オレキシン受容体拮抗薬で、睡眠薬として新しく発売されたベルソムラ20mgをまた服用してみました。前回と同様、睡眠の質の向上が感じられましたが、いくつかその他のポイントがあったのでまとめてみました。
(なお、2回の服用による個人的な感想なので、一般化できるかどうかは慎重に考えたほうが良いと思います。私自身は、このような主観的な体験は、患者さんの主観的な体験を共有するときの重要な情報にして、臨床に活かしていきたいと思っています。)
1.服用時刻
通常ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、就床の20-30分位前に飲むのが良いと思いますが、昨日は服用してから入浴、その後いつ頃眠くなるかを見るために、スマホで映画を見てみました。一度の経験ですが、入浴中は全く眠気はありませんでした。気持よく入れました。就寝前の入浴は、なるべく浴室を暗くして入るようにしているのですが、それでも眠気はさほど感じませんでした。その後、ひと通り眠る準備をして、スマホは青白光カットモードで映画を見ました。その結果、映画が33分進んだあたりで、かなり眠くなりその後すぐに入眠しました。
一度の経験なので、なんとも言えないですが、オレキシン受容体のブロックが実感されるのは、場合によるとベンゾジアゼピン受容体がGABAのアフィニティーを上昇させる(ベンゾジアゼピン系睡眠薬の効き目が実感される)よりも、もっと時間がかかるのかもしれません。昨日の印象では、就床の1時間から2時間位前に服用するのが良いという感じがしました。しかし、その場合には、その間の行動に、外出などの必要がないほうが安全だと思います。
もう少し経験を積む必要がありますが、いずれにしても、服用時刻については十分に考えて見る必要があるかもしれません。これは、患者さんにそのように説明しないと「効かない薬」と最初に評価が下ってしまう可能性があるからです。トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬の超短時間作用型)よりも、眠気に対する切れ味は悪いのかもしれませんが、使い方をきちんと考えれば、患者さんも実感として良い薬と考えてもらえるからです。これは、ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬)の場合も同じように感じました。
2.睡眠の維持
睡眠の維持は、もともと中途覚醒に悩んでいる人でないと、実感はしっかりないかもしれませんが、私の主観では睡眠の維持は良かったように思いました。通常、夜中におきることは有りますし、服用時にも中途覚醒はありました。しかしその後の入眠は、ベルソムラ服用時には、さほど意識せず自然に入眠したように思います。逆に、ベルソムラを飲んでいても、中途覚醒が全くなくなるということもなく、覚醒を抑制する薬物としても、何かあってもおきられずに眠りっぱなしで居るということは無さそうです。また、朝の起床時の感覚は、やや眠気が強いようには思いました。普通に起きることができ、活動できますが、若い時に朝眠いなぁと思うようなあの感覚がありました。これは、スボレキサントの血中半減期が12時間ということにも関連があるのではないかと思います。オレキシンと競合して、覚醒がおきるので血中濃度だけで眠気が決まるわけではないということもありますが、それでも朝眠いという感じはあるのではないでしょうか。これは、気持ちのよい眠さでも有りますが、遅刻の要因になるかもしれませんね。
3.服用量
今回は20mgしか持っていなかったので、20mgを服用しましたが、高齢者用の15mgでも(私のような特に睡眠に問題のない人には)十分かなと思いました。長期連用の副作用は、特に注意はされていないのですが、ベンゾジアゼピンのように側坐核のドパミン放出促進をさせないのであれば、依存は形成されず、睡眠の質が向上するという意味では良いと思います。連用の問題は、日中の眠気や認知機能低下があげられると思いますが、この影響がどの程度なのかは今後の課題になりそうです。データでは、認知機能への影響はないと報告されています。
私は、さほど重症でない患者さんには、10mgくらいの低容量を使いながら、日中の活動性上昇や、生活を規則正しくするなどの生活療法を併用しながら、不眠を改善していく方法が良さそうではないかという感覚を、個人的には持ちました。現在、10mg錠はありませんが、高齢者向けに15mg錠はあります。このような低容量投与も含めて臨床的には、実際に利用しながら学んでいきたいと思っています。
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