2014年10月3日金曜日

軽症うつ病 と 薬物療法

先日日本イーライリリーの会で、大坪天平先生の「軽症うつ病に関して」というお話を伺いました。大坪先生は、多くの講演をされている先生ですが、私はこれまではWeb講演会でお話を伺ったりするくらいで、あまり直接にお話を伺う機会は少なかったように思います。今回は、「軽症うつ病に関して」という非常に自由度の高い演題でのお話で、どんな話が聞けるのかと楽しみでしたが、期待以上に共感できる話でした。

現在、うつ病の薬物療法に関しては、これまでにもこのブログでも書いてきているように、製薬会社のキャンペーンによって必要以上に抗うつ薬が用いられており、適正に使用すべきだという意見があります。さらには、製薬会社の利益供与が薬物の使用を歪めているという指摘もあります。

このようなことから、一部の文献を引用して軽症うつ病には抗うつ薬は効かないということを主張する研究者もいます。このような主張には、私は疑問を持っていました。それは、うつ病は均一な疾患ではなく、様々なタイプが混在する疾患だからです。しかし、問題はまだ研究によってその不均一性がどのような形のものがあるのかは明確になっていません。ただ現実には、ある薬物はあるタイプのうつ病には効果があるけれども、他のタイプのうつ病には効果が無いということはあると思います。抗うつ薬の効果をみる場合、うつ病のタイプを選んで、抗うつ薬の治験を行うということは通常は行わないので、そうすると効果を特定できないということも有ります。

今回の大坪先生の講演は、軽症うつ病に対して薬物が有効でないという研究は、いくつかの点で不完全な研究だという指摘をしました。それらのポイントについては、大坪先生がお書きになるものや講演を見ていただくのが一番なのですが、私が印象に残ったものは、

1.うつ病が軽症であるとしても、生物学的に病的レベルが高くないものもあれば、患者さん自身の適応性が良いために生物学的に病的レベルが高くても軽症に見えるものもあるということ。
  これは、まさにそのとおりだと思いました。特に、うつ病(だけでなく他の精神疾患もそうだと思いますが)生物的=精神的=社会的(Bio-psycho-social)な要因によって疾患が成り立っていることを考えると、やはりしっかりと症状を吟味して治療を考えることが重要であろうということはそのとおりだと思いました。

2.初期値が軽症であると、薬物効果に有意差が出にくいということ。
  これも、そうであろうと思いました。これは純粋に方法論的な指摘です。

3.薬物の効果の評価に、うつ病評価尺度の合計をつかうのはあまりよい方法でないということ。
  これについて、そうかもしれないなと思いました。

特に、1については、非常に強く共感するところで、結局のところは、軽症のうつ病に対してもしっかりと病態を見ていかなければ、いけないということです。このような視点は、しかし、薬物の過剰な使用に警鐘を鳴らす人たちも、同様に指摘している点であり、結局のところ、2つの立場は主張の方向は違っても最終的な到達点は同じと言えなくも無いようにも思います。

このような問題については、主張の方向が明確な方が、議論、特にディベートなどは面白いのですが、結局のところこのような主張を強くする先生方は、しっかりと臨床を見つめているという面もあって、到達点は同じになるということかもしれません。臨床家として最も大事なことは、自分で考え、コマーシャリズムに流されないということではないでしょうか。

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