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2016年9月13日火曜日

第14回 日本スポーツ精神医学会

第14回 日本スポーツ精神医学会が、北里大学精神科 宮岡等教授を会長として開催されました。9月2日から4日のの間、品川区にある北里大学白金キャンパスにて行われました。

メインは、3日土曜日の学術集会ですが、本年は、宮岡会長の講演、元プロレスラーの小橋健太氏の講演、そして、J-リーグ村井満チェアマンの講演がありました。また、シンポジウムは、精神障害と知的障害のスポーツについて話し合われました。昼の教育講演は、ギャンブル依存についての北里大学蒲生裕司先生の話がありました。

宮岡先生の講演は、我々の学会について、非常に示唆に富むもので、私はとてもためになったと思っています。また、今後も宮岡先生には学会運営にご協力いただきたいと心から思いました。

会長の北里大学精神科教授 宮岡等先生と一緒に
小橋氏の講演もとても感動的なもので、このような学会講演は日本スポーツ精神医学会ならではだと思います。小橋氏が、プロレスでチャンピョンになりその2ヶ月後に腎臓がんが見つかり、それから治療復帰へのプロセス、そして、ご自身の心境の変化などについて、とつとつと語られ会場の聴衆に多くの感動を与えました。涙をながし、聞いている人たちもいました。

村井チェアマンは、学会に講演の時間だけでなく、長期にわたって滞在され、スポーツ選手のメンタルヘルスの問題について耳を傾けておられました。J-リーグはサッカーを広めるだけでなく、サッカーを通じての社会貢献活動をするということを主眼においているということを何度も強調されましたが、組織運営については能力の高い人だという認識を新たにしました。個人的にもお話させていただきましたが、これについてはまた別に取り上げたいと思って います。

教育講演の蒲生先生のお話は、途中からの参加でしたが、依存症について科学的メカニズムについて、お話されました。このお話は、私自身の臨床活動については、非常に参考になるお話でした。

シンポジウムは、精神障害、知的障害の障害者スポーツについての、様々な方々との取り組みについてでしたが、この分野も更に発展し、我々の学会も是非協力していきたいと思っています。


学会に先立った、理事会で新理事が決定され、学会の体制も新しくなりました。私自身は、理事長に再任され、今後の3年の任期の中で、学会を更に発展させ、システムも変えていきたいと考えております。日本スポーツ精神医学会を是非よろしくお願い致します。

2016年5月10日火曜日

イップス (Yips) (3)

イップスについて、先日2014年5月26日のNew Yorkerの記事を読みました。New Yorkerという雑誌は、アメリカの比較的教養ある人たちが愛読している雑誌だと思います。幅広い話題について、さまざまな興味深い角度から解説がされている雑誌で、ユーモアのある記事も見られます。

私は、熱心な読者ではないのですが、アメリカに住んでいた頃指導をしてもらっていた、Irwin Feinberg先生が、読んでいて、たしかこの雑誌に過労死の記事が出ていたのをびっくりしたような顔をして、日本人は死ぬまで働くのかと、聞きに来たのを覚えています。その後、しばらく過労死の話が出ていました。その後も、幾つかの記事を紹介してくれました。

このNew Yorkerのイップスの記事は、なかなか科学的な視点も取り入れた良いものでしたが、私が最も印象に残ったのは、これは以前にも書いたと思うのですが、やはりメイヨー・クリニックの研究についての解説で、イップスについて、心理的不安によって起こるということをよく言われるが、必ずしも心理的不安によるものばかりではないく、神経学的な何らかの基盤(体質、素因というようなもの)が強く関連しているということを強調していた点です。

イップスは、時々関わりますが、今度私のゼミの卒業生で、ハバナトレーナーズルームを恵比寿で開業している、石原心さんと、その治療について考えたいと思っていて勉強していた中で、この記事に出会いました。

興味深いので、英語ですがよろしければ原典もご参照ください。

http://www.newyorker.com/magazine/2014/05/26/the-yips

2015年12月18日金曜日

1945年からの精神医学における10の最も重要な変化 (Psychiatric Times) ~ スポーツ精神医学へ

Psychiatric Timesに表題の興味深いコラムが掲載されていました。下記がURLですので、原典に興味ある方は読まれると良いと思います。
http://www.psychiatrictimes.com/blogs/history-psychiatry/10-most-important-changes-psychiatry-1945-invitation-readers

