2017年10月25日水曜日

小学校・中学校・高等学校・特別支援学校で働く教員のメンタルヘルス

先日、埼玉県の公立中学校で女子生徒の着替えを盗撮したというニュースを聴きました。更に悪いのは、これを当時の校長と教頭が隠蔽したということです。隠蔽というのは、ビデオを消去させ、市教委に報告をせずにそれで済ませたということのようです。この事実があったのは、2015年で2年も前のことだったようです。この記事を見て思うのは、学校の閉鎖的な体質です。これは、学校が全て閉鎖的な体質であるということを言っているのではなく、職員の労働環境に配慮した管理体制のある公立学校もあると思います。しかし、問題はそうでないことも可能になってしまうようなシステムがそこに有るということも事実のようです。
このように考えるのは、クリニックに訪れる様々な患者さんの話を聞くと、結局のところ校長の決断でいろいろなことが決まってしまい、それをしないと困るのは児童生徒たちなので、先生方はやむを得ずその体制に従い、結果として先生方にしわ寄せが来るという構造です。
私は、教育関係の人間ではないので教育のシステムを変えようという意見を言うつもりはありませんし、そこに関わるつもりもありません。関わるとすれば、産業精神衛生という視点で、クリニックに受診せざるをえない先生方が出てしまう体制です。
この理由の一つは、先生方が忙しすぎるということもあると思います。私はこの3月まで早稲田大学教授をしていましたが、大学教授と小学校教諭がどちらが教育者として大切かという議論を考えると、これは非常に難しい問題だということもわかります。大学教授のほうが専門性は高いことは明らかですが、教育という視点での重要性についていえば、先生方が、余裕をもって教育に臨める体制をつくことはとても大事だとも思います。話を聞けば、やったことのないスポーツや音楽の顧問をすることになり、これでほぼ土日のすべてを取られて休みがなくなる。これに加えて、主任などの負荷が加わると、忙しさは相当なものになるようです。
文部科学省の「学校における労働安全衛生管理体制の整備のために」というリーフレットをみると、
○平成20年4月1日より、すべての学校において、医師による面接指導を実施することができる体制を整備することが求められている。
○週40時間を超える労働が月100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる教職員については、教職員の申出を受けて、遅滞なく、医師による面接指導を行う必要がある。
○上記に該当しない教職員でも、健康への配慮が必要な者については面接指導等を行うよう努める必要がある。
という記載があります。
このようなシステムは積極的に利用したほうが良いと思います。特に残業時間が超過していなくても、健康への配慮が必要で、産業医と面接することが望ましいという診断書を発行すれば、管理者は産業医による面接指導に務める必要があります。管理者がこれを無視して、労働者が健康を害すれば労災となり、管理者の責任も問われることになると思います。
一方、校長先生も同様に辛い立場にある場合も多くあると思います。実際、管理者の先生の患者さんを診察したこともあります。重要なのは、子どもたちが充分な教育を受けられる環境を確保するということだと思います。
今回の選挙でも、教育の無償化が叫ばれていましたが、教育費も大切ですが、教育現場の改善ももう一つ大切なことだと思います。これによって、教員だけでなく、子どもたちも余裕をもった教育が受けられるようになるわけですから。

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