2014年9月12日金曜日

アンギオテンシン変換酵素阻害薬とアルツハイマー病

最近、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)とアルツハイマー病に関連する興味深い疫学研究論文を読んだので紹介いたします。

簡単に言うと、アンギオテンシン変換酵素阻害薬という降圧剤を飲んでいる人は、アルツハイマー病になりにくいということです。この説明だと、ずいぶん誤解があると思うのでもう少し詳しく説明します。

アンギオテンシンIIは血管を収縮させて血圧を上げる作用がありますが、ACEはこのアンギオテンシンIIの生成を阻害することで、血圧を下げる作用があります。

一方、アルツハイマー病の一つの原因としてアミロイドβ蛋白の凝集(老人斑)がありますが、アポリポ蛋白の遺伝子型の一つである、アポリポ蛋白E4は神経細胞膜内のコレステロールを増加させ、アミロイドβ蛋白の凝集を増加させると考えられています。したがって、アポE4はアルツハイマー病になりやすいと考えられています。一方で、アポE4の遺伝子を持っていない人もアルツハイマー病になる可能性はあります。

この研究では、アポE4遺伝子型を持っている人とそうでない人で、ACEを服用している場合に、アルツハイマー病になる可能性が低くなるかどうかを検証しています。その結果、アポE4遺伝子を持っていない人では、ACEを飲んでいると有意にアルツハイマー病の発症が低下したという結果が得られました。しかし、アポE4遺伝子を持っている人では、ACEを服用していることがアルツハイマー病の発症を抑えることはありませんでした。

ACEがどのようなメカニズムで、アルツハイマー病の発症を抑えているのかは分かりませんが、今後の研究が興味深い結果だと思います。




Qiu WQ1, Mwamburi M, Besser LM, Zhu H, Li H, Wallack M, Phillips L, Qiao L, Budson AE, Stern R, Kowall N.  Angiotensin converting enzyme inhibitors and the reduced risk of Alzheimer's disease in the absence of apolipoprotein E4 allele.  J Alzheimers Dis. 2013;37(2):421-8. doi: 10.3233/JAD-130716.

Abstract

Our cross-sectional study showed that the interaction between apolipoprotein E4 (ApoE4) and angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitors was associated with Alzheimer's disease (AD). The aim of this longitudinal study was to differentiate whether ACE inhibitors accelerate or reduce the risk of AD in the context of ApoE alleles. Using the longitudinal data from the National Alzheimer's Coordinating Center (NACC) with ApoE genotyping and documentation of ACE inhibitors use, we found that in the absence of ApoE4, subjects who had been taking central ACE inhibitor use (χ2 test: 21% versus 27%, p = 0.0002) or peripheral ACE inhibitor use (χ2 test: 13% versus 27%, p < 0.0001) had lower incidence of AD compared with those who had not been taking an ACE inhibitor. In contrast, in the presence of ApoE4, there was no such association between ACE inhibitor use and the risk of AD. After adjusting for the confounders, central ACE inhibitor use (OR = 0.68, 95% CI = 0.55, 0.83, p = 0.0002) or peripheral ACE inhibitor use (OR = 0.33, 95% CI = 0.33, 0.68, p < 0.0001) still remained inversely associated with a risk of developing AD in ApoE4 non-carriers. In conclusion, ACE inhibitors, especially peripherally acting ones, were associated with a reduced risk of AD in the absence of ApoE4, but had no such effect in those carrying the ApoE4 allele. A double-blind clinical trial should be considered to determine the effect of ACE inhibitors on prevention of AD in the context of ApoE genotype.

