2015年1月30日金曜日

東京大学 駒場キャンパス

昨日、東京大学駒場キャンパスに行く機会がありました。私が、共同で研究指導をしている学生の博士論文公開審査会の審査員として参加するためです。

東京大学駒場キャンパスは、ここに教養学部があることで有名ですが、ここには大学院総合文化研究科もあります。この総合文化研究科は、様々な領域の人が集まっていて、実はスポーツ科学に関する一つの研究拠点にもなっています。私が親しくしている、首都大学東京の山内潤一郎先生や、同僚の広瀬統一先生なども、この東大大学院総合文化研究科の出身です。

駒場東大駅の真ん前に駒場キャンパスの門があります


この他にも、文化人類学や、心理学、社会学の分野の研究者なども集まっており、学際領域、境界領域の研究が盛んです。実は、私の高等学校時代からの友人で、現在は大阪大学コミュニケーションデザイン・センター招聘教授の松岡秀明君も、こちらで学位をとっているのではないかと思います。彼は、ブラジルの日系移民の文化について研究していました。

このように、私の知り合いを見渡しても面白い学問があふれているキャンパスですが、グランドではラクロス部が朝練習をしていたり、のんびりした大学キャンパスの佇まいでした。何か、学問の楽しさに触れたような、訪問でした。


2015年1月28日水曜日

2002年キューバ訪問 (1) 訪問の経緯

現在、オバマ政権がキューバとの国交に熱心です。実は、私はキューバに行ったことが有ります。あれは、たしか2002年の12月だったと思いますが、日本キューバ経済懇話会の一員としてキューバを訪れました。今から12年も前のことです。

私はその頃、東京都精神医学総合研究所に勤務していましたが、その時にキューバ神経科学センターのペドロ・バルデス教授と交流が有りました。このペドロ・バルデス教授は、脳波の周波数分析などについても研究をしていました。彼は、数理統計解析の関連で、国立統計数理研究所(統数研)との共同研究もしていました。そして、私も統数研と共同研究をしていて、その関係でつながりが出来たというわけです。

空から見た ハバナの郊外


経済懇話会は、日本とキューバとの経済的なつながりを促進する団体ですが、そこから科学技術に関連のある人にも訪問団として参加して欲しいという要請があり、私自身もキューバに行ってみたいと思って、参加することになりました。

キューバは遠い国です。直行便はありません。アメリカとは距離的には近いですが、直行の飛行機はないので、 成田⇒ロサンゼルス⇒メキシコシティー⇒ハバナ というふうに行った覚えがあります。メキシコシティーで一泊し、翌日の便でハバナ入りをしました。その時は、たしかプロペラ機で、キューバが見えてきて着陸する際には、うまく着陸できるか心配だった気がします。

オバマ政権のキューバが以降の進展などを見ながら、少しこの時のことも書いてみたいと思っています。

2015年1月26日月曜日

年をとると男性の方が早く朝型に

クリニックで、睡眠障害専門外来をしていますが、最近は様々なところで睡眠や不眠症についてお話する依頼を受けるようになりました。一方で、自分の話だけでなく、他の睡眠障害の専門家の先生のお話も積極的に聞くようにしています。睡眠の基本的な知識は、さほど変わりはしませんが、それぞれの先生方によって、話のポイントや、目の付け所が少しずつ違い、非常に参考になることも有ります。

先日内山真先生のお話を聞く機会が有りました。以前も書きましたが内山先生は現在日大医学部の教授で、私が東京医科歯科大学で睡眠研究を始めた時の医局の3年先輩です。睡眠研究を開始したころには、一緒に並んで座って、紙に書きだしたポリグラフ記録をめくりながら、1ページ1ページ、睡眠段階判定をし、どうしてそうなるのかをとても丁寧に教えて下さいました。私は、内山先生から多くを学んだと思っています。そういうこともあって、内山真先生のオンラインのご講演をみつけたので、聴いてみました。

Kaneita et al. 2005より引用しています


この中で、最も興味深かったのは、「朝型・夜型の発達・加齢変化」というトピックです。年をとると、だんだん生活が早寝早起き(朝型)になってくることはよく知られていますが、これに男女差が有るということをお話されていました。

