2014年12月31日水曜日

映画: マジック・イン・ムーンライト  ウディー・アレン監督 (2014)

東南アジアに行った飛行機で、表題の映画をみました。飛行機にのると、時差対策として起きていて良い時は必ず映画を見ますが、今回は東南アジアの日中の便で、時差も最大で2時間でしたので、時差ボケはありませんでした。それで、いろいろと映画を吟味したのですが、私はどうしても戦争ものとか選びがちなのですが、今回はウディー・アレン監督の新作ということで、これを見ました。



とてもおもしろかったです。なんというか、やはりひねりの効いたストーリーで、また人の深層心理にぐいっと突っ込むようなところもあって、さらには、こんなにさらっとしたことが現実に有るのかなと言うほどさらっとしたところがあって、なんともユーモラス。

科学万能主義のマジシャンと、若く美しい霊能者。この間に繰り広げられる駆け引きが、なんとも楽しい作品です。

公開前なのでこのくらいで…。

2014年12月29日月曜日

「STAP細胞論文に関する調査結果」についての記者会見

会見の一部をニコニコ動画で見ました。委員長の桂氏は、なかなか立派な人物のように思えます。

正直、この一連の流れについては、残念な気持ちです。私は、個人的には若い研究者を応援したい気持ちですが、この流れをみると、やはり研究に対する基本的な、真実に対して真摯に取り組むという構えは、この一連の作業の中には、なかったという気がします。エビデンスの前にストーリーがあって、それを作っていくための部品を、莫大な額の国税を使ってやったということになると思います。調査委員会は、良い仕事をしたとは思います。

何が良くなかったのか?自分なりに思うことは、

1.科学競争。真実を求めるのではなく、競争に勝つことを目的にしてしまったこと。
2.若い研究者を、教育することが十分にできていなかった。多分、大学院の頃から。
3.真摯に研究に取り組み、なかなか結果が出せないが、コツコツと積み上げている研究者でなく、いわば派手に振る舞う研究者が評価される構造

莫大な額の国税を使ったということは、本当に肝に銘じて欲しいと思います。我々も、科研費をとったら、それが自分の研究が良いからもらえたと思いがちですが、その国税を使って、広い意味では国民や世界の人のために研究をやらせてもらって居るんだという意識も、しっかりと同時に持つべきだと思いました。自分自身への、気持ちの引き締めです。

対岸の火事でなく、教育のレベルからこの事件を教訓として前に進めればと思います。


会見スケジュール

①「STAP細胞論文に関する調査結果について」 10時00分~11時30分予定
【調査委員会 出席者】
桂勲 調査委員長(情報・システム研究機構 理事、国立遺伝学研究所 所長)
五十嵐和彦 委員(東北大学大学院 教授)
伊藤武彦 委員(東京工業大学大学院 教授)
大森一志 委員(大森法律事務所 弁護士)
久保田健夫 委員(山梨大学大学院 教授)
五木田彬 委員(五木田・三浦法律事務所 弁護士)
米川博通 委員(東京都医学総合研究所 シニア研究員)

②「STAP細胞論文に関する調査結果を受けて」 11時45分~12時30分予定
【理化学研究所 出席者】
川合眞紀 理事
有信睦弘 理事
加賀屋悟 広報室長

2014年12月26日金曜日

浦和レッズ クラブハウス訪問


浦和レッズのチームドクター 関芳衛先生にお招きいただいて、浦和レッズのクラブハウスを訪問しました。私は、浦和レッズのサポーターです。以前は、「レディケットイーターズ」というサポータクラブを、中学校時代の友人たちと作っていて、埼玉スタジアム2002にも、レディケットイーターズのタイルが有るはずです。(今度、探して写真をとっておこう。)家にも何本も応援旗があります。

さいたま市大原のレッズクラブハウス


関先生とは、主には選手の睡眠についてのお話をしましたが、このような現場のスポーツドクターが、睡眠管理にも興味を持っていただけるのは本当にありがたいと思いました。スポーツにはトレーニングは勿論大事ですが、睡眠はそれを下から支えるとても大事な要素でも有ります。このことが理解され、睡眠の知識が、スポーツ界に広まっていくと良いと持っています。

