2014年7月30日水曜日

菅平 野外活動実習 2014

この日、月、火の3日間は、早稲田大学菅平セミナーハウスに、学部1年生をつれて野外活動実習に行ってきました。早稲田大学スポーツ科学部では、一年生は教養演習クラスがあり、いわばホームルームクラスのように週一度は同じ学年、同じメンバーが集まるようになっています。そこには、担任がいて様々な面で学生生活の開始をサポートしています。私自身は、ここ数年は担任をしていないので、入学したての1年生のお世話を授業の中ですることはありません。今回は、野外活動実習のサポーター教員として参加したわけです。

菅平 根子岳の山頂付近で. 学生にはお揃いの早稲田スクールカラー、エンジのポロが支給されます


このような教養演習クラスについては、学生にとっては良いと思います。大学生一般に取ってということと、スポーツ科学部の特徴という2つの側面がありますが、大学生一般として考えると、大学は講義は選択制なので、なかなか友だちができないという側面があります。このようなホームルームクラスがあれば、そこでいろいろな友人を作れる可能性がでてきます。もう一つは、様々な理由で大学に溶け込みにくい学生をうまく大学生活に導入できるという側面もあるように思います。少なくとも、大学に来なくなる学生を担任が把握でき、何らかの介入をすることが可能です。こういった意味で、学生メンタルヘルスにも一役買っているわけです。

スポーツ科学部の特徴としては、アスリートはどうしても部活の活動が中心になりがちで、部活の友達はできますが、その他の友達ができにくいという側面があります。ホームルームクラスやその後のゼミ活動は、様々な友人を作り、これが人生の大きな財産となるということもあります。ビジネスの方面に進んだり、研究方面に進む学生が、トップアスリートの学生と大学時代に親友になるということは、双方にとっていろいろと良い面があります。

そのようなことで、教養演習のクラスで菅平の野外活動実習に行くわけです。根子岳登山や、キャンプ実習など、学生はとても楽しんでいます。私もこれに便乗して、毎年根子岳登山を楽しんでいるというわけです。

2014年7月28日月曜日

新しい抗てんかん薬

先日、徳島の睡眠学会の際に、松浦雅人先生とお話する機会がありました。松浦雅人先生は、私の30年来の恩師で、研修医時代にはよく飲みに行ったりして、本当にお世話になった先生です。今年、東京医科歯科大学の教授を定年退職され、現在は那覇市の病院で臨床をされています。

松浦先生はてんかん治療の大家で、グーグルサーチでも、松浦雅人と入れると、選択肢として次にてんかんが出てきます。松浦先生は以前は、てんかんの臨床として、部分発作であればカルバマゼピン、全般発作であればバルプロ酸と、処方の仕方がシンプルで明快だったとお話になっていました。

そこで、私が「新しい抗てんかん薬がたくさん発売されていますが、それらが出てから、治療率が改善しましたか?」とお聞きしたところ、「同じだね。」とのお答え。多分、非常に難治な症例に関連しては、幾分良い面はあるのかもしれませんが、てんかんの治療はこれまでの抗てんかん薬でほぼ間に合うということのようです。

一方で、新しい抗てんかん薬は、盛んに気分障害に用いられるようになってきています。脳の異常発火としてのてんかんの治療薬が、気分の過度な変動に対しても効果があることは、それ自体が非常に興味のあることです。一方で、このような薬を併用して気分障害の治療を行うと、多剤併用になりがちで、このような多剤併用がほんとうに効率的な治療なのかどうかも、注意深く検証する必要はあると思っています。

2014年7月25日金曜日

第12回 日本スポーツ精神医学会学会総会・学術集会 鹿児島 (1)

第12回 日本スポーツ精神医学会学会総会・学術集会が8 月 29 日(金)~31日(日)、鹿児島市にて、橋口知先生を会長として開かれます。橋口先生は、この学会の創設時から長年この学会に協力していただいた精神科医で、現在は鹿児島大学教育学部の教授です。特に水泳競技などの分野で活躍されています。

学術集会HP:  http://jyouseikai.jp/jasp/
プログラム: http://jyouseikai.jp/jasp/schedule.pdf

