2014年2月28日金曜日

名言データベース


下記のリンクをクリックしてみてください。
私が、確かビジネス関連の雑誌へのインタービュー記事で喋ったことが名言データベースとなって掲載されています。このサイトからは、とくに連絡なく掲載されていました。あとから読んでみると、ああ、まあまあ良いこと言ってるなという感じがします。


名言データベース


2014年2月27日木曜日

社交不安障害

社交不安障害は、対人場面や人から注目をあびる場面で、非常に緊張感が高まり、そのような場面を避けるようになる障害である。対人恐怖などと言われていたケースで当てはまるものもある。

社交不安障害からうつ状態になる人も多い。実際に患者さんの話を聞いていると、一対一の診察の場面ではさほど問題がなさそうでも、社会生活の中での様々な場面ですごく緊張が高いということが分かる。次の日に何らかのプレゼンテーションがあると、前の日に何度も何度も練習して、その日の夜はよく眠れないという人も多くいる。したがって、どの患者さんにもひと通り社交不安障害があるかどうかを聞いてみる。

また、社交不安障害によるストレスは、仕事の様々な場面で起きてくるので、丁寧にどのような環境で仕事をしているのかを聞くことも大切である。IT従業者のうつ病は非常に多いが、IT従業者が仕事のストレスで鬱になっているのではない場合もある。IT従業者は、自社で仕事をせずにクライエントの事務所に出向いて行って、そのプログラムの修正を行うプロジェクトを定期的に移動しながら行う場合も多い。そういった時に、プロジェクトが変わると新しいクライエント会社の担当者に変わる。その時に、担当者が高圧的な人だったりすると、社交不安障害のある人は非常に大きなストレスを感じる。また、そうでなくても新しい担当者と導入の打ち合わせをすることに大きなストレスを感じることもある。

このような人は、自社で仕事をする部署に回ると良くなる。そのような希望を出すことに気づいていない場合もあるので、詳しく話を聞いてあげるとそのようなアドバイスも出来る。会社によっては、そんなふうに部署転換ができない会社も多いが、大きめの会社であれば、そういうことが可能な場合もある。

また、継続して社交不安障害を改善する薬物療法を行うことも意味がある。この薬は、効果のあるケースは少なからず有り、うつ状態が改善しても継続的に服用したほうが良い場合が多い。

2014年2月26日水曜日

認知症の介護

認知症の患者さんの治療は、本人の治療と同時に介護者のメンタルヘルスに気をつけることが同じくらい大事だと思っています。認知症の介護は二重の意味で大変です。ひとつは、自分の親あるいは配偶者で、過去には支えてもらったりお互いに支えあったりした人の能力が下がってきてしまうことへの悲しみ(ストレス)。そのような思いは、なんとか回復させたいという気持ちと相まって、「おじいちゃん、これはどうだった?」というようなテストの試みになって、時に患者さんにストレスを与えてしまうこともあります。もう一つは、認知症のBPSD Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaと言われる周辺症状で、怒りっぽくなったり、確認強迫のようになったり、さまざまな本人の変貌に対しての対応です。

このような状態にある認知症の患者さんへの対応について、御家族と話すときよく言うのは、「認知症は障害なので、例えば、不幸にして膝が曲がらなくなってしまった人への対応と同じで良いですよ。」という言葉です。膝の曲がらない人に、走れるように頑張って走ってみろなどとは言いません。歩きにくければ、歩行などについては介助して、不便の無いように介助をして対応するわけです。認知症も同じです。初期は記銘力障害が主体です。その場合は、何度でも覚えていない部分を繰り返し説明して、その情報をもとに判断してもらいます。丁寧に説明すれば説明するほど、本人はよくわかって、判断力は比較的保たれていることも多いので、正しい判断ができます。そのような交流の中で、家族としてのつながりに、介護者も気持ちを新たにする部分もあるのではないでしょうか。治療では、介護者に十分に共感することが大切と思っています。BPSDへも、おなじような対応で、患者さんが満足感を得て、イライラなどの精神症状が安定することも多くあります。