この中で、興味深い図があったので、その拙訳を載せておこうと思います。文章の訳は著作権もあると思うので控えますが、掲載された図をみると、この文章の概要はわかると思います。

1.1950年代の精神薬理 革命
2.脱施設化
3.精神分析学の衰退
4.精神療法は、精神科医から医学教育を受けていない人たちへシフトする
5.ビッグサイエンスの台頭
  * ビッグサイエンスに関してはこちら
    http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20130703/356790/?rt=nocnt
6.1980年代からの、Mood-stabilizing, Mood-enhancing薬の開発と普及
7.製薬会社の影響力の増大
8.DSMの影響増大
9.精神科診断の急激な拡散
10.同性愛が病的と考えられなくなる

というところです。拙訳で申し訳ありませんが、一部わかりやすく意訳しました。

この中で、前半は精神分析から精神医学がより医学の一分野として、生物学的な基盤に則って治療を行う領域に変化してきたことが伺い知れます。これは、良い方向であると思いますが、その後、製薬会社の影響力が増大。更には、診断の拡大によって、必ずしも異常でない人たちが精神医学の診断を受け、治療の対象となる。そして、そこに多額の治療薬が導入され、製薬会社を潤す、という構図が描かれています。

これは、日本も他人事ではありません。

精神分析から生物学的精神医学への流れは、私は好ましい要素を持っていると思います。私は、スポーツ精神科医ですが、生物学は必ずしも薬理学を意味しないことを協調したいと思います。生活の改善…運動、食事、睡眠というごく当たり前のことが、精神的な健康度を上げるということをもっと精神科医は、知るべきです。次の重要な変化にこのことが加わると良いと思っています。



2014年9月1日月曜日

第12回 日本スポーツ精神医学会学会総会・学術集会 鹿児島 (4) 総括

8月30日土曜日に、日本スポーツ精神医学会学術集会が開催されました。私はこれまで、第1回の集会から今回まですべての会に出席していますが、今回の学会はその中でも非常にクオリティーの高い学会であったと思いました。教育講演は、鹿児島大学精神医学教授の佐野輝先生、特別講演は東大名誉教授の武藤芳照先生、鹿児島県サッカー協会顧問の松澤隆司先生でしたが、どのお話も大変興味深く、多くの方がそれぞれのお話に聞き入っていました。私も、時間を忘れてお話を伺いました。シンポジウムも、「スポーツはこころを育む」という内容で充実したものでした。

私は、その中でも一般演題の質の高さに非常に感銘を受けました。これまで、日本スポーツ精神医学会は地方開催の時にはなかなか演題も集まらず、お願いして出してもらうということも有りました。また、演題の中には私の研究室の大学院生が、必ずしも精神医学と直接的な関連があるとはいえない演題を発表することも有りました。しかし、今回は、この学会に発表するために、北海道、群馬、栃木、東京、神奈川、三重、愛知、など九州外からも多くの演題が集まりました。そして内容も非常に興味深いもので、多くの有意義なディスカッションができたと思います。会員数も300を超え、今後さらに増えていくと思います。

プログラムは先に掲載しましたが、患者さんに対して、運動プログラムを実施しその成果を見たものが、増えてきているのは嬉しい事です。また、障害者スポーツも大きく発展してきています。レベルの高いアスリートのカウンセリングや、精神科医と臨床心理士の連携などについても発表がありました。更には、スポーツ現場での暴力についての非常に深い考察が、アンジェ心療クリニックの諸井先生からあり、全体として本当に多くの勉強ができる一般演題発表だったと思います。

懇親会にも多くの先生方が参加され、お開きとなっても多くの参加者の方々がその場を動かずに、話を続けているという状況でした。

来年は、9月第1週に札幌で開催されます。石金病院の井上誠士郎先生が会長となられますが、これもまた非常に期待できる学会であると思います。

日本スポーツ精神医学会、これからも応援よろしくおねがいいたします!
理事長 内田直

2014年8月1日金曜日

第2回 埼玉県スポーツ精神医学懇話会: アスリートの摂食障害

7月31日木曜日に、大塚製薬株式会社の主催で、第2回埼玉県スポーツ精神医学懇話会が所沢で開催されました。この会は、本年1月に1回目の会を開催し、今回第2回めを開くことが出来ました。主には、埼玉県西部の精神科の先生方にお集まり頂いていますが、第1回めから獨協医科大学の精神科主任教授下田和孝先生にも来て頂いています。お弁当を食べながらのクローズドな会ですが、参加を希望される精神科医あるいはアスリートの治療に関わっておられるスポーツドクターやスポーツ関係の方がおられましたらお知らせください。

