2014年4月7日月曜日

新学期

私の本職は早稲田大学の教員なので、今日から講義が始まります。大学の休みは長いですが、教員は研究指導もしているので、休み中も大学には行きます。また、この冬休み中も2月は入学試験の仕事などもあり、3月はちょっとホッとしたところです。しかし、全体を見渡せば、大学教員の時間はかなり自由です。労働時間についても、大学教員の場合は、月間の残業何時間というような計算はできません。それで、裁量労働制というのが適用されているようです。これについては、異論もあるようですが、自由度が高い仕事ではあるので、タイムカードはうまくいかないように思います。裁量労働制については、私もあまりよく知りませんが、現状で私自身はあまり不満はありません。

いずれにしても、必ずしも暇ではありませんが、自由度が高いのは確かです。

授業期間がはじまると、しかし、制約は多くなります。私はなるべく一日を有効に使うために、1限目の講義を多く入れているのですが、そうすると、家を出る時刻が早い時刻に決まるので、生活は少し変わります。

授業が始まると、この準備などで期限付きでやることは増えるのですが、授業そのものは好きです。学生に講義をすることは、うまく教えた時には達成感がありますし、講義の最後にはリアクションペーパーを出してもらうようにしているのですが、その中で、この部分が面白かったなどと書いてあるものが多くあると、より満足感も大きいです。

講義の回数は、文科省の規定で、半期(セメスター制)で15回と決められています。15週間講義をすると、夏休みが来るわけです。この期間も、長いようで短いというか、10回を過ぎると、そろそろもう夏休みだなぁという気分になってくるわけです。

さて、今日から気を入れて講義を開始します。

2014年4月6日日曜日

ブルーライト(青白光)をカットし、睡眠が改善 (白内障治療で眼内レンズ)

青白い色の光(ブルーライト)が、生物時計に作用して、リズムの位相を変化させるということが知られています。早朝に強い光を浴びることで、早寝早起き方向にリズムは変化し(位相の前進)、夜遅くに強い光を浴びると、リズムは夜更かし朝寝坊方向にリズムが変化します(位相の後退)。これに関連して興味深い論文を見つけたので、紹介しましょう(末尾参考文献)。

これは、中国の研究者の論文で、高齢者の白内障の手術の際、白内障でくもった硝子体(眼球の中のレンズ)を人工レンズに入れ替える手術があり、これは日本でもよく行われていますが、その際に透明なレンズでなく、ブルーライトをカットする眼内レンズを入れたところ、睡眠が改善したというものです。睡眠の質の評価は、ピッツバーグ睡眠の質質問票で行っていて、これが有意に改善したと報告しています。

夜間、光、特に青白い色の光は、脳の活動を刺激し、また生体リズムにも影響を与えて入眠しにくくなることが知られています。したがって、不眠症の患者さんに対しては、夜間の照明を電灯色(オレンジ色、あるいは褐色光)にして、あまり明るくしないようにおすすめしています。一般に日本の家庭は、欧米に比べて夜間の照明が明るいですね。これをもう少し暗くするということです。

このほか、ブルーライトをカットするサングラスをかけることも良いと思います。家族で暮らしている人たちは、ちょっと抵抗があるかもしれませんが、一人暮らしであれば周りを気にせずこれをやれますね。これは、コンピュータやスマートホンの画面から出てくるブルーライトもカットしてくれるので、良いと思います。

例えばこれです。
ブルーライト メガネ


それから、コンピュータの画面からブルーライトをカットしてくれるソフトウェアもあります。
例えば

f.lux というソフトウェア

これは、Windows, Mac, Linux, iphoneなどのバージョンが有るようです。

Android用には、私は、Twilight というのを使っています。

ブルーライトの影響は、様々な研究が裏付けているところですので、ぜひ試してみてください。

【参考文献】
Wei X; She C; Chen D; Yan F; Zeng J; Zeng L; Wang L. Blue-light-blocking intraocular lens implantation improves the sleep quality of cataract patients. J Clin Sleep Med 2013;9(8):741-745.



