2014年8月27日水曜日

夜尿症の治療

自分の書いた「好きになる睡眠医学」に、夜尿の項目がありますので、夜尿一般についてはそこを読んでいただければ良いと思います。簡潔に述べれば、子供の夜尿は、よほど高学年になって回数が多いということでなければ、経過を見ていけば良いと思います。

一方で、様々な理由で、中学生以上、時に成人で、夜尿の問題が出ることもあります。このような治療については、多くの場合三環系抗うつ剤を使ってきました。三環系抗うつ剤の夜尿に対する治療効果の薬理作用は、抗コリン作用によって膀胱平滑筋(膀胱の筋肉)を弛緩させて膀胱の容量を増やす効果です。アナフラニールを25mg程度処方します。この他に、抗利尿ホルモンを用いたりするということがありますが、私は使ったことはありません。

アナフラニールと類似した治療法として、抗コリン作用を利用し膀胱平滑筋の弛緩作用のある、プロ・バンサインを用いることもありますが、最近、過活動膀胱治療剤として発売されたトビエースが夜尿に著効したケースを経験しました。過活動膀胱というのは、高齢者ですぐにトイレに行きたくなるような症状を呈する状態です。これは夜尿ではなく、起きている時にトイレに行きたくなるというようなことです。また、夜間頻回に起きてトイレにいくということも含まれます。この一つの理由は、膀胱が尿の貯留に対して過敏になっているからです。

このトビエースという薬は、このような状態の人に対して、膀胱にかなり特異的に働いて、膀胱の平滑筋を弛緩させる作用があります。これによって、脳に対しても尿がたまっているという信号が行きにくくなり、尿意頻回が抑えられるという仕組みです。トビエースは、膀胱の弛緩をおこさせるということから、夜尿にも効果があると考えられ用いてみました。このケースは、成人でしたが速やかに夜尿がなくなり、感謝されました。

夜尿は、主には泌尿器科でみる疾患だと思いますが、高齢者の治療や、睡眠障害の専門外来をしていても時々来院されます。最初に書いたように、小児であれば叱らずに様子を見ていくというのが良いと思いますが、まれに治療が必要と考えられるケースの場合には、このような薬物療法が効果的なこともあります。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。