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2015年4月8日水曜日

食事と体内時計、睡眠

不眠の患者さんや、うつ病の患者さんに対しては、投薬よりもまずは生活の状況を聞いて、生活指導をするようにしています。生活指導と行っても、事細かにこうしろああしろと言うわけではなく、そのご本人の生活の様子を聞きながら、改善できる点を一緒に考えていくというような方法です。

この中で、ポイントになるのは、生活習慣の3つの要素である、運動、睡眠、食事です。このなかで、食事については私はこれまで多くの研究をしてきたわけではありません。逆に、運動と睡眠についてはかなりたくさんの研究をしました。

食事と体内時計や睡眠については、動物実験などが主体ではありますが、早稲田大学の柴田重信先生(理工学部)が良い研究をしています。彼の研究によれば、長時間空腹のあとの食事のほうが、体内時計のリセット効果は大きいということです。朝食を食べることによって、体内時計がリセットされる。リセットというのは、これから活動をするという時間帯に体の状態をセットし直すということです。この場合の食事は、炭水化物のほうが効果が大きいようです。また、この他にもインスリン分泌が体内時計のリセットに関わる。インスリン分泌にDHA, EPAが促進的に働く。DHA, EPAは炭水化物と一緒に取ると良い。などの研究成果をあげています。

また、お昼から間をあけて長く食事をせず、夜中ころに夕食をたくさん食べると、そこで体内時計がリセットされてしまうために、夜型になってしまうということもあるようです。

厚生労働省「平成21年 国民健康・栄養調査」では、朝食を食べていない人は非常に多いことがわかっています。特に男性では2割以上の人が朝食を取っていないという結果です。また、患者さんのお話をうかがうと、帰宅後23時過ぎに食事をするという人も多くいます。

このような、ことを細かく聞きながら、朝ごはんを食べるように、グラノーラなどが手軽だと薦めたりもします。また、夕食が遅くなるのであれば、帰ってからたくさん食べなくて済むように、夕方ころにも少し食事をしたほうが良いともお話します。このように、それぞれの個人にあった生活指導をしながら、長く良い状態をつくるような治療をしていくのが良いと思っています。



参考: 2013 Nichi-Iko Pharamaceutical Co., Ltd.パンフレット

2014年5月29日木曜日

f.lux, twilightなど青白光カットアプリ

昨日のブログでも紹介した、青白光をカットするアプリを紹介したいと思います。

このようなアプリはどれも、コンピュータの出力を調整して、青白光の含まれる割合を少なくするものです。その結果として、画面は褐色になります。セピア調の写真を見ているような感じです。色も全く消えるわけではありませんが、大分あせます。しかし、使っているうちにだんだん慣れてくるので、私自身はさほど不都合を感じません。

アプリとしては、

Windows、 Mac、Linux用のアプリとしては、f.luxというソフトがお勧めです。私も使っています。
https://justgetflux.com/
上記がそのURLですが、検索すると日本語の解説なども出てくるので、読んでみると良いと思います。このソフトは、コンピュータのクロックをみて、夜の時間帯になると自動で画面から次第に青白光をカットしていくというもので、大変便利です。

しかし、iPhoneやiPadなどについては、このような画面の制御をアプリに許可していないようで、いわゆる、Jailbreak(脱獄)をする必要があります。つまり、Appleの許可していないアプリを無理やりインストールするということです。このやり方もネット上には情報がありますので見てみてください。こういうことが苦手な人は、iOSの場合はサングラスをかけるしかありません。

Androidの場合には、たくさんのこの手のアプリがあります。私は、Twilightというのを使っています。これも、時間になると青白光が減弱し、褐色の画面になります。これも便利に使っています。

実際に、患者さんの中にはどうしても寝る前にスマホを見るという人が居ます。こういう人に、診ないようにしたほうが良いと言ってもなかなかそれをやめることはできません。私は、このようなアプリを薦めています。実際に、これを使った患者さんは、「これを使うことで寝付きが悪いということは無くなりました」と話されています。これは、実際に意識して分かることかどうかは難しいことですが、私は実感としてこのようなアプリを使わなかった時に比べて、自然な眠気が出てくる感じが非常にあります。

