということになります。しかしながら、ADHDそのものの原因も、均一な疾患であるのかどうかもよくわかっていない現在では、これは、ADHDとは別のものだとも言いがたいようにも思います。

ADHDの診断は、血液検査や脳波検査、MRI検査などによってなされるものではなく、病歴や現在の症状などによって、一定の診断基準を満たした場合になされます。このような中で、睡眠障害は除外診断には入っていませんので、ADHDの基準を満たせば診断は可能です。

私は、Co-mobidity(共存症=2つ以上の疾患が共存している)という捉え方を先ずはして、先にADHDの治療を行い、これによってナルコレプシーの症状がどこまで改善されるかという経過を診るようにしています。勿論、カタプレキシーなどの症状がひどければ、これを改善する薬物を先に投与することも有ります。

睡眠と発達障害の関連は、今後も更に研究の発展が見られる分野であると確信しています。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

2015年3月30日月曜日

どうして頭部外傷後に長く眠るようになるのか? (Psychiatric Times記事)

Psychiatric Timesの3月27日の記事に、Moving Beyond “Hand Waving”: Why Do People Sleep a Lot After a Traumatic Brain Injury?という題名のものがありました。この、「Hand Waving」という英語の意味がよくわからなかったのですが、これは「ごまかし」という意味だそうです。次のような会話が示されています。

患者: 先生、頭をうって大分良くなったんですが、なんか最近良く寝るんですよ。どうして、こんなに長く眠れるんでしょうか。

医者: それは、当然本当に脳が回復するために、時間がかかるんですよ。その回復のために、睡眠が必要になるんですなぁ。

しかし、この医者の説明は全てウソでないにしても、多分にごまかしが入っているということを指摘しています。



この記事では、2015年の1月号のAnnals of Neurologyという学術誌にのった、Valkoらの論文を紹介しています。この論文で彼らは、2009年に発表した論文の頭部外傷の患者さんをフォローした結果を示しているということです。そして、乳頭結節という後部視床下部にある覚醒系の神経伝達物質をであるヒスタミンを産生する部位が損傷されていることを明らかにしたようです。さらには、ヒスタミンほど顕著でないけれども、視床下部外側野に位置するオレキシンを産生する部分も損傷されていることも記載されているようです。オレキシンは、これも覚醒を促進する神経伝達物質として働いており、これらの部位の機能不全が、睡眠過多を引き起こしているようです。このメカニズムは、外傷性のナルコレプシーにも通じるものです。

面白かったのは、この記事の最後にSidney Harrisという風刺漫画家が引用されているところです。この漫画はオリジナルの記事には掲載されていませんでしたので、私が探してきました。これを掲載します。

二人の科学者が、黒板の前の立って議論をしています。そして、一人の科学者が真ん中に書かれている部分を指さして、「ここで、奇跡が起こって」というところをさして、「この部分についての説明は、もう少し明確にしなくてはいけないなぁ。」ともう一人の科学者に話しています。

頭をうって、よく眠るようになるのは、「脳の回復には時間がかかるんですよ。」というごまかしでなく、「覚醒を促す、ヒスタミンやオレキシンという物質を産生する部分が損傷を受けているのかもしれない。」という、明確な説明ができるようになり、そしてそのことが明らかになればそれに対する治療も、目的に沿った形でできるようになってくると、著者は結んでいます。

なかなか良いコラムでした。興味のある方はぜひ、オリジナルをお読みください。


2014年11月10日月曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (3) ドパミンの仮説

注意欠如障害の治療薬であるコンサータは、メチルフェニデート(リタリン)の徐放剤で、血中濃度の急激な上昇をさせずに、12時間程度の作用時間を保つように設計されている薬です。この薬は、下記に示すようにノルアドレナリンとドパミンの取り込みを司るトランスポーターの働きを抑えて、シナプス間隙のドパミンまたはノルアドレナリンを増やします。







脳の側坐核という部分のドパミンの放出が増えると、これが快刺激となって依存が形成されると言われています。メチルフェニデートはドパミンの作用を増強させるので、依存性がある薬物ですが、コンサータは徐放剤であるために急激な血中濃度の上昇がなく、比較的依存性が少ないと言われています。

さて、日中の眠気に関してこのドパミンはどのように働いているのでしょうか。ドパミンは、直接的にどのように睡眠覚醒に関与しているのかは、まだ良くわかっていないようです。しかし、細胞外のドパミン濃度が睡眠時よりも覚醒時に増加することが知られています。更にドパミントランスポーターが生まれつき無い動物では、ドパミンがより強く働いていることが推察されますが、そのような動物では覚醒時間が増加するといわれています。このようなことから、ドパミンは覚醒を起こさせる作用があるようにも考えられています。

従って、このようなドパミンの機能低下が場合によるとADHDの日中の眠気に関与している可能性もあります。

ところで、メチルフェニデートは、日中の睡眠発作を主症状とする過眠性疾患であるナルコレプシーにも用いられる薬物で、これを投与すると日中の眠気はとれます。多くの場合は、強い日中の眠気を呈するADHDの患者さんにコンサータを投与すると、眠気はとれます。この場合に、この眠気の改善に一体どのような神経メカニズムが関与しているのかは、非常に興味が有るところです。ナルコレプシーに欠けているオレキシンは、ノルアドレナリンにもドパミンにも作用してこれらの働きを増強させます。従ってADHDの眠気には、一般的に覚醒系全般の機能低下が関わっているのかも知れません。今後の研究が期待されるところです。



参考
ドパミンと睡眠に関わる研究の例
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6000