先日、西埼玉心と体の研究会(明治製菓ファルマ提供)にて、双極性スペクトラム障害をテーマにした会合がありました。双極性スペクトラム障害は、双極性障害、つまり双つ(ふたう)の極(躁の極とうつの極)をもった精神的な障害=躁うつ病、をとらえる広い概念です。
図は、米国のクリーブランドクリニックのHPにリンクしたものですが、気分のレベルとして、真ん中の波が書いてある範囲は、概念的には「正常」な、気分の変動範囲です。Good timesつまり調子が良い時、Bad timesつまり調子の悪い時、は誰にもあることで、これは環境に左右されたり様々ですが、基本的には様々なストレス解消法などで生活をして行けます。
しかし、下の青と紫の部分はうつ状態、上のオレンジと赤の部分は躁状態を示しています。
いわゆる躁うつ病(双極性障害I型)というのは、紫とオレンジの間を波が行ったり来たりするという大きな揺れです。
しかし、その揺れの範囲は、病型(あるいは患者さん)によって様々で、紫の方にはしっかり行くけれども、上はオレンジ辺りまで、あるいはときに黄色くらいまでで振れる場合もあります。そのような場合には、うつ病ということになるのですが、しかし、少し元気になる時期がある場合には、双極性の要素をもった病態であると考えるわけです。
この図は、それぞれの気分の状態をはっきりと線で区切ってありますが、実際にはただ調子が良いだけなのか、すこし元気すぎるのかの境目は曖昧です。したがって、概念としてこのようなものがあっても、なかなか「正確に」診断するのは難しいケースが多くあります。
しかし、このような概念は、病態を理解する上では非常に助けになります。また、治療についても少しずつ研究は進んでおり、いわゆるうつ病相だけを呈するうつ病とは異なった薬物療法(気分安定剤や非定型抗精神病薬)をしていくのが良いとされています。
新しく発刊された、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、気分の変化を呈する躁うつ病とうつ病は、別のカテゴーリに分けられて、「双極性および関連障害群」と「抑うつ障害群」に分けられました。つまり、躁うつ病とうつ病は別の疾患であるということです。この概念は昔からのものですが、よりはっきりしたとも言えます。
これらの概念が明確で、治療アプローチが確立されていれば良いわけですが、しかしながら、現段階では、必ずしもそうではありません。それには、診断のための長い経験と、一方で科学的知見を得るための臨床研究が更に続けられなければなりません。
この、双極性スペクトラム障害の概念については、時々取り上げて論じてみたいと思っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。