2014年4月5日土曜日

王立精神科医学会 「こころの健康ガイド」

ある調べ物をしていたら、下記のURLを見つけました。

http://www.rcpsych.ac.uk/healthadvice/translations/japanese.aspx

王立精神科医学会 「こころの健康ガイド」というものです。このページの内容は、精神医学の広い範囲にわたって、専門家でない一般の人向けに書かれています。それぞれの項目も、わかりやすく、QアンドA方式が多く使われています。

こういった、一般向けのページは他にも多くあります。

日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/forpublic/index.html

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/first/index.html

しかし、このページの驚くべきことは、イギリスの王立精神医学会が、自動翻訳でなく日本語でも解説をしているところです。日本語だけではありません、中国語、フランス語、ドイツ語、ヒンドゥー語、アラビア語などさまざまな言語で書かれています。それぞれの言語向けの詳しさはいろいろのようですが、それでも自動翻訳でなく、それぞれの言語向けにどなたかが翻訳活動をしているようです。

このようなアイディアは日本にはありません。歴史の中で一時期は、世界を征服していたイギリスの歴史的背景が大きく関係しているのだと思います。征服するだけでなく、その地域へリーダーとして貢献する。このような視点は、日本が学んでいくべきところだとも思います。

二つのことを考えました。
1.メンタルヘルスに関連したこのサイトはわかりやすく参考になる。
2.世界のリーダーを育てる教育を早稲田大学でするのであれば、このような発想が必要であろうと思われる。

我々の早稲田大学の研究室はこのような国際貢献をどのくらいしているでしょうか。
1.イスラエルの研究者の博士取得について共同研究
2.台湾からの博士課程留学生の教育
3.中国吉林大学との連携
4.(個人的)インド睡眠医学ファカルティースタッフとして睡眠教育への貢献
5.(個人的)グルジア科学アカデミー外国人会員として、グルジア睡眠医学への貢献

昨今の東アジア国際関係は、必ずしも良好とは言えませんが、各個人でこういった貢献を通じて、交流が進められると良いと思いました。

2014年4月4日金曜日

朝型夜型質問紙

あなたは、朝型ですか?それとも夜型ですか?朝早く起きていろいろな活動をすることが得意な人が居る一方で、夜になると元気になるので、つい夜更かししてしまう。夜のほうが集中できて仕事がはかどる。いろいろな人がいると思います。

早寝早起きが得意な人を朝型、夜更かし朝寝坊が得意な人を夜型と言っていますが、朝型夜型を判定する標準的な質問紙があります。海外で作られたものですが、これを日本語に訳した標準的なものが多く使われています。精神神経医療研究センターのサイトに、点数を自動計算してくれるものがありますので、まずはやってみてはいかがでしょうか。

http://www.sleepmed.jp/q/meq/meq_form.php

私が行った結果を下記に示します。私は、朝型のようです。以前は、睡眠研究をしていて夜遅くまで起きていることが多かったので、夜型でしたが、最近は朝型生活が身についている気もします。


このような、朝型夜型というのはどういうふうに決まるのでしょうか。その人の性格的な問題でしょうか、それとも社会的に従わざるをえない生活上のスケジュールが作るものでしょうか、あるいは体質(遺伝的な背景)でしょうか。結論から言うと、どれも関係があるのですが、遺伝的な背景も関連があると考えられています。

生物時計の仕組みのところでも述べたように、人はそれぞれ生物時計の一日の長さが微妙に異なっています。多くの人は、24時間よりも長めですが、24時間よりも短い人もいることが知られています。このような違いが朝型夜型に関連していると考えられています。例えば、24時間より長い人は、今日夜の11時に寝たとすると、次の日に眠くなるのは11時よりもあとになります。そうすると、寝る時間になっても眠気が来ないので、何か別のことをしようと思い、次第に夜更かしになってきます。つまり、夜型です。一方で、24時間より短いとすると、昨日よりも早い時刻に眠くなってきます。そうすると、次第に早寝になります。つまり、朝型です。このような固有の生物時計の長さと、朝型夜型の関係については、Duffyという研究者たちが2001年に実験結果として、固有の生物時計の一日の長さが短いほど朝型になることを示しています。

夜更かし型の人は、性格的な問題もあるのかとつい思いますが、そのような要素はあるにしても、生物時計という体質的な問題も多く関わっているのは不思議なことですね。

2014年4月3日木曜日

生物時計の仕組み

体のリズム、特に24時間の生物リズム(サーカディアンリズム、概日リズム)を司っている生物時計はどのような仕組みで動いているのでしょうか。体の中に、腕時計のような時計があるわけではありません。生物のどのような仕組みが、時計として働いているのかについて解説したいと思います。

まず、生物時計の本体は、脳にあります。脳の視交叉上核という場所ですが、視交叉というのは眼の網膜から出ている視神経が、反対側の後頭葉の一次視覚野につながっているのですが、右の目から左の後頭葉、左の眼から右の後頭葉に繋がる2つの視神経が交差した場所です。(視神経のつながり方はちょっと複雑なので、興味のある方は調べてみてください。)脳の中では目の高さで、真ん中よりも少し前の脳の奥の方にあります。この視交叉の上にあるのが、視交叉上核です。