レッズは、エアウィーヴとも契約しており、私もエアウィーヴの受託研究をしたことが有るということから、ご縁を感じました。また、睡眠に対する意識の高いクラブと再認識しました。

しかし、浦和レッズは当のリーグ戦では、今シーズンは最後に腰砕けになって、優勝を逃しました。シーズン後半で崩れてきたということも、良い体調を保つという意味で、睡眠の重要性を示唆するものかもしれません。

しかし、なんとかアジア・チャンピオンズリーグには出場権を得たそうです。その話にもなり、私も観戦に行ってみようかと思っています。


  • グループG
    1. ブリスベン・ロアー(オーストラリア)
    2. 浦和レッズ(日本)
    3. 水原三星ブルーウィングス(韓国)
    4. 東地区プレーオフ勝者4
      [北京国安(中国)/バンコク・グラス(タイ)/ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)/ベンガルルFC(インド)]
    試合日キックオフホームアウェイ試合会場
    2月25日(水)未定水原三星ブルーウィングス浦和レッズ未定
    3月4日(水)未定浦和レッズブリスベン・ロアー未定
    3月17日(火)未定東地区プレーオフ勝者4浦和レッズ未定
    4月8日(水)未定浦和レッズ東地区プレーオフ勝者4未定
    4月21日(火)未定浦和レッズ水原三星ブルーウィングス未定
    5月5日(火)未定ブリスベン・ロアー浦和レッズ未定

2014年12月24日水曜日

スポーツとスポーツ科学の国際化 (8) 台湾とタイを旅してみて

台湾(中華民国)は日本から見れば、沖縄の先の国ですが、東南アジアから見ると一番北の国とも言えるところです。台湾は、東南アジアというよりは、東アジアに所属しているとも言えますが、バンコクまで3時間の飛行を考えると、東南アジアからは随分と親しい国に思えます。

一方、バンコクでいくつかの大学を訪問したのですが、タイはインドシナ半島では最も先進的な国で、ASEANをリードしているように思いました。タイは、多分ラオスやミャンマーなどと今後は手を組みながら、経済文化圏を作っていくのではないでしょうか。

日本食レストランや日本製品があふれているところをみると、親日的でも有り、日本への期待は大きいと思いますが、日本語という点では、コミュニケーションは(一部の観光関連の人たちを除いて)難しいと思いました。共通語は何かとも考えますが、アジアの共通語は英語か中国語なのではないかと思います。しかし、中国語は、日本、韓国にとってはハンディーがありますし、そう考えるとやはり英語のコミュニケーションがここでも必要になるのではないでしょうか。

日本とこういった国々との関連は、今後強まっていくことは間違い無さそうですが、日本はそういった国々と、力を合わせていくという姿勢を持たなければいけないと思います。台湾は、非常に親日的で、その間に立って、大きな役割を果たしてくれるのではないかとも思います。

東南アジアとの関係は日本は良好であるように思います。多くの素晴らしい学生たちも、居ます。今後、様々な関連の中で相互の交流が発展することを期待していますし、自分自身もこれを推進していきたいと思っています。

2014年12月22日月曜日

ムエタイ

実はタイで夜時間が合ったので、ムエタイ(タイ式ボクシング、キックボクシング)を見に行きました。バンコクには、ムエタイのスタジアムが2つあり、一つはルンピニー、もうひとつはラジャダムナンという名のスタジアムです。これらのスタジアムでは同時に試合は行われないらしく、交代に行っているようでした。当日、ホテルのコンセルジュに聞くと、その日はラジャダムナン・スタジアムでの試合でした。入場料は、リングサイド席で2000バーツ、約8000円ということです。高いなぁとは思いましたが、せっかくなので同行の先生と一緒に行くことにしました。

試合は18時半からですが、19時ころに行けば良いということ、また食事は露天の食事は周りにあるけれども、レストランはないので、ホテルの周りで食事をするか、持っていったほうが良いと言われたので、食事をしてからタクシーで行くことにしました。

