2016年10月31日月曜日

尿酸値が冠動脈石灰化の進行に関与 (Medical Tribune記事)

尿酸値が冠動脈石灰化の進行に関与

第57回日本人間ドック学会学術大会



私は、尿酸値が高めです。これは家族性で父親も弟も高いのですが、実際の症状は、一度だけ腎結石と思われる痛みが出たことがありました。もう、10年以上前ですがその時はあまりに痛くて、夜中に病院に行き、痛みのために嘔吐しました。

先日、産業医の研修会で興味深い話を聞きました。
日本のビールはプリン体が少ないのだけれども、
外国のビールはプリン体が相変わらず高いので、
会議外駐在員がそういったビールを飲み続けると、
日本では大丈夫な人が高尿酸血症になり、
痛風発作を起こすケースが有るということでした。
これは、興味深いですね。
ということで、そういうことには二度となりたくないと思って、かなり節制して、現状では尿酸値は正常上限くらいになっています。ときに採血をすると、高めに出ることもありますが、発作はでていません。

しかし、尿酸値が高めだったときに、人間ドックでこれを指摘されるたびに、相談医に、痛風発作は起きないのだけれども、尿酸値が高いだけで問題があるのかということを聞きました。しかし、すべての主治医は、話を「痛風発作が起きる可能性が高いので気をつけろ」ということに回帰させて、私の質問である、発作が出なくても体にわるいことがあるのかということについて、まともに答えてくれた医者はいませんでした。

しかし、このMedical Tribuneの記事で、少しこの理解が進みました。やはり、尿酸値を高いままにしておくのは、あまり良くないようです。統計的には、冠動脈の石灰化に関与しているということでした。石灰化が進むと、心筋梗塞や狭心症などのリスクが高まると思われますが、このようなことはあまり知られていなかったので、人間ドックなどのビッグデータを使って、初めて明らかになることのようですね。

長年の疑問が、一つ解けたような気がします。

2016年10月23日日曜日

習慣的運動は真の万能薬 (Exercise is the Real Polypill) Physiologyの論文

Physiologyという、生理学の国際学術誌に表記のような論文があります。この論文(リンク)は、心血管障害の治療薬として、Polypillと俗に呼ばれている合剤が非常に効果があるものだけど、実際には習慣的な運動が、これにまさるものだということを示しています。


論文の主な部分は、心血管系の障害に対する、習慣的運動の治療的効果について書かれています。

私も、うつ病の運動療法の文献を幾つも調べる中で、どうしても運動の身体疾患への治療予防的効果についての部分を何度も何度も繰り返し読むことになるので、生活習慣病についての専門的な知識もどうしても身についてしまう、(好ましい)結果になっています。

この論文の中には、非常にアトラクティブな図が挿入されています。転載していますが、身体運動が2つの効果を脳にもたらしているように書かれています。一つは左の図に示してある、BDNF⇒trkB CREB⇒Neuroplasticityというもの。もう一つは、右の図に示してあるFNDCS⇒Iriscin⇒?Neurogenesisというものです。

左の図には、?がついていないのでこれは確実にエビデンスが集積されているものであると考えて良いと思います。BDNFは脳由来神経栄養因子と呼ばれている物質で、その名前通り脳から分泌されて神経に栄養を与える物質です。栄養を与えることによって、神経の再生が促進されるものです。この働きによって、うつ病の回復が起こるとも考えられています。また、エビデンスにはやや乏しい面もありますが、認知症に対しても良い効果がある可能性があります。

習慣的な身体運動が心や体に及ぼす影響は計り知れないものがあります。古代から、人は体を動かして生きる糧を手にしてきました。しかし現代では、コンピューターの前に座って操作をすることで、生きる糧を得ることが可能になってきました。しかし、この変化による代償も大きなものであるように思います。そのために、生きるためにあえて体を動かすことが大事になってきたとも考えられます。

