2014年3月26日水曜日

眠っているときに起き出して、横で眠っている奥さんを殴る - レム睡眠行動障害

「眠っているときに起き出して、横で眠っている奥さんを殴る」という疾患があります。必ずしも奥さんを殴るのが症状ではなく、軽症であれば寝言、さらには起き出して壁を殴って手をけがする、階段から落ちてけがをするなどということもあります。

「レム睡眠行動障害(RBD: REM sleep Behavior Disorder)」という疾患です。この疾患は、バーキンソン病など脳の変性症(神経内科の疾患)の始まりの症状として出てくることもありますが、私が診ている多くの患者さんは、必ずしもそのような疾患に発展していません。多分、そのような患者さんは、変性疾患による神経症状も出現して、主には神経内科に受診しているのではないかと思います。

症状は、軽いものでは寝言。小声の寝言だけでは、治療の対象とはならないと思いますが、大声で怒鳴るような寝言であれば治療の対象になり得ます。さらに重症になると、ベッドの上に座る姿勢になり、寝言を言う。殴るような行動をする。さらには、起き出してまとまりのあるような行動をする。多くの場合は、暴力的、攻撃的な行動です。背景にストレスがあるように思えることもあります。配偶者は、このような行動が自分に対する深層心理の憎しみを表しているのではないかと悩むこともありますが、これは必ずしもそうでないように思われます。

私の患者さんで多いのは、飲酒習慣のある方です。このような方は飲酒の習慣をやめると、多少症状が改善することもあります。しかし、多くの場合は薬物を用いて治療します。用いる薬物は、ベンゾジアゼピン系薬物です。多くの場合は、クロナゼパムという薬物を寝る前に服用します。これを服用すると、9割方の患者さんでは症状が改善します。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はレム睡眠を抑制するので、これも効果が出るメカニズムの一つになっていると思います。パーキンソン病の場合は、この治療を行うことで改善することもあります。

治療の目標としては、行動があったり、大声でねごとを言うという症状であれば、少量の薬物で症状が消失すればよいですし、行動がある人の症状が、時々寝言を言うくらいまで改善すれば、それでよしとしています。クロナゼパムには、ふらつきなどの副作用があるので、症状を完全になくすことを目標にすると、過剰投与になってしまい、夜トイレに起きたときに転んで怪我をするなどの危険があるためです。

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