内山先生ご自身がかかわられた、兼板先生の論文(J Epidemiol, 2005)のデータ(表)で、男性の方が早朝覚醒が、40代くらいからは多くなってくる、また、入眠困難が女性で50代から増えてくるというようなデータと、海外のデータ(Foster and Roenneberg, 2008)で、50代以降で男性が女性より行動の上で朝型になるという結果(就床と起床時刻の中間点が早い時刻に移動する)を示されて、50歳以降は男性の方が朝型になるということを話しておられました。

これは非常に面白いデータだと思いました。自分自身ではあまり実感はありません。私は、朝型夜型質問紙ではどちらかと言うと朝型ということですが、最近は、そんなに朝型でもありません。一方、家内は朝は5時半ころには起きます。そういう意味では、私の家は、これに当てはまらないので、このような印象は持っていなかったのですが、実際の調査データを示されると、確かにそうなのかもしれないと思いました。

このような知識は実際の診療場面でも活かしていこうと思います。久しぶりに、内山先生のご指導を受けました。

2015年1月23日金曜日

病院のなかの英会話

日経メディカルのCadetto.jpというところに、「病院のなかの英会話 第2版」という本が紹介されていました。私が診療を行っている、日暮里のあべクリニックにはぼちぼち外国の患者さんが見えます。多くの方は、日本語を話すことができますが、英語のほうが楽だという方も大勢居ます。そんな時に、私はなるべく英語で診療するようにしています。



あべクリニックでは電子カルテを使っていますが、英語で話をしながら、記録は日本語で取っていくわけです。最初は、少し混乱して時間がかかりましたが、今ではそれはさほど問題なくできるようになっています。

海外の方は、アメリカ人のほか、中東の方などもおられます。もともとイギリス領だった、インドやパキスタンは、英語が公用語の一つになっていて、多くの人達が英語での会話をします。そういった方たちは、やはり、日本語よりも英語のほうが、自分の気持ちを表現できるようです。

精神科の診療は、かなり、ニュアンスが重要なことを話す場合もあるので、相手に合わせるとすれば英語で話をすることは大切です。私の英語の能力は?と聞かれると、少し恥ずかしい面もありますが、私は若い頃にアメリカに留学していたことなども有り、2-3年前に学生が受けているので、自分も試してみたTOEICで950点の点数が取れましたので、そこそこは話すことができます。

診療の内容は、日本人の診療とは変わりません。生活の調整や、薬の説明など。また、本国での暮らしや、本国に帰った時の精神的な状態など、日本人の診療よりもより多岐にわたる情報を得なければならないことも有りますが、本人の生活の状態を知って、それを修正し、さらに症状に応じて薬を処方するということは同じことです。

このような外国語の診療は、専門にやっているクリニックも有ります。私が知っているのは、阿部裕先生が院長をしている、四谷ゆいクリニックです。ここでは、「英語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語を使用する患者さんは曜日を限定して診察いたします。」という、多文化外来を行っているようです。

2015年1月21日水曜日

睡眠の医学 (早稲田大学の講義)

以前にも睡眠文化について書きましたが、連携大学の学生を含めたすべての学部むけの講義として、「睡眠の医学」という講義を行っています。そろそろ、この講義が終了します。

この講義は、主には生物学的な意味での睡眠のメカニズムや、これに問題が起きた時の睡眠障害について学んでいます。受講開始時には、テレビや雑誌などである程度の知識は有るかもしれませんが、睡眠についてさほど詳細には知らなかった学生が、睡眠についての正しい知識を得て、これを日々の生活に生かしていけるようにするのが目的です。

試験も行いますが、その時には必ず、正常な若年者の睡眠図を書いてもらいます。これは、下図のようなものですが、これを理解することによって、様々な睡眠の側面について考察することが可能になると思っています。自分で何も見ずに書けるようになるというのは、「あ、こういうの、見たこと有る。」というのとは、理解度に大きな違いが有ります。何も見ずに、自分から書くというのは意外に大変なことなのです。これによって、睡眠に対する理解度は随分と上がると思います。




参考までに、講義の概要を示しておきます。この講義は、一般には公開されていませんが、そのうちに機会があれば、10回程度にまとめて、市民講座などでもやっても良いかもしれません。