また、BPSDに対しては、薬物療法が効果的であることも多くあり、試す価値があります。認知症の薬物療法は、認知症そのものを進みにくくする抗認知症薬を用いますが、それと同時にBPSDを安定させる薬物をごく少量用いるのがコツだと思っています。また、日中の活動性を上げることは最も大切で、ディサービスはぜひ利用するほうが良いと思います。通常は、最初は行きたくないということになりますが、何度も根気強く進めていくことが大事です。これにより、日中の活動性が上昇し、夜間睡眠が安定します。夜間睡眠がそれでも安定しない時には、比較的穏やかな効きめの睡眠を安定させる薬物を投与します。高齢者への薬物療法は、少量の薬を使いますが、これには経験が必要と思います。

認知症患者さんへの対応については、私が一緒に仕事をさせて頂いている平沢記念病院の平沢秀人先生が、とても良い本を書いています。

2014年2月25日火曜日

メランコリー親和型性格

うつ病の患者さんの治療をしていると、メランコリー親和型性格と呼べる人は非常に多い。このような人は、社会の中では信頼される役に立つ人たちだ。人のために自分を犠牲にして、強い責任感のもとに一生懸命に仕事をする。自分では自分を犠牲にしているとは、思っていない。

患者さんとの診察時に、こんなことを話す。「例えば、あなたの同僚の方が、来週ハワイ旅行に一週間行くとする。その人は自分の仕事はしっかり済ませていくつもりという。ただ、そうは言っても一週間となると、その人の仕事のフォローはしなければならない可能性はある。その人は、その時はお願いねぇ!という。そんな時に、あなたはどうですか?」と。「もちろん、楽しんできて。なんかあれば、私がやっておくから気にしなくて大丈夫…。とそんな感じじゃないですか?」「では、あなたが、来週ハワイ旅行に行くとして、同じように同僚にお願いできますか?」「いや、私は絶対出来ません。多分、お盆とかみんなで休む時以外は、休みを取るのは難しいと思います。」と。

こういう人は、社会の中では非常に評価される。また、きちんと仕事をするので、仕事の量が増える。また、仕事を断らないので更に増える。そして、夜中まで毎日仕事をすることになり、最終的に自分が潰れてしまう。

メランコリー親和型性格は秩序を重んじる一方で、その中で安定している面もある。毎日のルーチンワークをこなし、それが人のためになっている状態は非常に安心である。したがって、昇進や転勤などの変化があるとそれが大きなストレスになることもある。

治療では、まずは、このことを本人に知ってもらう。そして、それは本人の欠点では決して無いけれども、自分がそれによって苦しくなることもあると。それでは、本来社会のためにやくにたつ役割がダメに成ってしまうので、うまく自分で調節して継続ができるようにすることが大事であるとお話する。何度も同じ考えはでてくるので、そのたびに指摘をして、修正をしていけるようにする。これは、辛抱強い作業だけれども、少しずつ変化は見られる。

メランコリーについては、これでよいとは思うが自分は原典をしっかりと読んでいないことに気づいた。遅いかもしれないが読んでみようと購入した。

2014年2月24日月曜日

オリンピックと緊張感

テレビ局からメールをもらって、ソチオリンピックのフィギュア女子浅田真央選手のショートプログラムの演技が緊張のためか、うまく行かなかったことを取り上げて、そのことについて質問された。こういうテレビ番組制作者からのメールは時々もらうが、わりと真面目なメールだったので考え返信した。
浅田選手とは、エアウィーヴ(寝具: airweave.jp)関連でお会いするチャンスは何度かあったのだが、そのたびに講義があったりしてまだお会いしたことがない。テレビで見る限りでは、上品でひたむきな方の印象をもっている。機会があったらお会いしたいものだと思う。
テレビ局には、以下の様なメールを送った。