会場につくと、リングサイド席というのは観光客用で、そこには、日本人と白人と、お金持ちそうなタイ人しか居ませんでした。5ラウンド制で、全部で9試合ありましたが、どうも第7試合がメインイベントのようで、タイ語でなんかプログラムに書き加えてありました。タイ語は、見たことがある人は多いと思いますが、サンスクリットのような感じの文字で、全く読めません。文字は全部で40幾つかあるそうです。

ラジャダムナンスタジアムでの試合


リングサイド席の外側に、一般の席があり、その後ろに金網が張ってあって、更にもう一区画席があります。これらの席は、タイの人たち用で、自分たちもうんと慣れていれば行けるのかもしれませんが、とにかく博打用という感じでした。一人、1000バーツ位あるいは、もっとかけているのか、とにかく相当熱狂します。

試合は、第1ラウンド第2ラウンドはまあ流して、第3ラウンド第4ラウンドになると相当熱くなってきます。これで、自分が応援する選手のキックに合わせて、イー、イーという掛け声を言うのですが、自分にはイーと聞こえるこの意味はなにか分かりません。

何試合かはOKでしたが、なかなかの迫力でした。というよりも、博打をやっているオヤジ達の勢いがすごいので、圧倒されました。

タイのスポーツ文化に触れた一夜でした。

2014年12月19日金曜日

スポーツとスポーツ科学の国際化 (7) タイ

バンコックでは、2つの大学の先生方と交流をしました。タイのスポーツ科学はまだ黎明期だと思います。しかし、私が訪問した2つのトップ大学の教育レベルは高いように思います。今後、早稲田大学のスポーツ科学学術院が国際化していく中で、タイとの交流は重要な一になっていく可能性があると思いました。

タイは、2000年にアジア睡眠学会で来たことが有ります。14年後の再訪ですが、さほど大きな違いは感じられませんでした。人々は非常にフレンドリーです。しかし、英語は思ったほど街では通じませんでした。そういうものかなと思いますが、私はもっと英語が通じるのかと思っていました。

しかし、アカデミックなレベルの高い人は、英語の教養が有り、多くの人がアメリカやイギリスの博士課程を卒業しています。今後は、もっと多くの人が、日本と交流する仕組みを作っていく必要があると感じる訪問でした。

12月の気候は良好です。日本では雪が降っていると着いて、この時期にタイに来てよかったと思いました。帰ったら風邪を引かないように気をつけたいと思います。

2014年12月18日木曜日

新しい睡眠薬 (6) ベルソムラ(スボレキサント) 若年者の日中の眠気

未だ、少数例の経験しかありませんが、日中の眠気について気づいた症例があったので、ごく簡単に報告したいと思います。いずれも若年者で、高校生から20代前半くらいの人たちです。あくまでも少数例なので一般化はできないと思いますが、朝だけでなく日中の眠気が強いので、服用を中止したというケースが有りました。

オレキシンの作用の度合いは勿論人によって違う可能性がありますが、年令によっても違うかもしれません。また、これらの症例に注意欠如多動性障害(ADHD)を疑われるものが入っていたので、もともとノルアドレナリン系の作用が弱めであるところに、ノルアドレナリンの促進因子であるオレキシンをブロックしてしまうと日中の眠気が一段と強くなるということも有るかもしれません。これは病態生理による作用の違いということになるかも知れません。

以前から思っていることですが、例えばメチルフェニデートはADHDの治療薬でもあり、ナルコレプシーという過眠症の治療薬でもあるので、これはたまたまそうであるのではなく、日中の眠気というキーワードで何らかのメカニズムが繋がる部分があるのではないかとも思います。つまりADHDは、睡眠について、病態を合わせて考えた方が良いかも知れないと言うことです。

いずれにしても、何度も言いますが、まだ少数例なので、確かなことは言えません。しかしこの点を頭に置きながら、常に慎重に患者さんへの説明を丁寧にしながら、用いていくべき薬物であると思います。