この背景にある様々な生物学的メカニズムにつて詳細について、この論文は、Free Paperですので、興味ある方は是非原文をご参照ください。

2016年10月16日日曜日

AUDIT

AUDITというのは、アルコール依存症の自己評価に関する質問紙です。AUDITの文字に貼ったリンクは、国立病院機構久里浜医療センターへのものです。この久里浜は、依存症の専門医療機関で、アル中で困ったときには、久里浜へというようなイメージがあります。現在は、更に幅広く「インターネット依存」などについての専門的治療も行っています。

さて、AUDITは、産業医の講習会の中で、職場におけるアルコール依存症のところで紹介されていました。原典は、1992年に発表されたもののようです1)。

自分でもやってみましたが、7点でアルコール教育の必要なレベルだということでした。疲れたときなど、つい家でアルコールを飲みますが、だいたい1−2杯で食事を終えてそれ以上は飲まないことも多いです。また、週に3日位はアルコールを飲みません。これも、波があって、ほぼ飲まずに過ごす日が続くこともあれば、割りと飲んだりすることもあります。外で飲むことは、月に1−2度ですが、そういうときに多く飲んでしまうこともあります。

日本で行われた研究では12点以上が問題飲酒の、15点以上がアルコール依存症のcut-offポイントとなっているようです。まず、自分でやってみて自分の状況を知ってみるのが良いと思います。


1)  Babor TF, Fuente DL Jr, Saunders JB et al : AUDIT: The Alcohol Use Disorder Identification Test:
Guidance for Use in Primary Health Care. WHO, 1992

2016年10月10日月曜日

慶應医師会 産業医研修会

私は、日本医師会認定産業医なのですが、会社の嘱託産業医としての仕事はしていませんでした。前回この資格をとってから、何度か資格を維持するための講演会などには出ていますが、積極的に維持することをしていませんでした。5年経って、もう維持するのをやめようかとも考えたのですが、同僚の医師からは、ストレスチェックも始まり産業医としての仕事も増えると思うので、維持したほうが良いのではないかとアドバイスを受けました。

北里講堂もですが、この写真の予防医学教室の
建物には圧倒されました。いつまで使われるの
かはわかりませんが、道の反対側では、
平成30年竣工の新しい巨大な病棟が
建設中でした。
そこで、これから維持できる講習会を探したところ、慶應医師会産業医研修会がありました。場所は、慶應義塾大学医学部信濃町キャンパスです。このキャンパスは、明治時代から慶應義塾大学医学部があった場所ですが、私は、大昔に一度だけ医学部精神科に入局できるのかを問い合わせるために訪問したことがありました。しかし、そのときは、慶應に血縁者がいるのか、あるいは、推薦者がいるのかということを聞かれ、つながりのない人は受け入れられないというような答えをされた覚えがあります。(しかし、これは現在の慶応大学医学部精神科の体制とは全く異なっています。現在の慶応大学医学部精神科では、後期研修の医師を多く受け入れ、慶応大学卒業生だけでなく様々な大学の卒業生が一緒になって後期研修やその後の研究活動を行っているようです。)

さて、この慶應のキャンパスですが、その裏手にある北里講堂というところで講習会はありました。この建物が、歴史を感じさせる建造物です。そして更に歴史を感じさせるのが、講習会の一部が行われた写真にある予防医学教室建物で、古い時代の慶應義塾大学医学部信濃町キャンパスを彷彿とさせます。

産業医の研修会は、面白かったです。自分の専門外のところでは、肝疾患、腰痛などの対応の仕方、職場巡視、環境測定などの話が聞けました。最近は、精神科という専門分野の話も多く、職域におけるメンタルヘルスの話も多くありました。またストレスチェックの運用についても、講義がありました。

今後、私は産業医としての活動もしていこうと思っています。産業医は、実際の職場巡視も行い、患者さんとして見ていた人たちがどのような場所でどのような悩みをもっているのかを見ることもできると思います。それによって、精神科医としての幅も広がると確信しています。