さて、視交叉上核には時計があるのですが、一体どんな時計があるのでしょうか。下記に示したのが、単純化した生物時計の本体なのですが、この図ではわかりにくいので、非常に単純化して説明しますと…下記のようになります。





http://bmb.oxfordjournals.org/content/86/1/23/F1.expansion


<単純化した説明>
まず、あるタンパク質が作られる仕組みが動き出す。このタンパク質は、作る仕組みに抑制をかける働きを持っている。そうすると、ある程度の量までタンパク質が作られるとこの抑制機構が働いてタンパク質の合成をしないように命令する。その結果、タンパク質が作られる量が減少してしまう。そうすると、また抑制がとれてたくさん作るようになる。そのような中で、下記のようにタンパク質の量が一定幅で多くなったり少なくなったりする波が生まれる。この波の周期がほぼ一定で、これが時計として働いている。


http://mathsisinteresting.blogspot.jp/2008/08/how-to-sketch-trigonometric-graph.html


理解できたでしょうか。このように、物質がつくられ、それが増えると作る量が減り、作る量が減るとまたたくさん作るようになってくるという仕組みが生物時計の本態です。こう考えると、背の高い人、低い人がいたり、脂性の人と乾燥肌の人がいるように、このタンパク質を作る能力が比較的高い人と、そうでない人が居たり、抑制の感受性にちがいがあったりすることも容易に想像できます。このような生物時計の本来の周期をみるには、洞窟のような外部の時間や昼夜のわからない場所に連れて行って、時計なしで生活をさせる方法がとられています。そうすると、その人本来の生物時計の周期で生活するようになるわけです。

いろいろな研究を見ると、多くの人の、生物時計本来のリズムは24時間よりも長いようですが、最近の研究では、24時間よりも短い周期をもっている人もいることが分かっています。このような周期の幅があっても、24時間で生活できるのは、光や社会的な時間によって、生体時計がリセットされるという仕組みがあるからであると考えられています。

2014年4月2日水曜日

青魚に含まれるオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)とうつ病

うつ病が生活習慣と関連していることは、臨床の場でも患者さんに強調してお話しています。独身で夜遅くまで仕事をしている方などは、運動、睡眠、食事のどれをとっても、好ましいとは言えない生活をしている方が多く居ます。「運動はほとんどしなくなっちゃいましたねぇ。」「だいたい4時間位眠れると良い方です。休みの日は結構殆ど寝てます。」「パンとかコンビニのお弁当とかになっちゃいますかね。」という具合です。これらを改善するだけでも、うつ病にたいしての抵抗性を増すことが確実にできると私は思っています。

その中で、うつ病の運動療法はあべクリニックで実践していますし早稲田大学のスポーツ科学学術院の研究としても行っています。睡眠に関しては、睡眠医療認定医として、あるいは前職の東京都精神医学総合研究所睡眠障害研究部門長として長く研究してきましたし、その重要性も臨床の場で強調しています。しかし、栄養に関しては、私自身は現在勉強中というところです。バランスの良い食事を、決まった時間にしっかり食べるということは、生体リズムという側面からも重要です。また、食物に含まれる成分も、精神活動に影響があると考えられています。栄養が精神症状に与える影響については、これまでにも研究がありますが、最近「オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)とうつ病」についての論文を読みましたので紹介したいと思います。オメガ3脂肪酸は、青魚などに多く含まれている物質で、体に良いものであることは間違いありません。この製剤は、現在は高脂血症治療薬として用いられています。代表的な製品は、武田薬品のロトリガです。

MH Bloch and J Hannestad, Omega-3 fatty acids for the treatment of depression: systematic review and meta-analysis. Molecular Psychiatry (2012) 17, 1272–1282

2年前の論文ですので比較的新しいものです。

脂肪酸は、神経細胞の膜を構成しており、これらにはオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸があります。典型的な西欧の食事はオメガ6脂肪酸が多く、これが多いと、細胞膜の炎症性メディエーターを多く産生する結果になり、細胞を傷めます。一方で、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用がありこれによって、細胞膜が安定します。これまでの動物実験による研究でも、オメガ3脂肪酸が、セロトニンやドパミンの神経伝達に影響をあたえることが報告されているようです。また、疫学研究でも(オメガ3脂肪酸を多く含む)魚を多くとっている人たちは、うつ病の発症が少ないという報告があります(Hibbeln JR. Fish consumption and major depression. Lancet 1998; 351: 1213.)。そういったことから、実際にオメガ3脂肪酸を投与して、うつ病の症状が改善したかどうかをみた研究がこれまでにもなされてきました。この論文は、これまでの多くの研究を総合的に解析しなおして、全体として効果があるのかを明らかにするメタ分析研究を行ったものです。

