2015年4月10日金曜日

ノンベンゾジアゼピン系睡眠薬について

ルネスタという商品名の睡眠薬について、調べる機会がありました。これは、エスゾピクロンという物質で、ノンベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されるものです。そこで、ノンベンゾジアゼピン系睡眠薬全般について、もう一度復習してみました。

ノンベンゾジアゼピン系というと、ベンゾジアゼピン系以外のというイメージを持ちますが、実はそうではなくて、ベンゾジアゼピン系と同じ、ベンゾジアゼピン受容体に作動する薬のうち、ベンゾジアゼピンの特徴となる骨格を持っていないものを示しています。日本で発売されている、ノンベンゾジアゼピン系に属する薬物は、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンです。

このうち、ゾルピデムは、超短時間型で血中半減期が約2時間です。マイスリーという商品名で発売されています。また、ゾピクロンは、光学異性体と言って、図に示したように「両手の形」が鏡面対称であるのと同じような、2つの鏡面対称の構造を持った物質が混ざり合ったものです。商品名はアモバンです。

これに対して、エスゾピクロンはこのうちS体(もう一方はR体)と呼ばれる、より効き目の強い光学異性体だけを集めたものです。したがって、エスゾピクロンを使うのであれば、より効き目の弱いゾピクロンを使う意味は殆どありません。あるとすれば、ゾピクロンに慣れた人がどうしても薬を変えたくないという時くらいです。

睡眠薬は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬であれば、ノンベンゾジアゼピン系から使うのが基本だと思います。これは、わざわざノンベンゾジアゼピン系を作ったということは、ベンゾジアゼピン系よりも進化させたものを作ったということがあるからです。どのように進化しているかといえば、睡眠薬として、催眠作用以外の副作用をなるべく少なくしてあるというところです。

FIGURE 1. GABA-Aの各サブユニットに対する、
ゾルピデム、ソピクロン、ロラゼパムの親和性
TABLE 3. GABA-A受容体サブタイプの分布と機能
表が英語でわかりにくいのですが、ベンゾジアゼピン受容体(正確にはGABA-A受容体)には、5種類あって、それぞれAlpha 1-5と分けられています。このうち、TABLE 3に示してあるように、睡眠に関わるものはAlpha 2, 3です。これに対して、Alpha 1に強く働くと、筋弛緩作用などの副作用が出てしまいます。また、Alpha 1については、依存性にも係る働きがあるので、これらが弱いほうが、悪い影響が少ないというわけです。

ゾピクロン(エスゾピクロンもほぼ同じプロファイルと考えられる)は、こういった点から、FIGURE 1に示されているように、一番右のロラゼパムや、左側のゾルピデムに比べてもAlpha 1に対しての効き目が弱い(棒グラフが長いほうが弱い)ので、筋弛緩作用などの副作用や依存性が低いというわけです。睡眠に対する効きも、ロラゼパムなどに比べると弱い面がありますが、しかし、副作用との相対的なバランスを考えると、非常に優れた薬剤であることが分かります。アメリカでは、最も使われている薬剤だそうですが、確かに良い面は多くあると思います。

一方で、嗜癖(Abuse)については、ゾルピデムのほうがゾピクロンよりも低いと下記の参考文献には示されています。

しかし、このようなノンベンゾジアゼピン系の睡眠薬にしても、ある程度以上の依存性などはあるわけです。したがって、睡眠薬はもちろん、使わないに越したことはなく、運動療法や生活療法などを常に併用して治療は行うべきです。

そして、薬をどうしても使わざるを得ないケースの場合には、より安全性の高いものを選びたいと思っています。

参考サイト: http://www.cjdiagnosis.com/articles/making-the-choice-to-sleep-differentiating-between-interventions-for-insomnia-a-focus-on-non-benzodiazepine-hypnotics

Making the choice to sleep differentiating between interventions for insomnia.  A focus on non-benzodiazepine hypnotics.

この中の特に重要な文献:
46. Nutt DJ & Stahl SM. Searching for perfect sleep: the continuing evolution of GABAA receptor modulators as hypnotics. J Psychopharmacol 2010; 24(11):1601-12. - See more at: http://www.cjdiagnosis.com/articles/making-the-choice-to-sleep-differentiating-between-interventions-for-insomnia-a-focus-on-non-benzodiazepine-hypnotics#sthash.AjPJIDP1.dpuf

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。