早稲田大学スポーツ科学学術院では田口素子准教授を中心として、女性アスリートを対象としたサポート研究プロジェクトを行っています。私もメンバーに入れて頂いています。
これまで女性アスリートに特徴的な障害として、「女性アスリートの三主徴(FAT)」という言葉が使われてきました。英語では、Female Athlete Triadで、略してFATとも称されます。この三主徴とは、無月経、骨粗しょう症、摂食障害なのですが、私は摂食障害の女性アスリートをこれまで少なからず診察しています。
一方、昨年IOCから下記の論文が出版されました。
Mountjoy M, Sundgot Borgen J, Burke L, et al.
The IOC consensus statement; beyond the Female Athlete Triad - Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S)
Br J Sports Med 2014; 48: 491-497.
この論文は、女性アスリートの三主徴を超えて、更に詳細に女性アスリートに見られる特徴的な障害について述べたものです。IOCコンセンサスステートメントというのは、IOCの中のこの委員会で、同意を得た内容を記載したもので、前回は2005年に出版されているようです。
これまでの「女性アスリートの三主徴」を「RED-S」という名前に置き換え、この病態へのリスク評価、治療、競技復帰の決定について述べています。これまでの女性アスリートの三徴候(FAT)という考え方を超えて、全身的な病態としてこれを捉えることは意味があると思いました。特に、三徴候という名前に縛られると他の部分が見えなくなるということは有ることで、その点についてはこのようなエネルギーバランスという点からこの病態を捉えることによって、広く病態を見られるという点では良いと思いました。
一方で、この論文に対する批判も有ります。Br J Sports Med. 2014;48(20):1461-1465. の記事ですが、原典にリンクが張ってあるのでこれも御覧ください。この批判は、三徴候は「女性」に特徴的な症状を浮き出させて示したもので、この名前からこの分野の研究が非常に進んだということも有るということを主張しています。そして、その他の全身的な変化は男性にも見られる変化が多く含まれており、この病態の問題点を不鮮明にするというような内容で批判をしています。
これも、一理あると思いました。自分自身が、どちらの立場を取るのかといえば、女性アスリートの三徴候という言葉は、今後も使っていこうと思っていますが、一方で実際の診療では、他の身体的な変化(成長、代謝、内分泌、免疫など)にも気を配りながら治療を行うという姿勢を取ろうと思います。
しかし、これはなにもこの疾患に限ったことではありません。最近私は、うつ病の身体症状についての講演が多くなっていますが、これも、うつ病の症状として精神症状だけを捉えるのでなく、身体症状も一緒に治療していくという姿勢をしっかりを持たなければ患者さん自身の持っている問題を解決で来ないということがあります。今回のRED-Sと、これに対してFATを養護する2つの論文は、この両方をしっかり意識した診療を行うことが重要であることを示唆していると考えさせられました。
摂食障害にみられる体型への認知の歪み |
一方、昨年IOCから下記の論文が出版されました。
Mountjoy M, Sundgot Borgen J, Burke L, et al.
The IOC consensus statement; beyond the Female Athlete Triad - Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S)
Br J Sports Med 2014; 48: 491-497.
この論文は、女性アスリートの三主徴を超えて、更に詳細に女性アスリートに見られる特徴的な障害について述べたものです。IOCコンセンサスステートメントというのは、IOCの中のこの委員会で、同意を得た内容を記載したもので、前回は2005年に出版されているようです。
これまでの「女性アスリートの三主徴」を「RED-S」という名前に置き換え、この病態へのリスク評価、治療、競技復帰の決定について述べています。これまでの女性アスリートの三徴候(FAT)という考え方を超えて、全身的な病態としてこれを捉えることは意味があると思いました。特に、三徴候という名前に縛られると他の部分が見えなくなるということは有ることで、その点についてはこのようなエネルギーバランスという点からこの病態を捉えることによって、広く病態を見られるという点では良いと思いました。
一方で、この論文に対する批判も有ります。Br J Sports Med. 2014;48(20):1461-1465. の記事ですが、原典にリンクが張ってあるのでこれも御覧ください。この批判は、三徴候は「女性」に特徴的な症状を浮き出させて示したもので、この名前からこの分野の研究が非常に進んだということも有るということを主張しています。そして、その他の全身的な変化は男性にも見られる変化が多く含まれており、この病態の問題点を不鮮明にするというような内容で批判をしています。
これも、一理あると思いました。自分自身が、どちらの立場を取るのかといえば、女性アスリートの三徴候という言葉は、今後も使っていこうと思っていますが、一方で実際の診療では、他の身体的な変化(成長、代謝、内分泌、免疫など)にも気を配りながら治療を行うという姿勢を取ろうと思います。
しかし、これはなにもこの疾患に限ったことではありません。最近私は、うつ病の身体症状についての講演が多くなっていますが、これも、うつ病の症状として精神症状だけを捉えるのでなく、身体症状も一緒に治療していくという姿勢をしっかりを持たなければ患者さん自身の持っている問題を解決で来ないということがあります。今回のRED-Sと、これに対してFATを養護する2つの論文は、この両方をしっかり意識した診療を行うことが重要であることを示唆していると考えさせられました。
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