会の目的は、アスリートの治療に経験のある精神科医の数を増やしていくことです。そのために、アスリートの診療に関わる情報を、ケーススタディーを通じて共有していくのが大きな目的の一つです。精神的な問題を抱えたアスリートは少なからず居るにもかかわらず、必ずしもその治療が効率的に行われていないという側面があります。これは、いくつかの理由がありますがその一つには、アスリートが精神科にかからないという事、そしてアスリートの診療に慣れた精神科医が少ないということもあります。慣れていない精神科医はアスリートの事情を考慮せずに治療を行うということがあり、そのため、アスリートは一般のスポーツドクターに話をきてもらう時のように、競技に関連した話しが噛み合わないという結果になってしまいがちです。この会で、様々な情報を共有する中で、スポーツに興味をもち、アスリートの治療についての経験を積むスポーツドクターの精神科医が増えると良いと思っています。

今回は、摂食障害を取り上げました。会では最初に私がアスリートの摂食障害(Anorexia Athletica)についての概論をお話し、二人の治療者が一例ずつのケーススタディーを行いました。女子アスリートに摂食障害は比較的多くみられ、特に審美的要素のあるスポーツ、重量階級制のあるスポーツ、体重が減ると競技力が伸びるスポーツなどに多いと言われています。しかし、実際に診察をしていると必ずしも、そういった競技だけでもないように思われます。

最初の概論では、以前の大学院生が行った女子アスリート(新体操、体操、一般学生)の質問紙による調査の結果もお話しました。この研究は、2005年に行ったもので、対象は関東にある大学に在籍する女性158名で、無記名式の質問紙調査を実施したものです。そのうち67名は体育大学の運動部(新体操45名、体操競技22名)91名は運動部に所属しない一般学生でした。調査には、EDI-2という摂食障害研究でよく用いられる質問紙と、独自に作成した質問紙を用いました。

いくつかの興味深い結果があったのですが、そのうちいくつかをまとめると以下のとおりです。
・ 新体操選手では、BMI 18.5以下の割合が他よりも有意に多い
・ 一般学生に比べて、体操、新体操選手では初潮年齢が有意に高い
・ 新体操選手は、多食の傾向が強い
・ 身体への不満は、体操群で低く、新体操と、一般学生で高い
などのことが分かりました。

この中で、初潮年齢の問題は、育ち盛りの小中学生が、競技を優先するために充分な発育ができないという現状が示唆されたようにも思います。初潮年齢を優先すれば、しかし、競技力が十分伸びず、結果として競技で勝てないということがあれば、何のために競技をやっているのかわからないという意見もあると思います。いずれにしても、この問題はエビデンスはしっかり共有しながら、議論を進めていくべき問題だと思っています。

2014年7月18日金曜日

イップス (Yips) (2) 朝日新聞秋田の記事

以前問い合わせのあったイップスについての内容が、新聞記事になりました。取材があった朝日新聞秋田支局の江口記者から、朝日新聞秋田版の私の載った記事を送っていただきました。イップスについての私の仮説は、多分あっていると思います。多くの人がそう考えていることと思います。いわゆる、運動の学習は、まずは意識してこう動かすのだと考えそれを繰り返して練習しているうちに、皮質下(大脳基底核など)に運動に関わる神経プログラムが出来上がります。(詳細には、良い総説がありますので参照してください。)この神経プログラムを呼び出して使っているうちは、スムーズに練習した効率的な動きが可能になるわけですが、緊張が高まるとそれに大脳皮質からの回路が干渉して、スムーズな動きが阻害される結果になるという仮説です。

一緒にインタビューを受けている、日本イップス協会の河野会長もとても良いことを言っています。これは、より精神療法的なアプローチだと思いますが、イップスのある人の、生理学的に言えば「皮質からの干渉」を、気持ちを解きほぐすことによって軽減し、本来の練習したスムーズな動きができるようにすることです。イップスを起こす精神的背景についても、家庭環境の問題などにも言及していて、経験のある方なのだろうと思います。

私のゼミ出身の石原心氏は、現在アスレティックトレーナーとして活躍し、ハバナトレーナーズルームという治療院を開業し、キューバ野球チームなどにも関わっていますが、彼はまた、行動療法的なアプローチからイップスを治療する方法を考案しています。これは、なかなか効果があるようです。彼の卒業論文:イップスについて。

