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2015年6月10日水曜日

女性アスリートの三主徴 (Female Athlete Triad) ⇒ スポーツにおける相対的エネルギー欠損 Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S)

早稲田大学スポーツ科学学術院では田口素子准教授を中心として、女性アスリートを対象としたサポート研究プロジェクトを行っています。私もメンバーに入れて頂いています。

摂食障害にみられる体型への認知の歪み
これまで女性アスリートに特徴的な障害として、「女性アスリートの三主徴(FAT)」という言葉が使われてきました。英語では、Female Athlete Triadで、略してFATとも称されます。この三主徴とは、無月経、骨粗しょう症、摂食障害なのですが、私は摂食障害の女性アスリートをこれまで少なからず診察しています。

一方、昨年IOCから下記の論文が出版されました。

Mountjoy M, Sundgot Borgen J, Burke L, et al.
The IOC consensus statement; beyond the Female Athlete Triad - Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S)
Br J Sports Med 2014; 48: 491-497.

この論文は、女性アスリートの三主徴を超えて、更に詳細に女性アスリートに見られる特徴的な障害について述べたものです。IOCコンセンサスステートメントというのは、IOCの中のこの委員会で、同意を得た内容を記載したもので、前回は2005年に出版されているようです。

これまでの「女性アスリートの三主徴」を「RED-S」という名前に置き換え、この病態へのリスク評価、治療、競技復帰の決定について述べています。これまでの女性アスリートの三徴候(FAT)という考え方を超えて、全身的な病態としてこれを捉えることは意味があると思いました。特に、三徴候という名前に縛られると他の部分が見えなくなるということは有ることで、その点についてはこのようなエネルギーバランスという点からこの病態を捉えることによって、広く病態を見られるという点では良いと思いました。

一方で、この論文に対する批判も有ります。Br J Sports Med. 2014;48(20):1461-1465. の記事ですが、原典にリンクが張ってあるのでこれも御覧ください。この批判は、三徴候は「女性」に特徴的な症状を浮き出させて示したもので、この名前からこの分野の研究が非常に進んだということも有るということを主張しています。そして、その他の全身的な変化は男性にも見られる変化が多く含まれており、この病態の問題点を不鮮明にするというような内容で批判をしています。

これも、一理あると思いました。自分自身が、どちらの立場を取るのかといえば、女性アスリートの三徴候という言葉は、今後も使っていこうと思っていますが、一方で実際の診療では、他の身体的な変化(成長、代謝、内分泌、免疫など)にも気を配りながら治療を行うという姿勢を取ろうと思います。

しかし、これはなにもこの疾患に限ったことではありません。最近私は、うつ病の身体症状についての講演が多くなっていますが、これも、うつ病の症状として精神症状だけを捉えるのでなく、身体症状も一緒に治療していくという姿勢をしっかりを持たなければ患者さん自身の持っている問題を解決で来ないということがあります。今回のRED-Sと、これに対してFATを養護する2つの論文は、この両方をしっかり意識した診療を行うことが重要であることを示唆していると考えさせられました。


2014年4月11日金曜日

精神障害者フットサル

先日、昨年の東京国体(スポーツ祭東京2013)の中で行われた、精神障害者フットサルのDVDが送られてきました。精神障害者のスポーツは、現在バレーボールが正式種目として障害者スポーツ大会の種目となっています。これに加えて、現在フットサルを正式種目に加えるべく、活動をしているわけです。精神障害者スポーツについては、私も委員をしている、日本精神保健福祉連盟のスポーツ振興の委員会が大きな役割を果たしています。

YouTubeに映像があります。大会は、明治学院大学で開催されました。


この前日に、ヨーロッパ各国、南米各国、アジア各国が参加して、精神障害者スポーツ国際化実行委員会も開催されています。この委員会では、国際大会開催に向けて、各国が努力することも宣言されました。

精神障害者スポーツは、主には、統合失調症の患者さんが、ディケアなど社会復帰の活動の中で行っていたものですが、これが次第に競技性を帯びてくるようになりました。2000年からは全国の大会が開かれるようになりました。当初は、競技性を導入することで、プレッシャから精神疾患が悪化するのではないかという心配もありましたが、そういったことはほとんどありませんでした。むしろ、全国大会という大きな目標ができたり、試合を通じて、活動の場が広がり、社会性が広がるなど、多くの良いことがありました。

こういったスポーツ振興には、スポーツ好きの医療スタッフの熱心な活動が欠かせませんし、これが患者さんに対しても、非常に大きなエネルギーとして治療的に働いているのは、とても嬉しいことです。

2014年3月21日金曜日

アスレティックトレーナーのメンタルヘルス (2)

前回アスレティックトレーナー(AT)のメンタルヘルスについて書いたところ、閲覧回数が1000を超えました。これまで、1000を超える閲覧回数のものはなかったので、ずいぶん反響があったわけです。この問題はどのように捉えられているのか、できたら簡単なコメントがいただけるとありがたいです。前回のエントリーは、主にはこの話題の紹介でしたので、もう少し立ち入ったことを書いてみようと思います。もし読まれた方は、可能であればコメントしていただけると幸いです。その時に、