9月30日 イントロダクション;  課題説明;  睡眠の定義
10月07日 睡眠研究の歴史
10月14日 ヒトの睡眠検査法; ノンレム睡眠とレム睡眠
10月21日 睡眠の神経生理学(睡眠を作る脳);動物の睡眠
10月28日 睡眠の発達と加齢;睡眠の制御(ホメオスタシスモデル)
11月04日 運動と睡眠; 睡眠とホルモン
11月11日 夢;  睡眠と記憶
11月18日 招聘講師講義: 鍛冶恵先生 睡眠文化論
11月25日 睡眠医学の臨床I 睡眠障害の分類、不眠症
12月02日 睡眠医学の臨床II 過眠症と睡眠時無呼吸症候群
12月09日 睡眠医学の臨床III 睡眠覚醒リズム障害、睡眠行動障害
12月16日 睡眠医学の臨床IV 睡眠障害の種類と診断、スポーツと睡眠 ::: 睡眠日誌提出
01月13日 睡眠医学の臨床V 日本人の睡眠・睡眠の社会学
01月20日 教場試験


2015年1月19日月曜日

大学 TOP 100 アジアランキング

スーパーグローバル大学の関連、国際担当になったことから、アジアの大学の、世界TOP100大学ランキングを調べてみました。


23 The University of Tokyo Japan
 さすが東大。今も東大に入るのは大変ですね。
26 National University of Singapore (NUS) Singapore
 華僑が、ビジネスをやる国と思っていましたが、ここのところのアカデミックレベルの上昇はすごいです
43 The University of Hong Kong Hong Kong
 香港も頑張ってますね。香港も中華人民共和国の一部とすると、中国の国際性はすごいですね。
44 Seoul National University Republic of Korea
 ソウル大学は、日本の東大みたいなものです。
45 Peking University China
 中国の威信をかけた大学ですね。学生の自由度も高いかもしれないが。毛沢東も北京大学の図書館で仕事をしたらしい。
50 Tsinghua University China
 この精華大学のことをあまり知らないのですが、良い大学のようですね。
52 Kyoto University Japan
 個人的には、高校生の頃京大へのあこがれは有りました。私は滋賀医科大学ですが、大学時代は京大にはよく行きました。非常にリベラルな大学で、東大よりも好きな大学ですね。
56 Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST) Republic of Korea
 よく知りません。
57 Hong Kong University of Science and Technology Hong Kong
 上記と合わせてこのような科学大学が上位に食い込んでいますね。東工大は、ちなみに、125位です。惜しい。
76 Nanyang Technological University Singapore
 これも科学大学。シンガポールも手強い。


まとめ
東大がアジアでは一番。
さらに順位を合計すると(数字は順位の合計)

日本 2校 75
中国 2校 95
香港 2校 100
韓国 2校 100
シンガポール 2校 102

ということで、それでも総合順位も日本が一番ですが、人口の規模を考えたり、香港が中国の一部であることや人口比を考えると、多様性をもった香港やシンガポールには既に抜かれていると言っても良いと思います。韓国は人口は半分以下なのに、よく頑張っているという感想です。

さて、これは欧米流の評価でのTOP100なのですが、大学人の中には、日本の大学がアメリカの大学のようにならなくても良いだろう、という議論をする人も居ます。私も、同感なのですが、一方で、では国際化にはどう日本流に対応するのかということになると、具体的なアイディアはありません。国際化というのは、日本のやり方だけで決めるわけにも行かないことだということが、ここで強く意識されます。そういう点で、香港やシンガポールに学ぶ点は多く有るようにも思いました。

2015年1月16日金曜日

ファーストネームの呼び方 (アメリカ、アジア)

私は、若いころ2年間カリフォルニアで過ごしました。。その時は、お互いにファーストネームで呼ぶのに、しばらく慣れませんでした。指導を受けた教授は、Irwin Feinbergという人で、今も86歳で健在ですが、Dr. Feinbergと呼ぶと、「Irwinと呼べ。」と、毎回注意されました。そのうちに、周りの同僚もそう呼んでいるので、だんだん慣れてきましたが、ある時、アメリカ人の同僚に、ファーストネームで年上の人を呼ぶのは、どうかということを聞いてみたことが有ります。すると、やはりその同僚(といっても、私よりも若く、その頃25歳位の研究助手)も、教授をファーストネームで呼ぶのは、ちょっと気が引けると言っていました。それから、カリフォルニアは特別フランクなんだという話もしていました。東海岸のアイビー・リーグの大学などは、もっと格式張っているというようなことです。



