2014年10月24日金曜日

新しい睡眠薬 (2) スボレキサント

オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントがいよいよ発売されます。私はまだ使用経験がありませんが、この睡眠薬はこれまでのベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較して、全く新しい作用機序であるところが注目されます。簡単にいえば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳の神経の働きを全体に低下させます。全体というと語弊がありますが、ベンゾジアゼピンGABA-Clチャンネル受容体複合という、GABAが作用して神経の活動性が下がるスイッチは、かなり広い範囲の脳神経についています。ベンゾジアゼピンはその機能を高めて、神経の働きを低下させやすくするわけです。したがって、神経の働きの低下により、眠気や鎮静作用が起きてきます。

スボレキサントは作用機序は根本的に異なっています。オレキシンという、覚醒に作用する神経伝達物質が作用する受容体(作用点)をブロックして、一定時間オレキシンが働きにくくする。それによって、眠気が出るという作用機序です。このオレキシンは、日中に分泌が多いですが、夜間も分泌されているため、これをブロックすることでより安らかな睡眠が得られるというのが説明です。

発売開始するMSD社の説明によれば、このスボレキサントは、血中濃度は比較的すみやかに低下するのですが、オレキシン受容体のブロック作用は朝まで続き、朝起きる頃にちょうどその作用が切れるということで、睡眠の導入だけでなく、睡眠の維持にも効果があるということでした。

実際の使用経験がまだ無いので、またこれについて使用経験が出てきたところで報告したいと思います。来月くらいから次第に使われるようになるのではないかと思います。

ただ、不眠症に関しては、新しい薬に過剰に期待するのはあまり良い考えではないと思います。睡眠は24時間全体の中で考えるべきで、日中の活動性の上昇(運動)や、睡眠覚醒のリズム、食事などにも気をつけて、より健康的な生活を営むということが最も重要な事と考えられるでしょう。そのことは忘れないようにしたいものです。

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