シンポジウム「スポーツはこころを育む」を初め、教育講演「薬物乱用の最近の傾向」講師:佐野 輝先生(鹿児島大学医歯学総合研究科精神機能病学分野教授)、 特別講演1「からだを育み、こころを育み、人を育む」 講師:武藤芳照先生(東京大学名誉教授 日体大総合研究所所長)、特別講演2「情熱と我慢」 講師:松澤隆司先生(鹿児島県サッカー協会顧問)などが行われ、多くの一般演題も発表されます。

この学会は、日本では唯一のスポーツと精神医学に関連した学会です。多くの方々の参加を是非お待ちしています。

このブログでは、この学会に関連した内容を開催までの1ヶ月のあいだ、少しずつ紹介しようと思っています。

2014年7月23日水曜日

完治する統合失調症

Psychiatry Times(精神医学新聞)というアメリカのウエッブジャーナルに、完治する統合失調症についての記事が出ていました。統合失調症は、非常に多い疾患で、時代や文化によらずだいたい150から200人に一人くらい見られると考えられています。一般的には、慢性的に経過し、徐々に進行すると考えられていますが、この記事には完治するケースについて書かれています。Better Off Without Antipsychotic Drugs?という題名の、Fuller Torreyという精神科医の記事なのですが、ざっと要約すると以下のようです。

例えば、ワシントンポストに昨年掲載された記事では、薬を止められる統合失調症がいるという記事が、新しい発見のように載っているが、その様なことは随分前から知られている。1939年の抗精神病薬が開発される前から報告がある。これまでの報告を見て見ると、だいたい2割から3割弱の統合失調症の患者さんは、(抗精神病薬を投与しなくても)完治するようである。しかし、発症時に完治するものかどうかの判断はできないので、まずは抗精神病薬を投与し、症状が消退したあとどうするかを考える。薬を全くやめてしまっても良い症例は少なからずいると思われる。多くの場合は、少量投与し、再発が見られなければやめるということである。初発の場合では、症状が消退したら、比較的すみやかにやめても良いかもしれない。

このような記事を読むと、自分の診た患者さんを思い出します。最も印象に残っているのは、研修医を終えたあと、市中の精神病院に務めた時の患者さんです。20代の若い女性で、知的レベルは高く有名大学の4年生でした。特にこれというきっかけは無かったようですが、短期間のうちに引きこもりがちになり、大学のサークルの人達が自分を陥れようとしている。家に盗聴器が仕掛けられている。テレビでも、どうも自分の人を言っているようだ、というような典型的な幻覚妄想状態でした。夜は眠れず、外来ではオドオドしているような様子でした。

私と年齢も数歳しか違わなかったと思うので、今から思うと向こうのご家族も、私が担当となり頼りないと思っていたのかもしれませんが、きちんと私の診察を受けてくださいました。私は、なるべく時間をかけてお話をし、本人にはそのような大変なことがあっては心配で眠れないだろうから、まずはしっかり眠るほうが良い。また、すぐに警察に行っても証拠がなければとり合ってもらえない可能せがあるから、まずは自分がしっかり休息してこれからどうするのが良いか一緒に考えよう、体力をまずは回復させましょうと言って、ハロペリドールを処方しました。

一週間後にまた、両親と来院された時は、すでに大分落ち着いていました。ご両親には非常に感謝されました。しかし、妄想については、最近そういうことははっきりしないが油断はできないというような話をしていたように思います。その後、少量の抗精神病薬を投与続けたところ、2ヶ月位ですっかりとよくなり、大学にも復帰しました。その際に、妄想のことを聞いてみたのですが、本人は、「ああいうことはやはりあったと思う。しかし、どうしてから分からないが、病院に来るようになってからそういうことが無くなってきた。また、最近はあまり気にならなくなってきた。」とお話になりました。

その後、2年ほど診察したでしょうか。ずっと安定した状態が続いており、薬も減量しました。そして、安定して落ち着いた状態が続いているところで、最終的には服薬をやめました。服薬をやめてからも、2ヶ月後、半年後くらいに診察をしたと覚えていますが、問題なく、もし万が一同じようなことが起きる気配があれば、すぐ受診するように話して、治療を終結しました。