2014年12月15日月曜日

スポーツとスポーツ科学の国際化 (6) 台湾

大学の仕事で台湾に来ています。台湾は3回めですが、1回めは約30年前、2回目は確か2年前の秋、アジア睡眠学会で来ました。2年前に来た時も思いましたが、台湾は本当に親日的で、とても嬉しく思います。こういった隣国と仲良くしていくことは、結局のところ東アジアの発展につながり、そして東アジアの人々がそれぞれの地域の独自性を保ちながら、ともに発展していくことにつながっていくと思います。日本は、台湾が日本に対するほど台湾への親和性を強く意識していない麺があるかもしれませんが、私は、スポーツ科学の分野で、台湾としっかりと手を結ぶことが次の世代への大きな資産になるように思いました。



食事も美味しいです。近所の普通の台湾食堂で食べましたが、一緒に来た同僚の先生と結構楽しめました。人々はとてもフレンドリーです。テーブルに話をしに来るおばちゃんも居れば、いろいろと世話をしてくれるおじさんもいます。台湾ビールと、台湾料理でとても楽しめました。


2014年12月12日金曜日

新しい睡眠薬 (5) ベルソムラ(スボレキサント)を臨床で使ってみて。

スボレキサントが発売されて二週間ほどですが、良い印象を持っています。様々な患者さんに用いました。スボレキサントは、就寝前に服用することとなっていて、だいたい30分くらい前までには飲むように指導がされています。しかしながら、スボレキサントの作用機序は、オレキシン受容体へスボレキサントが結合し、その結合がノルアドレナリンなどの神経伝達物質への神経活動の促進をブロックし、その結果として眠気が出るというものです。そう考えると、これまで使われてきた、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が、直接的に脳に有る神経細胞の活動性を全般的に下げるというメカニズムとは異なっています。ベンゾジアゼピンの一段階の作用に比べ、スボレキサントが二段構えの作用であることを考えると、作用が開始するのに服用してから、より時間がかかるのではないかと、私は考えています。

これまで、患者さんには、就寝時刻の1時間半程度早めに飲んで、どのくらいで眠くなるのかの時間を教えてくださいとお話してあります。これまで、まだ少数例ですが、服用直後はほぼ眠気は出ないといいます。しかし、だいたい1時間から1時間半くらい経つと、眠気が出てきてこのタイミングで布団に入ると、自然に眠れるという話を多く聞きます。また、中途覚醒があっても、また再入眠しやすい、ということもだいたい共通した印象であるようです。

このような、投与前の説明は大変意味があります。これまで飲んでいた睡眠薬とは違う働き方をするけれども、自然な睡眠を導入するということを丁寧に説明することで、患者さん自身も、使うタイミングを自分で探すという能動的な姿勢になります。

副作用としては、朝は眠気が有る、ちょっと起きにくいというものもあります。しかし、おきられないということはないということです。

これまでの少数例の印象では、

1.少し早めに飲んだほうが良い。
2.中途覚醒に対しては、良い効果がある。
3.朝の眠気は多少あるので、それが強い場合は、より早めに飲むか、15mgの服用にする。

などのことが良さそうに思っています。

2014年12月10日水曜日

睡眠時無呼吸症候群の口腔内装具(マウスピース)

滋賀医大の宮崎先生が中心になっている、睡眠指導士の講習会で話をした時に、赤坂で歯科のクリニックをやっておられる古畑先生という方にお会いしました。古畑先生は、睡眠時無呼吸症候群の大家で、歯科の領域で活躍しておられます。

古畑先生とお会いして話を伺ったところ、シドニー大学で開発された、睡眠時無呼吸症候群用の歯科装具の具合が非常に良いということでした。私は、簡易型で測定したところ、無呼吸低呼吸指数が9程度の軽症の睡眠時無呼吸が有ることはわかっていましたので、運動して減量にトライしたり、横向きねをするようにしたりしていました。そのことを古畑先生にお話したところ、この装具を作ってくださるというのでお願いしました。先日、この口腔内装具(マウスピース)ができて、しばらく使ってみましたのでその感想です。製品は、ソムノデントとう名称のものです。

私のマウスピース(洗ってあります)

初日は、随分と気になりました。夜中に起きるたびに、口になにか入っているなぁという感じで、その上に下顎が前に引っ張られるので、朝起きた時に、顎の関節に違和感も有りました。二日目は、大分楽でしたが、明け方起きた時に外してしまいました。三日目も明け方外しましたが、気にならずよく眠れた気がします。四日目からは、朝起きるまでつけられるようになりましたし、顎の違和感もあまりありません。

