2014年3月9日日曜日

睡眠相後退症候群

睡眠相後退症候群は、通常の社会生活を営むのに障害になる程度に、生体時計が遅い方向にずれている障害です。この場合、遅い方向にずれているだけなので、その時間帯に睡眠をとれば良く眠れます。典型的な例は、朝の6時から昼過ぎの1時までの7時間の睡眠が、最も睡眠を取りやすい時間帯なるというような場合です。これで生活できる職業についていれば、これで問題無いとも言えます。しかし、多くの場合は朝9時に仕事に行き、夕方から夜には仕事を終わって、帰宅し、12時ころには眠るという生活で、これができないとうまく社会生活が営めないということになります。中高生でも同じような場合があり、遅刻が多くなり、時に精神的な原因による不登校と誤られることもあります。

原因は不明ですが、生体時計をリセットする光にたいする感受性が弱いという体質を持っていることなどが考えられています。このような人は、多くは朝起きるための努力を色々としており、これが精神的な原因による不登校などとは異なっています。私が以前診ていた患者さんは、午後の授業に出席し、夕方のクラブ活動にはかならず出て、積極的に活動していました。

この疾患には、メラトニン、あるいはメラトニン作動薬のラメルテオン(武田薬品:ロゼレム)が著効する例が比較的多く見られます。この薬物は服薬のタイミングが非常に重要です。私は、だいたい午後6時あるいは7時ころに、半錠を服薬してもらっています。これは、このタイミングにメラトニン受容体を刺激すると、時計の位相が前進する(早寝早起き方向に変化する)という時間生物学の理論を当てはめたものです。正常者では、このタイミングは午後4時ころなのですが、このような人ではすでに位相が後退しているので、これよりも遅い時間が良いように考えています。ただ、実際には、ケースによってタイミングを色々と試してみる価値はあると思います。

効果があった例では、2週間後にはしっかりと11時に寝て6時か7時に起きるという生活ができており、午前中の眠気も無くなります。この疾患は、精神疾患ではなく純粋に生物時計の疾患なので、その後の精神科的なフォローは殆ど要りません。あとは、そのケースにあったタイミングで服薬するだけです。

遅刻が多く、授業中に寝ていることが多いケースをみると、睡眠専門医は睡眠相後退症候群が頭に浮かびますが、この時に注意すべき疾患がいくつかあります。ひとつはAD/HD(注意欠如多動性生涯)です。他の睡眠専門外来で睡眠相後退症候群と誤診されていたAD/HDの患者さんが居ました。これは、先に示した不登校と同時に頭においておくべき鑑別診断です。睡眠専門外来は睡眠関連疾患の治療に大きな貢献がありますが、私はしっかりと総合的に精神医学を診ることができる医師が行うべきであると考えています。

拙書 好きになる睡眠医学に更に詳しい解説がありますよ。

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