結論から言うと、オメガ3脂肪酸がうつ病の治療に効果は、殆どありませんでした。もう少し正確にこの論文の結論を表現すると"Current published trials suggest a small, non-significant benefit of omega-3 FAs for major depression."= これまでの論文を総合的に検討すると、うつ病に対しては、小さな有意とはいえない効果しかない、ということになります。

私自身は、オメガ3脂肪酸の効果はこのような研究デザインでは必ずしも十分に明らかにならないのではないかと思いました。こういった食品は、薬と同じようなデザインで研究をするのは良くないと思います。むしろ、食事として魚を多く食べるという生活習慣のなかで、うつ病の発症率をみるのが良いように思います。もし、製剤を使うのであれば、正常な人多数に、毎日習慣的に投与して、そうでない人の青魚摂取などもモニターした上で、薬物投与群でうつ病の発症が少ないかどうかをみるようなデザインが良いわけです。これは、相当大変な研究です。私は、オメガ3脂肪酸はうつ状態が発症したあと、この治療に良いかどうかはまだわかりませんが、疫学研究の結果などから、うつ病になりにくい身体を作ったり、あるいは、寛解状態になったあと良い状態を維持するためには効果がある可能性があるのではないかと思っています。

実際に医療の現場では、オメガ3脂肪酸だけの効果を見ることはしません。生活指導として、運動、睡眠、食事の全てについての構えを指導します。したがって、それらのどの効果が良いのかを明らかにする研究的アプローチとは異なっています。これらを総合的に行う中で、うつ病の患者さんであれば再発の少ない生活の助けになることはあるのではないかと考えています。



2014年4月1日火曜日

日本睡眠学会

睡眠に関しての研究を発表する場である、睡眠学会は世界中の国にあります。アメリカとヨーロッパのほか、日本における睡眠研究も世界の中でかなり早くから行われてきています。日本睡眠学会は、1977.12.03に私の恩師でもある島薗安雄先生が第1回の学術大会を開催しています。医学における睡眠医学は、重要な分野ではありますが、医療が十分に整備されていない国においては、優先課題とはいえません。優先課題は、感染症予防・治療、周産期医学、栄養の問題などです。これらが整った上で、睡眠の問題が課題として出てくるわけです。もちろん、そういった国でも睡眠の問題がないわけではありませううが、多くの場合限られた予算ではそれ以外の優先事項が取り上げられるという意味です。

現在は、私は日本睡眠学会の評議員をしています。

日本睡眠学会の活動は、睡眠に関連した研究活動の交流の場である他に、睡眠医療に関連した資格をの認定も行っています。睡眠医療の現場には、様々な専門家が必要になります。このよな専門家を学会が認定しています。学会の規約を引用すると下記のように書かれています。

睡眠医療認定医師(略称:学会認定医)、睡眠医療認定歯科医師(略称:学会認定歯科医)、睡眠医療認定検査技師(略称:学会認定検査技師)、および、睡眠医療認定医療機関(略称:学会認定医療機関)を認定する制度を設ける。

私は、この中で、睡眠医療認定医師です。歯科医師の方々は主には睡眠時無呼吸症候群の治療にあたっています。例えば、いびきを防止するマウスピースを作成するなどです。私も、軽症の睡眠時無呼吸症候群と診断された方には、マウスピースを作成する歯科医院を紹介したりいたします。

検査技師は、終夜睡眠ポリグラフィー検査を行います。この検査は、睡眠専門外来をもった病院や、クリニックなどの専門医療機関で、入院して夜間睡眠を検査したり、データの解析を行います。この作業には専門的な知識を要します。

また、睡眠医療に関連した検査や診断治療ができる医師、検査技師、施設をもっているかどうかを認定する睡眠医療認定機関の認定も行っています。

このような、専門家や医療機関がどこにあるのかは、

http://www.jssr.jp/data/list.html

上記のURLに掲載されています。私も、内田 直 医-0077-2 讃友会 あべクリニックと、掲載されています。専門医療機関でなくても、専門医が居る医療機関に受診すれば、専門的な診断を受けることが可能です。また、専門的な検査は他の専門医療機関と連携して検査を受けられるようにもなっています。あべクリニックの場合は、虎の門病院睡眠センターや所沢の平沢記念病院と連携して、必要な患者さんはそちらで検査をうけてもらい、結果を検査を行った病院とあべクリニックの双方で判定して、治療を行うという方法をとっています。