2014年9月10日水曜日

応援のお便り (1)

ブログや様々な記事を書いていると、時々応援のお便りをいただきます。最近、主婦の方から応援のお便りをいただきました。掲載許可を頂きましたので、一部省略して匿名で紹介いたします。

読まれた記事は、味の素のいきいき健康研究所の記事のようです。 記事へのリンクはこちら。

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はじめまして、最近の出来事から内田直先生の存在を知りました。先生の研究に私の偶然行った事が近い内容でしたのでメールを送らせて頂きます。

私は40代の子供が二人の4人家族です。昼間は事務デスワークでIT環境のなか午後1:45から午後3:30の間は睡魔に襲われ仕事がはかどらない悩みがありました。派期限のない事務処理と電話番でかなり眠くなる要因です。多忙であれば眠気は来ないのですが…。

それが、サボっていたマラソントレーニングを毎晩始めました。毎日6kmランに筋トレ、ストレッチ、アロマライトでの腹式呼吸で光環境を考えながら就寝しました。運動した翌日は筋肉痛でしたが眠気が一切こないので、びっくりしました。そして3日連続走ってますが毎回睡魔がきません。今日で4日目ですが、また試してみようとおもいます。

私にとって睡魔は切実な悩みでした。不眠症もなく、夜はいつもと変わらない時間に眠ります。ややキツいくらいの運動ですが翌日は眠くならないのは嬉しいです。時間あるときに改めて先生の研究を読ませて頂きます。

研究頑張ってくださいませ。
応援しています。

2014年9月8日月曜日

夜間頻尿 (1) ロキソニンの効果

夜尿症の治療について、以前書きましたが、中高齢者の睡眠の問題で比較的大きいのは、夜間頻尿の問題です。夜間頻尿に関しては、先に書いたトビエースも効果があると思いますが、日経メディカルの記事に、ロキソニン(ロキソプロフェン=解熱鎮痛剤)が効果があるという説明がありました。これについて少し調べてみました。

ロキソニンが分類されるところの、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)には、尿反射を低下させる作用があるようです。また、ロキソニンにはプロスタグランジンEP1受容体に対しても拮抗作用が有り、これが排尿の知覚を低下させます。更には、腎臓での尿産生の抑制作用もあるようです。これらが総合的に働いて夜間頻尿の軽減につながるというのが考えられる機序です。

私はこれまで、ロキソニンを夜間頻尿の治療に用いたことはありませんでしたが、これらの作用機序をみると、治療がうまくいかないケースに対してロキソニンを用いるという選択肢を考えておいても良いのではないかと思いました。

一方ロキソニンの副作用としては、胃腸障害、腎障害などがあり、これに対しての注意も必要だと思います。これらについて、十分に調べ、本人にも副作用についてお話した上で、効果が期待できるケースに用いてみる価値はあると考えます。

高齢者の夜間頻尿は、睡眠障害の中でも治療が厄介なものです。このように、さまざまな治療方法の選択肢を持ちながら治療に当たることが、最終的には患者さんの生活の質の向上につながると思いました。

2014年9月7日日曜日

スポーツとスポーツ科学の国際化 (1) 錦織圭選手の全米オープン決勝進出

錦織圭選手が、全米オープンの決勝に進出することになったという、本当に素晴らしいニュースが今朝届きました。マイケル・チャン コーチの言うように、しかしこれで最終的に良かったと思ってはいけません。決勝で勝つことを次は考えることだと思います。

ニューヨーク・タイムズWeb版の記事: コーチのマイケル・チャンは、素晴らしいが、
トーナメントはまだ終わっていないと何度も繰り返したという
「錦織にとっての新しい日の夜明け」と題された、ニューヨーク・タイムズの記事を読んでも、日本にとって、そしてアジアにとって新しい時代がやってきたという気持ちになります。

このような世界大会で上位の成績を上げることは、スポーツの国際化のなかで出来上がってくるものだとよく感じます。自分自身は、現在早稲田大学のスポーツ科学学術院に所属していますが、海外との交流は、研究を通じたものが主です。これまでに、様々な国の研究者との交流が有りますが、2003年に早稲田大学に移動したあとで知ったことは、同じ学術院にいるスポーツ実技系の先生方は、どの方も日本のトップクラスの競技者だった人たちですが、非常に国際的に活動しているということです。私も、グルジアなどとの交流が有り、珍しい国に行っていると自負している面もありますが、実技系の先生方は、もっと海外との交流が豊富です。

