2015年6月22日月曜日

うつ病と肥満 (Psychiatric Times)

Psychiatric Timesにうつ病と肥満についての記事が出ていました。非常に興味深いポイントを指摘しているので、取り上げてみました。主には、APAにおける、Julio Licinio, 医師による発表を元にしているようです。

うつ病と糖尿病の関係についてのポイントは、

• 2つの疾患は頻繁に共存する。疫学研究は、これら2つの疾患は双方向に影響を与えているということを示唆しています。
• 抗うつ薬は、体重増加をもたらす。
• ストレスは、うつ病と肥満を引き起こす可能性がある。そして両方が、心血管障害の悪化因子である。
• 両疾患にかかる医療費が莫大なものである。


ということです。いくつかの関連のバックグラウンドとしては、

1.グルココルチコイドの上昇
この両者については、ストレスが両者の発症に関わっているということが共通しています。ストレスによって、グルココルチコイドが上昇することが、ひとつは海馬のCA3領域の神経末端の萎縮をおこさせるということ。もう一つは、糖尿病と関連してグルココルチコイドの持続的上昇が耐糖能低下を起こさせるということです。

2.レプチンの減少
レプチンは、脂肪細胞から賛成されるペプチドホルモンですが、これは視床下部に働いて満腹感を与える働きをもっています。うつ病やストレスに暴露した動物の実験で、レプチンの量が減少しているということも知られていて、うつ病の病態に関連しているとも考えられています。さらに、レプチン欠損マウスでは脳重量および皮質のボリュームが低下していることも示されています。

3.肥満した人でのレプチンの働き
レプチンは脂肪細胞からつくられるので、肥満した人ではレプチンが多く、満腹感をもって食欲が減少するように思われますが、肥満した人では、血液脳関門におけるレプチンの輸送がうまく行かず、脳内のレプチンの働きが低下しているということも実験的には示唆されています。

4.抗うつ薬による体重増加
抗うつ薬は、多分抹消におけるIGF-1の上昇を介して、体重増加をもたらす副作用があることが知られています。また、Licinio医師は、短期間抗うつ薬を服用しても、その後も体重増加の影響が残ることを指摘しています。


うつ病の患者さんは多く居ますが、抗うつ薬による肥満、そして糖尿病の発症、あるいは悪化などについても、臨床の中では常に頭において置かなければならない問題だろうと思います。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

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