2014年10月10日金曜日

抗NMDA受容体脳炎

インドで行われた、アジア睡眠学会でご一緒させていただいた、秋田大学の神林崇先生が抗NMDA受容体脳炎について研究をされているという話を、伺いました。この疾患については、私はあまり詳しくなかったのですが、神林先生が資料を送って下さり、少し勉強しました。

NMDAは、神経伝達物質で、神経細胞の様々な情報伝達に関与するものです。NMDAの刺激を受けて、情報を次の細胞に伝達する役目をもっているのが、NMDA受容体です。

この疾患は、大きなくくりでは自己免疫疾患に入ると思います。症例の中のある割合の人には、奇形腫という腫瘍が有り、この腫瘍を排除するための抗体が体内にできます。この抗体が、正常に機能している脳のNMDA受容体も攻撃するために、脳炎となって正常な脳機能が障害されるというものです。

この疾患は、精神症状を呈するために、精神科で取り扱うことが多い疾患です。神林先生から頂いた文献(Jpn J Gen Hosp Psychiatry Vol 24 No1 p40)によれば、

「典型的な経過として、頭痛、発熱、易疲労感など非特異的な感冒様症状が当初認められることが多い。その後、奇異行動、見当識障害、困惑、妄想、幻視や幻聴、記銘力低下などの症状を呈する。この、急激に発症する非定型病像のため、当初は精神疾患と判断されて入院に至ることが多い。その後、病期が進行し、けいれん、自律神経症状、ジスキネジア、意識レベルの低下などが認められるようになる。」

ということです。脳炎ですので早期に診断して治療する必要がある疾患です。時に、統合失調症の急性発症と誤られることもあるかもしれません。

一方で、経過の中で軽快したり再燃したりする場合もあるようで、Wikipediaなどをみると、昔は悪魔憑きと考えられていたなどとも書いてあります。

治療としては、もし奇形腫などあればこの切除。また、免疫学的治療としてはステロイドのパルス療法などを用いるようですが、私自身は経験がありませんでした。

このような疾患は、精神科の外来に来る患者さんの中に、居る可能性があるので、少しでも定型的な統合失調症と異なる経過や、脳炎を疑われるような症状があった場合には、診断の選択肢として頭においておくべきものでしょう。


7 件のコメント:

  1. 私の8才の娘が2016年3月に発症しましたが、精神異常はなく、突然激しい頭痛を3/5に訴え、3/6夜間診療では、嘔吐下痢症と診断され(下痢も発熱も無かったが)、翌日小児科に受診し、紹介状を持って日赤に3/7昼には入院し3/13朝から意識不明となり経過観察され、3/14(月)に脳症確定し、原因が分からないままステロイドパルス療法等を直ぐに行い、そのまま寝たきりを5/7まで続け、5/8以降~意識が覚醒し、5/28に卵巣奇形腫がMRIで見つけられ(3/14と5/25のエコーでは発見できず)、6/15右側卵巣奇形を全摘出して、現在は普通学級に復学中。
    意識が覚醒し出した頃から精神異常が出現し(主に暴力)、現在は少しずつ収まって来ています。

    初期の精神異常が見られなかっただけで、他の症状は全てこの坑NMDA受容体脳炎の症状が出ていました。

    最初に精神異常が無いものあると言う事も考慮する余地ありです。

    当初からこの脳症を疑ったのに、坑NMDA受容体脳炎検査には、4/1以降静岡の大学に依頼し、結果が出たのは9/6頃でした。
    何故、他は早い検査結果が得られたのか、何故、私の娘の結果は遅かったのかも疑問でした。

    この病気を疑ったなら、何処に検査依頼をするのがベストなのか、エコー検査だけでは写らないケースがある事も明記して欲しい。
    ちなみに、4/7にCT検査をお願いしたが、被爆すると請け合って貰えなかったのも残念でした

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  2. みぃ様

    お嬢様のケースについて、書き込みをしていただき、大変ありがとうございました。とても貴重なコメントだと思います。経験を共有させていただきます。

    医師が知るべき情報として提案されている点は、

    1.初期に精神症状を呈さず、突然の激しい頭痛で発症し、意識レベルの低下から昏睡となる経過があること。
    2.腹部超音波検査では、奇形腫が描出されない場合がある。このケースでは、MRIにより発見できた。
    3.抗NMDA受容体抗体検査に時間がかかる。(少なくともこのケースでは。)