多分、このようなケースは少なからずいるというふうに考えてよいでしょう。私も他にも、完治したり、症状がなくなってからその後来なくなってしまったりするケースが多く居ます。一方で、慢性化する人たちとは長く付き合うので、慢性疾患としてのイメージが強くはなってしまいます。

気になるのは、初診時の治療的アプローチが、その人のその後の経過にどのような影響をおよぼすかです。良い治療をすれば、完治し、そうでなければ慢性化する、もしそういうことがあるのであれば、精神科医の責任は重大です。今のところは、初診時の治療アプローチの影響が非常に大きいとはいえないのではないかと思っては居ますが、しっかりと明らかにしたいことの一つでもあります。

受診は すなおクリニック (大宮駅東口徒歩3分)へ

2014年7月21日月曜日

2014 ゼミ夏合宿

ゼミの夏合宿に行ってまいりました。今年は、土日で早稲田大学軽井沢セミナーハウスです。軽井沢のセミナーハウスは、広大な敷地で東京ドームが3つ入るということでした。学生用の昨年出来たという新しい宿泊棟、セミナー棟、食堂などのほか、野球場、テニスコート、バスケットコート、卓球場、サッカー場などがあって、さらにバーベキュー場、教員用宿舎などもあります。それが、林の中に点々とあるという佇まいで、なかなか贅沢な作りです。

今年は、27名の学生が参加して行いましたが、これだけたくさんになったのは久しぶりでした。一つの理由は、まだ授業期間中であるこの連休に行ったのが良かったようです。スポーツ科学部は部活に入っている学生も多く、夏休み期間になると合宿が始まって、なかなか参加が難しくなります。かえって学期中にやったほうが参加者が多くいるようです。

ゼミ合宿記念写真

学生とのゼミ合宿は、とても楽しいものです。学生は、協調的で優しく親切です。予定をドタキャンする、課題をやってこないなど、社会性に乏しい面もあるのですが、それは、どうすれば良いかを指導する人が居なかったためということもあります。丁寧に指導すると、改善されますし、改善された点を指摘すると、嬉しそうにしています。自主性を重んじながら丁寧に指導することは大事だなとも思います。それぞれがいろいろな個性を持っているのですが、集団生活をするとそのような違いがお互いにわかります。現代の学生は、個人の権利などの意識が高く、お互いに同じでなければならないという気持ちは昔より少ないようで、個性を認めあうのはうまいように思います。

合宿は、セミナーは一応やるのですが、ほとんどはスポーツをしていました。あいにく雨もありましたが、テニス、卓球、バスケットボール、フットサルなど。自分も参加してやりました。20歳前後の若者と、それも中には日本代表選手も居るアスリートたちとスポーツが出来る機会は、大学教員、それもスポーツ科学部の教員でなければなかなか無く、こちらも充分楽しませてもらいました。

2014年7月18日金曜日

イップス (Yips) (2) 朝日新聞秋田の記事

以前問い合わせのあったイップスについての内容が、新聞記事になりました。取材があった朝日新聞秋田支局の江口記者から、朝日新聞秋田版の私の載った記事を送っていただきました。イップスについての私の仮説は、多分あっていると思います。多くの人がそう考えていることと思います。いわゆる、運動の学習は、まずは意識してこう動かすのだと考えそれを繰り返して練習しているうちに、皮質下(大脳基底核など)に運動に関わる神経プログラムが出来上がります。(詳細には、良い総説がありますので参照してください。)この神経プログラムを呼び出して使っているうちは、スムーズに練習した効率的な動きが可能になるわけですが、緊張が高まるとそれに大脳皮質からの回路が干渉して、スムーズな動きが阻害される結果になるという仮説です。

一緒にインタビューを受けている、日本イップス協会の河野会長もとても良いことを言っています。これは、より精神療法的なアプローチだと思いますが、イップスのある人の、生理学的に言えば「皮質からの干渉」を、気持ちを解きほぐすことによって軽減し、本来の練習したスムーズな動きができるようにすることです。イップスを起こす精神的背景についても、家庭環境の問題などにも言及していて、経験のある方なのだろうと思います。