錦織選手は、アメリカのIMGアカデミーでテニスの教育を受けていますが、ここでのトレーニングが現在の競技力の大きな礎になっていることは間違いないと思います。もう一年以上前の日経の記事を読んでも、このアカデミーで、スポーツ実技だけでなく様々なバックグラウンドの知識をふくめた、育成環境が整っていることがわかります。そこで、しっかりとサイエンスとしてのスポーツを学ぶ環境も有り、結果としてアカデミーからの大学進学率は96%にも達しているようです。

このIMGアカデミーについては、私は、寝返りに関する共同研究をした経緯のあるエアウィーヴの高岡社長から話を聞いたのが最初でしたが、素晴らしい環境を提供していると思いました。(エアウィーヴは、IMGアカデミーの宿舎の寝室にマットレスを供給しています。)

このような中で、錦織選手が決勝進出を果たしたことは素晴らしいことです。他の競技でも、例えばサッカー選手の多くが現在ヨーロッパリーグで活躍している状況は、三浦選手がジェノアに行った時とは隔世の感があります。

しかしまだ、「アスリートは外国で学び強くなり、外国で学んで上位に行けるようになった。」という段階だとも言えます。ぜひ次は、アジアで、そして日本に多くの選手が学びにくる環境を作っていきたい思います。2020年の東京オリンピック開催も後押しして、その環境も少しずつ作られている動きも感じています。

この、スポーツとスポーツ科学の国際化 については、また時々書いてみたいと思っています。

2014年9月5日金曜日

マインドマップ (2) 結局、FreeMindとMindjetの組み合わせに落ち着いた

ここのところ、いくつか整理して考えたいことがあったので、ここのところマインドマップを何度も使いました。マインドマップは、電車に乗っているときなど、Androidのスマートフォンでも使いたいので、WindowsPCとスマートフォンの両方でつかえて、なおかつ無料のソフトがないかなぁと物色してみました。

その結果、PCようにFreeMind、Android用にMindjetを使うというのが良い組み合わせであるというところに落ち着きました。この組み合わせは、FreeMindを使おう会 という、のんびりした名前の会で推奨していたので、やってみたところ、やはりいろいろ試行錯誤してこの組み合わせに落ち着いただけあって、良い組み合わせでした。

FreeMindのホームページにあるサンプル図:こんな風にアイディアをどんどん書き込んで可視化できます。


2つのソフトの連携は、Mindjetのサイトを使って行います。Mindjetは基本的にクラウド型になっていて、MindjetのPCソフトと、スマホアプリ、そしてオンラインのアプリを連携させています。Mindjetのスマホ版は無料で、非常に優れた点として、FreeMindのファイルの読み書きができます。また、FreeMindのファイルを、Mindjetのクラウドにアップロードすることもできます。したがって、これでファイルを共有することができるわけです。更に、FreeMindもMindjetも、DropBoxと連携しているので、Mindjetのクラウドの代わりに、DropBoxを使ってファイルを共有することもできます。DropBoxにファイルを置いておいて、別のフォルダにショートカットを置いておく方法で、うまく整理ができています。

今のところ、この組み合わせが最も良さそうです。FreeMindも使いやすいので、満足しています。

マインドマップは、やはり考えが整理しやすいなあと思います。そういうこともあって、マインドマップは、精神科の患者さんに勧める価値は十分にありそうです。そこら辺ももう少し練ってみたいと思います。

