2014年10月1日水曜日

アジア睡眠学会 インド ケララ州 (2) ヨガと睡眠

アジア睡眠学会は終わり、帰国しましたが、印象に残るセッションは「ヨガと睡眠」に関するいくつかの発表でした。これは、インドで行われた睡眠学会ならではの研究であると思います。

私が初めて、ヨガと睡眠についての発表を聞いたのは、今から数年前のインドの研究会ででした。その時の発表は、インドのヨガ行者と同じ年令性別の一般のインド人の睡眠を比べたところ、ヨガ行者の睡眠は驚くほど深いノンレム睡眠(徐波睡眠)とレム睡眠が多いという発表です。インドのバンガロールの研究所のBindu Kutty先生のグループの発表でした。特にレム睡眠が、特に全睡眠の40%も見られるということは、ほんとうに驚きでした。通常、レム睡眠は成人では20%くらいにみられますが、40%もレム睡眠があるという睡眠記録は見たことがなかったからです。

私は、最初は正直なところ、データの見方が間違えているのではないかと思いました。それで、その後、いつかその生データを見たいと思っていたのです。それは、一昨年達成出来ました。バンガロールの研究所に招待されて、データ解析を共同でやる申し出を受けたからです。私は喜んでインドに行き、実際のヨガ行者のデータを見せてもらいました。そうしたところ、確かに40%がレム睡眠以外には判定できない波形でした。

このような変化は、睡眠の若返りと言っても良い変化です。運動によっても、睡眠の若返りはおきますが、ヨガによる睡眠の若返りは、ヨガの経験が進めば非常に大きな変化となります。

我々は、インドのヨガの経験者といいうと、森のなかで何日も座って、太陽を見つめているようなことを想像しますが、ここで取り上げられているヨガの経験者はそのような、浮世離れした行者ではありません。通常の仕事につきながらも、日頃一日一時間程度の瞑想を毎日行うタイプの人達です。いわば、ジョギングを毎日欠かさないひとや、詩吟の趣味があれば毎日欠かさないというような、日常生活の中に溶け込んだ健康法としてのヨガを実践している人たちです。

これは、非常に私にとってはショックなことでした。このような著しい睡眠の質の改善が見られるのであれば、当然うつ病やその他の精神疾患への好ましい影響もあるように思います。そういった意味で、エビデンスに基づいた精神科プログラムとして、認知行動療法などに加えられるプログラムではないかと真剣に考えてもいます。

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