みなさんも、是非お試しになられると良いと思います。

2014年5月28日水曜日

概日リズム睡眠障害(極度の夜型)を光で治療する

以前に、生物時計の仕組みや朝型夜型について解説しましたが、このような睡眠覚醒のリズムの問題がひどくなると、社会生活にも差し支えることになります。問題として最も多いのが極端な夜型の人です。このような人は、ある割合いて、多くは高校生くらいに顕在化してきます。朝が極端に苦手で、学校に行く時間に起きられず、毎日遅刻します。本人は、学校がいやだというわけではないので、早く起きられるように努力もするのですが、なかなか起きられません。午後からは学校に行って、クラブ活動もちゃんとやって帰ってくる人もいます。家でも勉強をして、明日は早く起きられるようにと、早めに寝るのですがなかなか寝付けず、明け方近くに寝つくと翌日はまた起きられないという状況です。このような状態は、概日リズム睡眠障害というカテゴリーの中の、睡眠相後退型というタイプで、治療の対象になります。睡眠相後退症候群とも言います。これは以前にも書きました。

このような人たちは、生物時計のリズムは、約24時間周期なのですが、タイミングがずれてしまっているわけです。通常は、体温は明け方に最も低く、午前中は体温が上がってきます。しかしこのような人たちは、リズムがずれているので、体温が上がってくるのが昼近くになります。そうなると、通常の時間帯、例えば7時に起床するのは、我々が夜中の2時か3時に起きるのと同じことになってしまうわけです。毎日そんな時間に起きて学校に行かされるわけですから、とても続かないわけです。

このような人は、しっかりとリズムを戻してあげなければいけません。そのために有効なのが光です。この説明をする前に、用語の説明をしましょう。

リズムを早寝早起き方向にずらすことを
   ⇒前進といいます
   ⇒これは、プラスの数字で表されます
   ⇒例えばプラス1時間ずらすというのは、1時間早寝早起き方向にリズムをずらすことです

リズムを夜更かし朝寝坊方向にずらすことを
   ⇒後退といいます
   ⇒これは、マイナスの数字で表されます
   ⇒例えばマイナス1時間ずらすというのは、1時間夜更かし朝寝坊方向にずらすことです

これがわかったら、次のグラフが理解しやすくなります。このグラフは横軸が時刻です。Sleepと書いてあるところが通常の睡眠時間で午後11時ころから朝7時ころになっていますね。そして、朝6時ころに青い線がプラスの方向(上)に大きくふれています。これは、この時間に光を当てると位相が前進(早寝早起き方向)に移動するということです。




http://sites.duke.edu/everydayscience/

このようなグラフを位相反応曲線といいますが、しかし、睡眠の前半にあたるような時刻に光を浴びると、逆に夜更かし方向に位相が変化してしまうことも示しています。つまり、夜更かしして明るいところにいると、朝起きにくくなるということですね。

睡眠が後退している患者さんには、このような光を用いた治療を行うこともあります。光を当てるタイミングは、もし位相がずれている人であれば、その人の位相に合わせて当てなければならないので、専門的な知識も必要です。

このような光の効果は、青白い光が大きな効果を持っていることもよく知られています。このような光は、コンピュータの画面からも多く発せられているので、寝る前にコンピュータやスマートフォンの画面を見つめるのは、睡眠にはよくありません。最近は、このような青白光をかっとするソフトウェアなども出ています。


2014年5月13日火曜日

「あとはネルだけ!」になると、もったい無くて眠りたくない

どうも夜更かしになってしまう人が居ます。夜型か朝型かは、体内時計の固有の周期(体内時計の一日の長さ)が長ければ夜型、短ければ朝型になる傾向にあるということを前に書いたことがあると思います。しかし、臨床をみていると必ずしもそればかりではないようにも思っています。

患者さんの中には、あるいは、患者さんでなくても、夜寝る前になると、一日のいろいろなことは終わって、あとは自分の好きなことだけをやれば良いという時間になると、この時間が終わってしまうのがもったいないので、つい眠るのがもったいないと、眠りにつく時刻が遅くなってしまう人が居ます。じつは、私自身もそういうところがあるのです。私の妻はそうでなく、寝る時間になれば寝る、というタイプです。私が、なにかコチャコチャやっているのをみて、呆れていることもあります。

このような心性は、
・ 他人のスケージュールに合わせながらやるのが苦手。一人でやるほうが楽。
・ 一つのことをやり始めると没頭してしまってやめられない。
ということにも繋がるところもあると思います。

これだけでは、そういうタイプの人は大勢居ますので、なんとも言えませんが、注意欠如障害の傾向のある患者さんにも多くこういったタイプは見られるように感じています。このような傾向があると、つい夜更かしになり、朝起きにくい。睡眠時間は短縮されますので、日中の眠気が出るということもあります。