睡眠は、確実に改善しています。朝、スッキリと早くおきられるので、妻も驚いていました。睡眠の質がやはり良いようで、日中の眠気も、今まであるとは思っていませんでしたが、随分とスッキリした感じもあります。

以前、読んだ文献では、正常な人でもCPAPをすると、うつ状態が改善するとういものがありました。これを考えると、睡眠時の呼吸をきちんと管理することが、本当に日中の精神状態を改善するんだなぁという気がします。

この口腔内装具は、CPAPの機械に比べて小さく持ち歩けるので、出張などにも持っていけます。とても便利なので、毎日使うつもりです。畑中先生には本当に感謝しています。

この装具は、自費診療の範囲ですが、畑中先生のクリニックでは保険診療でカバーされるものも取り扱っています。

軽症の睡眠時無呼吸の患者さんには、是非薦めたいと思っています。

2014年12月8日月曜日

ラグビー早明戦

ここのところ、忙しくてあまりスポーツの試合を見に行けませんでしたが、今年は秩父宮ラグビー場開催となった、ラグビー早明戦を久しぶりに見に行きました。昔、今はNECに居る権丈太郎がゼミ生だった頃は、よくラグビーを見に行ったが、今はラグビー部のゼミ生もいないので、最近はしばらくご無沙汰だったということもあります。

5分ほど遅れて入っていったのですが、そうしたら既に早稲田はワントライ入れられていて、ありゃっという感じでした。席は、メインスタンドの良い所で、全体を見渡せる良い位置でした。



















しかし、その後の展開はなかな良い展開で、まもなく逆転。その後も、明治の良い時間帯は有りましたが、概して早稲田大学が優勢で逃げ切りました。最後の最後にワントライ決められたのは、ちょっと残念でしたが、試合後、都の西北を歌って、気分よく帰宅しました。

早稲田大学   明治大学
37      24

2014年12月5日金曜日

向田邦子さんのこと (2)

向田邦子さんについて調べてみると、向田さんは、飛行機事故でなくなっているようです。享年51歳ということなので、私よりも若い年齢でなくなっています。非常に惜しい人をなくしたという気がします。

私が読んだ本は、「父の詫び状」ですが、これは向田さんのご家庭の様子やご家庭に関連した様々エピソードをその鋭い感性のもとに書いておられる作品です。向田さんのお父様は保険関連の会社で、コネもない中で努力され非常に出世されたようです。しかし、家庭ではワンマンであったと書いています。向田さんのご家庭は、ご両親と妹さんと弟さん、そして父方のご祖母様が済んでおられたようですが、このご祖母様は、いわゆるシングルマザーだったようです。かなり自由奔放な方であったようですが、この点については感受性の強い向田さんが、様々な面白い描写をしています。人生を自由に生きて、非常に楽しんだ方のようですが、向田さんが子供の頃に浦島太郎の話を聞かせた際に、最後の部分で、玉手箱を開けて「白髪のおばあさんになった」と(多分)言い違えた部分があって、それを向田さんがおじいさんでしょと訂正されたようですが、その時にお祖母様は呆とされていて、答えなかったそうです。それを向田さんは、自由奔放に生きて年をとったら、知らないうちに白髪の年令になってしまった自分と重ね合わせたのではないか、というような考察をされています。

また、お父様も、かなりくせのある方だったようです。会社では、常に気を配り上司には、平身低頭の態度で仕事をしていたように書かれています。一方、自宅では相当なワンマンで、向田さんのお母さんを常に叱り飛ばすようなことが多かったようです。ただ、そこに愛情がなかった言うことではないく、そういった態度の節々に醸しだされる、愛情を向田さんも、そしてお母さんも、充分に感じ取っていた節はあります。

