2014年10月15日水曜日

国際睡眠障害分類 第2版から第3版への変化 (1) 不眠症の分類の大きな変化

不眠症についての原稿を依頼されて、その準備をしています。不眠症の患者さんは私自身も非常に沢山診療していますが、それぞれ個性があります。そう言い始めれば、どの患者さんにもそれぞれそのバックグラウンドがあって、患者さんのそういった背景を考えながら診療しなければ、良い診療はできません。

そのような中で、比較的純粋な不眠症を「精神生理性不眠症」と呼んで、治療してきました。治療法としては、非薬物治療として、運動療法や、認知行動療法をします。また、薬物療法として、睡眠薬を投与します。

しかし、この診断についても、患者さんの背景には、本人の性格傾向やストレスの影響などがあり、実は純粋な「精神生理性不眠症」というのは、なかなか難しいなと感じることも多くありました。

今年発刊された、国際睡眠障害分類の第3版の不眠症の項目は、そういった意味で非常に大きな変化が有りました。これまで、細かい不眠症のサブタイプがあげられていたものを、慢性に不眠になる慢性不眠症と一括したのです。図に、第2版から第3版への違いを掲げましたが、このように大きな変化をした理由について、この本の中では、臨床的にもこのようなサブタイプの純粋な患者さんは稀だから、と書かれていました。

不眠症の分類の変化


この考え方は、私自身の診療の感覚とも非常に一致していて、共感しました。患者さんには、それぞれその背景となる特徴があり、それらを総合的に治療していくことがもっとも重要だと考えているからです。

今回の改定は、不眠症に関しては良い方向に向ったように思います。ただし、一方で、細かい要因を学べなくなるということはあまり好ましくなく、これについても専門医はしっかりと知識をつけていく必要が有ることも忘れてはいけないでしょう。

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