    さて、最も重要なところでは、この疾患を疑ったらどこに確定診断を依頼するのが良いかということですが、これは医者の仕事だとも思います。

    例えば、インターネットで調べると、北里大学神経内科の先生が論文を書いています。
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/49/11/49_11_774/_pdf

    金沢医科大学総合医学研究所の方も、研究されているようです。
    https://www.cosmic-jpn.co.jp/lecture/?confirm=ok&mca=&ca=&id=1457482639-683123

    また、私がブログに書いた、神林先生は、非常に優秀な臨床家でもあるので、適切に対応してくれる方だとも思います。

    このような研究をされている先生は、この疾患についての知識は十分にあると思われるので、ケースについての問い合わせをすれば、適切な指示をしてくれるように思います。ただ、自宅の場所から遠いなどのこともあり、専門家が必ずしも近くにいないときには、家族だけではどうしたらよいかわからないということもあるかもしれません。また、医師も全く知らない先生に連絡をとることは躊躇される面もあるかもしれません。

    他のエントリーにもある遠隔医療は、こういったときにも役に立つ方法ではないかと思います。国内にいいる専門家へのコンサルトが、遠隔医療相談という形で、簡単にできる仕組みがあれば、適切な対応がもっとはやくできていたかもしれません。

    抗NMDA受容体脳炎にかぎらず、こういった診断の難しい疾患についての情報を早く得られるような仕組みは、今後取り組んでいかなくれはならない課題だとも思いました。

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  3. 内田先生

    親切なご回答をありがとうございます。

    私の娘は、3/23には寝た切り宣告に近いコメント
    もされたのですが、幸ににも現在は性格が変貌し
    攻撃的にはなりましたが、元気に学校でやれてる
    のはありがたく幸せを強く感じます。

    坑NMDA受容体脳炎と早期に診断されませんでした
    が、(早く奇形腫を摘出して欲しかったが、それは
    それ…。)ステロイドパルス療法と献血製剤の免疫
    療法以外の薬は、ほとんど使用しなかった事が幸運
    の様に思います。

    追記して、後にこれが役に立つならと思いコメント
    させて頂きます


    娘は、他の友達と比べ小柄なタイプで、発達も遅い
    タイプでした。
    入院して2ヶ月で、体重の1/6減少(25➡19キロ)
    してたのに、5月初旬から胸が膨らみ始め、毛深く
    なりました。
    私は医師や看護師さんにも、ホルモンバランスが
    狂っているから、奇形腫がある、人の組織のある
    やつと訴えていました。
    目で見える変化を個人差と処理せずに見逃さないで
    病気と結び付けて検討の余地ありです。


    それから、4月下旬に、瞼を開け放しが数日間続
    いていました。目が充血してたのですが、(花粉症
    かと勝手に思っていました)5/10まで治療せずに
    いました。
    これが、後に乾燥による角膜が剥がれて、新しい
    角膜に貼り付いて居たことが判明しました。

    目が開け放しが続くと、角膜が剥がれる事がある。

    目を開けないのではなくて、開けられない状態
    だった。

    こんなケースもあると明記して欲しいです。


    それから、娘は、双子家系なのです(母親である
    私が双子、親戚にも双子が多数いる)が、卵巣奇形
    腫は双子が母親の胎内で分裂をしている時に、片方
    が発達出来ずに娘に吸収されてできた可能性はある
    のでしょうか?

    それから、予防接種を受けると翌日以降に発熱を
    したり、ヒキツケたりしたのも 関係があるので
    しょうか?

    双子家系や予防接種で副反応が出やすい子は、
    卵巣奇形腫の確率が高いのでしょうか?