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オリンピックの緊張は、想像を絶するものだと思います。一般には、適度な緊張が一番実力を発揮できると言われていますが、オリンピックではそれを超える緊張があるために、過剰に意識が生じ、それまで「自動化」できていたことができなくなってしまうということが生じるように思います。スポーツにおいてある手技を何度も何度も練習すると、その動きが脳の回路として大脳基底核や小脳といった意識されない経路にできます。それで、例えば3回転ジャンプをしようとすれば、その回路を呼び出すことで、スムーズが動きができるわけです。しかし、そこに過度の緊張が入ると、大脳皮質がその回路の呼出に余計な介入をして、動きがぎこちなくなるということがあると思います。これが、なるべく「科学的に」説明したものですが、そのようなメカニズムがどのような脳内物質によって制御されているのかなど、詳細な点は、よく分かっていません。

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私の大学院に竹澤健介という北京オリンピックに出場した長距離選手がいたが、彼は北京オリンピックの前の日は全く眠れないほど緊張したと言っていた。オリンピックには魔物が住んでいるというが、それまでの練習で培った脳内の回路をスムーズに呼び出せなくなってしまうほどの緊張は、やはり魔物と言っても良いのかもしれない。

2014年2月23日日曜日

うつ病の運動療法 (1)

スポーツと気分
運動をすると、気分がスッキリする!頭が冴える!という経験をした人は非常に多いでしょう。私も、仕事で疲れたときにはジョギングをすると、とてもスッキリします。大学では仕事の合間に、学生たちとテニスをしたりフットサルをしたりすることもあります。このように、昔から経験的には運動が気分を改善させることはよく知られていました。

では、気分の障害であるうつ病にこのような運動は役に立つのでしょうか。うつ病の患者さんは励まさないほうが良いと言われますが、運動などせずにゆっくりと寝ていたほうが良いのでしょうか。うつ病に運動療法が有効であるかについての研究はこれまでにも行われており、これらの研究の結果を見ると、うつ病には運動療法が効果的であるという報告がほとんどで、運動療法を行うことが非常に意味がありそうです。このようなうつ病の運動療法の現状について解説します。
うつ病の運動療法
これまで、運動をして気分がよくなるという研究は、海外では以前から行われていましたが、多くの研究は少数の人達を対象にした研究で必ずしも非常にしっかりとした研究とは言えませんでした。しかしながら、2000年代に入って、比較的多くのケース対象に運動した場合とそうでない場合を比較する研究がみられ、その効果あることがだんだんに分かってきています。この文章は、実はアメリカの学会の帰りに飛行機の中で書いていますが、この2011年6月のアメリカスポーツ医学会(ACSM)においても、うつ病を含む精神的な不調への運動療法に関するシンポジウムがありました。

発表した研究者はデューク大学のブルメンタール教授、コロラド大学のダン教授などです。また、ミシガン大学やテキサス大学などでも研究が行われています。また、早稲田大学スポーツ科学学術院の我々の研究室でも、こういった研究を始めました。ブルメンタール教授やダン教授の研究論文は最後に文献として掲げました。これまでの研究を簡単にまとめると次のようなことが分かっています。

1.運動療法は、実際にうつ病で症状の重い人に対して行っても効果がある。また、比較的軽症の人に行っても効果がある。
2.運動療法の種類や運動の強さ、頻度等については現在適切な量についての研究が行われている最中であるが、現時点では健康維持のための運動量(=生活習慣病予防・メタボ対策の為の運動量)とほぼ同等の運動で効果があると考えられている。
3.薬物療法とは併用しても、薬物療法の効果を阻害することはない。しかし、現在の知見では、薬物療法の効果がより良くなることは無いようである。また、運動療法だけでも薬物療法と同等の効果があるという報告もある。
4.うつ病の寛解期の維持療法(一旦良くなった後良い状態を維持する)については、経験的に良いという意見が多く見られるが、科学的知見はまだ十分ではない。
5.回復途上、あるいは復職前の人たちに対する運動療法は、症状回復への効果の他に、療養中に低下した体力を向上させ、仕事にスムーズに復帰するための効果がある。
寛解期の運動
うつ病の運動療法に示しましたように、うつ病が一旦良くなった後に運動習慣をもって、ウォーキングなどを続けるということが、再発を防ぎ良い状態を保つ上で良い効果があるのかどうかについての、しっかりとした研究はまだ十分に行われていません。しかし経験的には、良い効果があるという印象をもっている臨床家が多いように思います。

