Psychiatric Timesの3月27日の記事に、Moving Beyond “Hand Waving”: Why Do People Sleep a Lot After a Traumatic Brain Injury?という題名のものがありました。この、「Hand Waving」という英語の意味がよくわからなかったのですが、これは「ごまかし」という意味だそうです。次のような会話が示されています。
患者: 先生、頭をうって大分良くなったんですが、なんか最近良く寝るんですよ。どうして、こんなに長く眠れるんでしょうか。
医者: それは、当然本当に脳が回復するために、時間がかかるんですよ。その回復のために、睡眠が必要になるんですなぁ。
しかし、この医者の説明は全てウソでないにしても、多分にごまかしが入っているということを指摘しています。
この記事では、2015年の1月号のAnnals of Neurologyという学術誌にのった、Valkoらの論文を紹介しています。この論文で彼らは、2009年に発表した論文の頭部外傷の患者さんをフォローした結果を示しているということです。そして、乳頭結節という後部視床下部にある覚醒系の神経伝達物質をであるヒスタミンを産生する部位が損傷されていることを明らかにしたようです。さらには、ヒスタミンほど顕著でないけれども、視床下部外側野に位置するオレキシンを産生する部分も損傷されていることも記載されているようです。オレキシンは、これも覚醒を促進する神経伝達物質として働いており、これらの部位の機能不全が、睡眠過多を引き起こしているようです。このメカニズムは、外傷性のナルコレプシーにも通じるものです。
面白かったのは、この記事の最後にSidney Harrisという風刺漫画家が引用されているところです。この漫画はオリジナルの記事には掲載されていませんでしたので、私が探してきました。これを掲載します。
二人の科学者が、黒板の前の立って議論をしています。そして、一人の科学者が真ん中に書かれている部分を指さして、「ここで、奇跡が起こって」というところをさして、「この部分についての説明は、もう少し明確にしなくてはいけないなぁ。」ともう一人の科学者に話しています。
頭をうって、よく眠るようになるのは、「脳の回復には時間がかかるんですよ。」というごまかしでなく、「覚醒を促す、ヒスタミンやオレキシンという物質を産生する部分が損傷を受けているのかもしれない。」という、明確な説明ができるようになり、そしてそのことが明らかになればそれに対する治療も、目的に沿った形でできるようになってくると、著者は結んでいます。
なかなか良いコラムでした。興味のある方はぜひ、オリジナルをお読みください。
患者: 先生、頭をうって大分良くなったんですが、なんか最近良く寝るんですよ。どうして、こんなに長く眠れるんでしょうか。
医者: それは、当然本当に脳が回復するために、時間がかかるんですよ。その回復のために、睡眠が必要になるんですなぁ。
しかし、この医者の説明は全てウソでないにしても、多分にごまかしが入っているということを指摘しています。
この記事では、2015年の1月号のAnnals of Neurologyという学術誌にのった、Valkoらの論文を紹介しています。この論文で彼らは、2009年に発表した論文の頭部外傷の患者さんをフォローした結果を示しているということです。そして、乳頭結節という後部視床下部にある覚醒系の神経伝達物質をであるヒスタミンを産生する部位が損傷されていることを明らかにしたようです。さらには、ヒスタミンほど顕著でないけれども、視床下部外側野に位置するオレキシンを産生する部分も損傷されていることも記載されているようです。オレキシンは、これも覚醒を促進する神経伝達物質として働いており、これらの部位の機能不全が、睡眠過多を引き起こしているようです。このメカニズムは、外傷性のナルコレプシーにも通じるものです。
面白かったのは、この記事の最後にSidney Harrisという風刺漫画家が引用されているところです。この漫画はオリジナルの記事には掲載されていませんでしたので、私が探してきました。これを掲載します。
二人の科学者が、黒板の前の立って議論をしています。そして、一人の科学者が真ん中に書かれている部分を指さして、「ここで、奇跡が起こって」というところをさして、「この部分についての説明は、もう少し明確にしなくてはいけないなぁ。」ともう一人の科学者に話しています。
頭をうって、よく眠るようになるのは、「脳の回復には時間がかかるんですよ。」というごまかしでなく、「覚醒を促す、ヒスタミンやオレキシンという物質を産生する部分が損傷を受けているのかもしれない。」という、明確な説明ができるようになり、そしてそのことが明らかになればそれに対する治療も、目的に沿った形でできるようになってくると、著者は結んでいます。
なかなか良いコラムでした。興味のある方はぜひ、オリジナルをお読みください。
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