しかし、このような習慣に慣れてしまうと、ちょっと知り合いになった人ともファーストネームで呼び合い、かなり親しくなった気分になれるという面はあります。

アジアでは、どうでしょうか。私はインドに既に9回行くほどのインド好きですが、インドに行き始めた頃、Dr. Sunaoと呼ばれることが有ることに気づきました。もしかすると、Sunao Uchidaという欧米式の、ファーストネーム・ファミリーネームという呼び方を間違えて、Sunaoが苗字だと勘違いしているのかと思い、聞いてみるとよくわかって居るといいます。つまり、インドでは、ファーストネームで呼び合うことが多く、更にそこにDr.をつけて呼んだりするのが普通の事のようです。これは、カリフォルニアでファーストネームで呼び合うのとは、またニュアンスの違う響きなのかもしれません。

昨年末にタイに行った時に、また名前をどのように呼ぶのかについて新しい経験をしました。タイでも、ファーストネームで呼び合うことが多いようです。そして、それにDr.をつけて、Dr. Sunaoとか、Prof. Sunaoとかそんなふうに呼ぶようです。多分、タイとインドは似た習慣があるのだと思います。

ところで、台湾に行った時に思ったのですが、台湾や香港、更にはシンガポールなどは、英語のファーストネームを持った人が多いのに驚きます。私が連絡をとっていた台湾師範大学の方は、自分をJasonと呼んでいました。その名前はいつつけるんですか、と聞いた所、若い頃に気に入った名前とか、学校の英語の授業で使った名前とかを使うと言っていました。そのまま、自分の中国語の名前を使っても良いようにも思いましたが、どうして中国系の国ではこういう習慣になっているのか、不思議に思いました。


2015年1月14日水曜日

スポーツにおける薬物治療 処方と服薬指導 (拙著:共同執筆)

日本臨床スポーツ医学会 学術委員会の編集による、「スポーツにおける薬物治療 処方と服薬指導」が出版されました。これは、スポーツファーマシストの制度の制定にも関連して出版された本です。各章は、医師が疾患について、薬剤師が治療に使う薬物について、ペアを組んで解説しています。私は第11章精神疾患を担当しています。





アスリートへの処方は、常ドーピングへの注意が必要です。アスリートを診察する臨床家には、非常に役に立つ書籍だと思います。どうぞご購入ください。

目次
1編 スポーツと薬
 1章 スポーツが薬物動態に与える影響 
 2章 スポーツにおけるドーピング
 3章 サプリメントの捉え方

2編 主な疾患治療薬
 1章 感染症
 2章 循環器疾患
 3章 呼吸器疾患
 4章 内分泌疾患
 5章 代謝疾患
 6章 血液疾患
 7章 消化器疾患
 8章 腎疾患
 9章 アレルギー疾患・膠原病
 10章 神経・筋疾患
 11章 精神疾患
 12章 環境因子による疾患
 13章 整形外科疾患
 14章 皮膚科疾患
 15章 婦人科疾患
 16章 眼科
 17章 耳鼻咽喉科疾患
 18章 歯科・口腔外科疾患
 19章 腫瘍性疾患

2015年1月12日月曜日

注意欠如多動性障害とアスリート

下記の論文を読みました。内容的には、ADHDの特徴および治療全般の説明と、ADHDの治療としての薬物療法がドーピングに関わる薬剤なので、予めの書類提出(TUE)が必要というようなことです。興味深い点としては、2つありました。

  1. 薬物療法を継続している中で、運動とSudden Cardiac Death (SCD)の関わりについて。メチルフェニデートなどの薬物は、心拍数と血圧を有意に上昇させるということから、チームドクターは常にこのことに留意していなければならない。このような薬物を服用している選手については、特に心電図などのモニターをしていく必要がある。心臓突然死の可能性もわずかながらあるので、特に小児では、何らかの心疾患の既往が有るケースには、薬物を投与することは控えたほうが良い。
    しかし、そうでなければ、メチルフェニデートなどの薬物は、一般の心臓突然死の確立を著しく上昇させるわけではないので、この心配から薬物を中止したりするべきではない。
  2. ADHDに用いられる薬物が、禁止薬物リストに入っていることは、競技に対する集中力を高めて、競技力を向上させるドーピング薬としての役割があるわけで、これを、障害のない人が、競技力向上のために投与を希望することに対しては十分に注意しなければならない。この点に関しては、個人的にもADHDの診断が、客観的指標によって完全にできるわけでないので、今後このような処方が多くなった時に問題になる点であろうと思っています。