この記事は、イップスについての、簡単な知識が身につくと思います。ご一読ください。


2014年5月30日金曜日

イップス (Yips) (1)

ある新聞社からイップスについての問い合わせがあったので回答しました。イップスについては、スポーツと精神医学の関わりで非常に興味深いところなので、時々書いてみようと思います。まずは、その回答について。

===

・「イップス」とはどんなものなのか。定義は。
イップス(Yips)は、元来はゴルフのパット動作の際に、自分の思うような体の動きに反して、主に手首に不随意の力が加わり的を外してしまうということを示した言葉でした。その後、このような現象は様々なスポーツで認められるようになり、広く(多くは精神的な緊張を伴う、多分比較的時間をとれる場面で)不随意な運動により失敗をしてしまうことを示すようになっています。
定義は、上記のようなものだと思います。米国のメイヨークリニックのホームページを御覧ください。比較的信頼できる説明が出ています。
http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/yips/basics/definition/con-20031359

・医学的な「症状」なのか。
実際のケースをみていると、いわゆる「書痙」と同様の機序のものであるように思われます。
あまりよい解説ではありませんが、書痙についてはWikipediaも御覧ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B8%E7%97%99

・治すことができるのか。
治療は、薬物療法と非薬物療法にわかれます。薬物療法には、一般に神経症に用いる薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬、選択的セロトニンとり込み阻害剤(SSRI)などが効果があることがあります。また、非薬物療法は精神療法と行動療法にわかれます。精神療法では背景にある過度の不安をおこす精神的なメカニズムがあるかどうかについて明らかにし、これを解決する方向で行います。行動療法は、様々な方法がありますが、私の研究室の卒業生の石原心(アスレティックトレーナー:NHK出演歴あり)が開発した方法が良いように思います。彼は、とくに野球の投手のイップスの治療に効果を上げる方法をもっています。方法については、必要あれば本人に直接お問い合わせください。
http://www.havana-trainers-room.com/

・メカニズムなど。
不明です。私が考えるメカニズムとしては、運動は一般に練習によって大脳基底核や小脳などを含んだ皮質下の構造に、無意識の運動の回路ができます。この回路がスムーズに動けば、トレーニングによって養われたスムーズで正確な運動ができるわけです。一方このような回路は、ヒトが意識できる大脳皮質の働きによっても制御されています。イップスでは、このような大脳皮質の活動が、多分不安などの要因で過度に皮質下のメカニズムに影響を与えてしまうために、元来あった好ましい回路が十分に作動せず、不随意な運動となってしまう可能性があると思います。過度の意識が、運動学習された好ましい回路を阻害してしまうというメカニズムです。イップスが、不安が高い時に強く出て、治療によって不安が解消すると改善することもこの事と一致しています。

2014年5月20日火曜日

アスリートのバーンアウト症候群

バーンアウト症候群について調べたいという学生が来て、相談に乗りました。このバーンアウト症候群という言葉は、スポーツ医学の分野では、非常によく使われます。競技を一生懸命やった末に、ある時、急に意欲が低下してやめてしまうというような場合です。そういう時にスポーツドクターからは、バーンアウト症候群として紹介されることもあります。

このバーンアウト症候群ですが、医学的な診断名ではありません。医学的な診断名は、例えばICD-10(WHOの国際疾患分類)に出ているような名前ですが、バーンアウト症候群も(オーバートレーニング症候群も)、ICD-10のなかには名前がありません。したがって、心療内科などの病院に行っても、バーンアウト症候群が正式な診断名となることはありません。

では、このバーンアウト症候群はどのようなものでしょうか。これは、社会心理学という分野で主には使われる名称で、もともとはヒューマンサービスに関わる人達に使われた言葉です。ヒューマンサービスとは人に対するサービスを行う仕事で、医療職や看護職、あるいは介護職なども含まれます。このような人たちの中に、それまで一生懸命仕事をやりながら、突然燃え尽きたように仕事をやめてしまう人がいるということが知られ、これがバーンアウト症候群と呼ばれるようになったということです。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/01/pdf/054-064.pdf

