2015年8月17日月曜日

横向き寝で、アルツハイマー病になりにくくなる?

Could sleeping on one's side reduce risk of Alzheimer's?
表題のような記事が、出ていました。この手の記事は、まだ十分な科学的根拠につながらないものが多いのですが、しかし、興味を引く面もあるので読んでみました。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/297807.php

論文は、Journal of Neuroscienceに出ているようです。この雑誌は、神経科学研究を発表する雑誌としてはレベルの高いものです。ここに、側臥位(横向きね)で寝ている場合は、仰臥位(仰向き寝)の場合よりも、より効率的に脳内の老廃物を除去できるという結果が発表されています。またこれを根拠に、神経変性疾患(アルツハイマー病が含まれる疾患群)の発症が減少する可能性がある、としています。

少し調べてみると、この記事は、もっと以前にロチェスター大学のMaiken Nedergaardという研究者のグループがScience誌に発表した、Glymphaticシステムという脳の中のリンパ系が、睡眠中により活発に動いて老廃物を除去するという論文があり、その続編であるようです。かれらは、マウスを対象として、睡眠中にはGlymphaticシステムがより活発化することを示しています。

今回の研究は、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のHelene D. Benvenisteというデンマークからの女性研究者が行った研究のようです。この論文にはNadergaard先生の名前も共著者として入っています。この研究では、先のGlymphaticシステムがラットがを横向きねにした時に最も効率的に働いていることを示しています。そして今後、ヒトでも確かめられると良いと結んでいます。

このような研究は、基礎研究としては非常に興味深いものですが、これをヒトで確かめる方法としては、何らかの非侵襲的な方法を用いて、ヒトでもこのGlymphaticシステムが横向き寝の睡眠中により効率的に動くことを示せばよいのだと思います。しかし、これはあくまで「代替エンドポイント」と呼ばれているものです。本当はその先にその結果としてアルツハイマーになりにくいかどうかを明らかにしなければアルツハイマーの予防になるかどうかは分かりません。しかし、そこまで調べるのは非常に時間もかかり難しいので、その前の段階で物質レベルの変化だけを調べるということになります。これは、よく行われる研究手法です。

このような方法だと、横向き寝がアルツハイマー病予防によいという「傍証」は得られるのですが、最終的な結論はわからないということになるわけです。

それでも、このようなニュースを聞くと、ヒトは横向き寝信奉者になるのだと思います。

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