2015年1月9日金曜日

バランス・ディスク

家で大掃除をしていたら、バランスディスクというのを発見しました。そこで出してきて、使うことにしました。バランスディスクというのは、写真のようなもので、この上に立って、バランスをとるものです。出来る人は、片足や、閉眼もできるのでしょうが、私は両足立でトレーニングをしようと思っています。もうすぐ、ゼミでスキーに行くので、その準備も兼ねてです。筋力だけでは、スポーツはうまく行きません。神経系を鍛えることも大事ですね。

バランスディスク


これを見つけたので、加齢によって、バランスの能力がどのように変わるのかについて調べてみたところ、良い論文がありました。こういったバランス(平衡覚)に興味をもったのは、やはり若い時よりもバランスが悪いなぁと感じるからです。閉眼方足立なども、昔のようにじょうずではありません。

論文は[1]です。下記のURLにPDFファイルもあるので、原典も読めます。

この論文は、バランスを取りながら、他のことをやらせた時に、バランス取りがうまくいくかどうかについて、過去の論文をまとめて解説したものです。(総説論文)。このなかで、Bauerらの文献を引用して、バランスを崩させてそれを回復するときに、別の作業(声掛けの質問に応答する)をやらせた場合とそうでない場合を、若者、高齢者、フラつきの有る高齢者、で比較しています。

結果として、若者よりも高齢者のほうが、バランスを回復するのに時間がかかるということ、これはこれまで知られていたことだと思います。もう一つは、高齢者でも健常な場合は、バランスを取り戻すのは他のことをやっていても統計的には有意差がありません。しかし、一番右のフラつきの有る高齢者では、別の作業を同時にやらせると、バランスを回復するのにもっと時間がかかってしまいます。


さて、高齢者にみられるバランス能力の低下はトレーニングで回復するでしょうか。その文献も見たところ、[2]がありました。

この文献は、40人あまりの2つのグループをつくり、一つは、家であまり運動しない、もう一つは、バランストレーニングを含む、トレーニングプログラムをさせ、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月で結果を見たものです。この結果トレーニングに参加した群だけに、Berg Balance Score [3]が49.8から51.2という有意な改善が見られていました。

やはり、高齢者でもトレーニングすればバランスが良くなるということで、臨床にも役立ちそうです。自分も高齢者予備軍で、よりやる気が出ました。ちょっと調べた甲斐がありました。


【文献】
[1] Attention and the control of posture and gait: a review of an emerging area of research.
Gait Posture. 2002 Aug;16(1):1-14.
Woollacott M, Shumway-Cook A.
http://www.marianjoylibrary.org/Residency/Key%20References/documents/Ref32.pdf

[2] Journal of the American Geriatrics Society
Volume 50, Issue 12, 1 December 2002, Pages 1921-1928
Effects of exercise training on frailty in community-dwelling older adults: Results of a randomized, controlled trial  (Article)
Binder, E.F.ad , Schechtman, K.B.b, Ehsani, A.A.a, Steger-May, K.b, Brown, M.c, Sinacore, D.R.c, Yarasheski, K.E.a, Holloszy, J.O.a

[3] Berg Balance Scale: http://www.st-medica.com/2012/09/berg-balance-scale-bbs.html


2015年1月7日水曜日

こころの科学 特別企画 不眠症 「不眠症とはどんなものか」

こころの科学の2015年1月号は、不眠症の特集です。「不眠症とはどんなものか」というタイトルで、私が書いていますので、よろしかったら読んでみてください。




「はじめに」の部分をご紹介します。

 
はじめに
 不眠症とは、「眠れない」ということを示してはいるが、「眠れない」というだけだと誤解が生じる。「仕事が忙しくて眠れない」ということでは、睡眠が取れないということで睡眠不足ということにはなろうが、不眠症という病名はつかない。不眠症と言うためには、眠る時間が十分にあるのに眠れない状態でなければならない。したがって、不眠症を定義するとすれば「睡眠をとるのに十分な時間があるにもかかわらず、十分な睡眠をとることができない状態」とすることができよう。しかしながら、このような場合でも、日中に夜間眠れなかった分の睡眠を昼寝としてとって、その影響でまた夜間眠れないという状態になり、結果としては本人が非常に悩むという状況もありうる。そのような場合は、睡眠の長さという意味ではほぼ十分な睡眠をとっていても、夜間に他の人達が眠っている時間帯に眠ることができないということで、本人が悩んでいるわけである。また、夜間不眠のせいで日中の意欲も出ず、活動性も低下してしまう、あるいは集中を要する作業が仕事となっている人では、それが十分できないということもある。もし、日中の問題がなければ不眠症とはならないかもしれないが、それでも睡眠にこだわり悩む人はいる。