私のゼミ出身の石原心氏は、現在アスレティックトレーナーとして活躍し、ハバナトレーナーズルームという治療院を開業し、キューバ野球チームなどにも関わっていますが、彼はまた、行動療法的なアプローチからイップスを治療する方法を考案しています。これは、なかなか効果があるようです。彼の卒業論文:イップスについて。

この記事は、イップスについての、簡単な知識が身につくと思います。ご一読ください。


2014年7月16日水曜日

第14回 日本外来精神医療学会 宇都宮 シンポジウム9 『外来精神科における睡眠医療』

7月13日日曜日に宇都宮の日本外来精神医療学会に行ってまいりました。今回の会長は、自治医科大学精神科の加藤敏先生です。今回は、シンポジウムの演者として呼んでいただき、総合睡眠ケアクリニック代々木の西田先生、久留米大学精神科医の内村先生と3人でシンポジウムを行いました。西田先生は、睡眠専門クリニックのお立場から、内村先生は大学病院のお立場からお話になりました。私は、現在行っている一般精神科外来での睡眠専門外来の特徴について話しました。

この講演の抄録を掲載します。加藤会長からは、ご著書をいただき、これは大変興味深いうつ病のレジリエンスに関連したものなので、また感想を書きたいと思っています。

帰りには、宇都宮餃子をたくさん買って帰りました。

<抄録>
一般精神科外来における睡眠医療

内田直(早稲田大学スポーツ科学学術院)
阿部哲夫(讃友会 あべクリニック(日暮里))

演者は、日本睡眠学会睡眠医療認定医として都内の精神科クリニックにおいて、一般精神科外来と同時に睡眠専門外来も行っている。ここでの経験についてまとめたい。

最初に、一般精神科外来における睡眠医療の工夫について述べる。一般精神科外来において睡眠医療を行う場合一番の障害となるのは、終夜睡眠ポリグラフ記録(PSG)の設備が無いことである。一般精神科外来においては、必ずしもPSGが必要なケースは多くはなく、設備投資に見合わない。演者の行っているクリニックでは、睡眠障害専門診療施設との連携により、この問題を解決している。すなわち、睡眠時無呼吸が疑われるケースについては、まずは簡易型PSGを自宅にて行い、この結果がCPAP適応になるレベルであれば、CPAPの導入を、施設における精密PSG検査が必要であれば、その後施設に紹介して検査を行う方法をとっている。また、ナルコレプシーなどの検査が必要な場合にも検査可能な施設との連携を行っている。検査により一旦診断がつけば、殆どのケースで一般精神科外来でのフォローアップが可能となる。

一般精神科外来において、睡眠専門外来を行う利点もある。これは、睡眠障害の多くが、背景に精神疾患をもっているからである。多くのうつ病などの患者さんが睡眠障害を主訴に来院する。一般精神科外来であればこういった患者さんの経験も豊富で、睡眠専門外来において睡眠障害だけでなく、精神疾患の治療も行うことができる。

また、この逆もある。うつ症状を主訴に来院された患者さんの中に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害を伴っているケースがある。うつ症状は典型的なうつ病と何ら変わりないため、多くの精神科クリニックではうつ病薬物療法や睡眠障害に対して睡眠薬投与を行ってしまう。しかしながら、簡易型PSGを行う設備を持っていれば、これに気づきSAS治療を導入する可能性が広がる。これにより、CPAPのみでうつ症状が寛解した症例も多くある。

最近多く見られるのは、成人のADHDにみられる昼間の眠気である。ある睡眠専門診療施設で、遅刻が多い、日中の眠気があるという症状から、睡眠相後退症候群と診断されたケースが来院したが、詳細に病歴を聴取するとADHDであった。小児のケースでも、日中の眠気が著しい症例を経験するが、睡眠障害だけにとらわれず一般精神科臨床の中で睡眠障害を取り扱う重要性を示唆しているものとも考えられた。