上記は、この分野の専門家である同志社大学の久保真人先生の論文へのリンクです。久保先生は、この分野の単行本も出版されています。




この本を見ると、このような燃え尽きたように見える人を、バーンアウト症候群とするための要件が三つあるということが書かれています。それらは、

1.情緒的消耗感 (emotional exhaustion)
2.脱人格化 (depersonalization)
3.個人的達成感 (personal accomplishment) の低下

です。これをアスリートの当てはめるとこのようなことになります。

1.俺はやってもやっても、レギュラーになれない。自分なりには相当努力した。しかし、監督も自分を認めてくれないし、時には控えめに考えても自分よりも下の選手が使われたりする。自分はそれでも努力したが、もう疲れた。2.監督は、おまえのポジションは他にも居るという。自分は、チームの為に一生懸命やってきたつもりだが、いつでも他の人に変えられるようなことを言われる。
3.やってもやっても、成功できない。いったい、どれだけ努力したら良いのだろう。

このような状態の中で、もう競技はやめようと思う状態があれば、それはバーンアウト症候群と社会心理学的に定義されることになるでしょう。しかし、多くの場合、スポーツ医学の現場では、嫌になってやめるように見える人たちが、全般的にそう呼ばれることがあるようです。そうは言っても、そういう人たちの中に、バーンアウトに当てはまる人は多くいるとは思います。

バーンアウトの結果として、ときにうつ病(あるいは、適応障害 うつ状態)に陥る人も居ますし、うつ状態にならず、他に自分の道を見つける人もいると思います。その後状態の人に対して、医学的ケアが必要であるとすれば、それはその人が何らかの医学的な意味での診断がなされる状態にある場合です。逆に言えば、バーンアウト症候群と言っても、特に医学的なケアが必要ないケースも有り得ると思います。

比較的多いのは、こういった選手を何とかもう一度競技に戻せないかという相談です。しかし、ここまでくると、なかなか難渋します。しかし、私の経験では、現在の状態を過去の自分のスポーツへの関わりから明らかにしていくプロセスを一緒に行う中で、今までこれだけ努力してやってきたことだから、もう一度頑張ってみようと思う選手が、ある割合居ることもわかりました。そういう選手は、競技に復帰すると再び努力し、多くは活躍するようになっています。

2014年5月6日火曜日

JA全農2014年世界卓球団体選手権東京大会 (2)

昨日、卓球団体世界選手権が終わって、男子は銅、女子は銀メダルでした。金は、男女とも中国で、卓球の中国の強さを思い知った気がします。私は、卓球のことはほとんど知りませんが、今回は試合を見に行ったこともあって、結果に非常に興味がありました。特に、女子の元代表監督である近藤先生からの招待だったので、女子が決勝に残った時は期待しました。結果は、0-3でしたが、内容としては大きな進歩があったということでした。

今回の試合には、福原選手は怪我でメンバーに選ばれていませんでした。福原さんは、以前早稲田大学に所属していたこともあって、私は応援したいと思います。なかなか卓球との両立は難しかったと思いますが、もし引退されてまた勉強する時間があれば、大学に戻られるのも悪くないように思います。アスリートで大学生活を送っていくのは、確かに大変なことです。特にラケットゲームなどで、遠征して試合をこなし、ポイントを稼ぐゲームでは、授業との両立は難しい面があります。スケートの中野友加里さんは、早稲田大学のeスクールを卒業されていますが、このようなインターネットを使った教育制度は、アスリートに向いているかもしれません。しかし、私は選手生活を送られたあとに大学生活を送るのも悪く無いと思っています。特に、学部にこういった社会人入学生が入ってくることは、高校から来た若い学生に対して、とてもよい効果があります。社会人入学生は、学ぶ目的をしっかり持っているので、その姿をみて、大学で学ぶことを、若い学生が学ぶことができるからです。

さて、卓球は中国が圧倒的に強く、日本も上位です。こう見ると東洋人が多いように思います。オーストラリアとの大戦でも、選手の一人は東洋系の方でした。この理由はわかりませんが、なぜブラジル人はサッカーが上手なのかという疑問と同じようなことのように思います。東洋人の体型の優位性は、無いようにも思います。

石川佳純選手が、次のオリンピオックを目指して更に上位、つまり優勝を狙うという言葉は、本当に力強く感じました。

2014年5月2日金曜日

JA全農2014年世界卓球団体選手権東京大会 (1)

