2014年4月3日木曜日

生物時計の仕組み

体のリズム、特に24時間の生物リズム(サーカディアンリズム、概日リズム)を司っている生物時計はどのような仕組みで動いているのでしょうか。体の中に、腕時計のような時計があるわけではありません。生物のどのような仕組みが、時計として働いているのかについて解説したいと思います。

まず、生物時計の本体は、脳にあります。脳の視交叉上核という場所ですが、視交叉というのは眼の網膜から出ている視神経が、反対側の後頭葉の一次視覚野につながっているのですが、右の目から左の後頭葉、左の眼から右の後頭葉に繋がる2つの視神経が交差した場所です。(視神経のつながり方はちょっと複雑なので、興味のある方は調べてみてください。)脳の中では目の高さで、真ん中よりも少し前の脳の奥の方にあります。この視交叉の上にあるのが、視交叉上核です。

さて、視交叉上核には時計があるのですが、一体どんな時計があるのでしょうか。下記に示したのが、単純化した生物時計の本体なのですが、この図ではわかりにくいので、非常に単純化して説明しますと…下記のようになります。





http://bmb.oxfordjournals.org/content/86/1/23/F1.expansion


<単純化した説明>
まず、あるタンパク質が作られる仕組みが動き出す。このタンパク質は、作る仕組みに抑制をかける働きを持っている。そうすると、ある程度の量までタンパク質が作られるとこの抑制機構が働いてタンパク質の合成をしないように命令する。その結果、タンパク質が作られる量が減少してしまう。そうすると、また抑制がとれてたくさん作るようになる。そのような中で、下記のようにタンパク質の量が一定幅で多くなったり少なくなったりする波が生まれる。この波の周期がほぼ一定で、これが時計として働いている。


http://mathsisinteresting.blogspot.jp/2008/08/how-to-sketch-trigonometric-graph.html


理解できたでしょうか。このように、物質がつくられ、それが増えると作る量が減り、作る量が減るとまたたくさん作るようになってくるという仕組みが生物時計の本態です。こう考えると、背の高い人、低い人がいたり、脂性の人と乾燥肌の人がいるように、このタンパク質を作る能力が比較的高い人と、そうでない人が居たり、抑制の感受性にちがいがあったりすることも容易に想像できます。このような生物時計の本来の周期をみるには、洞窟のような外部の時間や昼夜のわからない場所に連れて行って、時計なしで生活をさせる方法がとられています。そうすると、その人本来の生物時計の周期で生活するようになるわけです。

いろいろな研究を見ると、多くの人の、生物時計本来のリズムは24時間よりも長いようですが、最近の研究では、24時間よりも短い周期をもっている人もいることが分かっています。このような周期の幅があっても、24時間で生活できるのは、光や社会的な時間によって、生体時計がリセットされるという仕組みがあるからであると考えられています。

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