    こんな事がこの坑NMDA受容体脳炎に、少しでも
    関係があるのなら、娘と同じ育歴のある子ども
    は、この脳炎の可能性を知らせてあげる事が可能に
    なるのであれば、発病した時の初動医療に手助けに
    なるのなら、娘の症例を次に役立てるなら嬉しい
    です。
    脳炎を発病する前に、卵巣奇形腫を発見できるの
    なら、更に嬉しいです。

    本当に残酷な迄に、娘や私たち家族をドン底に
    何度も陥れるこの脳炎が憎いです。
    命が助かった後も、精神異常やら、人格の変貌に
    苦しめられ、絶望を何度も味わっています。

    それでも、今は、生きてくれる事に感謝していま
    す。4/1から主治医になって下さった今の主治医
    には心から感謝しています。
    ひとつひとつの言葉が、温かくて闘病中も現在も
    救われています

    沢山の病気の中から、診断し治療する事は、本当に大変な事だと実感しました。

    少ない症例の病気なら、私は私にできる事を何かに役立てる事があるならしたいです。


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  4. 内田先生

    親切なご回答をありがとうございます。

    私の娘は、3/23には寝た切り宣告に近いコメント
    もされたのですが、幸ににも現在は性格が変貌し
    攻撃的にはなりましたが、元気に学校でやれてる
    のはありがたく幸せを強く感じます。

    坑NMDA受容体脳炎と早期に診断されませんでした
    が、(早く奇形腫を摘出して欲しかったが、それは
    それ…。)ステロイドパルス療法と献血製剤の免疫
    療法以外の薬は、ほとんど使用しなかった事が幸運
    の様に思います。

    追記して、後にこれが役に立つならと思いコメント
    させて頂きます


    娘は、他の友達と比べ小柄なタイプで、発達も遅い
    タイプでした。
    入院して2ヶ月で、体重の1/6減少(25➡19キロ)
    してたのに、5月初旬から胸が膨らみ始め、毛深く
    なりました。
    私は医師や看護師さんにも、ホルモンバランスが
    狂っているから、奇形腫がある、人の組織のある
    やつと訴えていました。
    目で見える変化を個人差と処理せずに見逃さないで
    病気と結び付けて検討の余地ありです。


    それから、4月下旬に、瞼を開け放しが数日間続
    いていました。目が充血してたのですが、(花粉症
    かと勝手に思っていました)5/10まで治療せずに
    いました。
    これが、後に乾燥による角膜が剥がれて、新しい
    角膜に貼り付いて居たことが判明しました。

    目が開け放しが続くと、角膜が剥がれる事がある。

    目を開けないのではなくて、開けられない状態
    だった。

    こんなケースもあると明記して欲しいです。


    それから、娘は、双子家系なのです(母親である
    私が双子、親戚にも双子が多数いる)が、卵巣奇形
    腫は双子が母親の胎内で分裂をしている時に、片方
    が発達出来ずに娘に吸収されてできた可能性はある
    のでしょうか?

    それから、予防接種を受けると翌日以降に発熱を
    したり、ヒキツケたりしたのも 関係があるので
    しょうか?

    双子家系や予防接種で副反応が出やすい子は、
    卵巣奇形腫の確率が高いのでしょうか?

    こんな事がこの坑NMDA受容体脳炎に、少しでも
    関係があるのなら、娘と同じ育歴のある子ども
    は、この脳炎の可能性を知らせてあげる事が可能に
    なるのであれば、発病した時の初動医療に手助けに
    なるのなら、娘の症例を次に役立てるなら嬉しい
    です。
    脳炎を発病する前に、卵巣奇形腫を発見できるの
    なら、更に嬉しいです。

    本当に残酷な迄に、娘や私たち家族をドン底に
    何度も陥れるこの脳炎が憎いです。
    命が助かった後も、精神異常やら、人格の変貌に
    苦しめられ、絶望を何度も味わっています。

    それでも、今は、生きてくれる事に感謝していま
    す。4/1から主治医になって下さった今の主治医
    には心から感謝しています。
    ひとつひとつの言葉が、温かくて闘病中も現在も
    救われています

    沢山の病気の中から、診断し治療する事は、本当に大変な事だと実感しました。

    少ない症例の病気なら、私は私にできる事を何かに役立てる事があるならしたいです。


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  5. みぃ様

    非常に貴重な書き込みの内容なので、別のエントリーを作って掲載します。そのほうが、ひと目に触れやすいと思いますので。

    それから、もしどなたかが、みぃ様にメッセージを送りたい場合はどうすればよいでしょうか。私は抗NMDA受容体脳炎の専門家ではありません。むしろ、この疾患に関わっている他の人とみぃ様がつながるようにするのが、今回の私の役割とも思います。

    もし、ご連絡先を教えていただけるのであれば、Twitterの@sunaouchidaまで、個人メールでご連絡ください。

    内田 直

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