私は、早稲田大学で「スポーツカウンセリング」という講義をやっています。秋学期の講義で、15回の中で、臨床心理学に関連したカウンセリングの基礎から、アスリートに対してのカウンセリングの応用までの話を学生にします。この講義に、昨年、2008年北京オリンピックの女子卓球監督、近藤欣司先生が聴講を希望されました。私としては、非常に緊張感が会ったのですが、とても丁寧な方で、卓球関連の仕事がない限り、私よりも早く教場にきておられ全出席をされました。最後の一回では、学生向けに北京オリンピックでの監督としてのご苦労について、早稲田大学の学生にお話もいただき、私としてはむしろこちらが勉強させていただいた思いです。このような御縁があって、今回の世界選手権のチケットを頂き、昨日代々木第1体育館に行ってきました。

行ってみるとアリーナ席で、本当に間近に選手の様子が見えました。私が北京の時から大ファンである、平野早矢香選手も出場し、大感激いたしました(写真)。


卓球は、メンタルなスポーツだということは知っていましたし、近藤先生からもいろいろとお話を伺っていたのですが、このような試合に行ったのは初めてだったので、いろいろと勉強になりました。近藤先生は、選手がタイムアウトの時に監督からどのように声をかけてもらいたいかを聴いたそうです。そうしたところ、ガンバレなどということは言ってもらいたくないということでした。では、何を言ってもらいたいか、それは、そういう時にどう対応するかの具体的なアドバイスがほしいということだったということです。逆に言えば、そういった時に精神論に走らず、具体的なアドバイスがしっかりできることが良い監督の条件の一つでもあるということだと思います。以前に、早稲田のラグビー部の名監督であった清宮監督と話をしたことを思い出します。清宮監督にどのようにアドバイスをするのかを聴いたところ、普通にこうした良いということを、いつもグランドで言うだけ。という答えでした。どうしたらよいかということをきちんと示せるということが大切だということだと思います。

今日の試合は、日本選手の活躍で、すべてストレート勝ちで、そんなことを考えるまもなく、スカッと終わりました。近藤先生に御礼のメールをして、平野選手の試合が見られたのが感激だったとお伝えしたところ、平野選手のサインを頂けることになりました!

2014年4月11日金曜日

精神障害者フットサル

先日、昨年の東京国体(スポーツ祭東京2013)の中で行われた、精神障害者フットサルのDVDが送られてきました。精神障害者のスポーツは、現在バレーボールが正式種目として障害者スポーツ大会の種目となっています。これに加えて、現在フットサルを正式種目に加えるべく、活動をしているわけです。精神障害者スポーツについては、私も委員をしている、日本精神保健福祉連盟のスポーツ振興の委員会が大きな役割を果たしています。

YouTubeに映像があります。大会は、明治学院大学で開催されました。


この前日に、ヨーロッパ各国、南米各国、アジア各国が参加して、精神障害者スポーツ国際化実行委員会も開催されています。この委員会では、国際大会開催に向けて、各国が努力することも宣言されました。

精神障害者スポーツは、主には、統合失調症の患者さんが、ディケアなど社会復帰の活動の中で行っていたものですが、これが次第に競技性を帯びてくるようになりました。2000年からは全国の大会が開かれるようになりました。当初は、競技性を導入することで、プレッシャから精神疾患が悪化するのではないかという心配もありましたが、そういったことはほとんどありませんでした。むしろ、全国大会という大きな目標ができたり、試合を通じて、活動の場が広がり、社会性が広がるなど、多くの良いことがありました。

こういったスポーツ振興には、スポーツ好きの医療スタッフの熱心な活動が欠かせませんし、これが患者さんに対しても、非常に大きなエネルギーとして治療的に働いているのは、とても嬉しいことです。

2014年3月21日金曜日

アスレティックトレーナーのメンタルヘルス (2)

前回アスレティックトレーナー(AT)のメンタルヘルスについて書いたところ、閲覧回数が1000を超えました。これまで、1000を超える閲覧回数のものはなかったので、ずいぶん反響があったわけです。この問題はどのように捉えられているのか、できたら簡単なコメントがいただけるとありがたいです。前回のエントリーは、主にはこの話題の紹介でしたので、もう少し立ち入ったことを書いてみようと思います。もし読まれた方は、可能であればコメントしていただけると幸いです。その時に、

1.ATかどうか。
2.年齢 性別
3.活動している国(海外の方も居たようなので)
4.活動している競技の種類
5.感想など

を書いていただけると、非常に参考になります。もし、この問題が非常に重要であれば、何らかの調査をしてみても良いかもしれないと思っています。

前回、ATのメンタルヘルスに関連した問題について、

1.一般に、スポーツの現場では勝利につながる選手のメンタルヘルスを含めた健康については、非常に大事にされるが、ATは試合結果に繋がるものではないので、重要視されない。

