2014年5月5日月曜日

アスリートの時差対策 (5)

竹澤健介選手に行ったカリフォルニアへの時差対策の続きについて述べましょう。カリフォルニアへは、早寝早起き方向へ睡眠時間帯をずらして行くことがジェットラグ症候群(時差ボケ)を軽減させることにつながります。実際に体の中で起きている変化は、睡眠時間帯の移動に合わせて、体温リズムが早い時間にずれる、コルチゾールの分泌時間が早い時間にずれる、メラトニンの分泌時間が早い方向にずれるなど、体全体のハーモニーとして動いている24時間のリズムが早い時間帯にずれていくということを示しています。一日だけ早寝早起きしてもこのような変化は限られたものなので、より効果的な変化を起こさせるために、光療法とメラトニン療法を竹澤選手には用いました。メラトニンは禁止薬物ではありませんので、服用に問題はありません。また、メラトニンは服用後若干眠気が出るので、短期的には競技力は低下すると思います。

睡眠時間帯は、毎日一時間ずつずらして行きました。したがって、3日間で3時間ずらすという計算になります。もともと早起きだったので、5時あるいは6時には起床する生活をしていました。そこで、6時から、5時、4時、3時という風に起きる時間を前進させ、起床直後に高照度光を浴びてもらいました。またメラトニンは17時、16時、15時というふうに夕方に0.5mgを服用してもらいました。この、毎日1時間ずつ前進させる方法は、やや無理があった気がします。

実際にやってみると、このような時差対策は、競技者や競技団体が時差対策に協力的でないと完全に行うことは難しい面があることも分かりました。例えば、竹澤選手はこの時には学生だったので、実習などもあり早い時間に眠ることが難しい日もありました。更に、メラトニンの即時効果としての眠気が0.5mgという微量でも意外に強く眠いと言っていました。そのようなことから、出発前は調子が悪いと言っていました。これを聞いて私は非常に心配になりました。オリンピックを目指している選手に対して、時差対策といえども、眠気というマイナスの要素を起こさせることが果たして良い結果に繋がるのかに、やや不安が起こったわけです。


パロアルトで滞在した宿舎前での竹澤選手


そこで、私もカリフォルニアについていくことにしました。競技会のあるパロアルトは、私が以前住んでいたサンフランシスコ・ベイエリアにあり、私も非常に良く知っている地域です。パロアルトに、留学時代の友人もいます。
(つづく)


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