2014年3月5日水曜日

睡眠時無呼吸症候群とうつ病 (1)

北陸道のバス事故の原因が睡眠時無呼吸症候群かどうかは分からないが、この疾患は、すぐに治療しないと命にかかわるものではないが、放っておくと大きな問題となる疾患なので、きちんと治療しないといけない。

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている時に呼吸が止まる疾患で、多くは閉塞性とよばれる、呼吸の際に空気の通る咽頭のあたりがペタッと(この表現が良いのかはわかりませんが、イメージとして)閉じてしまい、呼吸ができなくなるものが最も多く見られます。また、家族から見ると「いびき」も非常に特徴的です。完全に閉塞する前にかろうじて呼吸する空気が咽頭をブルブルと震わせるその音が、大きないびきとなるわけです。原因は、肥満により体脂肪率が高いということや、顎が小さく、後ろに引いているため仰向けで眠ると気道が閉じやすいという生まれながらの特徴があること、などが挙げられます。

この疾患の特徴は、眠っている間に息が止まって苦しいという自覚がないことです。したがって、「眠っている間に息が止まって苦しいので、睡眠時無呼吸症候群かと思い来院しました。」という患者さんは、そうでないことが多いです。

では、どのような症状で来院するかというと一番は日中の眠気です。その他に、起きた時の頭の重さ、頭痛、喉の痛みなど。睡眠中の症状としては、何度も目が覚める、何度もトイレにいくなどということが見られます。

日中の眠気は、エプワース眠気スケールで評価することが多いですが、眠気よりも最近私が憂慮しているのはうつ状態です。眠気があると脳機能は十分働かず、これはストレス耐性を低下させます。睡眠不足がストレス耐性を低下させるのは、国立精神神経医療センターの三島先生の研究が示すところです。そのため、ストレス状態が続き、うつ病になります。そして、精神科の外来ではうつ病の治療をするわけですが、休職などによってある程度良くなります。しかし、睡眠時無呼吸に気づかれていなければ、やはり復職するとストレスを強く感じます。

私が外来をしているクリニックでは、うつ状態の患者さんを診察するときに、必ずこの点を頭においています。この患者さんには睡眠時無呼吸があるかないか。ありそうであれば、必ず簡易型の検査をします。簡易型の検査は、器具を家に持って帰って一晩測定するだけの簡便なもので、費用は保険でカバーされます。これで、たくさんの睡眠時無呼吸を見つけました。ある患者さんは、長年抗鬱剤治療を受けていて、検査の結果睡眠時無呼吸が判明し、CPAPという無呼吸の治療を開始したところ1ヶ月で完全に服薬を中止できました。

睡眠時無呼吸が重症の人は、生命予後も良くないという結果が報告されています。昼間の眠気、うつ状態。治療者は、睡眠時無呼吸症候群も頭に置きたいところです。

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中程度以上(一時間に平均20回以上無呼吸がある人)は、生命予後も不良です。横軸は、発見されてからの年数。20回以上の場合は、死亡する割合が高いです。このデータによれば、9年で4割程度。(He J, et al, 1988)(図は、帝人ファーマのサイトで引用していたもの)

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