 このように、実際の臨床場面で出会う不眠患者の問題は、単純に睡眠の問題だけでなく日中の生活を含めた24時間の生活の問題として捉えるほうが良いことも多い。したがって、不眠症治療もこのような枠組みの中で、本人の睡眠に関連した問題を、起床時刻や就床時刻、日中の活動性や仕事のないようなど生活全般の様子や、性格傾向などを含めた本人の特質、職場の人間関係や家族関係などを含めた日中のストレス要因などを総合的に詳細に問診する必要がある。その上で、医師の側からは問題点をリストアップしながら、これを解決していくという方向性で行われることが良い。そう考えると、これは一般の臨床における全人的医療という視点と一致するわけで、いわば臨床活動においては当然の考え方とも言えよう。本稿ではこういった不眠症の特質を考えながら、不眠症の臨床について概説してみたい。

2015年1月5日月曜日

2015 箱根駅伝

早稲田大学スポーツ科学部に勤務していると、楽しいことが色々とあります。箱根駅伝もその一つ。私のゼミ学生が走ります。私のゼミに、最初に来た競走部の高岡弘が、竹澤健介をさそって、それから大迫傑など、超エリート選手が続いています。

今年も、良い選手が走りました。この中で、2区の高田、6区の三浦、10区の田口が私のゼミ生です。その他にも、つながりのある学生は多く、応援に力が入ります。

こういった学生を見ていると、教えられることが本当に多いです。私が少しでも力になれるなら、なんとしても応援しようと思います。

今年は、5位に終わりましたが、また来年に期待しましょう。

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選手一覧(日テレHPより引用)

区間氏名(フリガナ)学年出身高校公認最高タイム
10000m
(◇は5000m)
ハーフ
(★は20km)
1中村 信一郎ナカムラ シンイチロウ3香川・高松工芸高28.56.001.02.30
2高田 康暉タカダ コウキ3鹿児島実高28.49.591.02.02
3井戸 浩貴イド コウキ2兵庫・龍野高28.58.831.02.33
4平 和真タイラ カズマ2愛知・豊川工高29.07.121.03.12
5山本 修平ヤマモト シュウヘイ4愛知・時習館高28.14.491.02.14
6三浦 雅裕ミウラ マサヒロ3兵庫・西脇工高29.42.501.02.52
7武田 凜太郎タケダ リンタロウ2東京・早稲田実高29.04.201.03.28
8安井 雄一ヤスイ ユウイチ1千葉・市立船橋高◇14.09.391.03.30
9柳 利幸ヤナギ トシユキ3埼玉・早大本庄高28.48.501.03.04
10田口 大貴タグチ ダイキ4秋田高28.56.701.02.30

2015年1月1日木曜日

2015 あけましておめでとうございます

今年の年賀状です。

今年もよろしくお願い致します。  内田直


毎年、年賀状は年末ぎりぎりになってしまいます。12月に入ると、学生の卒論だの修論だの。それから、意外と出張があったりして忙しく過ごします。そのうちに、講義が終了し、少し楽になったなと思ったら、もう大晦日、お正月です。

しかし、年末は家族と過ごせて良い面も有ります。夏休みやこの年末は、家内と一緒に行動する時間も多くなり、普段気づかない家内の苦労に気づいたりすることも有ります。多分、向こうもそうなのかもしれませんが、いずれにしても休み期間で、割とゆっくり過ごせます。

今日のニューイヤー駅伝は、卒業生の伊藤和麻が走ります。

明日明後日は、箱根駅伝でも私の学生が走るので、応援に行きます。私のゼミ生は、

4年生 田口
3年生 高田
3年生 三浦
2年生 佐藤

などですが、この他に親しい学生も居るので、気持ちがこもります。

今年の抱負…。

「跳躍の年!」

どうでしょうか。