1.ATかどうか。
2.年齢 性別
3.活動している国(海外の方も居たようなので)
4.活動している競技の種類
5.感想など

を書いていただけると、非常に参考になります。もし、この問題が非常に重要であれば、何らかの調査をしてみても良いかもしれないと思っています。

前回、ATのメンタルヘルスに関連した問題について、

1.一般に、スポーツの現場では勝利につながる選手のメンタルヘルスを含めた健康については、非常に大事にされるが、ATは試合結果に繋がるものではないので、重要視されない。

2.ATは、選手のために(自己を犠牲にして)働こうという意識が強く、不平不満を言わず働く傾向があり、メランコリー親和型性格(このブログのエントリー参照)であることが比較的多くある。

というふうに書きましたが、1.については、例えばSCOPUSという学術論文検索サイトで、Athletic TrainerとDepressionというキーワードで検索しても、出てくるものは、アスリートのメンタルヘルスに関するものばかりで、それをATがどのように取り扱うべきたというような内容が主体です。ATのメンタルヘルスに関するものは皆無でした。しかし、現実には、ATで調子を崩す人は、少なくとも日本の学生スポーツの中には少なからず居ます。日本の実業団あるいはプロスポーツに関しては、そういう相談を受けたことはありますが、多いのかどうかはわかりません。

アメリカなど、ATが活躍している国はどうなのでしょうか。アメリカ人の気質から、そのようなことは無いのでしょうか。通常は、あまり関係がない気もします。また、私自身も2年ほどカリフォルニアで生活しましたが、アメリカ社会もストレスの強い社会ではあります。

2.については、ATにメランコリー親和型の特徴を持った人がほんとうに多いのかどうかは不明です。そうでない人も、勿論居ますので実際に何らかの調査をしてみないと、ATの中にメランコリー親和型性格が多くいるのかどうかわかりません。しかし、そのような人がAT活動の中で、自己不全感からうつ状態に陥るケースは少なからずいるようには思います。

このような問題の解決策というのは、特にATに関わる特別のものはないと思います。産業医学で言われている、一次予防、二次予防、三次予防、ラインケア、セルフケアなどというものが、スポーツの現場に適応されると良いように思います。下記のリンクに、これらについての良い説明があります。

茨城産業保健推進連絡事務所

スポーツの現場も、職場のメンタルヘルス管理の仕組みを参考にしてこういった仕組みを作ることは可能であるように思います。ただ、チームは監督が全体の管理者であり、目的は試合で勝利することで、その中でこのようなメンタルヘルスの管理にたいしての理解がうまく作っていけるかどうかということについては、ずいぶん時間は掛かりそうだという気もします。

メンタルヘルスの問題が、きちんと取り扱われれば、少なくとも長期的な展望の中では、チームの競技力向上に繋がることは間違いないと思います。ただ、これも産業医学の状況がそのまま当てはまるのですが、いわゆるブラック企業のように、そんな余裕はありませんという状況のチームもあり、その場合にはなかなかこれが難しい状況になります。

いずれにしても冒頭に書いたように、閲覧数がこれだけ多くなるこの話題ですから、ぜひどのような興味やニーズによって、閲覧数が増加したのか、匿名で結構なのでコメントを寄せていただけるとありがたく思います。

2014年3月17日月曜日

アスレティックトレーナーのメンタルヘルス (1)

アスリートのメンタルヘルスについて語るときに、忘れてはならないのはアスレティックトレーナー(AT)のメンタルヘルスについてです。以前、ベースボール・マガジン社のコーチングクリニックに「アスリートの心の悩み相談室」というのを連載をしていた時にも、このテーマを掲載しました。この特集は、ニューロック木綿子さんという漫画家さんに、アスリートのケースを幾つかお話し、それを元に漫画のお話を作ってもらい、それに私が解説をつけるという趣向です。



ATのメンタルヘルスを考えるときの、要素は2つあります。

1.一般に、スポーツの現場では勝利につながる選手のメンタルヘルスを含めた健康については、非常に大事にされるが、ATは試合結果に繋がるものではないので、重要視されない。

2.ATは、選手のために(自己を犠牲にして)働こうという意識が強く、不平不満を言わず働く傾向があり、メランコリー親和型性格(このブログのエントリー参照)であることが比較的多くある。

このようなことから、ストレスが募りうつ状態になるATは少なからず居ます。そのような人たちは、それでも休まず働くということが多くあり、非常に痛々しい状態がしばしばおこります。

この点は、スポーツ医学に関わる方々はよく理解しておく必要があると思います。ATのメンタルヘルスの問題は、つい後回しにされがちです。チーム管理者はぜひこの点を頭においてほしいと思います。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