2015年12月29日火曜日

寝過ぎは早死にの原因となるか(同名のブログと睡眠時間について思うこと)

寝過ぎは早死にの原因となるか」というブログ(題名にリンクあり)にブックマークしてあったのを最近見つけて、そうだこの問題を一度論じてみようと思っていたのだと思い出し、読みなおしてみました。このブログは、まさに私がこの問題について考え始めた頃に思った疑問について取り上げてあり非常に興味深く読み、自分でも別の角度から論じても良いと思ったからです。
The Sleeping Gypsy
アンリ・ルソーの私の好きな絵です

そこで、ここにも取り上げられているDaniel Kripke先生の原典を読みなおしました。ごく簡単に説明しますと、この論文は平均睡眠時間が7時間位の人が最も寿命が長く、それより長く眠る人も、短く眠る人も寿命が短いということを示しています。ただ、有意差があるのは長く寝る方だけです。また、眠剤を使っている人も寿命に対して悪い影響があるという結果も出ています。

Mortality Associated With Sleep Duration and Insomnia
Daniel F. Kripke, MD; Lawrence Garfinkel, MA; Deborah L. Wingard, PhD; Melville R. Klauber, PhD; Matthew R. Marler, PhD
Arch Gen Psychiatry. 2002;59(2):131-136. doi:10.1001/archpsyc.59.2.131.

抄録の結論部分です
Conclusions  Patients can be reassured that short sleep and insomnia seem associated with little risk distinct from comorbidities. Slight risks associated with 8 or more hours of sleep and sleeping pill use need further study. Causality is unproven.

拙訳
短時間睡眠と不眠は、併存疾患とは区別して考えると、余り大きなリスクとはなっていないように思える。この点において、患者さんは安心して良いように思われる。8時間以上の睡眠と眠剤の使用に伴う僅かなリスクが観測されたが、これは、さらなる研究が必要であろう。これらの因果関係が証明はされていない。

Google Translation (参考)
患者は、短い睡眠と不眠が併存疾患と区別少しリスクと関連しているように見えることを安心することができます。睡眠と睡眠薬使用の8時間以上に関連する若干のリスクは、さらなる研究が必要です。因果関係は証明されていません。

このように、原典には睡眠時間と寿命については、大きな心配はいらないと書いてあります。したがって、この著者自身も睡眠時間と寿命との因果関係については更に詳細な検討が必要であり、早急な結論は誤った認識に繋がる可能性があるという立場だと思います。

さて、上記のブログの著者は、活性酸素など生物学的な立場から睡眠時間と寿命について論じています。これは、なかなか興味深い視点ですが、こういう視点もあるということで、では、どういう理由で長く寝ている人たちの寿命が僅かに短くなるのかについての、ほんとうの意味での「何が原因か」ということを示しているわけでもありませんし、このブログでも実際そうも述べています。こういった議論の中で上記ブログの著者は、日中の活動との関連について言及しており、共感するところです。

睡眠時間については、私はいつもスポーツと関連して2つの研究を示しています。
1.一つは、我々の大学院学生が行った研究で、長距離走選手の自発的に睡眠時間が、練習強度が強くなると一日9時間近くに長くなるということです。練習強度の低いオフ期は、むしろ昼寝をしたりする時間は多くあるのですが、選手は眠りません。

2.もう一つは、米国のCheri Mahが行った実験で、選手に長く睡眠を取らせたところ、一ヶ月半くらいに及ぶ期間、一日9時間近く眠るようになりました。その中で、スポーツパフォーマンスが向上したということが示されています。

これらは、寿命との関連ではありませんが、睡眠時間は日中の活動を支えるものであって、睡眠時間だけをコントロールすれば、寿命が伸びたり縮んだりするものではないのだという、基本的で、考えてみればごく当たり前の視点を再確認することが大切だということを意味しています。

健康についての考え方は、時に不安から短絡的な思考に走りがちです。そうではなく、本当に健康な生活をするためにはどうしたらよいかを、もっと巨視的な視点で考えることが大切であり、このような考えがほんとうの意味での良い健康教育、医療につながっていくというふうに考えています。

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