講義の内容も興味深いものが色々あったので、トピックとしても取り上げてみようと思います。

2016年10月7日金曜日

Macへの回帰 (Return to Mac)

私は、ここのところ多分20年近くWindowsのユーザーでした。今も、Windowsのユーザーではあるのですが、実はそれ以前はMacユーザーでした。私が、最初に購入したのは、Mac IIxという機種です。多分、1989年のことだと思います。この機種は、日本では発売されていなかったと思います。カリフォルニアのComputer Atticという店で買ったのを覚えています。多分、このお店はもう無いんだろうと思います。Facebookにもしかしたらそうかもしれないというお店が出ていました。
https://www.facebook.com/pages/Computer-Attic/1414322708788703

Mac IIxです。本当にお世話になった良いコンピュータでした。


何れにしても、そこで多分60万円位する、Mac IIxを購入したわけです。その頃、私は睡眠脳波のコンピュータ分析の研究を一生懸命やっていたわけですが、分析のプログラムはその頃主流だった、NEC PC9801とC言語で作っていました。しかし、得られたデータをいろいろと分析するツールとしては、Appleのコンピュータに良いソフトウェアがたくさんあり、これが大変便利でしたのでそれを東京医科歯科大学の研究室でも使っていました。その頃、そういった自分のコンピュータも欲しいと思い、人の持っていない機種も良いと思った私は、アメリカへ学会で行くときに、スタンフォード大学のあるPalo Altoに滞在し、先に書いたComputer Atticに行き、そこでこのMac IIxを購入したわけです。その頃では、最高機種のMacでしたから、自分としてもとても満足でした。

実は、このアメリカへの学会旅行がきっかけで、アメリカへの留学が決まったのですが、それはまた別の機会に書きたいと思います。32歳の時だったと思います。

その後、私はこのMacを持ってアメリカに行き、カリフォルニア大学での研究生活を送りました。その時には、なぜかカリフォルニアにもかかわらず、研究室の周りはMS-DOSユーザーばかりで、私がMacを持っていることは瞬く間に他の研究室にも広まり、ちょっと見せてくれないかと人が集まってくるようなことがありました。

カリフォルニアという、Apple Computerのお膝元でもあり、かつ私が仕事をしていたMartinezという町は、AppleのあるCupertinoまでも、せいぜい車で1時間くらいのところなのですが、そんなところでアメリカ人が、Macを見せてくれと集まってきたのは、本当に不思議なことでした。

そんなことで、このMac IIxは私にとっては最初のMacであり、その後もCPUボードを入れ替えたりメモリーを増設したりして、性能アップを図り、日本に帰ってきてからもしばらくは使いました。

しかし、日本に帰ってきてからは、Windowsも機能が比較的よくなり、また日本に帰ってから勤め始めた、東京都精神医学総合研究所では、周りもWindowsを使う人たちが多くいたので、結局自分もWindowsを使い始めました。いつ頃だったんでしょうか。1996年くらいでしょうか。それ以来、私はずーっとWindowsを使い続けています。しかし、そう考えますと、このMac IIxは何と、7年間も使っていたということになります。この間は、私にとっては自分の睡眠障害の研究に没頭していた時期でもあり、今から考えると本当に懐かしく思います。

しかし、最近iPad Proを買ったことで、Apple Computerへの回帰志向が強まり、そしてとうとうMac Book Proを購入するに至りました。

20年ぶりに手にするMacの性能には驚かされるばかりです。私のMac IIxは、英語OSでしたが、「ことえり」を入れていたと思います。しかし、今の日本語フロントエンドプロセッサ−は全く違うものですね。「OS X El Capitan」というものですが、この変換機能についても驚きました。

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20151014/1066979/?rt=nocnt

多分、これからさらに20年ぶりに再会したMacの良さを発見する日々が続くのだろうと思います。