注意欠如障害などの発達障害に関しては、これをいわゆる「疾患」と扱うのは、私自身抵抗もあります。しかし、投薬によって生活がずいぶん改善する患者さんも居ます。したがって、やはり「治療」の対象にはなると思いますが、たとえば、ここに挙げたような睡眠のとり方についての細かい点を問診でお聞きして、ご自身の傾向を指摘しながら、早寝の習慣を指導すると、これだけでずいぶんと日中の眠気がとれ、それにともなって注意力も向上する面もあります。

患者さんの生活の細かい面を知るには、ひとつの方法として睡眠日誌は非常に有効です。私は、睡眠日誌をしばしば患者さんにつけてもらいます。このような患者さんにもまずは、実験的に2週間ほど早寝をしてくださいとお話します。寝る前の楽しい時間を諦めるのは辛いことですが、まずは2週間ほどということになれば、やってくれる人は大勢います。そして、実際にやってみて、日中の眠気が取れることを経験すると、これらを秤にかけて、自分でも早寝しようという気持ちになります。その時に、睡眠日誌で確認する人がいるということも、この実験を行う上でとても助けになることでもあります。

このような診療は、薬物療法だけなく、患者さんの生活の様々な特徴を知って、それを指導するといういうことの重要性を示しているように思います。

寝る前のゆっくりした時間。大切な面もあると思います。眠りにつく時刻も考えながら、過ごせば、良いリラックスタイムになることも間違いないと思います。私も、それを実感して、やはり寝る前には少しゆっくりしてから眠ることが多いわけです。

2014年4月3日木曜日

生物時計の仕組み

体のリズム、特に24時間の生物リズム(サーカディアンリズム、概日リズム)を司っている生物時計はどのような仕組みで動いているのでしょうか。体の中に、腕時計のような時計があるわけではありません。生物のどのような仕組みが、時計として働いているのかについて解説したいと思います。

まず、生物時計の本体は、脳にあります。脳の視交叉上核という場所ですが、視交叉というのは眼の網膜から出ている視神経が、反対側の後頭葉の一次視覚野につながっているのですが、右の目から左の後頭葉、左の眼から右の後頭葉に繋がる2つの視神経が交差した場所です。(視神経のつながり方はちょっと複雑なので、興味のある方は調べてみてください。)脳の中では目の高さで、真ん中よりも少し前の脳の奥の方にあります。この視交叉の上にあるのが、視交叉上核です。

さて、視交叉上核には時計があるのですが、一体どんな時計があるのでしょうか。下記に示したのが、単純化した生物時計の本体なのですが、この図ではわかりにくいので、非常に単純化して説明しますと…下記のようになります。





http://bmb.oxfordjournals.org/content/86/1/23/F1.expansion


<単純化した説明>
まず、あるタンパク質が作られる仕組みが動き出す。このタンパク質は、作る仕組みに抑制をかける働きを持っている。そうすると、ある程度の量までタンパク質が作られるとこの抑制機構が働いてタンパク質の合成をしないように命令する。その結果、タンパク質が作られる量が減少してしまう。そうすると、また抑制がとれてたくさん作るようになる。そのような中で、下記のようにタンパク質の量が一定幅で多くなったり少なくなったりする波が生まれる。この波の周期がほぼ一定で、これが時計として働いている。


http://mathsisinteresting.blogspot.jp/2008/08/how-to-sketch-trigonometric-graph.html


理解できたでしょうか。このように、物質がつくられ、それが増えると作る量が減り、作る量が減るとまたたくさん作るようになってくるという仕組みが生物時計の本態です。こう考えると、背の高い人、低い人がいたり、脂性の人と乾燥肌の人がいるように、このタンパク質を作る能力が比較的高い人と、そうでない人が居たり、抑制の感受性にちがいがあったりすることも容易に想像できます。このような生物時計の本来の周期をみるには、洞窟のような外部の時間や昼夜のわからない場所に連れて行って、時計なしで生活をさせる方法がとられています。そうすると、その人本来の生物時計の周期で生活するようになるわけです。

いろいろな研究を見ると、多くの人の、生物時計本来のリズムは24時間よりも長いようですが、最近の研究では、24時間よりも短い周期をもっている人もいることが分かっています。このような周期の幅があっても、24時間で生活できるのは、光や社会的な時間によって、生体時計がリセットされるという仕組みがあるからであると考えられています。