さて、向田さんは、自分のエピソードについても様々なことにふれていますが、計画を順序立ててやるのがものすごく不得意、やらなくてはならないことを、先送りすることが多い、仕事がどうしてもぎりぎりになってしまう、などの自分の性分が、この随筆のここそこに書かれています。このような特徴を見て、診断をするのも、気恥ずかしい思いですが、向田邦子さんのように、このような特徴を併せ持つ人が、きらめく才能を持っていることが多いのも間違のない事実だと思います。

自由奔放で面白おかしく、しかし、なかなかきちんとはやりにくい、しかし、出来上がったものを見れば、本当に光り輝く魅力のあるもの、そういう人たちがうまく社会の中で成功してくれると良いと、常日頃の仕事の中でも思ってしまいます。


2014年12月3日水曜日

DSM5 (5) Hanah Deckerの書いたDSMの歴史 解説 - その1

以前にブログに書いた、Hanah DeckerによるDSM(米国精神医学会による診断基準)の歴史についての短いコラムを紹介したいと思います。このコラムは、短いながらこれまでの米国の精神科診断基準DSM(診断と統計マニュアル)についてのオーバービューをするには非常に良い文章です。DSM-5に対しては、批判的なバイアスがあるとは思います。

Mad in Americaというサイトのコラムなので、英文を読むのであれば原文を読まれるのが良いと思います。ここでは、翻訳は著作権上の問題があるでしょうから、内容を紹介しながらコメントするように致します。

原文タイトル:
Why the Fuss Over the DSM-5, When Did the DSM Start to Matter, & For How Long Will it Continue to?
Hannah S. Decker
June 6, 2013

Fuss overという単語の意味を知らなかったのですが、「大騒ぎをしておせっかいを焼く」というような意味のようです。DSM-5はいろいろな意味で物議を醸していて、この問題は精神科医として非常に興味深いので、この問題をフォローしながら勉強しているところです。

この文章の最初の部分に「どうしてRobert Spitzerは、2007年という早い時期に、この編集に関わる秘密主義に抗議したのか?」と書かれています。私のアメリカの恩師のFeinberg先生が、DSM-5について色々と話されていたのは、あれは、2007年よりは後だったと思いますが、編集を始めたかなり初期から、編集方針に対して、批判が有ったことが判ります。また、Allan Frances(DSM IVのエディター)が、2009年にアメリカ精神医学会(APA)がDSM-5のゴールを発表した際に批判的であったこと、そして、彼を含め多くの精神医学者が、なぜ”Medicalization of Normality”という点でのDSM-5の批判をしたのか、という問が書かれています。

Medicalization of Normalityとは、正常の医療化とでも訳すのがよいでしょうか。つまり、病気でもない人を病気にしてしまって、治療する。そうすれば、医療のマーケットは大きくなり、医療全体が儲かるということです。

このようなことに関連して、DSM-5への批判として2つの事を述べています。

ひとつは、アメリカの保険制度として、病院での医療に対する保険の支払は、現場の医者が何という診断をつけるかによって、保険でカバーされる推奨すべき治療法が決まってくるということで、患者も自分の診断に非常に注意深くなるということ。

もう一つは、DSMがアメリカだけでなく、海外の言語にも訳されて、DSMによる診断は米国だけでなく世界中の人たちの生活に影響をあたえるということが書いてあります。これは、この診断によって、例えば障害者枠の雇用が可能になるかどうかや、子どもたちがどのような教育を受ける方決まってくるというようなことを示しているようです。確かに、日本でも障害者雇用の枠は広がっていて、職を求めるために、障害者の認定を受けようと積極的に考える患者さんも増えているように思います。このように、精神障害のある人達の社会への進出が増えることは、好ましいと思いますが、DSM-5がこれに影響をあたえるということは、有るのだと思います。それは、確かに注意しておくべき一面である気がします。(続く)


2014年12月1日月曜日

睡眠は、年をとると本当に短くなりますか? 読売Online(日本語版、英語版)で紹介されました。

以前、このブログに書いた、睡眠は、年をとると本当に短くなりますか?について、このレター論文を紹介する私のコラムが、読売新聞のYomiuri Onlineに掲載されました。日本語版、英語版の両方なので、広く読んで頂けるとと思い、嬉しく思っています。

もしよろしければ、御覧ください。


日本語版へのリンク

英語版へのリンク