2.ATは、選手のために(自己を犠牲にして)働こうという意識が強く、不平不満を言わず働く傾向があり、メランコリー親和型性格(このブログのエントリー参照)であることが比較的多くある。

というふうに書きましたが、1.については、例えばSCOPUSという学術論文検索サイトで、Athletic TrainerとDepressionというキーワードで検索しても、出てくるものは、アスリートのメンタルヘルスに関するものばかりで、それをATがどのように取り扱うべきたというような内容が主体です。ATのメンタルヘルスに関するものは皆無でした。しかし、現実には、ATで調子を崩す人は、少なくとも日本の学生スポーツの中には少なからず居ます。日本の実業団あるいはプロスポーツに関しては、そういう相談を受けたことはありますが、多いのかどうかはわかりません。

アメリカなど、ATが活躍している国はどうなのでしょうか。アメリカ人の気質から、そのようなことは無いのでしょうか。通常は、あまり関係がない気もします。また、私自身も2年ほどカリフォルニアで生活しましたが、アメリカ社会もストレスの強い社会ではあります。

2.については、ATにメランコリー親和型の特徴を持った人がほんとうに多いのかどうかは不明です。そうでない人も、勿論居ますので実際に何らかの調査をしてみないと、ATの中にメランコリー親和型性格が多くいるのかどうかわかりません。しかし、そのような人がAT活動の中で、自己不全感からうつ状態に陥るケースは少なからずいるようには思います。

このような問題の解決策というのは、特にATに関わる特別のものはないと思います。産業医学で言われている、一次予防、二次予防、三次予防、ラインケア、セルフケアなどというものが、スポーツの現場に適応されると良いように思います。下記のリンクに、これらについての良い説明があります。

茨城産業保健推進連絡事務所

スポーツの現場も、職場のメンタルヘルス管理の仕組みを参考にしてこういった仕組みを作ることは可能であるように思います。ただ、チームは監督が全体の管理者であり、目的は試合で勝利することで、その中でこのようなメンタルヘルスの管理にたいしての理解がうまく作っていけるかどうかということについては、ずいぶん時間は掛かりそうだという気もします。

メンタルヘルスの問題が、きちんと取り扱われれば、少なくとも長期的な展望の中では、チームの競技力向上に繋がることは間違いないと思います。ただ、これも産業医学の状況がそのまま当てはまるのですが、いわゆるブラック企業のように、そんな余裕はありませんという状況のチームもあり、その場合にはなかなかこれが難しい状況になります。

いずれにしても冒頭に書いたように、閲覧数がこれだけ多くなるこの話題ですから、ぜひどのような興味やニーズによって、閲覧数が増加したのか、匿名で結構なのでコメントを寄せていただけるとありがたく思います。

2014年3月17日月曜日

アスレティックトレーナーのメンタルヘルス (1)

アスリートのメンタルヘルスについて語るときに、忘れてはならないのはアスレティックトレーナー(AT)のメンタルヘルスについてです。以前、ベースボール・マガジン社のコーチングクリニックに「アスリートの心の悩み相談室」というのを連載をしていた時にも、このテーマを掲載しました。この特集は、ニューロック木綿子さんという漫画家さんに、アスリートのケースを幾つかお話し、それを元に漫画のお話を作ってもらい、それに私が解説をつけるという趣向です。



ATのメンタルヘルスを考えるときの、要素は2つあります。

1.一般に、スポーツの現場では勝利につながる選手のメンタルヘルスを含めた健康については、非常に大事にされるが、ATは試合結果に繋がるものではないので、重要視されない。

2.ATは、選手のために(自己を犠牲にして)働こうという意識が強く、不平不満を言わず働く傾向があり、メランコリー親和型性格(このブログのエントリー参照)であることが比較的多くある。

このようなことから、ストレスが募りうつ状態になるATは少なからず居ます。そのような人たちは、それでも休まず働くということが多くあり、非常に痛々しい状態がしばしばおこります。

この点は、スポーツ医学に関わる方々はよく理解しておく必要があると思います。ATのメンタルヘルスの問題は、つい後回しにされがちです。チーム管理者はぜひこの点を頭においてほしいと思います。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