2014年9月3日水曜日

鹿児島のタクシー運転手

地方に行って、タクシーに乗るとその地方色がわかることが多くあります。私の患者さんで、タクシーの運転手をしている方がおられますが、以前は大阪でやっていたが、その時はしんどかった。東京に来て、すごく楽ですとおっしゃっていました。何が違うのかというと、大阪ではお客さんと話をする時間がすごく長いということです。東京では、ほとんどお客さんと話をしなくて良いので、行き先を聞いたらあとは黙っていて大丈夫ということでした。もちろんお客さんによっては、話をする人もいるのでしょうが、その割合は非常に少ないようです。

朝、時間に余裕がなくて鹿児島空港までタクシーで行ったのですが、そのタクシーの運転手さんは、非常に愉快な方でした。タクシーで行けば間に合う時間だったのですが、おみやげも買いたいからと話をすると、頑張ってみますと飛ばしてくれました。道すがら、昨日友達の女性二人を載せて、鹿児島観光に連れて行ったのだが、その二人のばあさんが、飲むわ食うわで、自分は運転手だから酒は飲めないし、散々な目にあったというのです。そして、突然、焼酎があるからあげましょうか、というので、遠慮するかなと考えていたところで、「ああ、間違えた、あれは自家用の方に入れておいたんだ。」ということで、いただけませんでしが。その他にも、ETC無しでしたが、ETCのゲートに入って、バックしてその後料金所の人と、「間違えたわ。ETCがついとらんかった。」ということで、料金所の人もそれはそれで普通の対応でした。最後に料金を払う時も、タクシー料金に加えて高速料金の合計を支払おうと聞くと、まあ、これでいいわ、と多少安くしてくれました。

なかなか、豪気な運転手さんだったとも思うのですが、鹿児島の土地柄ということもあると思います。のんびりした佐賀に続いて、鹿児島も大変気に入りました。今年は、これからも九州を訪問する予定があるので、楽しみにしています。

2014年9月1日月曜日

第12回 日本スポーツ精神医学会学会総会・学術集会 鹿児島 (4) 総括

8月30日土曜日に、日本スポーツ精神医学会学術集会が開催されました。私はこれまで、第1回の集会から今回まですべての会に出席していますが、今回の学会はその中でも非常にクオリティーの高い学会であったと思いました。教育講演は、鹿児島大学精神医学教授の佐野輝先生、特別講演は東大名誉教授の武藤芳照先生、鹿児島県サッカー協会顧問の松澤隆司先生でしたが、どのお話も大変興味深く、多くの方がそれぞれのお話に聞き入っていました。私も、時間を忘れてお話を伺いました。シンポジウムも、「スポーツはこころを育む」という内容で充実したものでした。

私は、その中でも一般演題の質の高さに非常に感銘を受けました。これまで、日本スポーツ精神医学会は地方開催の時にはなかなか演題も集まらず、お願いして出してもらうということも有りました。また、演題の中には私の研究室の大学院生が、必ずしも精神医学と直接的な関連があるとはいえない演題を発表することも有りました。しかし、今回は、この学会に発表するために、北海道、群馬、栃木、東京、神奈川、三重、愛知、など九州外からも多くの演題が集まりました。そして内容も非常に興味深いもので、多くの有意義なディスカッションができたと思います。会員数も300を超え、今後さらに増えていくと思います。

プログラムは先に掲載しましたが、患者さんに対して、運動プログラムを実施しその成果を見たものが、増えてきているのは嬉しい事です。また、障害者スポーツも大きく発展してきています。レベルの高いアスリートのカウンセリングや、精神科医と臨床心理士の連携などについても発表がありました。更には、スポーツ現場での暴力についての非常に深い考察が、アンジェ心療クリニックの諸井先生からあり、全体として本当に多くの勉強ができる一般演題発表だったと思います。

懇親会にも多くの先生方が参加され、お開きとなっても多くの参加者の方々がその場を動かずに、話を続けているという状況でした。

来年は、9月第1週に札幌で開催されます。石金病院の井上誠士郎先生が会長となられますが、これもまた非常に期待できる学会であると思います。

日本スポーツ精神医学会、これからも応援よろしくおねがいいたします!
理事長 内田直