ラベル ヨガ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ヨガ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年4月17日日曜日

瞑想ヨガと睡眠 (我々の論文が出版されました)

インドのバンガロールにある、国立神経科学精神医学研究所との共同研究で、瞑想ヨガ行者の睡眠の特徴についての論文が出版されました。

私は、これは非常に重要な発見だと思っています。

Senior Vipassana Meditation practitioners exhibit distinct REM sleep organization from that of novice meditators and healthy controls


ヴィパッサナー瞑想とは、
自己観察によって
自分を変えていく一つの方法である
上記に、この論文へのリンクが有りますので興味のある方は是非原典を読んでください。私は、アドバイザーとして後ろから2番目の著者になっています。主たる研究推進者はラストオーサーのBindu Kutty先生です。対象はヴィパッサナー瞑想ヨガの実践者で、インドのこういった研究をみると非常に特殊な人達と思われるかもしれませんが、むしろ通常は普通の仕事をしていて健康のためにヨガに取り組んでいるオフィスワーカーなどです。瞑想を主体とするインドで始められたヴィパッサナー瞑想ヨガのトレーニングを受けエキスパートになった人と、初心者、そして全くトレーニングを受けていない人を比較して、その睡眠の質についてポリグラフ記録を用いて評価したものです。

科学的には、きちんと脳波を含んだポリグラフ検査をしているところが質の高い研究であること。さらには、介入のないNo Treatment Controlを有しているところも優れた研究である点です。

被験者は
ヨガ習熟者 20名
ヨガ初心者 16名
コントロール 19名
です。

この論文の抄録を以下に示します。

Abstract/Summary
The present study is aimed to ascertain whether differences in meditation proficiency alter rapid eye movement sleep (REM sleep) as well as the overall sleep-organization. Whole-night polysomnography was carried out using 32-channel digital EEG system. 20 senior Vipassana meditators, 16 novice Vipassana meditators and 19 non-meditating control subjects participated in the study. The REM sleep characteristics were analyzed from the sleep-architecture of participants with a sleep efficiency index >85%. Senior meditators showed distinct changes in sleep-organization due to enhanced slow wave sleep and REM sleep, reduced number of intermittent awakenings and reduced duration of non-REM stage 2 sleep. The REM sleep-organization was significantly different in senior meditators with more number of REM episodes and increased duration of each episode, distinct changes in rapid eye movement activity (REMA) dynamics due to increased phasic and tonic activity and enhanced burst events (sharp and slow bursts) during the second and fourth REM episodes. No significant differences in REM sleep organization was observed between novice and control groups. Changes in REM sleep-organization among the senior practitioners of meditation could be attributed to the intense brain plasticity events associated with intense meditative practices on brain functions.

重要な部分は、上記の抄録の中にアンダーラインを引いたところです。すなわち「瞑想習熟者では、徐波睡眠とレム睡眠が増加し、中途覚醒とノンレム段階2が減少した。」ということです。運動による睡眠の変化では、徐波睡眠は増加しますが、レム睡眠は減少します。こう考えると、睡眠の質の変化としては運動とは違った変化がここにあることになります。

レム睡眠が多くなることが、睡眠の質として良いのかどうかについてはまだ議論が必要と思いますが、少なくとも被験者に対するインタビューでは、ヴィパッサナー瞑想ヨガを行うことによって、心の平静が得られ生活が非常に改善したという人が多く居ました。私自身も被験者と話をする機会があったからです。

レム睡眠を増加させる操作は、これまでには殆ど無かったように思います。どのようなメカニズムがここにあるのか、今後の研究の発展が期待されるところです。

2014年10月1日水曜日

アジア睡眠学会 インド ケララ州 (2) ヨガと睡眠

アジア睡眠学会は終わり、帰国しましたが、印象に残るセッションは「ヨガと睡眠」に関するいくつかの発表でした。これは、インドで行われた睡眠学会ならではの研究であると思います。

私が初めて、ヨガと睡眠についての発表を聞いたのは、今から数年前のインドの研究会ででした。その時の発表は、インドのヨガ行者と同じ年令性別の一般のインド人の睡眠を比べたところ、ヨガ行者の睡眠は驚くほど深いノンレム睡眠(徐波睡眠)とレム睡眠が多いという発表です。インドのバンガロールの研究所のBindu Kutty先生のグループの発表でした。特にレム睡眠が、特に全睡眠の40%も見られるということは、ほんとうに驚きでした。通常、レム睡眠は成人では20%くらいにみられますが、40%もレム睡眠があるという睡眠記録は見たことがなかったからです。

私は、最初は正直なところ、データの見方が間違えているのではないかと思いました。それで、その後、いつかその生データを見たいと思っていたのです。それは、一昨年達成出来ました。バンガロールの研究所に招待されて、データ解析を共同でやる申し出を受けたからです。私は喜んでインドに行き、実際のヨガ行者のデータを見せてもらいました。そうしたところ、確かに40%がレム睡眠以外には判定できない波形でした。

このような変化は、睡眠の若返りと言っても良い変化です。運動によっても、睡眠の若返りはおきますが、ヨガによる睡眠の若返りは、ヨガの経験が進めば非常に大きな変化となります。

我々は、インドのヨガの経験者といいうと、森のなかで何日も座って、太陽を見つめているようなことを想像しますが、ここで取り上げられているヨガの経験者はそのような、浮世離れした行者ではありません。通常の仕事につきながらも、日頃一日一時間程度の瞑想を毎日行うタイプの人達です。いわば、ジョギングを毎日欠かさないひとや、詩吟の趣味があれば毎日欠かさないというような、日常生活の中に溶け込んだ健康法としてのヨガを実践している人たちです。

これは、非常に私にとってはショックなことでした。このような著しい睡眠の質の改善が見られるのであれば、当然うつ病やその他の精神疾患への好ましい影響もあるように思います。そういった意味で、エビデンスに基づいた精神科プログラムとして、認知行動療法などに加えられるプログラムではないかと真剣に考えてもいます。