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2014年3月28日金曜日

注意欠如障害ADHD ADD にみられる日中の眠気 (2)

以前にもこの問題について書きましたが、その後も発達障害を専門としている先生にお話を伺ったりして、やはり昼間の眠気だけでなく、様々な睡眠障害のケースがあるようでした。ここのところ、睡眠専門外来にも、同様の主訴の方が多く見えて、治療にあたっています。高校生女子の割合が比較的多く、ADHDの症状は、様々です。診断できるかどうかのボーダー程度で、さほどADHDの症状で日常生活が障害されているほどではないが、幼少時のことを伺うと、その傾向がありそうだという方から、学校生活に支障をきたしている方までです。高校2年生が多いのは、これから受験でこのままでは勉強が難しいということからでもあるようです。

しかし、日中の眠気は同様で、眠気のパタンは、夜遅くまで起きていて日中は眠いという、睡眠相後退症候群(DSPS)に類似しているような訴えです。夜中のほうが頭が冴えているので、明け方近くまで起きていて眠る。眠ると相当長く眠って、休みの日などは午後になってしまうこともある。学校にいくと、眠気がひどく眠ってしまう。遅刻も多いということです。ただ、純粋なDSPSに比べると、テストの日など行かなくてはいけない日は、きちんと起きられたり、テストも受けられたりします。したがって、DSPSとは病態は異なっていると考えています。

この治療は、多くの場合、病態や治療について現状で考えられることを十分に患者さんと保護者に説明をして、治療へのモチベーションを確かめます。治療へのモチベーションを高めるように、高校生本人の今後の進路への希望なども聞いて、それを実現する目的に沿った治療をするということもお話するようにします。また、保護者にも治療の方針を説明します。

睡眠は、早く眠ることが可能なケースもあるので(ここが、DSPSと異なるところ)、早く眠るようにしてもらいます。それでも、昼間眠いという場合もありますが、生活習慣としてそのようなことを続けるというところから始めます。比較的長時間睡眠者出る可能性もあるので、一定期間は睡眠時間を延長して、日中の眠気がどう変化するかについても聞いてみます。入眠困難がある場合には、メラトニン受容体刺激薬(ラメルテオン)を用いたり、睡眠導入剤などを少量用います。同時に、睡眠日誌をつけてもらい、それによってどのような生活をしているのかをモニターし、同時に本人に生活習慣を改善するモチベーションにもしてもらいます。睡眠が改善した上で、どのくらい生活が改善するのかをみて、更に必要であれば、ADHDに対する薬物療法をするというようにします。

前回も書きましたが、このようなケースについて睡眠専門外来では、誤診されることが多くあると思います。また、ADHDと独立した睡眠障害が併存していて、確実に誤診かどうかわからないケースも有ります。2006年に出版された、「ADHDの小児における睡眠覚醒について」という総説論文では、この問題についての知見は、まだ充分でないとの見解でした。実際に、発達障害の専門家の先生方と話をしても、十分に明らかになっていないという印象です。しかし、患者さんは、特にこれから受験を控えた患者さんは困っていて、このようなケースに対する治療ストラテジーが早く確立されると良いと思っています。

2014年3月9日日曜日

睡眠相後退症候群

睡眠相後退症候群は、通常の社会生活を営むのに障害になる程度に、生体時計が遅い方向にずれている障害です。この場合、遅い方向にずれているだけなので、その時間帯に睡眠をとれば良く眠れます。典型的な例は、朝の6時から昼過ぎの1時までの7時間の睡眠が、最も睡眠を取りやすい時間帯なるというような場合です。これで生活できる職業についていれば、これで問題無いとも言えます。しかし、多くの場合は朝9時に仕事に行き、夕方から夜には仕事を終わって、帰宅し、12時ころには眠るという生活で、これができないとうまく社会生活が営めないということになります。中高生でも同じような場合があり、遅刻が多くなり、時に精神的な原因による不登校と誤られることもあります。

原因は不明ですが、生体時計をリセットする光にたいする感受性が弱いという体質を持っていることなどが考えられています。このような人は、多くは朝起きるための努力を色々としており、これが精神的な原因による不登校などとは異なっています。私が以前診ていた患者さんは、午後の授業に出席し、夕方のクラブ活動にはかならず出て、積極的に活動していました。

この疾患には、メラトニン、あるいはメラトニン作動薬のラメルテオン(武田薬品:ロゼレム)が著効する例が比較的多く見られます。この薬物は服薬のタイミングが非常に重要です。私は、だいたい午後6時あるいは7時ころに、半錠を服薬してもらっています。これは、このタイミングにメラトニン受容体を刺激すると、時計の位相が前進する(早寝早起き方向に変化する)という時間生物学の理論を当てはめたものです。正常者では、このタイミングは午後4時ころなのですが、このような人ではすでに位相が後退しているので、これよりも遅い時間が良いように考えています。ただ、実際には、ケースによってタイミングを色々と試してみる価値はあると思います。

効果があった例では、2週間後にはしっかりと11時に寝て6時か7時に起きるという生活ができており、午前中の眠気も無くなります。この疾患は、精神疾患ではなく純粋に生物時計の疾患なので、その後の精神科的なフォローは殆ど要りません。あとは、そのケースにあったタイミングで服薬するだけです。

遅刻が多く、授業中に寝ていることが多いケースをみると、睡眠専門医は睡眠相後退症候群が頭に浮かびますが、この時に注意すべき疾患がいくつかあります。ひとつはAD/HD(注意欠如多動性生涯)です。他の睡眠専門外来で睡眠相後退症候群と誤診されていたAD/HDの患者さんが居ました。これは、先に示した不登校と同時に頭においておくべき鑑別診断です。睡眠専門外来は睡眠関連疾患の治療に大きな貢献がありますが、私はしっかりと総合的に精神医学を診ることができる医師が行うべきであると考えています。

拙書 好きになる睡眠医学に更に詳しい解説がありますよ。