2016年5月6日金曜日

都市部における精神科遠隔医療の可能性 (2) インターネットで配信される認知行動療法(iCBT)

INTERNET PSYCHOTHERAPY AND THE FUTURE OF PERSONALIZED TREATMENT
Gavin Andrews, A.O., M.D., F.R.C.Psych.1,2∗ and Alishia D. Williams, Ph.D.1,2
DEPRESSION AND ANXIETY 31:912–915 (2014)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/da.22302/pdf

先日書きました、スマホ診療に続いて、インターネットを用いた精神療法について調べてみましたが、海外の論文はそれなりにあるようです。比較的新しい、2014年の論文を読んでみましたので、紹介したいと思います。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学精神科のグループによる論文です。


これは、表記の論文とは別の
Cognitive Behavioral Therapy Online
というサイトにリンクした図です。
認知行動療法の仕組みが書かれています。
青(職場で批判される)⇒赤(私はダメだぁ)
⇒オレンジ(価値が無い・不安)⇒草色(人を避ける)
⇒緑(疲れやすい、食欲が無い)
こういったサイクルを断つために、認知行動療法によって
職場での批判⇒自分の課題がわかった
⇒課題を克服しよう
という風に認知を変えていく方法が
認知行動療法であると説明しています。
このようなトレーニングは、遠隔医療で
十分に機能すると思われます。

下記の抄録をみると、インターネット配信による認知行動療法については、あまり画一的になるということに対しては、幾分の注意が必要だということが示されているように思います。

このような認知行動療法のサイトはいくつかあり、うつ病に対する認知行動療法だけでなく、不眠症に対する認知行動療法も有効だと思います。更には、遠隔医療を組み合わせて、プログラムされたものの前後で遠隔診療を行うという事も可能だと思います。

先日も書きましたが、新しい医療に対して保守的な守りの立場を取るか、それともある程度のリスクを抱えながら新しいより時代にあった方法に挑戦するか、私は後者を試したいと思っています。

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抄録(拙訳)
インターネットで配信される認知行動療法(iCBT)は、最良の対面式の認知行動療法医療に受診するまでの様々な障害を克服するために開発された。iCBTには様々な利点がある。例えば、質の高い情報、アクセスのしやすさ、便利さ、また費用が患者さんにとっても医療機関にとっても安価であることである。 最近行われたメタ分析(これまでの研究を総合的に統計し直す研究手法)によれば、うつや不安に対してのiCBTは、コントロール群に比較して、非常に大きな効果量を持っている、すなわち効果がある、と判定されている。また、日常診療から得られたデータは、これらのプログラムの効果を示している。
一方、個々のの患者さんにの特徴に適合させた治療も、治療のアドヒアランス(患者さんの積極的治療参加)を上げていくための一つの方法になろう。しかしながら我々は、パーソナルメディシンという方法も、それぞれの患者さんの特徴や合併疾患もうつや不安の背景にある認知プロセルを考えるときには、必要になってくるのであろうと考える。


Internet-delivered cognitive behavioral therapy (iCBT) was developed to over-
come some of the barriers in accessing best practice face-to-face CBT. iCBT af-
fords many benefits, such as high fidelity, greater accessibility, convenience, and
reduced cost to patients and health-care systems. Recent meta-analyses of iCBT
for depressive and anxiety disorders demonstrate large effect size for superiority
of iCBT over control conditions (ES>.95; number needed to treat (NNT) = 2)
and data collected in routine practice supports the effectiveness of these programs.
Tailoring treatment to match patient variables may be one means to increase ad-
herence and optimize clinical outcomes. However, we propose that a “personalized
medicine” approach will require looking beyond patient characteristics and co-
morbidities to consideration of the cognitive processes that subserve depression and
anxiety symptomatology. Depression and Anxiety 31:912–915, 2014. C 2014
Wiley Periodicals, Inc.

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