私自身が経験したケースでも、ウォーキングをはじめて良い状態がつづいて方は比較的多く居ます。そういった方は、運動に対する親和性があるというのと、運動するとやはり具合が良いので続けているというように見えます。具合が良いというのは、気分が良いということです。

このようなことを考えると、うつ病に罹患したあと症状の回復のためだけでなく、一旦良くなった後も運動習慣を続けることで、メンタルヘルスという視点で良い効果があると考えても良いように思っています。
仕事に戻るためのリワークの効果
うつ病のリワークプログラムが最近では行われています。うつ病のために休職した後に回復し、仕事に復帰するためのプログラムです。朝必ず9時までにやってきてプログラムに参加することのなどが求められています。この中に、運動療法を取り入れることはとても効果があるように思います。

うつ病が寛解期の維持療法として良い可能性があることはすでに述べましたが、もうひとつの運動の直接的な身体への効果として、体力が向上することがあります。これは調べるまでもなく確実な効果です。休職によって自宅療養あるいは入院治療している間は、多くあまり動くことが無いために体力が落ちてしまいます。精神的な症状がある程度回復しても、体力が十分でないために外出したりすると疲れてしまうということも起きてきます。このような、問題を解決する意味でもリワークプログラムへの運動療法の導入は、非常に大きな意味があると思います。

2014年2月22日土曜日

大人のAD/HD

田中康雄先生(北海道大学)の、大人のAD/HDをいう本(講談社)を患者さんがもっている。見せてもらったところ、大変わかり易く書かれている本で、購入してみようと思いました。
12月から、コンサータも成人に使えるようになり、ストラテラとコンサータの両方が成人でも用いることができます。また、成人に対してのコンサータの効果についての手応えはまだ少ないですが、小児に対するのと同様に成人に対してもコンサータは効果発現は即日に現れるように思います。このような中で、生活指導を丁寧にしていくことが真の治療に結びつくと思いますが、やはりそのようなときに、このような本があると指導がしやすくなります。

発達障害があると、社会の中ではさまざまな苦労があります。ADHDあるいはADD注意欠如障害の場合も、自分が努力しても間違いがあり、社会からは努力していないように思われてしまう面があり、患者さんは苦労しています。このような、薬物療法がそのギャップを埋めてくれる事になれば、患者さんにとっては朗報です。

2014年2月21日金曜日

内田 直 自己紹介

略歴
1983年3月            国立滋賀医科大学 医学部 卒業
1983年5月            医師免許取得
1983年6月            東京医科歯科大学神経精神医学教室入局(研修医)
1984年10月          静和会浅井病院勤務
1986年7月            東京医科歯科大学神経医学教室 および 検査部脳波室 医員
1990年7月            カリフォルニア大学ディビス校精神科 客員研究員
Irwin Feinberg
教授に師事
1992年12月~       東京都精神医学総合研究所 副参事研究員 (睡眠障害研究部門長) 
(退職時)
2003年4月           早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授


資格等:
医師免許
精神保険指定医
博士(医学)東京医科歯科大学
日本精神神経学会 精神科専門医・精神科専門医制度指導医
日本睡眠学会認定 睡眠医療認定医
日本体育協会認定 スポーツドクター
日本スポーツ精神医学会 メンタルヘルス運動指導士
ジョージア(グルジア)科学アカデミー外国人会員
所属学会:
日本スポーツ精神医学会(理事長)
日本睡眠学会(評議員)
日本臨床スポーツ医学会(評議員)
日本精神神経学会
アジア睡眠学会
日本老年精神医学会
日本遠隔医療学会など

著書:
好きになる睡眠医学、スポーツカウンセリング入門、安眠の科学 など