これらの診断基準は、ICSD-3(睡眠障害の国際分類 第3版)によるものですが、この中にも、診断基準の他に患者さんの状況について、よく確認して診断すべきとされても居ます。特発性過眠症は、日中の眠気はあるが、眠気の性状がナルコレプシーとは異なり、短時間の睡眠でも頭がすっきりしないということや、SOREMの特徴がないという点が異なった疾患であると考えられています。
これらを総合的に考えると、睡眠潜時が平均8分以内ということがまずは、必要な要件ですが、これについては、幾つかのポイントがあります。
緊張が高い患者さんで、初回に眠らなかった場合、記録は20分間行いますので、初回の睡眠潜時が20分になります。その場合、残り4回が、睡眠潜時6分でも、全体が平均8分以内になりませんので、基準を満たしません。
また、SOREMがでない、あるいは最初の4回で2回以上SOREMが出れば、4回でやめることも可能ではあるのですが、その場合には、1回目に眠らなければ、基準を満たすためには残りは4分以内に眠らなければなりません。
更に、前日の睡眠を含め、普段の夜間睡眠は十分である上で日中の眠気があることが病的な眠気の意味であろうと思いますが、現代人は一般には、十分な睡眠を取っているとも言えないので、これをどう考えるかということにもなります。
更に、治療薬モディオダールとの関連についても
1.MSLTを行えないクリニック、あるいは検査をしていない患者さんにはモディオダールは投与できないか。
⇒ 添付文書をみると、投与できないことになっています。
2.MSLTで睡眠潜時が、8分以内だけれどもSOREMのない特発性過眠症には投与できないか。
⇒ 添付文書をみると投与できません。
このようなことで、いろいろと困る事例があるように思います。したがって、過眠症の診断と治療は、検査だけでなく、本人の生活史や、生活時間などについても十分な問診を行い、これらも考慮しながら行うことが必要になってくるのだと思います。